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MARCH 2011 18
最優先事項は配送費削減
共同物流の全体像を図1に示した。 ここに挙げ
た調達から保管、補充、二次保管および仕分け、
配送に至る全ての領域が物流共同化の対象に成り
得る。
海外からの調達輸送を共同化して、陸揚げし
た商品を湾岸地区の「メインDC( Distribution
Center :保管型センター)」で共同保管する。 メイ
ンDCから「サブDC」や「共同TC(Transfer
Center:通過型センター)」への輸送に共同幹線便
を仕立てる。 さらには「共同サブDC」や「共同
TC」を設置し中継拠点まで共有化して、そこで
納品先別に仕分けて共配するといったかたちだ。
最近報道された取り組みを見ても、共同化の対
象領域は非常に広範囲にわたっている。
昨年一〇月にはパナソニックとNECが幹線輸
送の共同化を実施している。 パナソニックの福島工
場で生産したデジタル家電機器をNECの全国配
送網に乗せて混載することで、両社で使用してい
るトラック車両台数の半減を狙っている。
同六月には東芝とクボタが海上コンテナの共同利
用を開始した。 東京港から千葉県柏市の東芝の倉
庫にドレージして荷物を降ろした空コンテナを、返
り便でつくばみらい市のクボタの工場に回し、輸
出品を積み込んで再び東京港まで運ぶという「ラ
ウンド輸送」だ。
川下の「共同サブDC」としては、ヤマダ電機
などの家電量販店と東芝、三洋電機などメーカー
約二〇社が九州で共同物流に乗り出すというニュ
ースが昨年二月に発表されている。 福岡市に延べ
床約一五万平米もの巨大な物流センターを設置す
る計画だという。
静脈物流、回収の領域では、インクカートリッジ
の「里帰りプロジェクト」が有名だ。 キヤノンやエ
プソンなどプリンターメーカー六社が日本郵政と協
力して、家庭用プリンターの使用済みカートリッジ
を全国の郵便局で回収する仕組みを運営している。
また食品や日用雑貨品業界などでは、従来から
当たり前のように競合メーカー同士が物流共同化
に取り組み、長年にわたり実績を積んでいる。
共同物流は先に取り組みに参加したものほど、大
きな効果を得るという傾向にある。 率先して共同
化に臨み、取り組みをリードすることが、コスト競
共配パターンをデザインする
共同配送には大きく「?特殊要件共配」、「?幹線共
同輸送」、「?特定エリア共配」の3 つのパターンがある。
輸送ロットや輸送距離、納品条件などのニーズに合わせ
てこれらのパターンを組み合わせることで効果的な共同
配送を実現することができる。
調達 補充
図1 共同物流の全体像
共同輸送共同DC 共同輸送共同DC・TC 共同輸送共同回収
保管2次保管配送
保管
出庫
入庫入庫
共配仕分
共配仕分
※DC(Distribution Center):在庫保管型センター、TC(Transfer Center ):在庫通過型センター
共配仕分
保管
出庫
入庫
海外・国内生産工場
お客様(納品先)
入庫
入庫
A社DC
海外倉庫
B社DC
C社DC
共同サブDC
共同TC
第1部 事例に学ぶ成功のポイント
解説2
特 集
19 MARCH 2011
争力の維持・強化につながる。 とりわけ大きなコ
スト効果を期待できるのが共配による輸送費の削
減だ。 輸送費は物流コスト全体の六〜七割を占め
ている。 しかも、その比率は年々高まる傾向にあ
る。 輸送費削減のインパクトはそれだけ大きい。
基本的に輸送費は、工場・物流センター間など
の社内物流における「輸送」、いわゆる「一次輸
送」と、物流センターから納品先までの販売物流
における「配送」、「二次輸送」に分けられる。 こ
のうち一次輸送は社内物流であるため、コストを
最優先して自由にコントロールすることができる。
一方、配送は顧客サービスであり、顧客の要求
を満たす必要がある。 リードタイムや品質が優先さ
れて、非効率な積載になりやすい。 それだけ改善
の余地は大きいと言える。 そのため共同物流の取
り組みにおいては、最も大きな効果が期待できて、
また取り組みが比較的容易な配送の共同化から先
行実施されることが多い。
共配モデルの三つのパターン
共同配送のパターンは、大きく三つに分類でき
る。 ?特殊要件共配、?幹線共同輸送、?特定エ
リア共配の三つだ。
このうち?特殊要件共配とは、時間指定、納品
待機、検品立ち会い、納品先での仕分け作業など
の制約や付帯作業が必要となる配送で、通常であ
れば貸切トラックを使うところを専用便によって対
応するパターンだ。 量販店センターの納品などがそ
の対象になる。
?幹線共同配送は、複数の配送先の荷物を積み
合わせて中継拠点(積み替え拠点)まで専用便で
共同配送するパターン。 ?特定エリア共配は都市部
などを中心に特定エリアを専用便でルート配送する
パターンということになる。
この三つのパターンに路線便(特積み)を組み
合わせることで、多彩な共配パターンを実現する
ことができる。 その例として四つ紹介する。
一つは「幹線共同輸送+特殊要件共配」。 例えば
大阪から出荷して名古屋の複数の顧客に納品する
場合に、まず大阪から名古屋のTC拠点まで幹線
共同便で輸送して、そこで納品先別に仕分けて特
殊要件共配で納品するというパターンだ。
二つ目は「路線便+特殊要件共配」。 TC拠点ま
では各社が路線便を使い、そこで積み替えで特殊
要件共配で納品する。 発地のロケーションを問わな
いという利点がある。 幹線共同便を仕立てるには
物量が少なく、輸送距離がある場合にも効果的だ。
三つ目は「幹線共同輸送+路線便」というパター
ン。 路線便の着地側のターミナルまで、幹線共同
便で輸送する。 コスト削減に加えて、通常の路線
便と比べると発地側のターミナルを経由せずに済む
のでリードタイムを短くできる。
最後は「幹線共同輸送+特定エリア共配」だ。 共
同幹線便で中継拠点まで輸送して、さらにルート
配送まで共同化する。 実施できればコスト削減効
果は大きく、路線便と比べてサービスの付加価値
も高い。
これらのパターンをニーズに合わせて選択し、組
み合わせるすることで、効果的な共同配送を実現
することができる。
図2 共同配送のパターン
専用便による配送で、時間指定・納品待機・検品立ち
会い・納品先での仕分け作業などの制約や付帯作業が必
要となるパターン
基本パターン
特殊要件共配
中継拠点(積み替え拠点)まで複数配送先の荷物を専用
幹線共同輸送 便で共同輸送するパターン
幹線共同輸送+ 特殊要件共配
都市部などを中心に特定エリアを専用便でルート配送するパ
特定エリア共配 ターン
内 容
A 社B 社
A 社
TC拠点
(仕分け・積み替え)
幹線共同輸送
B 社
路線便+ 特殊要件共配
A 社
TC拠点
(仕分け・積み替え)
B 社
路線便
路線便
幹線共同輸送+ 路線便
路線便
路線便
ルート配送
A 社B 社
A 社
幹線共同輸送 路線便ターミナル
B 社
A 社B 社
A 社
幹線共同輸送
B 社
幹線共同輸送+ 特定エリア共配
特定エリア
TC拠点
(仕分け・積み替え)
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