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物流不動産市場レポート
MARCH 2011 84
る。 二〇一二年以降については複数の開発案件
が顕在化する可能性もある。
二〇一一年前半は新規供給が集中するため平
均空室率が上昇する懸念があるが、大型物件へ
の底堅い需要により築浅物件を中心に稼働率は
高まっている。 今後の供給量を考えると需給バ
ランスが大きく崩れることは考えにくい。
近畿圏 空室率五・二ポイント改善
■中大型物流施設市況
アジアを中心とした輸出入貨物の増加やメー
カー各社の生産回復を受けて、物流施設の稼働
状況は徐々に回復に向かっている。 依然として、
物流コスト削減圧力は強く、物流業者の運営環
境は厳しい側面がある一方、荷主企業の拠点投
資の動きもでている。
大阪府の今期の平均募集賃料水準は、前期か
特別編
三大都市圏
物流施設マーケット動向分析
シービー・リチャードエリス 鈴木公二 シニアコンサルタント
二〇一〇年下半期
シービー・リチャードエリスは一月、インダストリアルマーケットレポート
を発表した。 首都圏、近畿圏とも平均空室率は大きく改善し、テナントの動
きも活発化していることが明らかになった。 賃料水準は、一部エリアで上昇に
転じたものの、全般的には弱含みでの推移となっている。
首都圏
賃料水準は弱含み
■中大型市況
企業の業績回復を受けて、上場企業を中心に
拠点の再編等による引き合いが増加傾向にある。
新規開設等の前向きな動きも見られ始めている。
募集賃料水準については、東京都で対前期
比マイナス一・一%、千葉県で同マイナス二・
七%、埼玉県で同プラス四・九%、神奈川県で
同マイナス一・九%という結果となった(図1)。
埼玉県ではプラスに転じ下落基調に歯止めがか
かった感はあるが、他のエリアでは下落率は縮
小しつつも弱含みでの推移となっている。
テナントの動きとしては、食品、衣料品とい
った内需型企業による動きが多く見られ、統廃
合による物流効率化や、移転によるコスト削減
等の動きが中心となっている。
■大型マルチテナント型物流施設市況
平均空室率は、二・二ポイント低下し十一・
五%となった(図2)。 空室率を押し上げる要
因となっていた築浅物件の空室消化が進んだこ
と、新規供給物件が無かったことで空室率は改
善している。 また、今期は内部テナントの館内
増床により、稼働率が上昇する施設が目立った
(図3)。
一方で、エリア間による格差も見られる。 千
葉湾岸部等では堅調な需要により空室はほぼ消
化されてきているが、神奈川湾岸部等では空室
消化に苦戦する物件も見られている。
今後の新規供給としては、二〇一一年は前半
に数棟の新規供給予定があるものの、年間を通
じては限定的である。 ただ、既存物件の空室消
化が進んだことで、今まで様子見の状況であっ
た不動産投資会社は開発、購入意欲を高めてい
85 MARCH 2011
図2 首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率【空室率算出基準(調査棟数:49 棟)】
既存物件:2009 年12月以前に竣工した物流施設
地域:千葉県・東京都・埼玉県・神奈川県、 延床面積:10,000
坪以上、 竣工:既竣工物件、 空室確認方法:ヒアリングによる、
建物形態:原則として、開発当時において複数テナント利用を
前提として企画・設計された建物であること
※今期首都圏で調査対象となった50 棟については、上記算出基
準により抽出したものであり、必ずしも物流施設ストック全体の需
給バランスを示したものではない
(%)
04
年3月
04
年6月
04
年9月
04
年1
2月
05
年3月
05
年6月
05
年9月
05
年1
2月
06
年3月
06
年6月
06
年9月
06
年1
2月
07
年3月
07
年6月
08
年3月
08
年6月
08
年9月
08
年
12
月
09 年
3
月
09
年6月
09
年9月
09
年1月
10
年3月
10
年6月
10
年9月
10
年
12
月
07
年9月
07
年1
2月
20
15
10
5
0
図3 首都圏の稼働床面積(指数)( 2004/03=100)
04
年3月
04
年6月
04 年
9
月
04
年1
2月
05
年3月
05
年6月
05
年9月
05
年1
2月
06
年3月
06
年6月
06
年9月
06
年1
2月
07
年3月
07
年6月
08
年3月
08
年6月
08
年9月
08
年
12
月
09
年3月
09
年6月
09
年9月
09
年1月
10
年3月
10
年6月
10
年9月
10
年
12
月
07
年9月
07
年1
2月
350
300
250
200
150
100
平均空室率既存物件空室率
15.3 15.3
13.7
8.3
11.5
11.5
12.4
9.9
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
3.0
2.0
1.0
0
-1.0
-2.0
-3.0
2006年
賃料水準
変動率
(円/坪)
2007年2008年2009年2010 年
上期
2010年
下期
東京都
図1 首都圏の中大型物流施設の平均募集賃料
4,500
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
8.0
6.0
4.0
2.0
0
-2.0
-4.0
-6.0
-8.0
-10.0
2006年
賃料水準
変動率
(%) (円/坪) (%)
(%) (%)
2007年2008年2009年2010 年
上期
2010 年
下期
千葉県
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0
-2.0
-4.0
-6.0
-8.0
-10.0
2006年
