2011年4月号
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「規制緩和後の物流行政の役割とは」国土交通省 尾関良夫 政策統括官付参事官(物流施設・複合物流担当)

APRIL 2011  2 性をとりながら、二つの計画を両輪 として進められていくことになるは ずです」 ──モーダルシフトはこれからの目玉 の一つになりそうです。
JR貨物には、 かなりの追い風になるのでは?  「モーダルシフトは従来から物流行 政の中心施策の一つでした。
それに 加え平成二三年度以降、JR貨物の 設備増強や機関車の更新などに総額 で八九〇億円程度の国費を注ぎ込む ことになります。
これまでよりも一 歩踏み込んだ支援を行うことになる」 ──保護行政が復活し、中曽根康弘 内閣以来の規制緩和政策が揺り戻さ れることになりませんか。
 「ご存じのようにトラック運送事業 については昨年組織された『トラッ ク産業ビジョン検討会』で最低車両保 有台数や適正運賃収受に関する話し 合いが進められています。
(二〇一一 年夏までに最終報告書をまとめ、今 年度中の制度実施が予定されている)」  「しかし私の担当する倉庫事業と利 用運送事業については規制を強化し ようという話は出ていません。
一連 の規制緩和政策で倉庫事業は許可制 から登録制に変わり、利用運送事業 は第一種が許可制から登録制へ、第 二種は輸送モード別に分かれていた のを統合して、従来の鉄道と航空に 「交通基本法」成立へ ──民主党が野党時代から念願とし てきた「交通基本法」が間もなく成 立する見込みです。
 「ちょうど今日(三月八日)、閣議 決定されました。
これから国会に法 案が提出されて審議に入るわけです が、他の予算との関係で審議の順番 がどうなるかという状態です」 ──法案が成立した場合、物流行政 にはどう影響してくるのでしょうか。
 「交通基本法は『基本法』ですから、 物流に関係する法律も含めた個別の 法律の上位に位置付けられることに なります。
その法案の中身を見ると、 そこで示されているのは大きくは三つ。
基本理念、国や自治体の責務のあり 方、そして『交通基本計画』を策定 することです。
このうち基本計画は、 交通に関する施策の方針や目標を定 めたものですが、そこに物流がどう 具体的に書かれていくかということが、 今後の物流行政を決定付けていくこ とになります」 ──基本計画の中身はどうやって決 まるのですか。
 「これから国交省の総合政策局が取 りまとめ役となって内容を詰めてい くことになります。
物流政策の指針 に関しては、基本計画に先だって省 庁横断で『総合物流施策大綱』を策 定していますので、それを基本計画 にどう取り組んでいくかというとこ ろがポイントになりそうです」 ──物流大綱は自民党時代の政策で す。
民主党の基本法とはかなり方向 性が違う。
 「確かに違いはあるでしょう。
しか し、少なくとも物流に関してはそれ ほど大きく変化するとは思えません。
大綱がうたっている『グローバル・サ プライチェーンの効率化』や『環境負 荷低減』、『安全の確保』などの方針 は基本法の理念と矛盾するものでは ありません」 ──短期的に変化はなくても、中長 期的には変わってくるのでは? 自 民党は国鉄を始めとする公共交通機 関の民営化を進め、道路整備中心、 モーターリゼーションを促進する立場 でした。
それに対して民主党には反・ 民営化、反・モーターリゼーションの 傾向が見られます。
 「その辺りはよく分かりません。
そ れでも現政権下では交通基本法の制 定と並行して、社会資本整備の見 直しも進められていますので、物流 の基本計画も社会資本整備のあり方、 つまり道路や港湾の整備計画と整合 国土交通省 尾関良夫 政策統括官付参事官(物流施設・ 複合物流担当) 「規制緩和後の物流行政の役割とは」  物流業の規制緩和が進み、許認可行政や需給調整はその使命 を終えた。
今後は安全の担保と並んで、ビジョンを掲げ、その実 現に向かって産業を振興することが物流行政の役割となる。
3 PLの普及、アジア市場の深耕、JR貨物の利用促進などが具 体的なテーマとなっている。
      (聞き手・大矢昌浩) 3  APRIL 2011 海運を加え、審査要件も緩和したわ けですが、それを巻き戻そうという 動きはない」 ──規制緩和が進んだことで改めて 物流行政に何ができるのかが問われ ています。
