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2011年3月号
ケース

AMS ネット物流

MARCH 2011  46 携帯電話業界からの異業種参入  アクロディアは携帯電話向けミドルウエア の開発を手がけるベンチャー企業だ。
 ミドルウエアとはコンピュータのオペレーテ ィングシステム(OS)とアプリケーションソ フトの中間に位置するソフトウエアで、携帯 電話の各種機能をユーザーに使いやすくする ユーザーインタフェース(UI)ソリューショ ンなどを指す。
 現在話題になっている3D携帯には横向き に持ち替えるだけで3Dコンテンツが起動す る機能が付いている。
これは携帯電話に組み 込まれたアクロディアのミドルウエア製品「V IVID─UI」の技術による。
 また最近のほとんどの携帯電話は待ち受け 画面やメニュー画面を好きな画像に変更した り、使い慣れた機種の操作方法を新しく購 入した機種にそのまま設定することができる。
これも「VIVID─UI」の機能の一つ。
現 在、国内で販売されるフィーチャーフォン(多 機能型携帯電話)のおよそ八割に同社の「着 せ替え機能」が搭載されているという。
 アクロディアの設立は二〇〇四年七月。
自 社開発したミドルウエア製品を携帯電話会社 やメーカーに対しライセンス販売するビジネス モデルで成長した。
〇六年には東証マザーズ に上場を果たしている。
 その後、同社は事業の多角化に乗り出す。
携帯電話の販売台数が毎年増加している間は、 自社製品の搭載された端末が増えるのに従っ てライセンス収入も伸びる。
だが普及が一巡 して販売台数が頭打ちになった時には、その 影響を避けられない。
今や日本の携帯電話普 及率は八割以上に達している。
新たな成長シ ナリオを確立する必要があった。
 そこで〇七年四月に一〇〇%子会社の「A MS」を設立し、新規事業の開発に乗り出し た。
まずアクロディアのミドルウエアを使って デジタルコンテンツを提供するコンテンツプロ バイダー事業に参入した。
携帯電話のユーザ ーの利用に応じて課金するビジネスモデルで、 販売台数の増減に影響を受けない。
 ただし、アクロディアはコンテンツプロバイ ダーにミドルウエアを提供する立場にもある。
既存顧客との競合を避けるため、携帯ユーザ ーを直接相手にするのではなく、コンテンツ プロバイダーに対するライセンス供与や開発支 援によって、その対価を収受する事業形態を とった。
 さらに将来はデジタルコンテンツが無料で提 供される時代が来ることを想定し、その布石 も打った。
携帯電話に関連する事業領域のな かでも最も成長スピードの速いEコマース市場 に着目した。
 これまでも多くのコンテンツプロバイダーが、 モバイルコンテンツ事業からEコマース事業に 進出している。
ただし、その場合には自らサ イトを立ち上げ、ネット通販のセレクトショッ プを運営することが多い。
同社はそれとは別  携帯電話のミドルウエアを開発するアクロディア が、100 %子会社のAMSを通じてアパレル系ECサ イト向けのフルフィルメント事業を拡大している。
商 品調達以外のすべてのサイト運営業務を一括して請 け負い、成功報酬型で料金を収受する。
きめ細かな 販促支援機能を差別化の武器に現在27のアパレルブ ランドから業務を受託している。
ネット物流 AMS アクロディア子会社がフルフィルメント事業 アパレル系ECサイト向けに統合サービス 47  MARCH 2011 のアプローチを選んだ。
 渋谷の若年者向け商業施設「109」系の アパレル品を扱う大手モバイル通販サイトの運 営会社から、サイトのバックヤード業務につ いて相談を持ちかけられたことがきっかけと なった。
 そのEC事業者は物流システムに課題を抱 え、フルフィルメントがサイト運営の足かせと なっていた。
AMSはその対応を通して、E C市場の成長に伴いサイトの運営を裏側でサ ポートするサービスの需要も高まると確信し、 同分野への参入を決意した。
 そのツールとして情報システムに投資して大 規模アパレル系ECサイトをターゲットにした 統合フルフィルメントサービス「EXREGZ IO(エグレジオ)」を開発した。
 商品を調達すること以外のサイト運営に必 要なあらゆる業務を支援するサービスで、商 品管理からコールセンター運営、倉庫での入 出庫・在庫管理、配送、決済まで幅広い領 域をカバーする。
さらには商品情報の登録 や、商品をサイトへアップするための撮影・ 採寸・コメント作成などの業務もAMSが代 行する。
 倉庫業務や配送業務はパートナーの物流会 社への委託だが、同じ倉庫内ですべての業務 を行い、エグレジオの基幹システム(ECシ ステム)を倉庫会社のWMSと連携して動か すことにより一元管理を実現した。