賃料水準
変動率
(円/坪)
2007年2008年2009年2010 年
上期
2010年
下期
埼玉県
4.0
2.0
0
-2.0
-4.0
-6.0
-8.0
2006年
賃料水準
変動率
(円/坪)
2007年2008年2009年2010 年
上期
2010 年
下期
神奈川県
4,500
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
変動率
賃料水準
5,530
-2.3
5,680
2.7
5,640
-0.7
5,620
-0.4
5,540
-1.4
5,480
-1.1
変動率
賃料水準
3,770
5.9
3,850
2.1
3,990
3.6
3,640
-8.8
3,770
3.6
3,670
-2.7
変動率
賃料水準
4,050
7.7
4,160
2.7
4,070
-2.2
3,850
-5.4
3,470
-9.9
3,640
4.9
賃料水準 変動率
4,790
-4.2
4.590
0.7
4,620
1.9
4,710
-6.4
4,410
-6.8
4,110
-1.9
出所:シービー・リチャードエリス
ら六・一%下落しており、全体的には借手優位
の状況が続いている(図4)。 市場競争力のあ
る施設は賃料水準を維持する一方、競争力に劣
る施設では、集約統廃合等による空室発生が引
き続き見られ、オーナーサイドは柔軟な対応を求
められている。 賃料水準は全体的な底上げには
至らず、空室消化に向けて実質ベースでの募集・
成約賃料はともに弱含みでの推移となっている。
■大型マルチテナント型物流施設市況
平均空室率は、五・二ポイント低下し七・四%
と大幅に減少した(図5)。 空室消化が着実に
進んだことに加え、水面下で動いてきた大型契
MARCH 2011 86
物流不動産市場レポート
約が特需的に決まったことに起因している。
また、竣工後一年以上の既存物件の空室率に
ついても、大型マルチタイプの新規供給が二年
近く行われてきていないため、同数の五・二ポ
イント低下し七・四%となった。
景気回復基調の中、競争力を有する優良物件
においては満室稼働の継続や稼働率アップが進
んでいる(図6)。 空室が長期化していた物件に
ついても、物件毎に稼働率に格差は見られるも
のの、空室消化が徐々にではあるが進んできて
いる。 今後、当期同様の集中的な空室消化は見
込めないが、当面は具体的な大型新規供給予定
がないため、更なる空室率の改善が期待される。
中部圏 賃料水準は二極化
■中大型物流施設市況
地域経済の回復は全国的な比較からすれば遅
れはあるものの、生産・輸出入貨物の増加な
ど景気回復へ徐々に兆しが見え始めている。 今
期は、企業の動きが鈍かった前期までと比べて、
前向きな需要は増えてきているが、物流コスト
削減を背景とした拠点再編・集約の動きが引き
続き中心となっている。
賃料動向をみると、対前期比でマイナス〇・
七%となっており、前期から微減となっている
(図7)。 集約統廃合等に起因する空室の増加・
長期化に伴い、募集・成約賃料水準とも下落傾
向にあり、当面は同様に推移するものと思われ
る。 物件ごとに様相が異なり賃料水準も二極化
する傾向にあるが、市場競争力に劣る施設につ
いては空室の長期化、賃料下落が目立つ。
図5 近畿圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率
【空室率算出基準(調査棟数:12 棟)】
既存物件:2009 年12月以前に竣工した物流施設
地域: 大阪府、兵庫県、延床面積:10,000 坪以上、 竣工:既竣工物件、
空室確認方法:ヒアリングによる、建物形態:原則として、開発当時におい
て複数テナント利用を前提として企画・設計された建物であること
※今期関西圏で調査対象となった12 棟については、上記算出基準により抽
出したものであり、必ずしも物流施設ストック全体の需給バランスを示したも
のではない
(%)
(%)
(%)
06
年9月
06
年1
2月
07
年3月
07
年6月
08
年3月
08
年6月
08
年9月
08
年
12
月
09
年3月
09
年6月
09
年9月
09
年1月
10
年3月
10
年6月
10
年9月
10
年
12
月
07
年9月
07
年1
2月
35
30
25
20
15
10
5
0
図6 近畿圏の稼働床面積(指数)( 2006/9=100) 図7 愛知県の中大型物流施設の平均募集賃料
06
年9月
06
年1
2月
07
年3月
07
年6月
08
年3月
08
年6月
08
年9月
08
年
12
月
09
年3月
09
年6月
09
年9月
09
年1月
10
年3月
10
年6月
10
年9月
10
年
12
月
07
年9月
07
年1
2月
400
350
300
250
200
150
100
平均空室率既存物件空室率
2006年
賃料水準
変動率
(円/坪)
2007年2008年2009年2010 年
上期
2010 年
下期
図4 大阪府の中大型物流施設の平均募集賃料
20.0
15.0
10.0
5.0
0
-5.0
-10.0
-15.0
-20.0
4.0
2.0
0
-2.0
-4.0
-6.0
-8.0
2006年
賃料水準
変動率
(円/坪)
2007年2008年2009年2010 年
上期
2010 年
下期
4,500
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
変動率
賃料水準
3,970
1.3
4,060
2.3
3,990
-1.7
3,700
-7.3
3,590
-3.0
3,370
-6.1
変動率
賃料水準
3,570
15.5
3,250
-9.0
3,370
3.7
2,890
-14.2
2,710
-6.2
2,690
-0.7
16.3
14.7
12.6
7.4
|