ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年8号
特集
物流不動産第1部 ファンドバブルは復活するか

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

押し寄せる投資マネーで市場再燃 特集 ファンドバブルは復活するか 巨額の資金が再び流入  プロロジスが一年で六〇〇億円規模、ラサールが 一年半で一〇〇〇億円〜一五〇〇億円、メープルツ リーが数年内に一〇〇〇億円、新規参入のレッドウッ ドが三年で一二〇〇億円──巨額の投資マネーが海 外から日本の物流不動産市場に流れ込もうとしている。
日本市場最大手のGLプロパティーズもまた、今年か ら日本で新規開発をスタートさせる。
年間数百億円規 模の投資を予定しているという。
 「まるで羊の群れのように、皆が同じ方向にいっせ いに動き出した」と、物流不動産開発コンサルティン グのベアロジのマシュー・ザン代表はいう。
同社には 現在、海外の投資家やファンドから日本の物流不動産 に関する問い合わせが数多く寄せられている。
 「従来はひたすらハイリターンを追い求めていた海 外投資家もリーマンショックを機にスタンスを修正し ている。
リスクの大きな新興国投資とのバランスを取 るうえで、安全性の高い日本の物流不動産が格好の 投資対象となっている。
一種の“バーベル戦略”(リ スクの異なる複数の資産に投資を分散する戦略)が働 いている」とザン代表は説明する。
 一方、国内からも今年四月に三菱地所が物流施設 の開発事業を開始、三井不動産や他の総合商社系不 動産会社も本格参入を準備中だ。
物流施設を対象と した新たなJリートや私募ファンドの組成も進められ ている。
リーマンショックでいったんは収束した市場 が、にわかに熱気を帯びてきた。
 