 クライアントのECサイトに注文が入ると、 その情報をもとにECシステムからWMSに 出荷指示が出る。
倉庫で出荷が完了するとW MSからECシステムへ自動的に完了情報が 流れる。
商品の入荷時には倉庫業者がWMS で作成した入荷データをECシステムに取り 込んで入荷実績を管理する。
 アパレル品の調達では発注した内容と中身 や数量の異なる商品が入荷するケースがよく ある。
もともと追加生産による期中フォロー が難しい製品特性がある上、仕入先の管理体 制が十分に整っていないことが多いためだ。
 だが違う商品が入荷すると発注金額と仕入 れ金額に差異が生じてしまう。
このためアパ レル品を扱う事業者は通常、商品の入荷時に エクセルなどで作成した発注データと倉庫側 から上がってくる入荷実績の照合を行い、商 品や数量が一致していないものについてはそ サイト利用者 プロモーション 注文 代金回収 問い合わせ対応 商品発送・返品 EC 事業者 サイトデザインプロモーションMD 業務 売上支払 EXREGZIO フロント業務 決済業務 顧客対応業務 配送業務 システム 販売システム 仕入れシステム WMS (Warehouse Management System) 倉庫業務 (入庫作業・数量確認・保管・ 商品移動・出庫作業・棚卸等) バックヤード業務 システム運用管理 撮影、採寸、原稿作成 商品管理業務 メーカー 商 社 卸 発注 入庫・返品 アクロディア グループ サービスの提供コンテンツサイト構築 制作支援 コンサルティング ライセンス提供 受託開発 E コマース (EC)事業主 コンテンツ プロバイダー 携帯電話 ユーザー 携帯電話 キャリア メーカー コンテンツ・サービスの 提供 携帯端末の 提供 EC サービスの提供 MARCH 2011  48 の都度、経理上の処理を行わなければならな い。
入荷数量の多い事業者にとっては大変に 手間のかかる作業だ。
 この手間を省くためエグレジオではシステ ムで発注データと入荷実績の照合を自動で行 えるようにした。
EC業者がエグレジオのE Cシステムで仕入先向けの発注書を作成する。
商品が入荷して倉庫業者が処理を行いWMS から実績をECシステムに送ると、ECシス テムの発注データと照合が行われ、EC業者 側で金額や数量の違いを一覧できる仕組みに なっている。
 〇八年十二月、エグレジオはアパレル系通 販サイトのバックヤードシステムとして正式に 採用され、本格的にサービスをスタートした。
その後は有力アパレル系サイトが相次いで同 サービスの導入に動いている。
複雑な販促キャンペーンにも対応  エグレジオの開発はアパレルEC事業の経 験豊富なメンバーが中心になって手がけ、そ の後の運営にも携わっている。
AMSの桑原 たフルフィルメント業務をアウトソーシングす る場合には、効率化を優先するあまりキャン ペーンの中身が一律になり、サービスが低下 するケースが多いという。
 AMSはサイトのフロント側とバックヤード 側の橋渡しをきめ細かくサポートすることで、 物流の効率化と多様なキャンペーンへの対応 を両立させて、他のフルフィルメント事業者 との差別化を図っている。
 EC支援事業を担当するAMSの古田俊雄 プロデューサーは「取扱量の拡大に伴ってサ ービスが低下するとEC市場の成長が阻害さ れる恐れもある。
我々は顧客がやりたいと思 うキャンペーンを自由にできるよう、業務面 でどんな要望にも対応していく」と話す。
成功報酬型の料金制度を採用  エグレジオの料金体系には、顧客の収益に 応じて取り分が決まるレベニューシェア型の成 功報酬方式を採用している。
 AMSがバックヤード業務を代行すること で顧客はマーチャンダイジングやプロモーショ 崇取締役EC事業部長は「我々は物流だけで なくマーケティングやプロモーションの視点も 重視して総合的に業務を組み立て、サービス を提供している」と強調する。
ECサイトで はしばしば、一定の購入条件を満たした客に 販促品のおまけをつけるキャンペーンが行わ れる。
EC業者にとって販促キャンペーンは マーケティングの有力な手段。
条件設定を細 かくするほどおまけに希少価値が生まれサー ビスの差別化につながる。
 だがその一方でキャンペーンの中身が複雑 になるとバックヤードの業務負荷が大きくな る。
エグレジオは倉庫業者に業務負荷をかけ ることなくECサイトの複雑なキャンペーンに 柔軟に対応できる。
 「どんな条件のときにどの販促品を付ける」 といったキャンペーンの細かな内容をEC事 業者から事前にヒアリングしておく。
実際に サイトに注文が入ると、ヒアリングした内容 と注文の中身をシステムを利用して照合し注 文者と販促品を紐付けする。
