ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年8号
特集
第3部主要プレーヤーはこう動くメープルツリー・インベストメンツ──約700 億円の物流資産を2.5 倍にメープルツリー・インベストメンツ・ジャパン テレンス・ヘン 社長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

メープルツリー・インベストメンツ ──約700 億円の物流資産を2.5 倍に AUGUST 2011  24 長期で安定した運用益を狙う ──二〇一〇年度のグループの保有・運営資産は一 五四億二二〇〇万S$(シンガポールドル、一S$= 六五円換算で一兆二四億三〇〇〇万円)。
〇五年度 の四倍以上に膨れ上がっています。
 「メープルツリー・インベストメンツはアジア各国の 幅広い分野の不動産に投資しています。
会社として は大きく二つの顔があり、一つは上場リートや私募 ファンドのマネージャー。
もう一つは不動産のデベロッ パーです。
自社のオンバランスで不動産を開発して付 加価値を高め、テナントを付け、私募ファンドやリー トに組み入れて運用しています。
昨年から今年にか けてシンガポール市場に産業REITと商業REI Tを上場させ、かなりの資金を調達することができ ました。
また、当社の運用する私募ファンドには世 界中の機関投資家が出資しています」  「物流不動産分野では、〇五年にメープルツリー・ ロジスティクス・トラスト(MLT)というリートを シンガポール市場に上場しました。
MLTはアジア各 国を投資対象としており、保有資産はシンガポールを 含めたアジア七カ国・九八物件・三六億S$(二三 四〇億円、図1)にまで成長しています」 ──日本での運営資産規模は。
 「MLTでは一五物件・約七〇〇億円です。
それと は別に取得したビジネス用の施設などを含めると、日 本での総運営資産額はおよそ一〇〇〇億円になりま す。
今後二〜三年でこれを三〇〇〇億円規模まで拡 大する計画です。
MLT全体では今後三〜四年で保 有資産を倍以上にする方針で、日本の物流施設の資 産額は現在の二・五倍くらいには増やしたいと考え ています」  「日本では〇五年末に伊藤忠商事と物流不動産分 野で業務提携し、〇七年二月にMLT向けの既存物 件の取得をスタートしました。
以来、伊藤忠の開発 した物流施設を買い入れたり、第三者からの物件取 得で仲介を受けたりしています」 ──日本での物件取得を始めた〇七年は日本の物流不 動産市場はバブルとも言える時期でしたが、わずか一 年半で物流施設八物件を取得しました。
 「正直言って価格は割高だと感じていましたが、当 時はなかなか良い物件が出なかった。
ローンの金利や テナントの信頼性、賃貸の契約期間など総合的に考 慮し、取得を決めました。
何よりも、日本で早くビ ジネスをスタートさせたかった」 ──日本市場をどう見ていますか。
 「重要市場だと位置付けています。
物流施設のス ペースの絶対量は増えなくとも、古い倉庫のリプレー ス需要はまだまだある。
しかも中国などの新興国市 場と比べると透明性が高く、計画通りにリターンを得 られる。
一物件当たりの金額も大きい」  「日本企業にはアジア各国でメープルツリーの物流 施設を使ってもらいたいと考えています。
日本企業 はアジアではビッグネームでありブランドです。
テナン トとしての信頼性も非常に高い。
われわれは物件を最 終的にはリートに組み込み、運用します。
単に安く物 件を買って高く売るというキャピタルゲインではなく 長期にわたる、安定したインカムゲインを狙っている。
そのためにテナントの信頼性は重要なポイントです」 ──昨年二月から今年三月にかけ、日本で七物件を 取得しました。
 「MLTでは〇八年後半から〇九年にかけて株価が 下落したために、一年近くの間、投資を休止してい ました(図2)。
しかしその間、リーマンショック前  シンガポール政府系の総合不動産会社。
昨年から今年 にかけ、日本で既存施設7物件を取得。
昨年1月には伊 藤忠商事と合弁で物流施設の新規開発事業も開始した。
日本の物流施設の運営資産規模は現在約700億円だが、 これを数年内に2.5倍程度まで拡大する考えだ。
                    (聞き手・梶原幸絵) メープルツリー・インベストメンツ・ジャパン テレンス・ヘン 社長 第3部主要プレーヤーはこう動く 25  AUGUST 2011 ますか。
 「個人的な意見ですが、当面は既存施設の売却が増 えると見ています。
