2011年1月号
特集

第4部 主要プレーヤーの次の一手郵船ロジスティクス──アセットを持ちフルライン化矢野俊一 社長

JANUARY 2011  26 郵船ロジスティクス ──アセットを持ちフルライン化  2010年10月、郵船ロジスティクスが誕生した。
日本郵船が 「NYKロジスティクス」というブランド名で展開してきた物流 事業を、グループの郵船航空サービスに統合した。
統合会社 は13年度に売上高5000億円、将来的には1兆円を目指す。
目 標はグローバル物流市場でのトップ5入りだ。
一兆円プレーヤーを目指す ──郵船航空サービス(YAS)の二〇〇九年度の 売上高に『NYKロジスティクス』の売上高を合算す ると、売上規模はおよそ三四〇〇億円と一挙に倍以 上になります。
 「グローバルな物流市場でベスト 10 に入るには五〇 〇〇〜六〇〇〇億円、さらにベスト5に入るには、一 兆円近い売上高が必要になります。
グローバル市場の 競争に本格的に打って出るには、船会社や航空会社 から有利な条件を引き出せるだけのスケールメリット は重要です」 ──日本郵船をグループ全体として見ると、海上、航 空のキャリア機能にフォワーディング、ロジスティクス とすべての機能を揃えています。
一見、インテグレー ターと同じモデルを目指しているように見えます。
 「まったく違います。
すべての機能が揃っていると いう点では同じですが、中身の使い方が違う。
フォ ワーディングで船や飛行機を使うときには、グループ 会社といえども荷主のために理にかなう、合理性の あるかたちでしか使っていません。
極めてビジネスラ イクな使い方です。
グループの貨物航空会社の日本 貨物航空にしても、同社の日本での一番のお客さま は日通さんで、二番目は近鉄さん、三番目が当社で す。
マーケットシェアに応じたかたちになっている」 ──すると一緒のグループである意味は?  「日本郵船グループ全体として、物流というマーケ ットでそれぞれのセクターにたくさん駒を張っていこ う、それによって物流というマーケット全体でシェア を取っていこうということです。
ものが動くときに は船、飛行機、トラックが使われ、倉庫はその結節 点です。
そして一貫物流の中には輸配送も保管も流 通加工もある。
これらを全部押さえることがいわゆ る総合物流だと理解しています。
しかし、その中で も、お客さまに対して複数の輸送手段と選択肢を組 み合わせ、本当の意味での総合物流ソリューションを 提供できるのはフォワーダーだという気概を持ってや っていきます」 ──まず日本から新体制がスタートしましたが、これ までとは何が変わりましたか。
 「YASでは航空フォワーディングの売上比率がお よそ七五%を占めていました。
これに対してNYKロ ジスティックスジャパン(NLJ)はNVOCC(非 船舶運航海上運送人)事業をメーンとしていたので、 海上貨物の部分がぐっと大きくなり、能力的には倍 になりました」  「海外は二〇一一年四月以降、順次統合していきま すが、海外のNYKロジスティクスは海上貨物ばかり でなくロジスティクス、陸上輸送でも大きな規模を持 っています。
この倉庫部門を加えれば、統合新会社 の規模は飛躍的に大きくなり、しかも世界各地のネ ットワークを全部まとめて使えるようになる。
海上、 航空、ロジスティクスを組み合わせてエンド・ツー・ エンドのすべてを担えるようになる」 ──これまでYASは航空フォワーディングを中心に ノンアセットで展開し、高い利益率を誇ってきまし た。
しかし、今回の統合でNYKロジスティクスの持 つアセットを抱えることになった。
デメリットはあり ませんか。
 「NYKロジスティクスで倉庫部門への先行投資が 重荷になっていたのは事実です。
しかし、単純に“物 流”という括りで見れば、YASとNYKロジは同 じグループでありながら、同じ物流事業をこれまで 別々に行っていました。
それぞれの長所を足せば、グ 矢野俊一 社長 第4部 主要プレーヤーの次の一手 特 集 国際物流企業への通知表「荷主満足度調査」 27  JANUARY 2011 ループ全体としてもっと大きなものにして伸ばしてい ける」  「我々の頭の中にはずっと以前から“統合”という 文字がありました。
