ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年2号
特集
注目企業 トップが語る強さの秘訣 第11位九州日立物流サービス──シェア拡大が効率化を呼ぶ好循環に相川健一 社長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2011  22 九州日立物流サービス ──シェア拡大が効率化を呼ぶ好循環に  大型3 PL案件を毎年コンスタントに受注している。
取扱 規模の拡大がコスト競争力を高めるという好循環が発生して いる。
現場運営では作業スタッフの直接雇用化を進めてコス ト効率を1割以上改善した。
自社輸送比率の向上による足回 りの強化と人材育成を今後の課題と位置付けている。
売り上げの七割は流通業向け ──親会社である日立物流との役割分担は?  「我々地域子会社の役割は現場のオペレーションで す。
当社の場合、福岡県の久山町や佐賀県の鳥栖市 をはじめとする九州全域に一四の物流拠点を構え、 庫内作業や輸配送を行っています。
日々、荷主の要 望を聞き、現場を円滑に運営・効率化するのが最大 のミッションです。
新規荷主獲得の営業活動は基本 的に親会社である日立物流の営業部隊が担当します。
案件を受注した日立物流が、現場運営を当社に委託 するという形態です」 ──日立物流がコンペを勝ち抜いた段階で、荷主に 提供するサービスレベルなどは与件として確定して しまっているのでしょうか。
 「実際は、コンペの提案にも我々地域子会社の社 員が同席することが多いんです。
特に拠点の集約な どが絡む大きな案件では現場の視点が不可欠になり ます。
また通常は案件がスタートする六カ月ほど前 に準備室を立ち上げるのですが、そこには日立物流 の社員に加えて当社のスタッフも組み込みます。
荷 主に約束したことを実現するため、投入する人員の 数や使う拠点、車両台数といった具体策をそこで詰 めていく。
親会社とは密に連携を取って、円滑な立 ち上げが出来るよう配慮しています」 ──現場運営がミッションということですが、親会 社からは業績に関する予算が課せられるのですか。
 「それはありません。
反対に、当社から親会社に 取り組み目標を提出しています。
期の売上見込みや 利益、それを達成するための手段などを報告する。
もちろん甘すぎる目標では意味がありません。
今期 でいえば日立物流グループは連結売上高三七〇〇億 円を目標として掲げていますから、それに地域子会 社として寄与するという前提で目標を決める。
それ は親会社に対する約束になると同時に、当社の社員 へのスローガンにもなります」 ──日立物流グループは二〇〇九年三月期、一〇年 三月期と二年連続で連結業績を大きく落としました が、九州日立物流の物流事業は堅調に推移していま す。
特に一〇年三月期では大きな成長を達成してい る。
どう分析していますか。
 「当社の売上規模は一二〇億円ほどですが、その うち七〇%以上は流通系の物流事業が占めています。
残りはメーカー系物流事業と設備の据え付けなどの 機工事業が半分ずつ分け合っているという構成です。
このうち流通系の物流事業は単価の下落はあったに せよ、日常生活に必要な商品ですので、物量が急激 に落ちることはありません。
一方でメーカー系の物 流事業や機工事業はリーマンショックの影響を色濃 く受ける。
しかし、九州はそのボリュームが相対的 に少なかった」  「加えて、マイナス要因を上回る新規荷主を取り 込みました。
この数年、年間売上が億円単位に上る 大型の3PL案件を年に三、四件ずつコンスタント に受注できています。
これは日立物流グループの他 の地域子会社を見渡しても稀なことだと思います。
特に大きかったのが〇八年に受託した二つの案件です。
四月には九州を中心にチェーン展開するドラッグスト ア約一七〇店舗分の仕事を、十一月には大手GMS 約一二〇店舗分の仕事を受託しました。
この分の売 り上げが一〇年三月期に通期で反映しました」 ──新規の案件獲得は日立物流本体の営業部隊の功 績になるわけですか。
 「はい。
営業活動に協力はしていますが、我々の 相川健一 社長 トップが語る強さの秘訣 注目企業 第11位 23  FEBRUARY 2011 中心的な役割はあくまで現場の効率化です。
もちろ ん、この分野でも施策を打っており、業績に貢献し ています。
特に大きな取り組みになったのは現場スタッ フの直接雇用化。
