*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
AUGUST 2011 2
スは金融危機で大きなダメージを受け
ましたが、GICリアルエステートに
対する資産譲渡などで財務的な危機
は脱したと認識していたのですが。
「どちらかのバランスシートに問
題があったから統合したということ
ではありません。 統合はあくまでも、
業績の最大化と負債比率の圧縮が狙
いです。 振り返ってみれば、確かに
二〇〇八年後半から一〇年前半まで
の旧プロロジスは、負債問題を抱え
て厳しい時期にありました。 しかし、
二年をかけてバランスシートを健全化
し、株式市場からの評価も適正化し
ました。 だからこそ、旧AMBとの
対等な統合を実現できたのです」
──逆に言うと、旧プロロジスの再建
の途中では統合は難しかった?
「対等合併をするためには、お互い
が健全なバランスシートを持っている
必要がありました。 どちらかがプレミ
アムを払わなければいけないというこ
とであれば、合意には達しなかった
でしょう。 その点で一〇年前半まで
は旧プロロジスに対する株式市場の評
価は旧AMBに比べて低かった。 し
かし、それ以降は改善していきました。
両社の株価やバランスシートが適正に
なったことで、初めて対等に話し合
うことができたのです」
──どのタイミングでどちらからアプ
統合交渉は三度目だった
──プロロジスとAMBの経営統合の
目的は?
「世界的なプラットフォームを構築
することがまず一つです。 物流不動
産業界で一位と二位の会社が一つに
なることで、当社の保有・運営する
物流施設は世界四大陸・二二カ国で
三五〇〇棟以上、延べ床面積五五七
〇万平米以上という規模になりまし
た。 これは我々が顧客に対し、あら
ゆる地域であらゆる施設を提供でき
るようになったことを意味します」
「二つめの理由として、資金調達面
の強化が挙げられます。 両社が統合
することにより、以前にも増して我々
に対する与信・格付け評価は改善し
ました。 今後のリファイナンスや借り
換えに及んでは、金利を大きく低減
することが可能になります。 一般管
理費の削減も見込んでいます。 具体
的には、来年の十二月末までに年間
八〇〇〇万ドル(約六八億円) の削
減を達成する予定です。 これは全体
の一般管理費の二〇%に当たります」
「我々は現在、機関投資家などをパ
ートナーとする共同投資事業やファン
ド事業を二二本運用しています。 そ
の運用額は二五七億ドル(二・一八
兆円) に及びますが、この分野でも
今回の経営統合はよりシナジーを発揮
するものと見ています。 顧客、株主、
資金パートナー、従業員、あらゆる関
係者にとって魅力的な統合だったと
認識しています」
──そもそもこのビジネスにおいてシ
ェアは重要なのでしょうか。
「我々が重視しているのは顧客ニー
ズに応え、あらゆる選択肢を提供す
ることです。 いくらグローバルで大規
模に展開していても、施設が空だっ
たり顧客対応が満足のいくものでな
ければ何の意味もありません。 もち
ろん、シェアを重視していないとい
うことではありません。 顧客満足を
追求していけば、必然的に充実した
ネットワークが必要になっていきます。
その結果としてシェアは後から付いて
くるものだと考えています」
──圧倒的なシェアを握ることによっ
てプライスリーダーになる考えは?
「そうは考えていません。 いくら
我々の規模が大きくなったといっても、
マーケットには適正な賃料相場が存在
します。 当然、我々もそれに従わな
ければなりません」
──資金調達面も強化されたというこ
とですが、統合しなければ厳しい状
態だったのでしょうか? 旧プロロジ
米プロロジス ウォルター C・ラコウィッチ 共同CEO
「圧倒的なプラットフォームを構築した」
物流不動産世界最大手のプロロジスと二位のAMBプロパティ
コーポレーションが今年六月に経営統合を果たした。 財務面が強
化された新生プロロジスは、金融危機以降ストップしていた新規
投資を本格的に再開する。 日本でも今年から六〇〇億円規模の
投資をスタートさせる模様で、新たなファンドの組成も視野に入
れている。 (聞き手:大矢昌浩、石鍋 圭)
3 AUGUST 2011
ローチを?
