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ラサールインベスメントマネージメント
──今後1 年半で最大1500 億円を投資
AUGUST 2011 22
逆張り投資で既存物件を底値買い
──物流不動産マーケットに資金が戻ってきました。
「金融危機以降、金融機関は融資をストップしてい
たわけではありません。 貸出先の選別を強めたとい
う認識です。 その傾向はいま現在も続いています。 慎
重にはなりつつも、優良な貸出先には積極的に融資
したいと考えている。 ブレーキを掛けながら、同時
にアクセルも踏んでいる状況です」
「とはいえ、金融危機の直後に比べれば、全体的な
貸し出し意欲が高まっていることは確かです。 機関投
資家も基本的には同じような状況ですが、こちらは
金融機関よりもやや遅れているという印象です。 物
流不動産への投資は開発規模が大きくなる傾向があ
るので、まだ慎重な姿勢を崩し切ってはいません。 様
子を見ながら、少しずつ再開している。 今はまだ本格
的な投資再開へのプロセス段階といったところです」
──物流不動産の価格についてはどうでしょう。
「一度グッと下がって、〇九年、一〇年前半頃まで
は皆が適正価格を探っているような状況でした。 非
常に不安定な状態が続いた。 それから徐々に正常化し
ていき、一〇年後半頃からは、本格的な反転を誰も
が実感できる環境が整ってきた。 Jリートのマーケッ
トも回復してきた、というのが全体的な流れです」
──そんななかでも他社と比べてラサールは積極的に
買いに出ていた。 強気でした。
「金融危機直後は一時的に守りの意識が高まりまし
たが、〇九年からは攻めの投資姿勢に転換しました。
〇九年から一二年までの三、四年の間は物件を取得
する絶好のタイミングだと判断したのです」
「まず〇九年の九月に千葉県流山市にある物流セン
ターを取得しました。 現在の『ロジポート流山』です。
同物件は延べ床面積一四万平米を超えるマルチテナン
ト式の大型物流センターですが、開発・保有してい
たデベロッパーがテナント付けをできなくて困ってい
た。 それを我々が引き取ったのです。 必要な改修を
加え、リーシングに注力した結果、取得後九カ月で稼
働率を八五%まで高めることに成功しています」
「さらに一〇年六月から一〇月にかけては東京湾
岸エリアで四つの物流センターを取得しました。 ロジ
ポート流山も含めて、いずれの案件も適正価格より
もかなり割安で取得することができた。 非常に良い
投資だったと考えています」
──資金調達面での問題は無かった?
「全くありませんでした。 むしろ本来であればもっ
と投資をしたかったのに、売り物が無くて十分な投
資機会に恵まれなかった。 そう言う意味では、ディー
ルの量に関しては残念だったと思っています。 我々
にはそれだけ潤沢な資金の用意があった」
「冒頭で申し上げたように、投資家や金融機関は完
全に出資や融資を止めたわけではなく、その投資先や
融資先を選別していた。 例えば投資家であれば、一
〇社あった投資先を一社か二社の優良な投資先に絞り
込む。 その選別先に、我々を選んでいただける機会
が多かった。 それはこれまで我々がグローバルで築い
てきた歴史や実績、投資家との信頼関係の賜物だと
自負しています。 同じように、金融機関の我々に対
する評価や融資実績も引き続き力強いものがあった」
──今年に入ってからも投資を加速させています。
「四月には三菱商事およびJリートの産業ファンド
投資法人と協働で、サッポロビールが保有していた
千葉県習志野市の『茜浜物流センター』を取得しま
した。 不動産の建物部分を我々が、底地部分を産業
ファンド投資法人が保有するというスキームです」
潤沢な資金調達力をバックに、金融危機後の市況低迷時
にも積極的な物件取得を進めてきた。 今秋には首都圏で100
億円超の新規開発案件にも着手する。 日本の物流不動産マー
ケットを事業機会の宝庫と見て、今後1年半で1000億円〜
1500億円の投資を予定している。 (聞き手:石鍋 圭)
中嶋康雄 代表取締役兼CEO
第3部主要プレーヤーはこう動く
特 集 物流不動産
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繋げていくというのは自然のことだと思っています。
