ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年8号
ケース
カスミ 現場改善

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2011  44 二年連続で「物流合理化賞」を獲得  茨城県を中心に一三七店舗(二〇一一年五 月末現在)を展開する食品スーパーのカスミは、 物流現場の改善活動では知る人ぞ知る企業だ。
日本ロジスティクスシステム協会(JILS) が主催する「全日本物流改善事例大会」では 二〇一〇年、一一年と二年連続で、カスミの 協力物流会社が「物流合理化賞」を受賞して いる。
 昨年度、物流合理化賞を獲得したティーエ ルロジコムの土浦支店は、カスミの「中央流 通センター」で構内作業を手掛ける協力会社。
今年受賞した三共貨物自動車も、カスミの第 二センター「岩瀬流通センター」の運営を任 されている協力会社である。
 カスミの物流部門は〇四年からトヨタ流の 現場改善をスタートさせた。
当初は同社の物 流部門が先頭に立っていたが、近年は活動の 中心は協力会社に移っている。
計四社ある協 力会社が、カスミの物流部門の指導下、地道 な改善を続けている。
 多くの企業が導入を試みながら徐々に形骸 化してしまうことの多いトヨタ流の改善活動 が、カスミの物流部門には深く根づいている。
トヨタの関係者も「ここまで続いている例は 全国的にみても珍しい」と驚きを隠さないと いう。
カスミの松本繁執行役員ロジスティッ ク部部長は、その理由をこう説明する。
 「トヨタがどうこうではなく、まずわれわ れ自身が活動を引っ張らなければ、協力会社 だけでは改善は進まない。
最初から?全員参 加?でやろうと言ってきたし、今もそうして いる。
東日本大震災の混乱を何とか乗り切れ たのも、こうした体制があったから。
皆が徹 夜で協力してくれた。
本当に感謝している」  全員参加が言葉だけでないことは、活動内 容を見ればわかる。
カスミの物流部門は毎週 月曜日に、協力会社の改善リーダーなどが参 加する「改善委員会」を欠かさず実施してい る。
「現場報告会」も原則として年三回続け ている。
改善事例を関係者に披露する場でも あるこの「報告会」は、〇四年九月の第一回 からすでに二二回を数える。
 「現場報告会」には、カスミの社長をはじ め全役員が必ず出席する。
同社の商品部や店 舗担当の幹部、さらには協力会社の経営陣な ど合わせて五、六〇人が参加する。
改善事例 を発表する協力会社の担当者にとっては、ま さに晴れ舞台だ。
ここで発表されたテーマの いくつかが、JILSの大会などでも高く評 価されてきた。
 2004年からスタートしたトヨタ流の現場改善が見 事に定着した。
活動を実践する協力物流会社が、「全 日本物流改善事例大会」で相次いで物流合理化賞を 受賞するなど、レベルの高さも折り紙付きだ。
カス ミの物流部門が先頭に立ち、経営陣や協力会社を巻 き込んできた。
“全員参加”の徹底が、頓挫しがち な活動を継続する原動力になった。
現場改善 カスミ 経営陣から協力物流会社まで“全員参加” トヨタ式の改善が独自手法として定着 カスミのロジスティック部長 として改善活動を牽引してき た松本繁執行役員 45  AUGUST 2011  松本部長は、いわゆるトヨタ流の改善活動 の?伝道師?ではない。
豊田自動織機から正 式に指導された期間は半年だけで、これはカ スミの改善活動にとって入口にすぎなかった。
松本氏がこの手法に手応えを感じ、誰に指示 されることなくトヨタL&Fが主催するTP S(トヨタ生産方式)セミナーを受講したの は、活動開始から一年以上してからだ。
 
複稗味咾料監本物流改善事例大会に自 ら聴講者として参加するようになったのも、 この頃だった。
そして参考になる事例があれ ば、発表者に連絡を入れ、協力会社の担当者 を引きつれて現場見学などを実施するように なった。
あくまでカスミの物流を最適化する ことをめざしてきた。
妥協せず諦めないことを学んだ  カスミがトヨタ流の改善をスタートした直接 のきっかけは、物流センターの狭隘化だった。
ダイエー出身の小浜裕正社長(現会長)が中 心になって導入した。
 〇三年八月に豊田自動織機のコンサルタン トが初めてカスミを訪れた。
彼らはまず物流 センターを見学すると、店舗改善から着手す べきと主張した。
後工程である店舗にメスを 入れなければ、センターで改善を実施しても 抜本的な対策にはならないという判断だった。
 カスミの物流部門の側にも事情があった。
折しも第二センターである「岩瀬センター」の 稼働を〇四年六月に控え、物流部門は手一杯 の状態。
トヨタ流の改善活動の大変さを噂で 聞いていたこともあり、「岩瀬」が稼働する まで待ってほしいというのが本音だった。
平 たく言えば、先送りである。
 一年後の〇四年八月、いよいよ物流部門へ の指導がスタートした。
が、初日からトラブ ルが発生した。