一昨年から段階的に派遣スタッフ を自社雇用に切り替えてきました。
現在約九〇〇人 の現場スタッフを抱えていますが、そのうちの九六% が既に自社雇用で、今年三月には全てのスタッフが 自社雇用になる予定です」  「日雇禁止に向かう派遣法の問題が切り替えの契 機になりましたが、それ以上に現場の生産性を上げ たいという思いが強かった。
スタッフ一人ひとりが 仕事を覚え、習熟することで現場の生産性は向上し、 コストも下がるわけですが、派遣会社はいつも同じ 人を送ってはくれません。
新人には熟練した教育係 も貼り付けないといけないので、その分もロスにな ります。
それならば、全てのスタッフを自社雇用し た方がメリットは大きいと判断したのです」 直接雇用化で生産性が向上 ──しかし労務管理の負担がかなり増えます。
人員 の募集や時給計算、賃金の支払いなど派遣会社に頼っ ていた機能を自社内に構築する必要がある。
 「確かにその通りですが、以前から一〇〇%派遣 だったわけではなく、半分ほどは自社スタッフでし た。
派遣は物量波動のピークに合わせて利用していた。
そのため、給与計算や緊急管理のシステムをゼロか ら構築する必要はありませんでしたし、採用などの ノウハウもあった。
もちろん管理コストは増えまし たが、それ以上に直接雇用化する効果の方が大きかっ た。
一昨年前と比べると、同じ作業にかかるコスト が一〇〜一五%ほど下がっています」 ──新規の案件が増え、現場のローコスト・オペレー ションも達成した。
 「非常に良いスパイラルをもたらしています。
案件 が増えたことで拠点の数が増え、エリアの取扱規模 も大きくなった。
それによって拠点間の人員移動や スペースの融通が利くようになりました。
生産性も 向上しているので、小さな案件なら同じ人数、同じ アセットで処理することができる。
これはもちろん コスト競争力にも繋がります。
取り扱う物量が増え るほど、このメリットは今後もさらに大きくなる」 ──今後の展開は。
 「既存荷主に関しては、できれば契約まで含めて 当社に窓口を一本化させてもらいたいと考えていま す。
現在は荷主と直接契約を結んでいるのは当社で はなく日立物流。
それを当社に移してもらうことで、 日立物流は新規顧客の営業や企画開発に専念できる。
当社としても、自分達の直接の仕事だという意識が 生まれれば社員のモチベーションが向上する。
契約 が日立物流から地域会社である当社に切り替わるこ とでコストも下げることができる。
荷主の了承を得 る必要がありますが、その方が荷主にも日立物流グ ループ全体にとってもメリットがあると考えています」 ──現在の課題を挙げるとすれば?  「一つは足回りの強化。
当社の自社輸送比率は現 在一〇%ほどですが、これを少なくとも三〇%くら いまでには引き上げたい。
自らハンドルを握ること が配車能力の向上に繋がることはもちろんですが、 なにより荷主に対する元請け責任を果たすためには、 やはり一定の割合を自社輸送し、協力会社の見本と なる必要があります。
もう一つの課題は人材の育成。
案件が増えているため、優れた現場リーダーが不足 し始めている。
これには資格の取得支援や研修を重 ねることで対応していく方針です」 九州エリアの地場物流会社とも競合  日立物流の地域子会社の一つ。
九州地区における 現場オペレーションを担当している。
機工事業の影 響で利益は上下しているが、物流事業は順調に拡大 している。
10年3月期に売り上げが大幅に伸びたの は08年に受注した2つの大型3PL案件が寄与した結 果。
利益面では現場スタッフの直接雇用化による効 率化効果も顕在化し始めた。
今期に入っても新規拠 点が立ち上がっているため、11年3月期も増収増益 を見込める。
大手3PLとの競争に加え、九州エリ アの荷主を対象とするコンペでは地場の物流会社と も競合する。
同エリアにおけるシェアの拡大が、競 争力強化の決め手になる。
本誌解説 07/3 08/3 09/3 10/3 (月期) 14000 12000 10000 8000 6000 4000 2000 0 350 300 250 200 150 100 50 0 単位:百万円 業績推移 当期利益(右軸) 売上高(左軸) 特 集 物流企業番付《平成 23 年版》

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