ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年6号
特集
第2部 B to C 物流の“新しい現実”

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JUNE 2011  16 B to C 物流の“新しい現実” LPGの専用車両が活躍  有機野菜などの食材の定期宅配を手掛けるオイシッ クスは震災後、北海道、東北地方、茨城県について 商品の配達・注文の受け付けを中止した。
それ以外 の地域でも交通網の混乱などにより、配送の遅延が 発生したもようだ。
オイシックスは商品をヤマト運輸 の宅急便で配送している。
宅急便のサービス停止や遅 延による影響をまともに受けた。
 しかし、食材宅配で先行する生協(生活協同組合) や、環境NPOを母体とするらでぃっしゅぼーやな ど、自社専用便による配送を主力としている会社は その間にも商品を顧客に届けていた。
 関東を中心とした一都九県、十一の地域生協(二 〇一〇年三月時点)が加盟するパルシステム生活協同 組合連合会(以下、パルシステム)、そしてらでぃっ しゅぼーやの食材宅配は、一週間単位で受発注サイ クルを繰り返すという共通点を持つ。
 利用者には決まった曜日に商品とともにカタログと 注文用紙が届く。
利用者はその一週間後に注文用紙 を提出し、さらにその一週間後に商品が届く。
これ に対して、オイシックスは宅急便を使うことで、利用 者の自由度を高めていた。
一週間サイクルの受発注 という基本は同じだが、配達日時・時間帯を指定で きる。
 しかし今回の震災では、宅配をアウトソーシングに 頼る脆さが露呈した。
宅配各社は、被害の大きかっ た東北地方や茨城県などで荷物の集配をいったん停 止した。
サービスが完全に回復し、全国の配送が正 常化するまでにおよそ二カ月程度を要している。
そ の間、通販会社は手の打ちようがなかった。
 しかし、専用車両による配送では対策をとること ができた。
パルシステムでは、環境負荷低減の一環 として、LPG車の導入とセンターでのLPGスタン ドの設置を進めていたことも幸いした。
ガソリンや軽 油と比較してLPGは比較的安定した供給が続いて いた。
LPG車を最大限活用して配送の安定化に努 めた。
ガソリンについても加盟生協以外の生協とも 燃料を融通したため、配送が止まることはなかった。
 らでぃっしゅぼーやでも「今回の震災では、自社 便の優位性が出たと思う」(管理本部経営企画部広報 担当の益貴大氏)という。
 配送の遅延はほとんどなかった。
専用便の配送に 遅れが出たのは、震災発生当日の三月十一日、関東 の配送分のみ。
午後、配送の真っ最中に地震と交通 渋滞が起こったため、通常であれば一九時〜二〇時 には配送を終えるところが深夜までかかり、センター に車両が帰着したのは翌十二日だった。
 三月一七日には自社専用車両によって被災地への 支援物資輸送を開始するところまでこぎつけた。
そ の後、最も懸念されたのは配送車両の燃料不足だっ たが、協力会社の活躍もあり、事なきを得た。
「協力 会社さんが本当にがんばってくれた。
どこから調達 してきたのかと思うほど(笑)。
当社と一体となって 是が非でも届けるという意識を持って対応してくれ た」(同)という。
 らでぃっしゅぼーやは北海道、東京、神奈川(厚木 市)、愛知、大阪、九州の物流センターのほか、「デ ポ」と呼ばれる仕分け拠点を千葉、神奈川(川崎市)、 静岡、京都に置いている。
センターから二トン車で概 ね半日圏内の地域を自社便の配送エリアとして、協 力会社一〇数社を組織して約三〇〇台の専用車を投 入している。
 それ以外の地域については宅急便を利用している  通販業界では震災後、東北向けの商品が出荷不能になり、 首都圏向けなどでも配送の遅延が多発した。
宅配会社のサー ビスが地震の影響を受けたためだ。
しかし、配送を宅配便に 依存せず、専用車による独自の配送ネットワークを持つ通販 業者は事業を継続していた。
