ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年3号
特集
第3部 3PLが主導する同業種共配菓子メーカー ロジパートナーズ非効率な幹線輸送にメスを入れる

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2011  38 中堅以下のメーカーを対象に  丸紅が一〇〇%出資するノンアセット型3PL のロジパートナーズは二〇〇九年六月、中小菓子メ ーカー四社を荷主とする共同配送を開始した。
そ の後、仕向地を北海道、東北、関東、中部、関西、 中四国に拡大し、全国を網羅した。
同十一月には 中部発の共配もスタート。
同社の共配事業に参加 するメーカーは今年一月現在、計十一社を数える に至っている。
 菓子類は規模の小さなメーカーでも全国販売をし ていることが多い。
工場や在庫拠点を地域ごとに 展開できる大手メーカー以外は、遠隔地に向けて 工場から長距離輸送を行っている。
しかし、菓子 類は容積の割に商品単価が安く、運賃負担力に欠 ける。
運送費の削減ニーズはそれだけ強い。
 長距離輸送の支線に当たる各地の域内配送では、 菓子や食品の扱いに強みを持つ地場の物流業者に 委託が集中する傾向にある。
荷主が意図しないま ま実質的に共配が行われている。
 しかし、工場から各地の物流業者の拠点まで運 ぶ幹線輸送は、一社では物量がまとまらないため ケース当たりの輸送単価が割高になっている。
中小 メーカーはもちろん、チャーター便を仕立てるだけ の物量のある中堅以上のメーカーでも、出荷ロット の小口化に伴い、輸送効率が低下しているという。
 同社の坂本由夫運送事業部部長は「幹線費用は ケース当たりの輸送単価の半分以上を占めている。
その効率化は製菓業界にとっての長年の課題だっ た。
路線便(特積み)を使っている場合には輸送 品質面での課題もあった。
幹線共配によって二つ の課題の解決を図った」と説明する。
 車両一台に満たない荷物の長距離輸送には通常、 路線便が利用される。
しかし路線便は種々雑多な 貨物との合い積みで、積み替えや中継を行うため、 段ボールのケースが汚れたり角がつぶれたりするこ とが少なくない。
卸や小売りのセンターの受け入れ 基準を満たせず、返品になってしまう。
ロジパートナーズの 坂本由夫運送事業部部長 共同配送は3パターンで実施しており、各パターンに合わせて運賃を設定している ?共同配送基本フロー 各社毎に集荷車両 メーカー各社メーカー各社 各配送先 幹線車両への積替 集約仕分拠点2次配送拠点 2次配送車両 への積替 ?複数工場集荷後の幹線共同配送(集荷・幹線の一貫化) 各配送先 幹線車両による 直集荷+幹線輸送 2次配送拠点 2次配送車両 への積替 ?複数工場集荷後の一括配送(集荷・幹線・2次配送の一貫化 各配送先 大ロット配送先チャーター便 メーカー各社 ロジパートナーズ 非効率な幹線輸送にメスを入れる  2009 年6 月、菓子メーカー4 社を対象とした共同配送 を開始した。
工場から納品先までの輸送手配を一括して 請け負い、各社の日々の出荷量に合わせて配送フローを 柔軟に組み替えることで高積載率を実現している。
口コ ミで評判が広がり、サービス開始から1 年半あまりで参 加メーカーは10社以上に増加した。
    (梶原幸絵) 菓子メーカー 第3部 3PLが主導する同業種共配 39  MARCH 2011  これまでにもメーカーや卸など荷主の主導によ る物流共同化が検討されたことはあった。
しかし、 同業者同士では利害の調整が難しく、いずれの取 り組みも定着するまでには至っていなかった。
 そこでロジパートナーズが3PLとして各メーカ ーの間に立ち、各社と個別に出荷時間など諸々の 調整を行うことで、共配の実現を目指した。
 共配の対象路線では原則としてロジパートナーズ が元請けとなり、幹線輸送部分だけでなく、工場 から納品先までの輸送手配を一括して請け負って いる。
各社の日々の出荷量に応じて柔軟に輸送パ ターンを組み合わせ、積載効率を高めるためだ。