 その情報を「どの客にどの販促品をつける」 というパターン化した出荷指示データにして、 倉庫業者のWMSに送信する。
この指示によ って倉庫業者側では、複雑な出荷内容でもイ レギュラー対応が要らず、通常の業務フロー 内で処理することができる。
 一般にECサイトは事業規模が小さいうち は手の込んだキャンペーンも打てるが、規模が 大きくなるにつれ小回りが利かなくなる。
ま AMSの古田俊雄プロデュー サー AMSの桑原崇取締役 EC事業部長 49  MARCH 2011 リンクだ。
 最近はブランド品メーカーの公式通販サイ トを同社が支援するケースが増えている。
ブ ランド品メーカーはリアル店舗向け販売をメー ンに展開しながら、チャネル多様化の一環と してECサイトでの販売に乗り出すケースが ほとんどだ。
 EC事業が軌道に乗るまでの段階では売上 原価管理や消化率管理などは二の次になるこ とも多い。
だが売り上げが一定の規模を超え 本格的に事業展開する段階になれば、店舗向 け商品と同様に基幹システムで厳密な原価管 理などを行う必要が出てくる。
 これを支援するために、AMSのECシス テムで管理している商品の売り上げや在庫情 報を、ブランド品メーカーの基幹システムに連 携する仕組みが必要になっている。
 EC事業者は同じ商品を携帯サイトとパ ソコンサイトの両方で販売するケースが多い。
その点、エグレジオのECシステムはもとも と在庫をサイト別に振り分けて管理する機能 を持っているため、顧客は携帯サイト向けも パソコンサイト向けも在庫を一元管理して出 荷指示を出せる。
サイトごとに別々に在庫を 持たなくても済み、在庫の偏在を防止できる。
 基幹システムとの連携が実現すれば同じブ ランドの店舗向けとサイト向けの在庫を一元 管理できるようにもなる。
サイトで急に商品 が売れ出しても店舗向けの在庫から補充を行 って欠品を防ぐなどの調整が可能になり、販 売機会ロスの防止につながる。
Webとリアルを横断して顧客を支援  「大手のブランドメーカーもEC事業に本腰 を入れ始め体制を整備しつつある。
それにき ちんと応えていくことがフルフィルメントサー ビスの必須条件になる。
顧客の基幹システム との連携を進めないと我々のビジネスも広が っていかない」と桑原取締役は見る。
 今年の一月末現在、AMSはブランドの公 式サイトおよびセレクトショップを合わせ二七 ブランドに対してフルフィルメントサービスを 提供している。
 EC支援事業の開始から三年目となる今期 二〇一一年八月期は、昨年度の二倍の売り上 げ目標を掲げ、黒字化をめざしている。
携帯 電話の出荷台数が減少するなか、アクロディ ア本体の従来型ビジネスモデルを補完する事 業の柱の一つとして、AMSにかかるグルー プの期待は大きい。
 ?マーケティングプラットフォーム?の将来 像をAMSは「Web領域とリアル領域を横 断してマーケティングを支援する」姿として描 く。
アクセス数に対して購入数が何件あった というオンラインマーケティングデータと、購 入した客の属性・購買履歴などのリアルのデ ータとを紐付けして分析できる仕組みの構築 をめざし準備を進める考えだ。
ビジネスモデ ルの進化は今後も止まりそうにない。
 (フリージャーナリスト・内田三知代) ン活動に専念できる。
その結果、サイトの売 り上げが拡大するという好循環を生むことで、 顧客とのWin─Winの関係を構築しよう という考えから成功報酬型を選んだ。
 桑原取締役は「(レベニューシェアによるビ ジネスで)重要なことはどうすれば顧客の売 り上げが伸びるかだ。
そのためにフロント側 も含めて売りやすく管理しやすいバランスの とれた仕組みの提供を目指している」とアピ ールする。
 最近ではバックヤードの支援にとどまらず、 顧客のサイトに客をいかに集め、どうやって 囲い込むか、マーケティング支援までサービス 内容を広げている。
 エグレジオには「サイトに何件のアクセスが ありそのうち何件が購入につながった」とい うアクセス解析を行う機能がある。
システム で収集するこれらのオンラインマーケティング データを顧客に提供し、顧客の要望に応じて データの分析を行う。
 分析結果をもとにAMSが集客のためのプ ロモーションを提案し、それを代行すること もある。
「クライアントに対してマーケティン グプラットフォームの役割を果たしていくこと が我々の目指すところだ」と桑原取締役は説 明する。
 そのためにもバックヤード側の仕組みを、 もっと強化する必要があると同社は考えてい る。
とりわけ今後の課題として重視している のは、ブランド品メーカーの基幹システムとの

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