海外でYASの人間はNYKロ ジの大きな倉庫を見て、あれを自由に使えればとい う思いを持っていた。
しかもNYKロジの客層は外 資系のお客さまが非常に多い。
これまでYASがチ ャネルを持っていなかったノンジャパニーズのお客さ まに航空フォワーディングもやらせてください、一貫 してハンドリングできます、という売り方ができるよ うになったのは大きなメリットです。
今後、欧米系 のお客さまの入札に呼ばれる機会も増えるでしょう。
もちろん既存の航空貨物のお客さまにも提案を増や せます」 ──NYKロジにとってのメリットは。
 「日本郵船にとって物流事業はコアビジネスです。
しかし航空フォワーディングという機能を持たないま まやっていても、いつか成長に限界がきていたでし ょう。
YASとしても海上貨物を本気で伸ばそうと すると大変だし、NYKロジとどこかでコンフリクト が起きてしまいます。
YASもNYKロジもそのま までは将来しんどいことになる。
また、日本郵船グ ループの中でもYASの営業力は従来から一目置か れていました。
物流事業を伸ばすためにYASの営 業力を使うべきという判断もあったと思います」  「ただし統合しただけでは五〇〇〇億円、一兆円の レベルにはまだまだ足りません。
ここからどう足して いくかが重要です。
あまりM&Aなどは考えず、地 道に人に対して投資をしてしっかりとサービスを組み 立てながら大きくなっていきたい。
それだけ時間は かかるかもしれません。
といっても一兆円を達成す るのに一〇年かかるというのではかけ過ぎだ、とい う感覚です」 営業組織も総合物流型に刷新 ——統合で事業領域が広がると、組織の縦割りをど う打破していくかが課題になりそうです。
 「これまで我々は地域別と事業別という二つの切り 口から業績を管理してきました。
今後はそれに加え て、産業・顧客別という角度からも光を当てていき ます。
三次元で業績を管理することになるため﹃3 Dマネジメント﹄と呼んでいます」  「そのうち最も重要な責任単位となるのは地域別セ グメントです。
地域別は国別、支店別にブレークダウ ンされます。
そして一つの地区に支店は一つしか置 かない。
採算性の管理も支店別をベースにして、そ の下で航空、海上、ロジの事業別収支を見る体制に したいと考えています」  「これまでNYKロジとYASの営業マンがそれぞ れ顔を出していたお客様に対しても、窓口をできる 限り集約していく。
一人の営業マンが航空も海上も ロジスティクスも扱うことになります。
ワンストップ にすることで、お客様に当社のサービスを総合的に ご利用いただけるようになる」 ──営業マンは大変ですね。
海上も航空も何でも知 っていなければならなくなります。
 「営業マンが知るべきは、お客さまのニーズです。
それが総合物流に必要な営業マンのスペックです。
輸 送モードや倉庫の知識は横に広く浅くでいい。
その 代わり営業マンをバックアップする専門部署が、深い 部分の情報をしっかりと提供し、営業マンはお客さ まのニーズと自分の後ろに控える情報を一つにして 提案していくイメージです。
従来の営業マンとは役 割は大きく変わります」 日本 拠点数 73 倉庫面積 6 万6722 ? 欧州 拠点数 98 倉庫面積 83 万1195 ? 統合会社の概要 世界各地の物流事業拠点。
海外では日本通運をしのぐ規模になる 事業規模(09 年度合算ベース) 南アジア・オセアニア 拠点数 115 倉庫面積 65 万5635 ? 東アジア 拠点数 76 倉庫面積 24 万9389 ? 米州 拠点数 65 倉庫面積 42 万4005 ? ※旧郵船航空サービスと旧NYKロジス ティックスジャパンを含む、日本郵船の 物流事業セグメントの公表数値 売上高 約3400 億円※ 従業員数 約1 万6600 人 物流事業拠点数 427カ所 倉庫面積 223 万?

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