淵蝓璽隼愎瑤魯蝓璽泪鵐轡腑奪後の最安値から既 に三割上昇し、不動産市場全体としても一定の回復 は見せている。
しかし、オフィスは稼働率の低下が続 き、今後も大量供給が控えている。
住宅も地価の下 AUGUST 2011  10  世界的な金余りでだぶついたマネーが日本の物 流不動産市場に再び流入し始めた。
海外の主要プ レーヤーはそれぞれ千億円規模の資金を確保し、 開発を再開させる。
国内からは不動産大手が本格 参入。
金融機関も積極投資を煽り立てる。
バブル は再燃するのか。
         (大矢昌浩) 第1部 落が止まらない状態だ。
他のアセット分野と比べても 物流不動産市場の盛り上がりは際立っている。
 「物流不動産はオフィスに比べると賃料の変動幅が 小さく、長期の賃貸契約が多いため、収入も安定し ている。
市況の低迷を経験したことで逆に、そのこと が証明された」と事業用不動産サービス最大手のシー ビー・リチャードエリス(CBRE)で物流不動産を 担当する田口淳一インダストリアル営業本部マネージ ングディレクター本部長は説明する。
 需要も底堅い。
CBREの調査によると、大型の マルチテナント型施設に対する新規の需要は、四半期 当たり約二・五万坪というペースで安定して発生して いる。
リーマンショックを挟んでも景気による変動は ほとんど見られなかった。
 マルチテナント型施設が大量に供給された二〇〇 八年から〇九年末にかけては、さすがに空室率は上昇 した。
一時は二〇%に達したこともあった。
しかし一 〇年後半からは新規供給が止まったことで需給が引き 締まり、今年三月末時点の空室率は六・二%と、リー マンショック前の水準まで戻している。
今は供給が需 要に追いついていない状態だ。
 日本国内には現在、約一億四〇〇〇万坪の倉庫が ある。
それに対して大型のマルチテナント型施設は一 〇〇万坪程度。
一%にも満たない。
特定テナントの専 用施設を含めてもファンド系施設のシェアは二%余り に止まっている。
残りは保管機能を中心とした古いタ イプの倉庫で、拠点集約や耐震性など現在のテナント が施設に求めるスペックを満たしていない。
「これから 開発が活発化したとしても供給過剰になる可能性は 低い」と田口本部長は予測する。
 投資家だけでなく、銀行も物流不動産の投資再開 を煽り立てている。
賃貸用物流施設の開発資金の調 達には、返済責任を担保物件に限定した「ノンリコー スローン(非遡及型融資)」と呼ばれる手法がよく用 いられる。
借り手側は投資に失敗しても施設を失うだ けで、それ以上の返済義務を負わない。
 貸し手側にとってはリスクの高い融資だが、リーマ ンショック前までは銀行を始めとするレンダーがこれ を乱発した。
その結果、投資家から集めた資本をはる かに上回る借入金をノンリコースローンで調達し、運 用資金を膨らませてハイリターンを狙うファンドが相 次いだ。
 二〇億円の元手に対し、八〇億円の借入金を調達 すれば、一〇〇億円の資産が運用できる。
それを年利 一〇%で回せば年間一〇億円になる。
投資金額二〇 億円に対する表面利回りは年率五〇%に達する。
ロー ンの金利次第で、ぼろ儲けができる。
業界の勢力図は一変  不動産証券化の解禁を受けてファンドが登場する 以前の日本の物流不動産は、流動性が低く、買い手 の限定された地味なマーケットだった。
そこにファン ドが登場し大量の資金が供給されたことで、物流用地 の相場は一気に高騰した。
首都圏の湾岸地区などア クセスの良い一等地では地価が数倍にも跳ね上がった。
隣地で価格が倍も違う、いびつな状況に陥った。
 一方で賃料相場は、ほぼ横ばいで推移した。
新し い施設だからといって同じエリアで賃料が大きく違う ことはなかった。
土地の価格は基本的には賃料収入で 決まる。
しかし、当時の物流不動産はそうではなかっ た。
収入は変わらなくてもレバレッジを利かせること で利回りを確保できた。
バブルだった。
 しかし、その後のサブプライムローン問題と、その 翌年のリーマンショックで、レンダーは態度を一変さ 11  AUGUST 2011 物流不動産開発コンサル ティングのベアロジのマ シュー・ザン代表 GL プロパティーズ 26% プロロジス 15% AMB 10% ラサール インベストメント マネージメント 10% オリックス 7% 日本レップ 7% 野村不動産 6% 大和ハウス工業 3% 資料:ベアロジ調べ 日本ロジスティクス ファンド投資法人 7% メープルツリー 3% 産業ファンド投資法人 2% 三菱商事 2% CRE 2% 三井物産 1% 図1 日本の物流不動産市場の主要プレーヤーと床面積シェア(2010) AUGUST 2011  12 の約六割のシェアを握っている。
 残る四割は、総合商社、金融、建設、不動産、J リートなど、様々な業種・業態を背景に持ちビジネス モデルも異なるプレーヤーが乱立割拠している。
ただ し、いずれも業界大手で財務基盤は安定している。
プ ロロジスとAMBの合併をもって、市場の混乱はほぼ 収束したと見て良いだろう。
一年以内に物流用地の地価高騰  これに伴いレンダーの融資態度も再び変化し始めて いる。
物流不動産開発に対して、低利のノンリコース ローンを積極的に売り込み、投資を煽るようになって いる。
現在、有力な開発事業者にレンダーが提示して いる金利や担保の掛け率は、金融危機以前とほぼ同 レベルまで戻ったと言われる。
 不動産市場のこれまでの経験則によれば、レンダー が融資基準を緩めた半年後から一年後に地価は上昇 に転じている。
それを現在の環境に当てはめると今年 後半から来年にかけて、物流用地の相場が再び高騰す ることになる。
今後の市況について、一五不動産情報 サービスの曽田貫一代表は次のように予測する。
 「賃料については、需給がそれほど乖離することは予 想しにくいため、大きな乱高下はないと見ている。
し かし、土地や物件の価格については以前と同じ水準に まで戻る可能性はある。
投資家や金融機関の間でも、 物流不動産は金融商品としての認知度が高まってい る。
以前やオフィスや住宅に比べて投資商品として一 段低い存在だったが、その状況が変わりつつある。
以 前ほどのリスクプレミアムを支払わなくて済むように なっている。
欲しい人が増えれば、それだけ価格は高 騰するのが理屈だ」。
 日本で市場が立ち上がった当初の二〇〇〇年代前 せた。
不動産ファンドに対する貸し出し基準を一斉に 引き上げた。
これによって新規開発はもちろん、ロー ンの借り換えにも窮するファンドが相次いだ。
 横浜・大黒ふ頭に投資総額八〇〇億円という大規 模施設を建設中だったニューシティコーポレーション は〇九年四月に倒産に追い込まれた。
 もともと倉庫の仲介を得意とする独立系で、ファン ドブームに乗って上場を果たした日本レップは財政危 機に陥り、豪マッコーリー・グッドマン・グループに 経営権を明け渡した。
 同じく独立系で倉庫のサブリースや建設からスター トしたジャスダック上場のコマーシャル・アールイー (旧幸洋コーポレーション)は一〇年六月に倒産に追 い込まれた。
(その後、同社の事業は民事再生法に基 づき公共建物傘下の公共シィー・アール・イーに引き 継がれた)  グローバル市場でも、一時は七〇ドルに達していた 最大手プロロジスの株価が二ドル余りにまで下落。
大 量の資産売却と人員削減を含む抜本的なリストラを 余儀なくされた。
そして今年六月、同社は同業界世 界二位で最大のライバルだったAMBとの合併に踏み 切った。
 リーマンショックから二年余りの間に業界の勢力図 はすっかり様変わりした。
日本市場では、それまで圧 倒的な最大手だったプロロジスに代わり、同社が中国 に所有していた全施設と日本に所有していた施設の約 七割を引き継いだGLプロパティーズが現在、トップ に立っている。
 二番手はAMBとの合併を果たした新生プロロジス。
三番手は物流施設以外にも、オフィスや商業施設な どの事業用不動産を幅広く手がけるラサールインベス トメントマネージメント。
この外資系三社で日本市場 20,000 18,000 16,000 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 10 8 6 4 2 0 -2 -4 -6 -8 《GDP変動率》 《着工量》 (千?) 図2 CBRE:物流施設の着工動向の将来予測(全国) 2007 年以降減少傾向、2011 年は2006 年の水準まで回復 単回帰分析により着工量を予測〈R2=0.828〉 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (%) (出典) 床面積:建築着工統計(財団法人建設物価調査会) GDP 成長率:名目GDP 変動率(年度ベース)を採用。
グラフ上では1 年稼働している。
1989〜1994 年:68SNA、 平成2 年基準、1995〜2008 年:93SNA、平成12 年基準 GDP予測値:第37回日本経済中期予測(社団法人日本経済研究センター) 将来予測 GDP変動率(1 年前) 建築着工量 CBREの田口淳一イン ダストリアル営業本部マ ネージングディレクター 本部長 特 集 物流不動産 半には、オフィスの期待利回りが五%、住宅が六%で も、物流施設には一〇%以上が求められた。
しかし、 現在は差が縮まっている。
オフィスの四%台に対して 物流は六%前後、住宅と変わらない水準まで下がって いる。
投資家の期待利回りが下がれば、それだけ高値 で土地を仕入れることができるようになる。
 
