ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2011年5号
SOLE
海上自衛隊第三術科学校を見学──隊員を短期に戦力化する教育とは

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SOLE 日本支部フォーラムの報告 The International Society of Logistics MAY 2011  82  
咤錬味兎本支部三月のフォーラ ムでは、現場見学会として海上自衛 隊第三術科学校を訪問した。
ロジス ティシャンの養成はロジスティクス・ マネジメントにおける主要なテーマの 一つである。
隊員を短期に戦力化す る教育とはどのようなものなのか。
教 育に力を注ぐ海上自衛隊の姿を紹介 する。
(SOLE日本支部会員・川上 智) 航空機整備員・基地員を養成  海上自衛隊には各職種の職務に従 事するために必要な知識・技能の教 育を行う「術科学校」が全国に四校 置かれている。
その中で、千葉県の 下総航空基地内に所在する第三術科 学校は主に航空機の整備員と航空部 隊の基地員(施設・地上救難[注] ・警 備・写真)を養成している。
同基地 は千葉県北西部の柏市、松戸市、鎌 ケ谷市、白井市の間に位置し、敷地 面積はほぼ皇居と同じ広さに相当す る二五〇万平方メートルである。
 同校の歴史は昭和三四年(一九五 九年)に開隊した白井術科教育隊に 始まる。
二年後の昭和三六年二月に 第三術科学校として開校し、今年で 創立五〇周年を迎えた。
現在、学校 長を中心に副校長以下、五部二〇課 の教官約三五〇人で編成され、年間 約一七〇課程(期間:一カ月〜一年) で約一四〇〇人の学生を教育してい る。
[注]地上救難は、航空機に対する地上 での消火活動や航空機搭乗員の救 助を主要な任務とする。
八課程中心に幹部・曹士教育  航空機の整備員と航空部隊の基地 員に対する教育体系は、幹部の教育 体系と海曹士の教育体系の大きく二 つに分かれる。
航空機の整備につい て言えば、幹部は主に作業管理や信 頼性管理、研究開発、計画策定など に就く管理職であり、海曹士は主に 整備作業や航空機上での機器の操作、 幹部の補佐などを実施する作業職で ある。
 海上自衛隊としての幹部の教育体 系は、主に幹部候補生課程、幹部予 定者課程、幹部専門課程、幹部専修 科課程、幹部中級課程、指揮幕僚課 程、専攻科課程、幹部特別課程、高 級課程から成っており、そのうち第 三術科学校で教育しているのは、 ■幹部専門課程:航空機整備等に関 わる幹部としての素養を身につけ る課程 ■幹部専修科課程:エンジンや機器 等に関わる専門的な知識と指揮能 力を身につける課程 ■幹部中級課程:航空機整備や造修 全般等に対する知識・技能を教育 し、組織の中核となる指揮管理能 力を身につける課程 ■専攻科課程:専門知識に基づく高 度な研究を行い幹部指導者として の資質を身につける課程 の四つである(図1)。
 一方、海曹士の教育体系は、主に 練習員課程、海曹候補士課程、海士 特技課程、海曹士専修科課程、海曹 特技課程、上級海曹課程となってお り、そのうち第三術科学校で教育し ているのは、 ■海士特技課程:航空機整備等の基 礎を理解し、整備の基本を身につ ける課程 ■海曹士専修科課程:エンジン・機 器等の専門的な知識・技能を身に つける課程 ■海曹特技課程:航空機整備等の作 業の中核として必要な知識・技能 を身につける課程 海上自衛隊第三術科学校を見学 ──隊員を短期に戦力化する教育とは 3 等海尉〜2 等海尉1 等海尉3 等海佐1 等海佐 幹部候補生 課程 (約8 カ月〜約1 年) (幹部候補生学校) (幹部学校) (幹部学校) 幹部予定者 課程 (約4 カ月) (6 課程) (18 課程) 幹部中級 課程 (約44 週) 高級課程 (約1 年) 幹部特別 課程 指揮幕僚 課程 (約1 年)(3 週) 専攻科課程 (約1 年) 幹部専門 課程 (約10〜26 週) 幹部専修科 課程 (約5 週〜17 週) 図1 幹部自衛官の教育体系。
第3術科学校には幹部専門課程、幹部専修科課程、 幹部中級課程、専攻科課程を設置 83  MAY 2011 これによる教 官の省力化も 進んでいる。
 実習の教材 には実際の航 空機の操作性 を確保しなが ら、実機では 見ることので きない航空機 内部の動きが 操作と連動し て確認できる コンピュータ を使用してお り、高度で複 雑な航空機の 作動原理を視 ■上級海曹課程:幹部を補佐できる 管理能力及び部下指導のための知 識・技能を身につける課程 の四つである(図2)。
座学、実習に加え実践的訓練  第三術科学校における術科教育は、 座学による知識教育と教材実習によ る技能教育、実機実習による実践教 育の三つの流れで構成されている。
こ の術科教育にくわえ、自衛隊に必要 な集団行動のための各種訓練や内務 指導及び鍛錬活動を併せて第三術科 学校の教育が成り立っている。
