ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年5号
特集
第1部 その時あの人はどう動いたか荷主企業──医薬品流通に学ぶ止めない物流

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MAY 2011  26 手作業で現場を復旧  「震災直後、医薬品メーカーではモノがあっても 東北の卸の拠点まで持って行けないところが多か った。
しかしそうしたメーカーでも首都圏や近畿 の卸拠点に医薬品を納品し、卸さんの社内便を通 じて被災地への供給責任を果たすことができた」。
大手医薬品メーカーの物流担当者はそう振り返る。
 医薬品卸大手のアルフレッサホールディングスで は今回の震災で、グループの小田島(岩手県花巻 市)の物流センターが停電し、恒和薬品(福島県郡 山市)の物流センターの天井が損傷した。
それでも 両センターは手作業で営業所などへの出荷を続けた。
 ただし、メーカーからの入荷が滞れば在庫がすぐ に底をついてしまう。
そこでグループの中核事業会 社、アルフレッサの埼玉の物流センターでもメーカ ーからの東北向けの貨物を荷受けすることにした。
 埼玉から東北へは、臨時にトラックを手配して 輸送した。
それとは別に埼玉から群馬の物流セン ターに貨物を運び、そこに東北二社の車両が取り に来るルートも並行して走らせた。
「グループで連 携し、あらゆる手段を使って供給を続けた」(アル フレッサHD)という。
 同様に東邦ホールディングスでは、中核事業会社 の東邦薬品が福島県に置く物流センター「TBC 本宮」の天井が崩落した。
第一報が入ったのは震 災当日の十七時頃。
即座に災害対策本部と物流本 部、情報システム部門が打ち合わせて、「TBC東 京」と「TBC大宮」でTBC本宮のすべての機 能を代替することを決めた。
 といってもTBC東京もTBC大宮も無傷だっ たわけではない。
強い揺れのために保管棚から医 薬品が落下し、フロアに散乱している状態だった。
 
圍贈壇豕では安全確認を終えた同日十八時頃、 復旧作業に着手。
センター内のスタッフに加え本社 や営業所などの社員が応援に入り、総出で不眠不休 の作業を続けた。
散乱した在庫から一つひとつ、破 損しているものを除き、およそ二万二〇〇〇品目に 上る医薬品をすべて手作業で保管棚に戻していった。
 保管棚への収納を終えた後は棚卸しを行い、再 度不良品がないか商品の状態をチェックした。
翌 十二日の十五時までに、実在庫を把握してシステ ム上の在庫と一致させるところまでこぎ着けた。
 
圍贈壇豕で陣頭指揮を執っていた有留逸郎執 行役員物流本部長は「非常事態だからこそ、棚卸 しまできっちりやらなければ混乱が長引き、後々 致命的なことになりかねないと考えた」と語る。
 一方、システム部門は災害対策本部、物流本部と 連携しながら、WMSに受注データが流れるよう、 基幹システムの切り替え作業を完了させていた。
 