淵蝓璽箸望緇譴気擦譴弌∋餠眥潅はさらに有利に なる。
Jリートの日本ロジスティクスファンドの予想 利回りは現在、四・五%前後。
Jリート全体の平均 予想利回り約五%を下回っている。
それだけ安全性 が評価されている。
投資の回収期限がなく、しかも低 利で運用することを許された資金は、いたずらにレバ レッジを利かせることなく安定して運用できる。
アセット型3PLは維持できるか  国内外の大量のマネーが日本の物流不動産市場の 再スタートを待ちかねている。
これから開発が一気に 活発化する。
ただし、土地の供給は限られている。
首 都圏の湾岸エリアは既に開発が一段落している。
売り 物件が出ても入札が殺到するのは必至で、収益性は期 待できない。
 日通不動産の塩田研太郎鑑定部長は「今後は物流 用地自体の開発が重要になってくる。
『物流総合効率 化法』を利用して市街化調整区域に物流施設を建設 する、自治体と交渉し工業団地を使う、あるいは新 たに設置されるスマートインターチェンジ周辺の農地 を開発するなど、工夫次第で物流用地はまだまだ開発 できる」と指摘する。
 投資エリアの拡大は既に始まっている。
これまでは 坪当たりの賃料が四〇〇〇円前後のエリアが主な投 資対象だった。
埼玉県の戸田や川口、千葉県の市川・ 船橋といった地域だ。
しかし現在は3PLの支払うこ とのできる賃料が三五〇〇円程度まで下がってきてい る。
その結果、従来は対象から外されていたエリアが ヒットするようになってきた。
 ただし、全国規模で見た場合、複数テナントが同 居するマルチテナント型施設の立地は首都圏にほぼ限 られる。
大阪もリーマンショック後に新規供給がまっ たく止まったため当面の需要は堅調だが、それ以外の エリアはテナント確保に不安が残る。
地方では空室の 恐れのない特定企業専用の「BTS(ビルド・トゥ・ スーツ)」型以外の開発は難しそうだ。
 テナント確保=リーシングは事実上、有力3PLと のパイプにかかっている。
日本の物流不動産市場の成 長は、3PLの普及を背景としている。
3PLを活 用した荷主の物流改革によって、大型賃貸施設の需 要が生まれている。
 そのため有力な開発事業者は3PLの提案段階、さ らには荷主企業の戦略立案段階にまで踏み込み、ア セット計画から3PLの選別まで含めた提案を行っ ている。
市場の表面には出てこない開発事業者のソ リューション能力が、第二ステージを迎えた市場の行 方を決めることになる。
 一方、3PLはアセット戦略を改めて検証する必要 がある。
荷主が自ら物流施設を所有する意味は既に失 われている。
それに対して3PLは、アセット型が現 状では優勢となっている。
自社施設の使用料に目を瞑 る3PLが相手では、まともに賃料を支払う3PLは 太刀打ちできない。
 しかし、自社施設には限りがあり、新たな用地の確 保はこれから難しくなっていく。
アセット型3PLが 持続的に成長していくためには、物流不動産会社以上 に土地を有効活用できることが条件になる。
ビジネス モデルに対する覚悟が問われている。
13  AUGUST 2011 一五不動産情報サービス の曽田貫一代表 日通不動産の塩田研太 郎鑑定部長 出所:株式会社一五不動産情報サービス 1,500 1,000 500 0 (千?) 東京圏の需給バランスの見通し 予測 上積みも 1,354 1,190 1,196 651 743 622 623 557 802 741 552 601 514 601 397 449 05 06 07 08 09 10 11 12 (暦年) 新規供給 新規需要

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