 座学では近年、E─ラーニング教材 の活用による学生個人ごとの学習進 捗にあわせた知識教育を進めており、 海 士3 等海曹1 等海曹 練習員課程 自衛官候補生 教育 (15 週) 海士特技課程 (約12〜 18 週) 海曹特技課程 (約12〜 26 週) 海曹士専修科各課程 上級海曹課程 (約4 週) 海曹候補士 課程 (15 週) (教育隊) (2 カ月) 初任海士の部隊実習 7 課程 27コース( ( 8 課程 28コース( ( 1 課程 5コース( ( 図2 海曹士の教育体系。
第3術科学校には海士特技課程、海曹士専修 科課程、海曹特技課程、上級海曹課程を設置 座学ではパソコンを利用した教材の 活用が進んでいる 「実機実習」は実務と同様の環境で 行う 「教材実習」の様子。
高度で複雑な 航空機の作動原理を習得する 航空機事故などを想定し、地上での 消火活動や搭乗員の救助を学ぶ「地 上救難実習」 MAY 2011  84 航空写真技術などの教育が実施され ている。
 第三術科学校の教育理念は「腕に 実力、心に自信」である。
これを支 える教官たちは皆、同校が海上自衛 隊における航空機の整備と航空基地 の維持管理に関する術科教育の中枢 であるとの自覚を持ち、平時、有事 を問わず実動の自衛隊を支える隊員を 育成することを目標としている。
学 生が実力を身につけ、心の支えとな る同僚、先輩、後輩を得ることがで きるよう日夜教育に励んでいる。
わたっている。
基地員に対する教育 では、施設に関する道路施工等、地 上救難に関する消火法・人命救助法 等、警備に関する徒手格闘技等及び による教育を実施しており、最終的 な即戦力養成の手段としている。
 また、同校の教育分野は既に述べ た航空機の整備のほか非常に多岐に 覚的に技能習得できるように工夫さ れている。
 実機実習では、同じ基地内にある 航空部隊等の整備現場において実機 次回フォーラムのお知らせ  5月度のフォーラムは、5月17日 (火)JALエアロ・コンサルティングの 小林哲也常務による講演「民間航空機 の整備」を予定している。
このフォー ラムは年間計画に基づいて運用してい るが、単月のみの参加も可能。
1回の 参加費は6,000円。
ご希望の方は事務 局(s-sogabe@mbb.nifty.ne.jp)ま でお問い合わせ下さい。
※ S O L E︵The International Society of Logistics:国際ロジスティクス学会︶は一 九六〇年代に設立されたロジスティクス団体。
米国に本部を置き、会員は五一カ国・三〇 〇〇〜三五〇〇人に及ぶ。
日本支部では毎 月﹁フォーラム﹂を開催し、講演、研究発 表、現場見学などを通じてロジスティクス・ マネジメントに関する活発な意見交換、議論 を行っている。
のある第三術科学校を創り上げてい くことが﹁人造り全力!﹂である。
改革へのチャレンジ  昨年十二月に決定された新防衛大 綱の中で、防衛力については﹁動的﹂ という表現があり、その言葉の持つ意 義をめぐって様々な議論がある。
 海外派遣や災害派遣など海上自衛 隊の置かれた現状において目指す防衛  今回の研修では第三術科学校長との 懇談を持つことができた。
現第三術科 学校長、細谷正夫海将補の持つ教育に かける思いは次のとおりである。
人造り全力!  第三術科学校長の勤務方針である ﹁人造り全力!﹂は、航空機と航空基 地のロジスティクスを支える隊員の人 材育成にかける意気込みである。
 教官は指導者たる幹部、上級海曹 も含め学生や部下とともに一緒に汗を 流しながら若い後輩を鍛えていかなけ ればならない。
 常に自分の頭で考え、目的を見据 えて、広い視野と柔軟な独創性と健 全な判断基準に基づき論理的な思考 により自分で判断する。
そして可能 な限り業務を見直して削減・効率化 できるところは削っていかなければな らない。
 ﹁建前﹂でなく﹁本音﹂で勝負し、 常に部下・学生を育てる、鍛えると いう着意を忘れてはならない。
そして、 後輩に何が残せるのかを考え実行しな ければならない。
 こうして﹁やりがい﹂﹁生きがい﹂ 力整備を考えると、問題は今ある限 られたロジスティクス資源を与えられ た任務に如何に集中すべきかという点 にある。
かつ、部分最適化に陥るこ となく全体目的に対して、整合性の ある最適配分を図っていくことが重要 であると考えられる。
 そのため第三術科学校では、航空 整備員と航空基地員の術科教育の中 枢として防衛力整備の一翼を担ってい るという認識のもとに、改革へのチャ レンジに邁進している。
 現在の組織・業務を全面的に見直し、 無駄・不要不急・非効率な部分を削 るとともに、経費の節減及び組織の 機能集約等により業務のスリム化・効 率化を図っていく。
この結果生じた余 力を人的資源の充実や欠落・弱体機 能の強化及び新たな能力の確保等に配 分し、任務の多様化、事態の変化等 に柔軟・迅速に即応できる態勢の構 築を目指すのである。
 本校はこの一年間、改革に向けて の検討を進めてきた。
次の段階では、 検討結果を実行に移すことが必要と なる。
 東日本大震災に対する災害派遣で、 今はまさに自衛隊の真価が問われてい る時である。
国民の生命や安全を守る 海上自衛隊のさらなる活躍に期待し てもらいたい。
        ︵談︶

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