 「確かに許認可が残っていた時代に は、制度を調整することで、新しい サービスや業態を生み出すこともで きたわけですが、今はそういうこと はできない。
規制緩和後の物流行政 の役割は、一つは安全の確保ですが、 それと並んで行政として良いと判断 したことを、どうやって振興してい くかということが大事になると考え ています」  「といっても、行政の持っている手 段としては結局、規制、予算、税制、 あるいは顕彰などの無形の支援しか ないわけです。
それを上手く組み合 わせて何ができるのか、どのような 手段があるのかを考えていく必要が あります」 ──税制面での支援というのは。
 「例えば平成一七年施行の『物流総 合効率化法』は、効率的な倉庫を作 った場合に固定資産税を半分にして、 特別な減価償却を認めるという内容 の優遇税制です。
こうした税制改正 は各省から財務省に要望し、最終的 には国会で改正税法が成立して実現 やインテグレーターが覇権を握ってい ます。
各地の有力フォワーダーがイン テグレーターに次々に買収されていき ました。
いずれ日本も同じ道を辿る 恐れは。
 「インテグレーターの商売は今もエ クスプレスが中心です。
個人も含めた 顧客に対して規格の決まった輸送商 品を売っている。
一方、日本のフォ ワーダーは特定の法人向けに輸送を アレンジする、サプライチェーンを組 み立てる仕事がメーンですから、棲 み分けができている。
欧米インテグレ ーターによって日本のフォワーダーが 駆逐されるということにはならない と考えています」  「そうは言っても、日本のフォワー ダーにはもっとアセアンや中国で活 躍して欲しい。
荷主が日系だけとい うのでは寂しい。
欧米インテグレータ ーと比べるとアジア展開のレベル、現 地進出の迫力には今のところ相当な 開きがあります。
アジアは今後の成 長が期待できる市場ですから、もっ ともっと日本のフォワーダーに出てい ってもらいたい。
フォワーダーチャー ターの規制緩和などオープンスカイ政 策も積極的に利用して欲しい。
行政 としても『日中韓物流大臣会合』の 枠組みなどを利用して事業者のアジ ア展開を支援していきます」 するわけですが、税の優遇はある意 味公平性を崩すことになりますから、 その正当性と有効性を説得力を持っ て説明することが我々の役割になり ます」 ──尾関参事官が担当されている「物 流施設」の分野では二〇〇〇年代に 入って以降、物流不動産ファンドが 急速に台頭しました。
どう評価され ていますか。
 「安全で環境に優しい倉庫施設を作 ってくれるのであれば、自分で倉庫 を建て自分で運営するという従来型 の倉庫事業者であろうと、物流不動 産ファンドであろうと、我々にとって は変わりはありません」 ──倉庫スペースの供給が増えすぎて しまうことについては?  「規制緩和の思想はまさに需給調整 を行政がやらないということですから、 民間の競争に任せますし、行政とし てはその手段も持ち合わせていませ ん」 3PLの普及を支援 ──この分野で行政は何を「良い」 と判断しているのでしょうか。
 「先ほどの『物流総合効率化法』は 別名、『3PL新法』とも呼ばれてい るように、3PL事業者が使いやす いような施設、保管だけでなく荷役 や流通加工に適した施設を増やして いこうという発想に基づいています。
つまり3PLを日本にも上手く根付 かせていくことを念頭に置いて作ら れた法律なんです」  「3PLには資産を所有するアセッ ト型と資産を持たないノンアセット型 があります。
そのどちらを選ぶかは 個々の事業者が経営戦略として選ぶ わけですが、これまで日本に少なか ったノンアセット型でもそれで効率が 上がるのであれば、社会的にはプラ スですので、物流不動産ファンドの 施設が増えていくことも3PLの選 択肢が増えるという意味から歓迎し ています」 ──3PLで使う倉庫は通過型がメ ーンであって、その担い手としては 倉庫業者よりもむしろトラック事業 者のほうが目立っています。
しかし 3PL事業を手がけるトラック事業 者のなかには営業倉庫の要件を満た していないところも多い。
既存の倉 庫会社には不満があるようです。
 「倉庫業法はもともと他人の荷物を 預かることを前提としていますから、 通過型であれば対象にはなりません。
通過型倉庫をあえて規制する必要も 今のところは感じていません」 ──もう一つの担当の『複合物流』 について。
欧米の航空貨物市場は今

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