実際、過去二年のシンガポールや香港での我々のビジ
ネスを振り返ると、買うことよりも売ることの方が
忙しかった。 それだけ買い手の意欲が強かった。 日
本はたまたまそういった環境になかったわけですが、
昨年末あたりから少しずつ変わり始めた」
──海外メディア等の報道にありましたが、二〇物件
以上、一四〇〇億円規模の日本の資産の一括売却は
その出口戦略の一環ですか? ビッドにはシンガポール
証券取引所に上場している物流不動産会社のGLP
(Global Logistic Properties)をはじめとして、既に
複数の参加者がいると聞いています。
「我々の出口戦略についてのスタンスは今言った通
りですが、その件に関してはノーコメントです」
──ところで御社のグローバルなポートフォリオと日
本におけるポートフォリオを比べると、物流不動産の
占める割合にかなり相違があります。 日本は物流不
動産の比重が極端に大きい。
「グローバルで見ると物流施設、商業施設、オフィ
ス、その他のアセットクラスがそれぞれ四分の一ずつ
といった構成です。 それに対して日本では物流不動
産がポートフォリオの半分以上を占めています。 それ
だけ日本では物流不動産に力を注いでいる」
「海外では物流不動産は投資対象として確固たる地
位を築いていますが、日本ではまだまだ浸透してい
ません。 それだけに、価値のある投資機会も数多い。
日本ではオーナーみずからが物流不動産を所有し、利
用しているケースが多く見られますが、これからは流
動化を通して機関投資家の手に渡っていくプロセスが
進むと判断しています。 そこに我々の事業機会も潜
んでいる。 我々は日本の物流不動産に大きな魅力を
感じ、惚れ込んでいるのです」
「大型物流施設を新規開発するための用地を首都圏
内陸部に確保しました。 延べ床面積十二万六〇〇〇
平米の大型マルチテナント物流センターを建設する計
画です。 今秋にも着工し、来年秋の竣工を目指して
います。 このプロジェクトへの投資額は一〇〇億円超
となる見込みです」
「現在はマーケットが回復してきたこともあり、〇
九年、一〇年に比べて既存の物流不動産の価格の割
安感が薄らぎつつあります。 一方、マルチテナント型
の大型物流センターの供給はかなり細っていて、枯渇
感がある。 それだけにテナントニーズは旺盛です。 金
融危機以降のこれまでの投資は既存物件の取得ばか
りでしたが、これからはチャンスがあれば新規開発も
積極的に手掛けていきます」
──当面の投資金額の規模を教えて下さい。
「向こう一年から一年半の間に一〇〇〇億円から一
五〇〇億円と申し上げておきます。 ただし、これは
それだけの資金準備があるということであって、必
ずしもそうなるとは限りません。 マーケットが再び過
熱し、投資することが投資家の利益に適わない状況
になれば当然投資を手控えますし、そうでなければ
積極的に投資する」
日本の物流不動産に惚れ込む理由
──ラサールは日本で物流不動産特化型のファンドを
〇四年と〇七年に組成し運用しています。 ファンド
であれば出口戦略を考えるのは当然だと思いますが、
これまで売却などの実績は聞こえてきません。
「これまでの日本のマーケット環境が物件を売却す
るのに適していなかっただけで、特に売却を避けて
いたり、資産を保有し続けるという方針があるとい
うわけではありません。 資産を売却して次の投資に
09 年に取得したロジポート流山。 テナント付けに注力し、
9 カ月後には稼働率を85%にまで高めた
会社概要
ラサールインベストメントマネージメント
世界最大規模の不動産サービスグループ、
ジョーンズラングラサール傘下の不動産投
資顧問会社。 本社は米国シカゴ。 主に機関
投資家や富裕層の資金を世界の商業施設、
物流施設、オフィス、住宅、ホテルなどの
不動産に投資し、複数のファンドで運用し
ている。 その運用額は約453億ドルにのぼ
る。 日本法人は01年の設立。 物流分野で
は04年にラサール日本ロジスティクスファ
ンド1号を、07年に同2号を組成し、運用
している。
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