ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年7号
ケース
メガネトップ 3PL

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2011  48 新業態「眼鏡市場」の成功で躍進  「眼鏡市場」を主力として全国にメガネ販売 店をチェーン展開するメガネトップは二〇〇 二年十一月に一括物流を導入した。
本社を置 く静岡県に物流センターを設置。
3PL事業 者としてハマキョウレックスをパートナーに迎 え、それまでベンダー任せだった店舗納品を 改めた。
これによってメガネトップが物流を コントロールする体制に移行した。
 このとき二次元コード(QRコード)を駆 使した管理システムも構築した。
調達先メー カーなどに協力を依頼して、メガネトップの 一括物流センターに納品されるレンズやフレ ームに二次元コードを印字したラベルを添付。
物流センターの庫内管理だけでなく、製造段 階から店舗運営に至るサプライチェーン全域 を対象とするシステムである。
 同社は製造まで垂直統合するSPA(製 造小売業)を早くから意識してきた。
一九 九八年に福井県鯖江市のメーカー、キングス ターを買収。
フレームの自社生産に着手した。
さらには、メーカーに依存していたレンズ加 工を各店舗で手掛けるようにして、「即日加 工・即日渡し」を実現した。
 しかし、これだけでは足りなかった。
メガ ネトップは二〇〇〇年代半ばに利益率の急落 に見舞われる。
当時、急速に進んだ価格破壊 の影響だった。
新興メガネチェーンの「Zo ff(ゾフ)」が火付け役だ。
レンズの技術革 新やフレームの中国生産などを背景に、常識 破りの価格競争を仕掛けた。
 それまでメガネ一式を購入する値段は三万 円以上するのが当たり前だった。
それに対し てゾフは、ファッション性を重視したレンズ 付きメガネを五二五〇円、七三五〇円、九四 五〇円のスリープライスで販売。
〇一年二月 に初出店して旋風を巻き起こした。
 大手メガネ小売りチェーンも相次いで対抗 策を打ち出した。
メガネトップも〇一年六月 から低価格を売りにする新業態「ALOOK (アルク)」の展開を始めた。
その結果、売り 上げ規模は拡大したが、利益率は低下の一途 を辿ることになってしまった。
 その打開策としてメガネトップは、〇六年 一〇月に高機能のメガネを一律一万八九〇〇 円で売る新業態「眼鏡市場」を出店した。
こ のワンプライス戦略に手応えを得ると一気に 勝負に出た。
年間一〇〇店ペースの大量出店 と並行して、約一年半という短期間で既存店 の大半を新業態に衣替えしていった。
 競合他社は、このワンプライス戦略にも追  一括物流センターの運営をハマキョウレックスに全 面的に委託していた。
しかし、作業量に応じた料金 体系であるため、事業規模の拡大によるコスト効率 の改善効果を十分に享受できずにいた。
期待したほ どの改善提案も得られなかった。
荷主として現場運 営に一歩踏み込むことにした。
3PLパートナーを選び 直し、拠点を移管し、料金体系を改めた。
3PL メガネトップ 物流パートナーを切り替え拠点も移管 荷主自ら現場管理に踏み込みコスト削減 メガネトップの峰本明彦 ロジテック事業部長 兼EC事業部長 49  JULY 2011 随した。
しかし、消耗したのはライバルのほ うだった。
既存業態の一部で同様の価格戦略 を採ろうとした競合他社に対し、「眼鏡市場」 を集中展開したメガネトップのわかりやすさ が消費者に受け入れられた。
韓流スターを使 ったTVコマーシャルも奏功し、業界で独自 の立場を確立することに成功した。
 業界で?ひとり勝ち?の構図が生まれ、低 迷していた利益率はみるみる改善した。
その 後も出店攻勢はつづいている。
今や過去三〇 年以上にわたり業界の最大手として君臨して きた三城ホールディングス(「パリミキ」を展 開)の背中も見えてきた。
 巻き返しに成功した理由を、メガネトップ の牛島竜也経営企画部長はこう説明する。
 「当社の主力業態である『眼鏡市場』は、他 社が三万円、四万円で扱っている商品を一万 八九〇〇円で売っている。
『ALOOK』と は違って、むしろ専門店に近い。
機能性の高 い製品をお手頃な価格で販売することを、テ レビCMや全国展開する店舗を使って大々的 に訴求してきた。
最近はプライベートブラン ドの商品に力を入れており、すでに全体の七 割を占めるまでになっている」 作業量に応じた委託費を固定制に  「眼鏡市場」を集中展開するにあたり、メ ガネトップは物流体制の見直しにも踏み切っ ている。
自社センターを静岡から大阪に移管 し、物流パートナーもハマキョウから佐川グ ローバルロジスティクスに切り替えた。