 図の三つの輸送フローから適切なものを選択す る。
このうち?は各社から集荷した小ロットの荷物 を発地の拠点で方面別に仕分けて幹線輸送し、着 地側の拠点で納品先別に仕分ける。
 ?は方面別にロットがまとまる場合に適用する。
発地側の拠点を経由せず、集荷してそのまま着地 側の拠点に輸送する。
 ?は大口納品先に配送する場合。
発地側で車両一 台を満載にして中継拠点を一切経由せずに納品する。
運賃は各パターンに合わせて容積建てで設定した。
 まずは関東エリアに工場を置く中堅以下の菓子メ ーカーをターゲットに提案 営業に回り、効果の出やす い九州向けから共配をスタ ートさせた。
当初の参加メ ーカー四社のうち、一社は 夏場に定温管理が必要にな るため、保冷車両・保冷拠 点も手当てした。
その評判 はすぐに口コミで広がった。
 「ミスターイトウ」ブランドで知られるクッキー、 ビスケットの専業メーカーのイトウ製菓は、ロジパ ートナーズの共配事業スタートから二カ月後の〇九 年八月に関東発九州向けで利用を開始し、現在は 中四国、関西、静岡向けにも広げている。
 同社の木村政春営業本部物流課課長は「出荷量 の変動に柔軟に対応してもらい、コスト、品質と もに大きく見直すことができた。
日々の細かい改 善提案を受けられることも魅力の一つ」と評価し ている。
 受注から納品までのリードタイムが短縮するとい う効果もあった。
九州と中四国向けでは当日出荷 に以前の運送業者が対応しておらず、卸からの受 注は夕方に締め切って翌日午後に出荷し、中一日 をはさんで三日後に納品していた。
しかしロジパー トナーズでは受注当日出荷にも対応しているため、 得意先へのサービスレベルが向上した。
 運用面ではロジパートナーズの配車担当者が中心 的な役割を担っている。
荷主と密に打ち合わせを 行い、日次・月次情報や新商品発売前の一斉出荷、 特売情報を三〜六カ月先まで収集。
過去の出荷デ ータも併せて物量を予測し、事前に計画を組む。
 各メーカーの出荷のタイミングまでコーディネー トすることもある。
新商品発売前や連休前など、 各メーカーは生産量を引き上げて作りだめをするた め、工場の保管場所は不足しがちになる。
これに 対してロジパートナーズは域内配送拠点での一次保 管を提案するほか、他社と共配を組みやすい出荷 計画を提案し、各メーカーの負荷を軽減している。
関東発では積載率八割以上を達成  昨年には独自開発した専用システム「HCS (Haiso Control System)」を稼働させた。
共配の 開始当初は人手で配車を管理していたが、参加メ ーカー数が増えて作業が複雑になったことからシス テム化した。
これによって商品単品のステータス情 報を一元管理する体制も整った。
 こうした細やかな運用の工夫が、大きな効果を 生んでいる。
車両の積載率は関東発では概ね八割 以上に達している。
メーカーや仕向け地によって は、以前に比べてコストは一〇数%〜二〇%以上、 汚破損など品質面での問題発生件数は一〇分の一 〜二〇分の一に低減しているという。
 ロジパートナーズの坂本部長は「改善を続けるこ とによって得られたコスト削減効果は情報システム への投資など当社に必要な分を除いてお客さまに 還元し、売上高物流費比率を大手メーカー並みの 水準に近づけている」と胸を張る。
 現在、積載率をより高めるために大手メーカー とも検討を進めている。
「共配の組み合わせは無限 といっていい。
物量のまとまる大手メーカーでも改 善の余地は十分ある」と坂本部長は意欲を燃やす。
 また、今後は早期に関西発の幹線共配を開始し、 関東、中部、関西の三大市場で菓子共配の基盤を 固め、同時に菓子以外の食品でも共配を実施した い考えだ。
「さらに、将来的には日用雑貨も手掛け ていきたい」と坂本部長は構想を描いている。
イトウ製菓の木村政春 営業本部物流課課長 特 集 イトウ製菓は1日当たり平均7000〜8000 ケースを出荷する。
そのうち西日本と静岡向 けをロジパートナーズに委託している

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