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プロロジス
── AMB との合併で資産規模が2 倍に
AUGUST 2011 20
最大のライバルと一つに
──今年二月にAMBとの経営統合が発表された時
には、市場関係者の誰もが驚きました。
「発表する三週間ほど前にアメリカ本社に呼ばれて
統合の話を知ったのですが、私も皆さんと同様に驚き
ました。 しかしグローバル・ネットワークや財務面の
強化を考えれば、大きなシナジーのある統合だと思い
ます。 日本の資産も、統合によってほぼ倍になりま
した。 ネットワークが飛躍的に広がったことで、顧客
へのサービスをより充実させることが可能になった」
──統合の進捗は円滑に?
「概ねうまくいっていますが、最大の競合相手だっ
た存在と統合したわけですから、完全に一体化する
までには早くても二、三年はかかると思います。 企
業文化もお互いユニークで、随分違いもある。 それ
でも、まったく心配はしていません。 それぞれの社
員が物流不動産のプロフェッショナルで、顧客によい
施設を提供したいという思いは共通している。 互い
に切磋琢磨し、『彼らよりも良い施設をつくってやろ
う』と思っていたライバルの存在がなくなったという
点に関しては、少し寂しい気もしますが」
──ライバルという点では、プロロジスの資産を引き
継いだGLプロパティーズが現在の日本では最大手で
す。 やはり意識しますか。
「GLプロパティーズはまだ日本での開発を手掛け
ていないのでコメントのしようがありません。 それ
よりも、例えば大和ハウスなど、国内系で活発に物
流不動産に力を入れている企業の動きの方が気にな
ります。 彼らの営業に関する動員力は目を見張るも
のがある。 国内企業としての顧客とのネットワークも
持っている。 我々には無い強みです」
「ただ、我々には外資として中立に顧客と接するこ
とができるという特徴がありますし、なにより物流
不動産専業としてのノウハウと他の追随を許さない実
績がある。 統合によって財務面がより強化されたこ
とで、物流施設の供給力も格段に上がった。 躍起に
なってシェアや順位を争うつもりはありませんが、誰
が相手であってもこのマーケットで遅れをとる理由は
ありません」
──金融危機後の二年間は統合前の旧プロロジスに
とって冬の時代でした。 新規開発案件はほとんどス
トップした。 その間は主に何をしていたのですか。
「金融危機後、特に開発部隊の仕事は大きく様変わ
りしました。 情報を収集し、土地を取得して新規の
案件を仕込むのが彼らの役割だったのですが、その
戦力の多くをリーシングに回し、施設の稼働率を上げ
ること注力したのです」
「当時はまだ『プロロジスパーク舞洲?』や「プロ
ロジスパーク大阪?」など複数の既存マルチテナント
型施設が客付けをする段階にあった。 さらに、新規
の案件は凍結したものの、既に着工していた『プロ
ロジスパーク市川?・?』や『プロロジスパーク座間
?』『プロロジスパーク北名古屋』などのマルチテナン
ト型施設は次々にでき上がってくる。 そういった施
設への客付けをする必要もありました。 取り組みの
結果、現在の既存施設の全体の稼働率は約九五%に
まで高まっています」
「リーシングと並行して、開発部隊の一部のスタッ
フには従来通り新規案件の掘り起こしを水面下で進
めさせていました。 我々はこの異常事態はそう長く
続かないと見ていた。 特に、日本の回復は早いだろ
うと。 そうであれば、来るべき時に備えてリーシング
と需要の掘り起こしに専念しようと考えたのです」
最大のライバルだったAMBとの合併で日本での資産規模
は約2倍に膨れあがった。 国内首位のGLプロパティーズの
背中もはっきり見えている。 金融危機後は資産の大量売
却や新規開発案件の凍結を余儀なくされたが、守りのフェー
ズは既に終わった。 市場先駆者によるマーケットの再開拓
が始まる。 (聞き手:石鍋 圭)
山田御酒 社長
第3部主要プレーヤーはこう動く
21 AUGUST 2011
島の案件はどうしても早期に実現させたかった。 も
う間もなく竣工する予定ですが、既に四割以上の床
が埋まっている状態です。 川島の他に、『プロロジス
パーク大阪4』『プロロジスパーク座間2』と現在二
つのマルチテナント型施設の開発に取りかかっており、
それぞれ来年の五月、八月に竣工する予定です」
「みやぎ生協向けの専用施設『プロロジスパーク富
谷?』を一〇年八月に、DNPロジスティクス向けの
専用施設『プロロジスパーク高槻』を一一年三月にそ
れぞれ着工するなど、BTS型施設の開発も要望に
基づいて精力的に行っています。 今後もマルチテナン
ト型、BTS型ともにチャンスがあればどんどんチャ
レンジしていくつもりです」
──資金も問題なく調達できる?