 「ハマキョウさんとの契約は、作業量に応じ て変動的にコストが上がっていくという内容 だった。
この課金方法だと、『眼鏡市場』を 集中的に展開することで物量が増えれば、コ ストも膨らんでしまう。
これを見直すことで 物流コストを削減したかった」と、メガネト ップで物流部門と通販部門の責任者を兼務し ている峰本明彦ロジテック事業部長兼EC事 業部長は振り返る。
 物流事業者の立場で考えれば、作業量に応 じてコストが変動するのは当然だ。
しかしメ ガネトップは不満だった。
庫内作業のコスト をもっと下げられると思っていた。
そう考え る根拠があった。
 以前から同社は、店舗物流とは別に、通信 販売事業(EC事業)の物流を大阪市内で 管理していた。
小規模ながら物流拠点を構え、 ピッキングや梱包などの作業まで自ら手掛けて いた。
その経験から、物流センターでも「自 分たちが人を雇って手掛ければもっと安くで きる」(峰本部長)と考えていた。
 メガネトップの一括物流センターにおける 作業はシンプルだ。
レンズは一部メーカーの 委託在庫をセンター内で保管しているが、フ レームは在庫を持たずにすべて通過型で処理 している。
自社工場やベンダーから午前中に 納入される商品を順次、店舗別に仕分け、そ メガネトップの牛島竜也 経営企画部長 メガネ小売りチェーン2 強の 連結売上高の推移 メガネトップの連結業績および在庫水準の推移 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 600 500 400 300 200 100 0 1.6 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 99年 度 01 年度 03 年度 05 年度 07 年度 09 年度 11 年度 00 /8 01 /8 02 /8 03 /8 05 /3 06 /3 07 /3 08 /3 09 /3 10 /3 2006 年10 月「眼 鏡市場」の1 号店を 出店 売上高(億円)・営業利益(千万円) 棚卸資産回転期間(カ月) (億円) (予想) 三城ホールディングス メガネトップ ※メガネトップの04 年3月期は7カ月間の変則決算のため省略 売上高(億円) 営業利益(千万円) 棚卸資産回転期間(カ月) JULY 2011  50 の日のうちに宅配便で出荷する。
 自社工場や協力メーカーには、納入先の店 舗情報などを記載したラベルを事前に貼付し てもらう。
物流センターでは、まず二次元コ ードをスキャニングして入荷検品を施し、予 定通り納入されたかどうかをチェック。
これ をセンター内で店舗別に種まき式で仕分けて から、最後に出荷検品を実施する。
 店舗配送には宅配便を使っている。
全国に 約七〇〇ある店舗からは毎日、発注を受ける。
正月休みなどを除けばほぼ年中無休だ。
メガ ネのフレームやレンズは小さいため、一店舗 に届ける一日の物量はさほど多くない。
日常 をそう率直に説明する。
佐川グループに委託先を変更  そんなとき、大阪で通販事業の配送業務を 委託していた佐川急便の営業担当者から、通 販だけでなく店舗物流も一緒にやらせてほし いと提案を受けた。
作業量に応じた課金では なく、予想物量に沿って事前に作業人員を配 置し、実際の作業量にかかわらず人数分の経 費しか支払わないというメガネトップ側の望 む契約条件も飲むという。
 配送業務については複数の宅配事業者か ら見積りを取ったが、佐川急便の提案は納得 のいくものだった。
さらに大阪市内にある佐 川グループのターミナル一体型施設「大阪S RC」に入居すれば、翌日の午前中に全国の 店舗に必着させるのはもちろん、出荷締め時 間を最大限後ろ倒しにすることが可能になる。
センター作業から配送までを一元的に委託す ることが、メガネトップにとって有利な条件 を引き出すカギになった。
 サービスレベルを落とすことなく、コスト 的に動かす商材で一番かさばるのが、メガネ の販売本数と同じだけ必要なメガネケースだ。
ケースをまとめて送るとそれだけで一個口に なるが、フレームやレンズの補充だけなら一 店舗あたり一日一箱で足りる。
 しかも店舗に提供するサービス水準を高め るため、全国どこでも出荷した翌日の午前中 に着荷させることを原則としている。
北は北 海道の網走から、南は鹿児島県の鹿屋市まで、 沖縄県以外に点在する店舗にこの条件で配送 できるのは大手宅配事業者しかない。
 このため物流効率化の余地は、庫内作業 にほぼ限られていた。
しかし、その庫内作業 のコストに不満を感じていた。
同じ店舗向け なのに宅配便で二箱に分かれたまま発送する、 配送業者の集荷時間に間に合わなかった荷物 を二度に分けて出荷する。
そういったムダが 目についた。
