*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
GL プロパティーズ
──満を持して開発事業をスタート
AUGUST 2011 18
マルチテナント型施設を来春着工
──日本と中国でトップシェアを握っていますが、そ
の多くは以前にプロロジスが抱えていた資産です。 改
めてGLプロパティーズの成り立ちの経緯を説明して
下さい。
「今は別の会社なので詳細は控えますが、二〇〇八
年秋の金融危機を受けて、プロロジスが中国の資産の
全て、および日本の資産の一部をシンガポール政府系
の不動産会社GICリアルエステートに売却すること
になりました。 その資産を管理するため、〇九年三
月にGLP(Global Logistic Properties)が設立さ
れました。 当社はその日本法人という位置づけです。
資産が移管されるのと同時に、私も含めてスタッフの
一部もプロロジスから当社に移籍したというのが大き
な流れです」
──ではGLプロパティーズの役割は、資産の管理を
するアセットマネジメント事業に限定されるのでしょ
うか。
「もちろんそれも我々の事業の中核の一つですが、
それだけではなく、物流施設の直接的な運営・管理
をするプロパティマネジメント(PM)事業や、物流
施設の新規開発を手掛ける能力も有しています。 実
際に中国ではこの二年間で数多くの新しい物流施設
をマーケットに供給してきました。 物流不動産専業と
して、開発から管理・運営、リーシングまでを一気
通貫で行えるのが我々の強みです。 そのために必要
な人材も社内に揃えている」
──設立からこれまでの間、日本における新規開発
の実績はありません。 プロロジスとの間に新規開発に
着手しないという取り決めがあったとも聞いていま
すが。
「確かにそのような取り決めがありました。 しかし、
その期限は今年二月で満了しています」
──では今後は開発案件も積極的に手掛けていく?
「そのつもりです。 タイミング良く日本の物流不動
産マーケットも上向いてきて、投資しやすい環境も
整ってきた。 既に水面下ではいくつかの開発用地の
取得交渉に入っています。 そのうちの一つはかなり
成約に近い段階にまで来ている。 早晩、関東におけ
るマルチテナント型物流施設の開発プロジェクトを発
表できると思います。 着工のタイミングとしては、来
年の初旬を目指しています」
「我々が提供しているような大型で使い勝手の良い
物流施設はまだまだ不足しています。 四億五〇〇〇
万平米ともいわれる日本の総倉庫面積のうち、一〇
〇〇万平米強ほどしかありません。 割合としてはわ
ずか二%です。 顧客のニーズに合った質の高い施設
を安定的に提供していくことは、マーケット・リー
ダーを自負する我々の社会的責任だと認識していま
す」
──開発はマルチテナント型が中心になりそうですか。
マルチテナント型は投資リスクが大きいとも言われて
いますが。
「物流不動産のプロとしての目利きを最も活かすこ
とができる、最も他社との差別化を図りやすいのが
マルチテナント型ですから、当社としてはできるだけ
多く手掛けていきたいと考えています。 一方で、特
定の顧客専用のBTS型の物流施設の開発や、既存
物件の取得なども積極的に行います。 あらゆる形を
視野に入れながら投資をしていく」
──具体的な投資計画は?
「今のところ『毎年、数百億円ずつ』としか申し上
げられませんが、相当の規模感をもって投資してい
2009年3月にプロロジスの資産を引き継ぐかたちで誕生し
た。 その資産規模は日本および中国において首位の座にある。
これまで日本ではプロロジスとの契約により新規開発に着手
できなかったが、その期限は今年2月に満了した。 来年初頭
には開発第1号案件に着手する。 (聞き手:石鍋 圭)
三木真人 社長
第3部主要プレーヤーはこう動く
19 AUGUST 2011
すか。
「今のところ具体的な検討はしていません。 しか
し、将来的な選択肢としては様々な可能性がありま
す。 機関投資家と私募ファンドを組成するかもしれ
ませんし、場合によってはリートを組成して上場さ
せることも有力なオプションの一つとして見ています。
仮に我々の五二〇〇億円の資産を全てリートに組み込
めば、Jリート全体で見ても有数の規模を誇るもの
になるはずですから」
──抱える物流施設は一貫して高い稼働率を維持し
ています。
「現在の稼働率は九八・六%です。 もともと保有
している資産が優良なことに加えて、リーシングを
はじめとするPMに力を注いできた結果だと評価し
ています。 いくら日本でナンバー1の物流施設ネッ
トワークを有していても、顧客に対するサービスが行
き届いていなければ、それは何の意味もありません。
ハードとソフトの両面の充実が必要なのです。 毎年顧
客に対してアンケートを取り、それを日々の運営に活
かしていく。 それが次のビジネスにも繋がる。 我々
のビジネスの要諦は、その地道な作業の繰り返しに
あるのです」
──中国では日本以上に圧倒的なシェアを握っていま
す。
「これは大変な強みです。 日本企業の中国マーケッ
トへの進出意欲は高まる一方ですが、我々はその物
流戦略を一貫してサポートできる唯一の企業だと自負
しています。 現地に『ジャパンデスク』というチーム
を配しているのですが、彼らが中国で有する豊富な
ネットワークをもとに最適のソリューションを顧客に
提案する。 現在、ジャパンデスクへの引き合いは殺到
している状態が続いています」
くことは確実です。 物流不動産は自ら所有する時代
から、利用する時代に移りつつある。 我々はその部
分に関するソリューションを、様々な形で提供してい
くつもりです」
──既存物件の取得も積極的に行うとのことですが、
先日、ラサールインベストマネージメントの物件入札
に応じたとの発表がありました。 一部報道では一四
〇〇億円規模の大型投資になるとも。
「現段階で私から言えるのは、ビットに参加してい
ることは事実だということだけです。 その他のこと
はまだ何も決まっていない状態です」
Jリートの組成も視野に
──新規開発や既存物件の取得にあたって、資金調
達面での課題は?
「全く問題ありません。 GLPは昨年一〇月にシン
ガポール証券取引所に株式を公開し、マーケットから
二五〇〇億円規模の資金を調達しました。 その資金
の一部を負債の削減に当てたことで、現在のGLP
の資産に占めるLTV(有利子負債比率)は、約二
〇%という低い水準にあります。 数多くの質の高い
資産を、ほぼエクイティで所有しているわけですから、
金融機関からいただく評価もそれだけ高いものにな
ります。 さらに手元には一二〇〇億円ほどのキャッ
シュもある。 資金調達力は心配どころか、当社の強
みの一つです」
「LTVに関しては今後引き上げる可能性もありま
すが、それでもせいぜい四〇%ほどまでだと思いま
す。 基本的には低い水準のLTVを維持し、健全な
財務体制で資産を運用していく方針です」
──今は全ての資産を全てバランスシート上で抱えて
いる状態ですが、ファンドの組成などは考えないので
会社概要
GLプロパティーズ
2009年3月設立。 日本で所有・運営
している物流施設は69棟、総延べ床面
積は約280万平米、資産総額は約5200
億円にのぼる。 現在、国内において最
大の物流不動産プロバイダー。 中国にお
いても所有・運営している物流施設の
延べ床面積は約400万平米、開発中の
物件、既に取得している開発用地、こ
れから取得する予定の開発用地は合計
で約1000万平米にのぼる。
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0
中国市場における稼働面積
GLPのホームページより本誌作成
GLP
ヴァイログ
ING
リアルエステート
グッドマン
宇培(Yupei)
プロロジス
メープルツリー
宝湾物流
(Blog is)
航港発展
(ACL)
(百万?)
特 集 物流不動産
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