         (梶原幸絵) 第2部 特 集 17  JUNE 2011 が、会員は一箱当たり六三〇円〜八四〇円の配送料 を支払う必要がある。
このため、会員一〇万五〇〇 〇世帯のうち、宅急便の配送エリアの会員は一〇〇 〇世帯前後に留まっている。
 らでぃっしゅぼーやの専用車もパルシステムと同様、 およそ五割はLPGまたはCNG車だ。
やはり環境 負荷の低減を念頭に導入したが、残り五割の車両は 軽油車両だった。
 各センターでは、当面は一日分の軽油を必ず確保 することを目標として情報を収集し、空いているス タンドがあればすぐに軽油を買いに行くなど現場で の地道な努力を続けた。
他地域からの調達も行った。
同社がデポを置く静岡県では首都圏に比べて燃料の供 給が安定していた。
そこで、神奈川センターなどか らの横持ちトラックの補助タンクを静岡で満タンにし て首都圏に戻し、二トン車用に小分けして使用した。
調達先の分散化を推進  商品調達も何とかクリアできた。
メーンの農産物は もちろん、水道水の放射能汚染で受注が増加したミ ネラルウォーターをはじめ、スーパーなどの実店舗で は品切れが続いていた牛乳や豆腐なども西日本など から調達し、品揃えを確保した。
 らでぃっしゅぼーやが東北地方で契約している調達 先のうち、約四〇の契約生産者・メーカーが被災し た。
道路網が寸断され、輸送の足も途絶えた。
震災 翌日の三月十二日から商品の調達先の安否確認を行 うと同時に、東北から仕入れていた商品の代替品の 確保に動いた。
 同社は全国約二六〇〇の生産者と約五〇〇社の メーカーから商品を仕入れている。
そのネットワーク を活用した。
野菜は天候により収穫量が大きく変動 する。
「商品が不足すれば補充するのが当たり前。
普 段からしていることなので、震災でも慌てずに対応 できた」と管理本部経営企画部の桂川繁樹氏は語る。
 生産者・メーカー同士の連帯感も強く、「Radix (ラディックス)の会」という互助会を一九九六年に 結成し、その後も交流活動などを続けてきた。
商品 の供給責任に対する意識を共有できていた。
 震災を教訓として、今後はミネラルウォーターや日 配品を中心に、調達先の分散化を進めていく方針だ。
野菜についても、新たな産地を開発していく。
野菜 の産地は西日本、関東、北海道が中心だ。
震災以前 は東北からの調達を増やす検討をしていたが、当面 は北海道からの調達に力を入れていくという。
 同時に今回の震災をきっかけとして、これから物 流センターの増設を積極化していく。
中長期的には 自社便での配送エリアを拡大していく考えだ。
 らでぃっしゅぼーやは昨年、九州に新センターを開 設している。
検討段階では、これまでのセンター運 営の経験から、少なくとも一〇〇〇〜一五〇〇世帯 の会員数が見込めるかを目安とした。
 九州では福岡を中心に宅急便で配送していた会員 が多かった。
またマーケティング調査では、同地域に は子育て層が多く存在し、食の安全・安心に対する 関心が高いという結果が出た。
生協などの宅配利用 者も多く、生鮮品の通販に対する抵抗感は少ないと 見て、センター設置を決めた。
 そうした基準に加えて、今後はリスク管理という 視点からも、センターの整備を検討するという。
「今 回の震災では、自社便だからこそ配送ができたとい うことを再認識した。
新センターの検討に当たっては、 自社配送エリアの拡大という意識も今後は持ってい きたい」(桂川氏)と考えている。
らでぃっしゅぼーやの専用車配送エリア ほぼ全域 市部 東京都23 区、神奈川県、愛知県、 大阪府、和歌山市、札幌市及び近郊地域、 福岡市及び近郊地域 東京多摩地区、埼玉県、千葉県、茨城県、 栃木県、群馬県、静岡県、山梨県、三重県、 岐阜県、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県 ※上記地区以外でも、一部配送できない場  合がある 北海道センター 首都圏センター 神奈川県センター 中部センター 大阪センター 九州センター

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