リーマンショック以降、市況が低 迷してしまったため、デベロッパーやファンドは物流 施設のストックを抱え込まざるを得なかった。
しかし、 彼らはどこかのタイミングでそのストックをエグジッ トしなければなりません。
実際、足下では数十件の 施設を一括売却するケースも出てきました」  「一方で、長期間にわたって物件を保有していくと いうスタンスのプレーヤーはそれほど多くはない。
現 状でそれが可能なのは物件の最終的な出口であり、物 流不動産のエンドユーザーとも言えるリートのほか、少 数のプレーヤーに限られています」 ──供給が増えて、買える人が限られているのなら、 価格は下がりそうです。
 「そう単純な話でもありません。
デベロッパーやファ ンドの運用会社が新たにリートやファンドを立ち上げ、 そちらにストックを移していく可能性もあります。
ま た現在、投資家たちは利回りはそれほど高くなくと も低リスクで安定した投資先を探しており、日本の 物流施設はターゲットの一つになり得る。
これらの点 を考えると、価格は下がりも上がりもしない。
ただ し、サプライは増えるということになる」 ──今後も積極的な“買い”を続ける?  「ざっくり言えば、伊藤忠とのJVからの物件も含 めて年間二〇〇〜三〇〇億円のペースでMLT向け の物件を取得していく方向です。
個人的には買える ときに買っておいた方がいいと考えています。
大型 の売却案件を一括で買い、しばらくはアセットマネジ メントに徹するという選択肢もある。
ただしそうな るとMLTの資産の中で日本の占める割合が過大に なるので、その時々の判断になると思います」 に取得交渉に入っていた物件の状況を密にフォローし て交渉を続け、良い値段で案件をクロージングするこ とができました。
〇七年に取得した物件の一件当たり の利回りは五%前後ですが、昨年から今年にかけて 取得したものは六%後半、七%くらいのものもある」 ──昨年一月には伊藤忠と合弁で、新規施設の開発 事業をスタートさせました。
 「メープルツリーとして伊藤忠とジョイントベン チャー(JV、合弁事業)を開始しました。
このJV ではBTS型を中心に五〇〇億円規模の物流施設を 開発し、将来的にはMLTに組み込む予定です。
リー マンショック以降、プロロジスなどのデベロッパーは 一斉に動きをストップしました。
とはいえ、不景気 でもモノは動いています。
新規施設に対するニーズが あるのは間違いない。
まさにチャンスでした。
既に現 在、開発案件を進行しています」 ──日本でMLT向けに取得した物件はBTSがメー ンです。
伊藤忠とのJVでもBTSが中心になる?  「われわれが日本では自社でリーシングの能力を持っ ていないこともありますが、そもそも日本市場には BTSが適していると考えています。
中国などでは マルチテナント型で大量にスペースを用意してそこに テナントを呼び込み、その後テナントが入れ替わって いくことでリターンを上げていくというかたちが適し ていますが、日本は経済発展のステージが違います」 ──
贈圍咾任魯謄淵鵐箸箸猟詑澤戚鵑切れたときの リスクが大きいのでは。
 「契約が切れても再リースできるような、立地の良 い物件に投資しています。
また今後、運用資産の規 模が大きくなり、クリティカルマスを超えれば、テナ ントが撤退したとしても大きな影響は受けません」 ──日本の物流不動産市場の今後をどう予測してい 会社概要 メープルツリー・インベストメンツ  シンガポール政府系投資会社、テ マセク・ホールディングスが100 % 出資する不動産会社。
シンガポー ル政府港湾庁(PSA)の民営化に 伴いPSAの不動産部門が保有資産 とともに分離され、2000年に設 立。
現在、アジア各国でオフィスや 住宅、リテール、物流、産業、ビ ジネスパークなどの施設を開発・所 有・運営している。
日本では07年 に事業を開始し、物流施設のほか、 事業用施設にも投資している。
図2 MLT の過去3 年間の株価推移 1.2 0.8 0.6 0.4 0.2 (S$) 10月2009年 4月 7月 10月 2010年 4月 7月 10月 2011年 4月 7月 図1 MLT の地域別ポートフォリオ    (11 年3月末) シンガポール 42.9% 55 物件 日本 28.6% 15 物件 香港 18.3% 8 物件計 36 億1910 万S$ 98物件 中国 5.0% 6 物件 マレーシア 3.4% 11 物件 韓国 1.5% 2 物件 ベトナム 0.3% 1 物件 特 集 物流不動産

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