豊田自動織機のコンサルタン トが三人で物流センターを訪れたとき、松本 部長は店長会議に出席中で不在だった。
残っ ていた物流部門の担当者は、カスミのための 活動なのに責任者がいないとはどういうこと だ、とこっぴどく叱責された。
 そんなスタートだったこともあり、当初は 喧嘩腰で言葉を交わす日々が続いた。
「最初 は彼らの言っていることがよくわからなかっ た。
作業は時間内に終わっているし、商品も 流れている。
なぜ従来のやり方を否定するの か理解できなかった」と松本部長は述懐する。
 気乗りはしなくてもトップダウンの案件 だ。
渋々ながら物流部門も動きはじめた。
ま ずは徹底的に物流部門のスタッフがしごかれ た。
コンサルタントは通常二週間おきに来訪 し、三日ほど滞在する。
そして現場で見つけ たムダを指摘し、宿題として残していく。
 この頃の松本部長は、「もう机に座っている 10 年 11 年 「カスミ中貫DC 出荷物量のジャストイン タイム化による保管在庫物量の抑制」 〈SBSグループ ティーエルロジコム 北関 東営業部 土浦支店 主任 大槻直紀〉 「仕分けミスの削減と組織改革(チルド構 内編)」 〈三共貨物自動車 カスミ岩瀬流通セン ター センター長 斉藤雅之〉 「関連部署との3つの連携 〜 3PLの役 割とは…〜」 〈三共貨物自動車 カスミ岩瀬流通セン ター センター長 斉藤雅之〉 「納品台車管理システムの構築による事 務所作業時間の短縮」 〈SBSグループ ティーエルロジコム 北関 東営業部 土浦支店 主任 大槻直紀〉 【物流合理化賞】【物流合理化努力賞】 カスミ流の活動として完全に定着した22 回を数える「現場報告会」の成果 全日本物流改善事例大会(JILS 主催) の常連受賞企業に成長 「カスミ中央流通センター」(CDC)稼働。
当初はドラ 1980年8月 イの通過型機能のみ。
1984年7月 CDC内にチルドの通過型機能を設置。
CDC 内で「カスミドライセンター」(国分が管理する在 1988年3月 庫型拠点)を稼働。
カスミが企業として、豊田自動織機の指導に基づく店舗 2003年8月 改善活動をスタート。
CDC の狭隘化に伴い、第2 拠点「カスミ岩瀬流通セン 2004年6月 ター」を稼働。
店舗につづき物流部門でも豊田自動織機のコンサルを受 けて改善活動をスタート。
約半年間の指導を受け、その 後は独自の改善活動を展開。
2004 年8月 03 年から手掛けてきた店舗改善プロジェクトが徐々に下 火に。
管理職を対象とする体質改善のため新たに「蛻変 (ぜいへん)プロジェクト」をスタート。
2009 年4月 物流部門の「現場報告会」で発表された事例をJILS の「全 2010年6月 日本物流改善事例大会」に応募したところ、2社が受賞。
前年につづき、JILS の「全日本物流改善事例大会」で 2011年6月 2社2チームが受賞。
AUGUST 2011  46 暇などない。
朝から晩まで現場に張り付いて いた。
なにせ宿題がどうなっているのか、毎 日のようにメールがくる。
会社から与えられ たミッションと割り切って、勉強のつもりで やっていた」という。
 半信半疑のまま、工程改善による作業人員 の削減や、多回配送の導入による物量の平準 化などに取り組んだ。
〇四年九月に催した第 一回の「現場報告会」では、松本部長がプレ ゼンテーションを実施。
これから進めるべき 業務改善プロジェクトの体制や、改善を実施 する項目などを関係者に説明した。
 当初は強制された活動だったが、その効果 に携わり、六カ月目に三人の分担をきめて改 善項目をまとめた」と振り返る。
 最初は面食らって「一人一〇〇個は無理だ ろう」と思っていた渡辺氏だったが、終わっ てみれば、それぞれに一〇〇個以上の項目を 抽出していた。
「いま考えれば、部外者だか らこそ見えることがある、という狙いだった のだと思う」。
 三人は見つけた改善項目を「チャレンジ・ ザ一〇〇」と題したレポートにまとめ、〇五 年九月の社内会議で発表した。
その後は、こ れらの課題を一つずつ潰していくことが物流 部門の改善活動の中心に据えられた。
 このようにカスミの改善活動は、最初は豊 田自動織機が指摘したムダを物流部門が改善 するところからスタートし、次はカスミの中堅 社員が見つけたムダの排除に取り組んだ。
そ して現在では、協力会社が自らネタを見つけ、 改善する体制へと移行している。
 かつてはカスミの物流部門の担当者が物流 現場に常駐していた時代もあったが、今では 現場はすべて協力会社に任せている。
計十三 は明らかだった。
改善の結果、狭隘化に悩ま されていた物流センターのスペースは八〇〇 平方メートルほど空いた。
松本氏は徐々にト ヨタ流の改善活動にのめり込んでいった。
 「われわれには、このぐらいやればいいんじ ゃないかという気持ちがあった。
ところが彼 らにはそれがない。
絶対に妥協しないし、最 後まで諦めない。