「昨年の十一月に旧AMB側から旧
プロロジス側に提案がありました。 非
常にチャレンジングな提案だと感じま
したが、前向きに捉えました。 実は
過去にも二度ほど旧AMBと旧プロ
ロジスは統合について交渉したことが
ありました。 しかし、どちらも最終
合意には至りませんでした。 タイミン
グや経営環境が整ったことによって、
中国は土地の選定が困難なことに加
えて、様々なリスクが多いのも事実で
す。 それに比べて日本のマーケットは
非常に安定している。 例えマクロ経済
の成長が鈍っているとしても、企業
の物流効率化へのニーズは高い。 既
存の古い倉庫から高機能で使い勝手
の良い施設に移る動きは今後も活発
化し、それが我々の事業機会を生み
出すと見ています」
「日本の土地は高く、それを購入し
てニーズに合致する高機能物流施設
を建てるのには豊富な資金力とプロ
フェッショナルのノウハウが必要です。
それができるプレーヤーは非常に限ら
れている。 我々はその数少ないプレー
ヤーの一人だと自負しています。 そ
ういった観点からも、我々にとって
日本は非常に魅力的であり、重要な
のです」
三度目でようやく統合が実現したと
いうことです」
──今のところ新プロロジスの経営陣
は、旧プロロジス出身のあなたと、A
MBの前CEOであるハミード・モガ
ダム氏の二人が共同CEOを務めて
いますが、二人の役割分担は?
「戦略的な意志決定は二人で行いま
すが、私の主な役割は、両社のプラ
ットフォームの統合と合併の効果を最
大化することです。 両社とも組織の
規模が大きく、情報システムをはじめ
とする問題もありますが、これまで
のところ統合はスムーズに進んでいま
す。 一方、モガダム共同CEOは主に
投資家との共同事業の部分を見てい
きます」
アジア向け投資の大半は日本に
──今回の統合をきっかけにして今
後は物流不動産プレーヤーの統合・淘
汰が進むと見ますか。
「可能性としてはあり得ますが、ま
だ我々も明確には把握できていません。
ただ、今後どのような再編劇があっ
たとしても、我々ほどシナジーの出る
組み合わせはないはずです。 それだ
け今回の統合はユニークで価値がある
と自負しています」
──新生プロロジスの今後の戦略を聞
かせてください。
「高い質の物流施設をマーケットに
提供することが我々のモットーなの
で、やはり新規開発が中核になります。
今年はグローバル全体で一五億ドル
(一二七五億円) 規模の開発をスター
トする予定ですが、その半分にあた
る七億五〇〇〇万ドル(六三八億円)
はアジアへの投資です。 アジアへの投
資のうち、ほとんどは日本市場に投
下する予定です。 将来的にはグローバ
ルで毎年二五億ドル(二一二五億円)
分の開発を手掛けていく方針ですが、
その中でも日本にはコンスタントに投
資して行きます。 まだ詳細は明らか
にできませんが、投資をより効率的
にするため、ジャパンファンドの組成
も視野に入れています」
「財務面ではさらなる負債比率の圧
縮を目指します。 現在の当社の時価
総額合計は二五〇億ドル(二兆一二
五〇億円) で、そのうち負債は四〇
%弱に留まっています。 これを当面
は三五%にまで引き下げていく。 そ
うすることで、当社に対する信用格
付けはさらに向上していく」
──経済成長の著しい中国よりも日
本に手厚く投資する理由は?
「もちろん中国はポテンシャルの高
い魅力的なマーケットです。 我々も
新規開発分のうち、一〇〜一五%ほ
どは投資していく予定です。 しかし、
(ウォルターC.ラコウィッチ) 1994
年プロロジス入社。 中部大西洋地域
責任者、マネージングディレクター兼
CFO、プレジデント兼COOを経て、
2008年11月にCEOに就任。 金融
危機によって難局を迎えたプロロジス
の再建の舵取りを託される。 今年6月、
プロロジスとAMBプロパティーコーポ
レーションが経営統合して新生プロロ
ジスが誕生。 AMBのハミード・モガダ
ム前CEO( 現プロロジス会長兼共同
CEO)と並んで共同CEOに就任。 現
在に至る。
開発中資産全体
(2011 年3 月末)
2011 年
開発スタート予定
将来的な開発スタートの
可能性(年間)
28%
2 億
1,000 万ドル
16%
1 億
56% 2,000万ドル
4 億2,000 万ドル
7 億5,000 万ドル
(638 億円)
15 億ドル
(1,275 億円)
〜25 億ドル
(2,125 億円)
20%
3 億ドル
30%
1 億
2,000万ドル
50%
7 億
5,000 万ドル
35%
8 億
7,500万ドル
30%
7 億5,000万ドル
35%
8 億
7,500 万ドル
アメリカ大陸ヨーロッパアジア
※1ドル=85円換算
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