ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年8号
ケース
ティーエルロジコム 館内物流

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2011  48 「直納業者」の入出まで管理  今年三月一九日、「二子玉川ライズ・ショ ッピングセンター(SC)」が東急線の二子玉 川駅隣接地にオープンした。
駅東側地区再開 発事業の一環として東急グループが整備した 大型複合商業施設だ。
 同施設は三つの建物から構成される。
地下 一階地上八階建ての「タウンフロント」、オフ ィス階を含む地下二階地上一六階の複合ビル 「リバーフロント」、そして駅ビル内の「ステー ションマーケット」だ。
 地下一階は三館一体のフロアになっており、 駅の西側で別の運営会社が同時期に開業した 「ドッグウッドプラザ」とも繋がっている。
そ こに東急百貨店と東急ストアが出店し、計約 六〇〇〇平方メートルの一大地下食品売り場 を形成している。
 ドッグウッドプラザを含む四施設の総延べ 床面積は約十二万平方メートル。
二八〇のシ ョップが出店し、オフィス棟の入居企業も含 めるとテナントの数は三百数十にもなる。
そ の「館内物流」を、SBSグループの中核物 流会社、ティーエルロジコムが一括して管理 している。
 同施設にはテナントへの納品やドキュメン ト類の配送のために、毎日およそ三五〇台の 車両が出入りする。
車両の出入り口は二カ所 で、荷物の積み降ろしはタウンフロント地下 一階とリバーフロント地下二階の二カ所に設 けられた物流センターで行う。
 タウンフロント側(北側)のメーンセンター には、トラックバースが四トン車用を含め八カ 所設置されている。
リバーフロント側(南側) のサブセンターのバースは五カ所で、すべて四 トン未満の小型車用だ。
 限られたバースで大量の積み降ろしを処理 するには、車両の停車時間を極力短くする必 要がある。
バースに車両が滞留すれば、待機 車両が施設周辺にあふれて道路混雑を引き起 こす恐れもある。
 納品に来たドライバーがそれぞれ館内のテ ナントまで配達していれば、当然、停車時間 は長くなる。
館内の配達は物流センターから 各施設へつながる地下通路を使って行い、最 も距離の離れたドッグウッドプラザへは往復に 二〇分以上かかる。
 首都圏の大型複合施設や公共施設で「館内物流サ ービス」を手がけている。
施設内の店舗やオフィス の集配業務を代行し、搬入出車両や納品業者の入退 館管理にも責任を負う。
納品車両の違法駐車や周辺 道路の混雑を解消するとともに、施設のセキュリテ ィ対策にも一役買っている。
館内物流 ティーエルロジコム 複合施設内の物流を一括して管理 ICTを活用し独自スキームで展開 ニコタマの新しい顔「二子玉川ライズSC」 49  AUGUST 2011  大手宅配便業者ともなれば、その程度では 済まない。
ドライバーが一人で何百個もの荷 物を車から降ろし、各施設との間を何度も往 復することになるため、配達を終えるまでに 数時間もかかってしまう。
その間は車両がバ ースを占有した状態になる。
物流センター全 体の車両の回転率が著しく悪化する。
 こうした事態を避けるため、ティーエルロ ジコムはビルのオーナーから二カ所の物流セン ターの運営を任され、納品車両や作業員の入 出管理およびテナント向けの荷物の集配業務 を代行している。
 物流センターで宅配便業者や路線業者(以 下「宅配業者」)から荷物を預かり、同社の スタッフが各テナントへ配達する。
荷物の積 み降ろしが済んだ車両はただちに退出するた め滞留時間が短くなる。
宅配業者がティーエ ルロジコムに支払う運賃は個建てで、およそ 五〇社と個別に契約している。
 近年、都市部大型施設では納品車両による 違法駐車や周辺の交通渋滞などへの対応を目 的に、二子玉川ライズSCと同様に、宅配業 者の集配作業の集約に取り組むケースは増え ている。
 ただし館内に搬入出されるすべての荷物を 対象にするのは難しい。