それを改善するための3PLか らの提案もほとんどなかった。
 「当社も自分たちだけで物流の仕組みをつ くることはできなかったと思う。
ハマキョウ さんのノウハウを借りてセンター運営をして みたからこそ、いろいろなムダが見えてきた。
結局、物流現場にメガネトップの社員が一人 もおらず、運営を全面委託してしまったこと が、手つかずの部分を生み出す一因になった のではないか」。
 両者の関係が途切れた後で物流を担当する ようになったロジテック事業部の堀田勇樹マ ネージャーは、ハマキョウとの間に生じた齟齬 メガネトップの堀田勇樹 ロジテック事業部マネー ジャー 店舗別間口に種まきで仕分け 二次元コードを読み入荷検品 レンズの委託在庫をDCで保管 取引先が予めQRコードを貼付 佐川グループの大阪SRC にあるメガネトップの物流センター 51  JULY 2011 入先や店舗のPOSレジにまで導入済みのも のを全部入れ換えるとなると膨大な投資が発 生してしまうという理由が大きかった。
 二次元コードならではの利点も実感してい た。
コンタクトレンズなどではロット番号まで 商品と一体で管理できる。
また、一次元のバ ーコードより小さな面積で多くの情報量を扱 えることから、店舗で商品につけるタグを小 さくでき、スマートな展示が可能だ。
 何社かの提案を聞いたうえで、マテハンメ ーカーの村田機械の情報子会社であるムラタ システムをITパートナーに選んだ。
アプリケ ーションは事後的に改修できることから大幅 には手を入れず、まずはデータベースなどを 重点的に見直した。
こうして新しいWMSが 今年六月に稼働した。
 この間にもメガネトップの事業規模の拡大 を受け、「大阪SRC」で利用中のスペースは どんどん増えている。
入居当初は七階の一二 〇〇平方メートルほどに収まっていた。
 ここには、メガネトップの商品部がフレー ムの在庫などを管理する「商品センター」も 入居している。
物流センターで扱うフレーム は通過型で在庫は発生しないのだが、店舗間 の商品移動などで発生する在庫は商品部がこ こで管理している。
商品センターの運営につ いては、物流部門はノータッチだ。
 この商品センターの規模が膨らんできたこ ともあり、七階のスペースが狭隘化してしま った。
そこで〇九年秋に物流センターだけを 同じ建物の三階に移転した。
三階にはまだ増 床の余地が残されているため、「二〇一五年 に一〇〇〇店舗・売上高一〇〇〇億円」とい う経営目標を達成するまで対応できる。
 今後もオペレーションのローコスト化は追求 していく。
ロジテック事業部の堀田マネージ ャーは、「佐川さんとは適度な緊張関係を保 ちつつ、さらなるコスト削減を進めたい」と 手綱を緩める気配はない。
 もっとも既存の管理領域だけで物流コスト を下げていくのには限界がある。
現状では物 流センター以外に、商品部が管理する商品セ ンターや工場などに社内の物流機能が分散し ている。
これからは役割分担の見直しなどに よる効率化も視野に入れていく方針だ。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) を削減できると確信した同社は、物流コンペ を催すことなく決断を下した。
そして〇七年 五月にセンターを「大阪SRC」に移転。
庫 内作業は、メガネトップの監督下で佐川グロ ーバルロジスティクスが手掛けはじめた。
 二次元コードを使う庫内管理の情報システ ムは、センターの移転後もそれまでと同じも のを使いつづけた。
このシステムはハマキョウ の関係会社がメガネトップ専用に構築したも ので、ハマキョウが資産として保有していた。
残りのリース料をメガネトップが負担するとい う条件で譲渡してもらった。
 いずれは新システムを構築する方針だっ た。
センターの移転によってコスト削減を図 り、そこから新システムの開発費を捻出する。
実際、移転から一年ほどすると社内で検討を はじめた。
だが話はなかなか進まず、旧シス テムのまま約二年が経過した。
 活用技術の陳腐化などで、いよいよシステ ムの見直しが待ったなしになった。
当時はI T部門に所属して技術面からシステム刷新に 携わっていた峰本部長は、「見直すべきはW MS(倉庫管理システム)などのアプリケー ションより、もっと深層にあるプログラムの 構成技術やデータベースだった」と述懐する。
二次元コードを温存しシステムを刷新  物流システムに強い複数のITベンダーに 声を掛けて、いくつか提案を聞いた。
二次元 コードについては使いつづける道を選んだ。
仕 通販事業の物流 センターは自社 で運営している メガネトップの 従業員が現場の 作業まで担当

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