2011年1月号
メディア批評
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財政赤字削減の気運にも防衛費削減の声無し武器輸出三原則の見直しに動く民主自民両党
佐高 信
経済評論家
JANUARY 2011 68
ほぼ一年前の二〇一〇年一月二一日、東
京のホテルオークラで防衛省の幹部と防衛産
業の首脳が一堂に会して意見交換会が開かれ
た。
防衛省側は大臣の北澤俊美以下、副大 臣、政務官、官房長、統合幕僚長らが出席し、 防衛産業側は日本経団連の防衛産業委員会 等に加盟する次の企業の会長や社長がズラリ と並んだ。
三菱重工業 三菱電機 富士重工業 三井造船 川崎重工業 東芝 IHI 富士通 小松製作所 日立製作所 その他七社の計一七社である。
こんな光景は自民党政権時代でも見られな かったというが、この席で三菱重工業会長の 佃和夫(日本経団連防衛生産委員会委員長) は「武器輸出三原則等の見直し」などを要 求し、北澤は、 「官民の間で本音の議論を戦わせ、事務レ ベルでの対話も行いつつ、こうした意見交換 会を最低でも年一回は行っていきたい」 と応じたという。
こうした背景があって、民主党が企業献金 の受け入れ再開を表明したわけである。
そもそも、この問題では民主党と自民党の マニフェストに違いはない。
民主党のそれには「防衛生産技術基盤の 維持・活性化を図るため、平和国家として の基本理念を前提としつつ、防衛装備品の民 間転用を推進します」と書かれ、自民党の マニフェストには「国の防衛政策上の観点か ら国内の防衛産業の技術、生産基盤を維持・ 強化するため、自主的な技術研究開発の推進 と日米共同開発・生産の例外化や防衛省が開 発した装備品等の民間・他省庁への転用等に 抜本的開発を進めます」と記されている。
自民党は武器輸出三原則について「個別 に(武器)輸出の可否を決定する仕組みを構 築します」と条件付きの武器輸出解禁を打ち 出しているが、何のことはない、政権を獲得 した民主党がそれを先にやろうとしているの である。
私は二〇年ほど前に、ソニーの創業者の井 深大にインタビューして、次のように言われ たのが忘れられない。
「経団連(日本経団連の前身)では、つい 最近まで、軍備をやらなければ日本の工業は ついていけないということを堂々と言ってい た。
私は逆で、アメリカのエレクトロニクス は、軍備によってスポイルされるということを、 二〇年余り前から言いつづけてきたんです」 そんな井深は、また、こんな皮肉も言って いた。
「私は経団連には行かないんです。
経団連 というのは話し合いの場で、どうやって競争 しないかを決める団体ですからね」 軍縮の鬼ともいうべき宇都宮徳馬に一時は 師事していた菅直人がそうした理念を忘却し 去ろうとしている時に、前衆議院議長の河野 洋平が十二月一〇日付の『朝日新聞』の「私 の視点」欄に、非常に説得力のある防衛論を 寄稿していた。
「イランの核開発疑惑や旧ソ連諸国の紛争 を身近に抱えるドイツやイギリスが、財政赤 字削減のために大規模な兵力削減を打ち出し ているのに対し、日本で赤字削減を声高に求 める人から防衛費削減の声がほとんど聞こえ てこないのは、不思議でならない」 こう首をかしげる河野は、「武器輸出三原 則の緩和はカネのかからぬ防衛力強化」とい う議論を、理想や正義をかなぐり捨てた暴論 だと批判している。
財政赤字削減の気運にも防衛費削減の声無し 武器輸出三原則の見直しに動く民主自民両党
防衛省側は大臣の北澤俊美以下、副大 臣、政務官、官房長、統合幕僚長らが出席し、 防衛産業側は日本経団連の防衛産業委員会 等に加盟する次の企業の会長や社長がズラリ と並んだ。
三菱重工業 三菱電機 富士重工業 三井造船 川崎重工業 東芝 IHI 富士通 小松製作所 日立製作所 その他七社の計一七社である。
こんな光景は自民党政権時代でも見られな かったというが、この席で三菱重工業会長の 佃和夫(日本経団連防衛生産委員会委員長) は「武器輸出三原則等の見直し」などを要 求し、北澤は、 「官民の間で本音の議論を戦わせ、事務レ ベルでの対話も行いつつ、こうした意見交換 会を最低でも年一回は行っていきたい」 と応じたという。
こうした背景があって、民主党が企業献金 の受け入れ再開を表明したわけである。
そもそも、この問題では民主党と自民党の マニフェストに違いはない。
民主党のそれには「防衛生産技術基盤の 維持・活性化を図るため、平和国家として の基本理念を前提としつつ、防衛装備品の民 間転用を推進します」と書かれ、自民党の マニフェストには「国の防衛政策上の観点か ら国内の防衛産業の技術、生産基盤を維持・ 強化するため、自主的な技術研究開発の推進 と日米共同開発・生産の例外化や防衛省が開 発した装備品等の民間・他省庁への転用等に 抜本的開発を進めます」と記されている。
自民党は武器輸出三原則について「個別 に(武器)輸出の可否を決定する仕組みを構 築します」と条件付きの武器輸出解禁を打ち 出しているが、何のことはない、政権を獲得 した民主党がそれを先にやろうとしているの である。
私は二〇年ほど前に、ソニーの創業者の井 深大にインタビューして、次のように言われ たのが忘れられない。
「経団連(日本経団連の前身)では、つい 最近まで、軍備をやらなければ日本の工業は ついていけないということを堂々と言ってい た。
私は逆で、アメリカのエレクトロニクス は、軍備によってスポイルされるということを、 二〇年余り前から言いつづけてきたんです」 そんな井深は、また、こんな皮肉も言って いた。
「私は経団連には行かないんです。
経団連 というのは話し合いの場で、どうやって競争 しないかを決める団体ですからね」 軍縮の鬼ともいうべき宇都宮徳馬に一時は 師事していた菅直人がそうした理念を忘却し 去ろうとしている時に、前衆議院議長の河野 洋平が十二月一〇日付の『朝日新聞』の「私 の視点」欄に、非常に説得力のある防衛論を 寄稿していた。
「イランの核開発疑惑や旧ソ連諸国の紛争 を身近に抱えるドイツやイギリスが、財政赤 字削減のために大規模な兵力削減を打ち出し ているのに対し、日本で赤字削減を声高に求 める人から防衛費削減の声がほとんど聞こえ てこないのは、不思議でならない」 こう首をかしげる河野は、「武器輸出三原 則の緩和はカネのかからぬ防衛力強化」とい う議論を、理想や正義をかなぐり捨てた暴論 だと批判している。
財政赤字削減の気運にも防衛費削減の声無し 武器輸出三原則の見直しに動く民主自民両党