そういう姿勢を学んだ」 荷主が先導し協力会社が競い合う  豊田自動織機の物流部門への指導は約半年 で終わった。
その後はカスミの物流部門が自 ら活動を牽引する必要があった。
その役割を 託されたのは中堅・若手の社員だった。
 同社のロジスティック部は、物流部門と情 報システム部門からなる。
松本部長の下に情 報システム担当マネジャーと、物流担当マネ ジャーがいて、それぞれにチームを率いてカ スミのオペレーションを下支えしている。
 コンサル期間が終了して一カ月ほど経った 〇五年三月、物流部門に新たに三人の社員が 配属された。
いずれも情報システム部門や店 舗からの異動だった。
 このとき情報システムから異動してきた渡 辺文彦物流担当マネジャーは、「まず半年間 は、とにかく現場に入れと言われた。
それで 一人一〇〇個以上の改善項目を見つけろ、と。
私も構内作業から店舗配送のトラックに同乗 するところまで、研修で全工程を回りながら 改善項目を探した。
五カ月間ずっと現場作業 ロジスティック部の渡辺文彦 物流担当マネジャー 指示通りカゴ車に店別仕分け チルドエリアにはDPSを配備 トヨタ流を彷彿とさせる標語 頭上に点灯するランプで指示 47  AUGUST 2011 き取り先を探すという息の長い活動である。
そ の結果、たとえば青果部門では、月に九五・ 一キログラム発生していたゴミが一五・一キ ロまで激減するという成果につながった。
 このようにカスミの改善活動の対象領域は 物流業務を越えてどんどん広がっている。
し かし、七年前に豊田自動織機のコンサルタン トに指摘されながら、いまだに実現していな い項目もある。
 カスミの中央流通センターには、三一年前 の稼働以来使いつづけている「ロート」と呼 ぶマテハン設備がある。
現在の無人搬送車の 原型ともいうべき機械だ。
 センターの床に溝が掘られ、その中をチェ ーンが動いている。
このチェーンに特注のカ ゴ車のストッパーを差し込むと、カゴ車を自 動で搬送する。
最新の自動仕分け機と比べれ ば牧歌的なほどゆっくりとしたスピードだが、 それでもドライの出荷作業場から構内をぐる りと巡り、約一〇本の引き込みラインに沿っ てカゴ車を方面別に分けることができる。
 この「ロート」に代わる仕分け方法を見つ け出すことが、コンサルタントから出された宿 題の一つだった。
ハードに投資をすれば、出 荷能力の向上や、スペース効率の改善は可能 だ。
実際、物流部門も過去にそうした提案を 上申したことがある。
しかし、実現していな い。
「改善には金はかけない、そうすると金 は出ていくが知恵が出なくなる」──という 判断からだ。
 「ロート」を撤去して、カゴ車の方面別仕 分けをすべて人手でやろうと考えたこともあ った。
しかし、このアイデアには、在庫セン ターの運営を委ねている国分から異論が出た。
「シミュレーションしたら、ロートの電気代や メンテナンス・コストを考えれば、新たに人 を投入してもトントンになるという結果が出 た。
それでも国分さんがやりたがらない」と 松本執行役員は苦笑する。
 現場の協力会社がその気にならなければ強 行はしない。
こうした現場への配慮が、活動 の継続につながっている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) 人いるカスミの物流担当者は、各現場を管理 しながら、店舗や商品部などカスミの社内調 整などに当たっている。
 「中央流通センター」でドライの構内作業お よび配送の半分程度を任せているティーエル ロジコムをはじめ、チルドの構内作業と配送 を任せている飯塚運輸、また「岩瀬流通セン ター」を任せている三共貨物自動車など、協 力物流会社各社との付き合いはいずれも長く、 安定した関係を築いている。
 その一方で、競争原理も活用している。
約 二三〇台の車両を運行している配送部門では、 五年ほど前からエコドライブに注力してきた。
燃費の改善を協力会社による「エコレース」 と称してグループ別・会社別に競い合う。
そ の結果を年度単位で集計して表彰する。
 協力会社の一社である生熊運送は、社長自 ら報告会で発表者を務めるほどこの活動に熱 心に取り組んだ。
デジタコによる管理を徹底 し、〇八年にはカスミが授与する「エコ・カン パニー・オブ・ザ・イヤー賞」を獲得。
その ときの猪熊運送の燃費は四トン車の年間平均 で六・七五キロ/ℓ、六トン車が六・〇一キ ロ/ℓだった。
同じ年に「エコドライバー・ オブ・ザ・イヤー賞」を獲得した飯塚運輸の あるドライバーの一〇トン車の年間平均燃費 は四・四七キロ/ℓを記録した。
 廃棄物削減活動「ゴミゼロ」にも三年越し で取り組んできた。
スタッフの環境意識を高 めてゴミの分別を徹底し、回収した資源の引 カゴ車に積み「ロート」で搬送 庫内の一部を在庫拠点として活用 「ロート」が方面別に自動仕分け DCでピッキングし出荷エリアへ

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