圍贈壇豕では棚卸しの終了後、即座に出荷作 業に取りかかり、十三日夜に東北への第一便のト ラック二台を送り出した。
トラックは十四日の午前 中から昼過ぎまでに各営業所への配送を終了した。
 東邦HDは、一九九五年の阪神大震災をきっか けに災害対策の強化に取り組み、情報システムや  これだけの災害でも医薬品の供給は止まらなかっ た。
中間流通の大再編を生き残った大手卸4社の物 流力が発揮された。
阪神大震災時の教訓を活かした 防災体制と、全国を網羅するネットワークを駆使し て、震災のわずか2 日後には被災地への供給態勢を 整えた。
              (梶原幸絵) 荷主企業 ──医薬品流通に学ぶ止めない物流   東邦ホールディングスの 有留逸郎執行役員物流本部長 第1 部 その時あの人はどう動いたか 特 集 3・11どうなる物流 27  MAY 2011 センターの機能を切り替えるための仕組みを構築し てきた。
年に一回、物流センターの被災を想定し た訓練も実施し、基幹情報システムの切り替えテス トも行っている。
 また今回の震災で災害対策の仕組みがスムーズ に機能したのには、東邦HDのこれまでの歴史に よるところも大きい。
他の大手卸が買収や合併に より規模を拡大したのに対し、東邦HDは「やわ らかな絆」を掲げて地方卸と業務・資本提携する 「共創未来グループ」を結成。
仕入れや物流網、情 報システム、販促企画などを共同化し、時間をか けて合併・統合に移行するスタイルを採ってきた。
 各拠点の業務プロセスが既に統一されていたこと から、被災した物流センターや営業所を他の拠点 がバックアップする体制に、速やかに移行すること ができた。
有留執行役員は「共創未来は皆同じイ ンフラを共有した上で、合併時に営業所や物流セ ンターの統廃合を行ってきた。
被災した拠点の機 能を別の拠点に切り替えるということは、理論的 にはそれと同じこと」と説明する。
緊急輸送用に計一〇〇台のバイクを配備  今回の震災では、他の大手卸も東邦HD同様、 業務を停止した物流センターや営業拠点の機能を 別の拠点で代替し、医薬品の出荷を続けた。
しか し、被災地では瓦礫の山が積み上がり、至るとこ ろで道路網が寸断されている。
医療機関などへの 納品は困難の連続だった。
 そこでメディパルホールディングス傘下のメディ セオでは、五〇CCのバイクを活用した。
バイクで あれば瓦礫の中でも隙間を縫って運ぶことができ る。
同社は物流センターなどに計一〇〇台のバイク を配備し、いつでも使える状態にしていた。
 三月十一日夜、埼玉物流センターに置いていた 二二台のバイクを他の救援物資とともに輸送車両 に積み込み、宮城県の仙台市、大崎市、福島県い わき市の三支店に向けて出発させた。
輸送車両は 高速道路が通行止めだったため、下道を二〇時間 以上走って十三日、三支店に到着。
三支店ではバ イクが貴重な足になったという。
 こうして卸各社は窮地を無事凌いだが、電力不 足問題への対応にはいまだメドが立っていない。
 四月初旬まで実施されていた関東の計画停電で は、停電対象になった物流センターが大きく影響 を受けることになった。
センターでは停電時間の約 一時間前には業務を終了し、情報システムなどを シャットダウンするための準備を始めなければなら ない。
停電後、システムが立ち上がるまでに、ま た一時間程度かかる。
停電時間の三時間と合わせ て計五時間、センターの業務がストップした。
 「バックアップもあって出荷量が膨らんでいたと ころにTBC大宮に計画停電がきた。
本当に頭の 痛い問題だった」と東邦薬品の有留執行役員はい う。
同社を含め大手卸四社はセンターのスタッフの シフト変更や残業で対応したが、一部では首都圏 への納品が遅れることもあった。
 現在、政府は夏場に向けて、電力使用の総量規 制を検討しているが、具体的な内容が示されてい ないため、卸各社も対応を決めようがない。
 その中で、スズケンは現時点で可能な取り組みと して、埼玉県の戸田物流センター、神奈川物流セ ンター、千葉物流センターの管轄エリアを変更し、 三センターの取扱量を平準化する検討を進めてい る。
物量の多いセンターほど計画停電や総量規制 の影響が大きくなるためだ。
 現在、三センターの取扱量は、戸田、神奈川、千 葉の順になっている。
戸田センターは主に埼玉県と 東京都、神奈川センターは神奈川県、千葉センタ ーは千葉県と茨城県をカバーしている。
 戸田物流センターから東京都全体に供給してい るのを、東京都東部は千葉物流センター、西部は 神奈川物流センターからの供給に改めるといった対 応を考えているという。
本番系(東京) 被災(仮) 待機系(大阪) 全国の営業所および物流センター ●基幹情報システムと同様、物流センターも切り替えが可能 ●東邦HD は基幹情報システムのデータセンターを2 カ所に  置き、災害時に切り替え可能な体制をとっている 緊急切替! TSS 大阪 各センターの供給管轄営業所 TBC 本官TBC (大宮) TBC (東京) TBC (大阪) TBC (岡山) TBC 被災 (九州) 基幹システム

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