「もともとグローバル・コミットメントラインがある
ので開発資金の問題はなかったのですが、AMBと
一つになったことで財務体制はより強固になった。 な
んの問題もありません」
──金融危機を経験したことで、ビジネスの進め方に
何か変わったことはありますか。
「以前は何から何まで自前主義でしたが、金融危機
後は他社とのパートナーシップを重視するようになっ
ています。 例えば『プロロジスパーク舞洲?』は清水
建設、『プロロジスパーク高槻』は伊藤忠商事との合
同事業です。 また、出口戦略の一環としてJリート
の日本ロジスティクスファンドとの間にパイプライン
サポート協定を結んでいる。 資金のかけかた、リスク
の取り方は以前よりも慎重になっているかもしれま
せん。 ただ、ビジネスの根幹は何も変わらない。 質
の高い施設をつくってマーケットに供給し、顧客の満
足のいくサービスを提供する。 それが資産規模やマー
ケット・シェア以上に重要なことです」
──新規開発の停止に伴い、プロロジスはグローバル
ベースで大幅な人員の削減を行っています。
「日本では一切やらなかった。 一部の資産と一緒に
約四〇人のスタッフがGLプロパティーズに移籍して
いたという背景もありますが、そもそも日本と雇用
の流動化が進んでいる欧米とでは事情が違います。 人
員を削減すればモチベーションは大きく下がり、企業
へのイメージも傷つく。 優秀な人材も集まりにくく
なってしまいます。 なにより、体力が回復していざ
動こうと思っても、その時に必要な人材がいなけれ
ば動けません。 人員のカットだけは日本に対して求め
ないようにアメリカ本社にお願いしました」
自前主義を転換
──二〇一〇年に入ってからは開発事業が本格的に
動き出しています。
「一〇年四月にキリン物流向けの専用施設『プロロ
ジスパーク海老名』を、八月にセンコー向けの専用施
設『プロロジスパーク舞洲?』を竣工させています。
いずれも着工したのはその前年の〇九年なので、ま
さに金融危機のあと、厳しい時代も我慢しながら需
要の掘り起こしを継続した結果実現できたものだと
認識しています。 その頃になると、グローバルレベル
でも負債の削減がかなり進み、前向きなビジネスがで
きるようになってきた」
──一〇年三月には埼玉県でマルチテナント型施設
「プロロジスパーク川島」の開発をスタートしています。
「当時は当社だけでなく市況全体が悪く、大規模マ
ルチテナント型施設の供給はほとんど見られませんで
した。 ニーズは確実にあるのに、マーケットに提供で
きないという歯がゆい思いがずっとあった。 物流不
動産専業としての役割を果たすという意味でも、川
現在稼動中のプロロジスパーク座間?(右)とプロロジス
パーク座間2(座間2は完成予想図を合成したもの)
会社概要
プロロジス
世界最大の物流不動産開発会社。 業界
1位のプロロジスと2位のAMBプロパティー
コーポレーションが合併して2011年6月
に誕生した。 世界4大陸、22カ国でビジネ
スを展開しており、物流施設は3500棟以
上、総延べ床面積は5570万平米におよぶ。
日本法人でも両社の組織・資産が統合され
た結果、国内で保有・運営する施設は50棟、
延べ床面積は約265万平米となった(いず
れも開発中の物件を含む)。 その資産規模
は約4000億円にのぼる。
特 集 物流不動産
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