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MAY 2011 48
特 集 3・11どうなる物流
空室率五・三ポイント改善
東日本大震災による影響は首都圏の物流施設マ
ーケットにも及んでいる。 今期(二〇一一年三月
期)の大型マルチテナント型平均空室率は、前期
(一〇年十二月期)から五・三ポイント低下し六・
二%と大幅に低下した。 これは、〇七年十二月期
(五・三%)以来の低水準だ。
今回の地震による施設への被害は、機械設備の
損傷の他、湾岸エリアを中心とした液状化現象によ
る建物の一部損壊が報告されている。 これらの震
災を要因とした緊急避難的な需要が急増した。 新
規需要の約八〇%が契約期間六カ月以下などの短
期契約で占められている。 テナントの主な移転事
由は、倉庫内設備の損傷によるものの他、荷崩れ
によるスペースの確保、滞留在庫の増加による増
床等が挙げられる。
賃料水準については、震災前の時点では、大型
物件への堅調な需要により空室が消化されてきた
ことで賃料の下方調整も一巡した感があった。 震
災後については、空室は一層減少したが、現時点
では賃料に大きな変動は見られてはいない。
需要動向を示す稼働床面積(指数)については、
しばらく微増での推移を続けていたが、今期は大
きく伸張した。
今後の物流マーケットについては二つのケースが
考えられる。 既存施設の破損の改修が遅延すれば、
短期契約から長期契約への移行や、既存施設から
の集約といった拠点の見直しが進むことで、大型
優良物件が品薄状況になり、賃料がプラスに反転
する可能性がある。
一方で、震災による一時的な需要が終息し、消
費の停滞による物流施設需要全体が減退するよう
な状況になれば空室率は上昇し、当面賃料が反転
しないという可能性も考えられる。
来期(一一年六月期)に二棟・六万坪程度の新
規供給があるものの、依然として今後の新規供給
量の水準は低いため、現時点では大幅な需給の悪
化は考えにくい。 震災の影響が落ち着く三〜六カ
月後の短期契約の終了時などのタイミングでは、テ
ナントの動向が注目される。
首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率
20
15
10
5
0
(%)
稼働床面積(指数)
出所:シービー・リチャードエリス
400
350
300
250
200
150
100
(2004/3=100)
(指数)
【空室率算出基準(調査棟数:52棟)】
既存物件:2010年3月以前に竣工した物流施設
地域:千葉県・東京都・埼玉県・神奈川県、延床面積:10,000坪以上、竣工:既竣工物件、空室確認方法:ヒアリング
による、建物形態:原則として、開発当時において複数テナント利用を前提として企画・設計された建物であること。
※今期首都圏で調査対象となった52棟については、上記算出基準により抽出したものであり、必ずしも物流施設ス
トック全体の需給バランスを示したものではない
04
年3月
6月
9月
12
月
05
年3月
6月
9月
12
月
06
年3月
6月
9月
12
月
07
年3月
6月
12
月
08
年3月
612
月
09
年3月
612
月
10
年3月
6月
9月
12
月
11
年3月
07
年3月
6月
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12
月
08
年3月
6月
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12
月
09
年3月
6月
9月
12
月
10
年3月
6月
9月
12
月
11
年3月
5.6
9.9
13.7
15.3
12.4
11.5 11.5
9月
12086
月
9月
12096
月
9月
既存物件空室率
平均空室率
6.2
シービー・リチャードエリスは2011 年3 月期の
首都圏大型マルチテナント型物流施設の空室率を
発表。 前期から5.3ポイント改善し、6.2%となった。
震災の影響で緊急避難需要が急増したことが要因
だ。 6 カ月以下の短期契約が新規需要の80%を占
めている。
シービー・リチャードエリス 鈴木公二 シニアコンサルタント
首都圏で緊急避難需要が急増
第2部 これから物流に何が起きるのか
倉庫 物流不動産市況の行方を読む
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