集配代行を採用して いる施設でも、荷物の特性や納品業者の事情 から、テナントに直接納品されている荷物は 多く、それらは通常、管理の埒外に置かれて いる。
 しかし、ティーエルロジコムはそうした「直 納業者」の荷物の搬入出についても館内物流 サービスの管理対象としている。
そのために 車両の管理や配達員の入退館管理までを業務 内容に加えている。
 過去に同社は大型施設で宅配業者が納品す る「宅配荷物」と納品業者が自家用車などで 納める「直納荷物」の搬入出に関して独自調 査を行っている。
その結果、荷物の数量と車 両の台数とがアンバランスな関係にあること がわかった。
荷物の数量では七対三で宅配荷 物が上回ったのに対し、車両の台数では比率 が逆転し直納の車両が七割を占めていた。
 このことから、バースを有効活用して館内 物流を効率化するには、宅配荷物の集配代行 だけでなく、台数で勝る直納業者の車両の入 出管理まで一元的に行う必要があると考えた。
 また昨今ではセキュリティ対策の面から施 設側が荷物の搬入出に伴う人や車の管理を強 化する傾向にある。
その対応も含め、同社は 館内物流の受託にあたり、集配代行と搬入出 に伴う車両・入退館管理をセットで提案する 方針をとっている。
館内の荷物を追跡管理  同社が館内物流を手がけたのは二〇〇〇年 にオープンした「渋谷マークシティ」が最初 だった。
本格的な館内物流は当時ではまだ珍 しく、先例は数えるほどしかなかった。
渋谷 マークシティは東急電鉄など三社が開発した 商業施設で、その当時、東急電鉄の子会社 で、ティーエルロジコムの前身である相鉄運 輸が後に吸収合併した東急運輸に声がかかっ た(相鉄運輸は〇二年四月に東急ロジスティ ックへ社名変更、〇五年六月にSBSが東急 ロジスティックを買収し、〇六年一月から現 社名に)。
 その後、〇七年にオフィス中心の複合施設 で総延べ床面積一五万平方メートルの「大崎 Think 
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圍錚er」の館内 物流をコンペで受託した。
この案件で同社は セキュリティ管理を含めた館内物流サービス のモデルを確立した。
 さらに二〇一〇年には、建て替えた参議院 議員会館の業務を受託。
今回の二子玉川ライ ズSCはこれに続く四件目の案件となる。
 館内物流を運営するうえで同社は施設の開 発・運営会社との緊密なパートナーシップを 重視している。
施設の概要が決まった段階で 建物の床面積やテナント数などから荷物量や 車両台数をシミュレーションし、車両の誘導 や荷捌きの方法、施設内の物流動線などを施 設側に提案する。
営業本部の三身直人課長は 営業本部の三身直人課長 AUGUST 2011  50 「設計段階から参加することで、より踏み込 んだ提案ができる」と話す。
同社のシミュレ ーション結果を根拠にバースの数を減らして 荷捌きスペースを増やすよう提案し、図面を 変更してもらったケースもあるという。
 二子玉川ライズSCでは車両の搬入出を二 カ所のセンターへどう割り振るかが一つのポ イントだった。
試算をもとに数量の多い宅配 荷物は北側のセンター一カ所に荷受けを集約 し、地下食品街のテナント向けを中心に車両 台数が多い直納荷物の搬入は二カ所のセンタ ーに分けた。
 館内で同社が集配を代行する荷物は一日に およそ三〇〇〇個。
レストランの食材やおし ぼりタオル、オフィス向けの仕出し弁当、新 聞などの配達も引き受けている。
 荷受けは午前六時半に開始する。
北側の センターには宅配車両専用のバースを確保し、 優先して作業を行えるよう車の誘導をコント ロールしている。
四トン車で二、三台分の荷 物を降ろすと荷捌き場は一杯になってしまう ため、その場で施設別に仕分けてただちに荷 捌き場から搬出。
各施設の中継点で待機する 別のスタッフに引き継いで各階のテナントへ配 達する。
 宅配会社の送り状は、各社でフォーマット がまちまちだ。
荷物の仕分けや配達は送り状 のテナント名を作業員が目視で確認しながら 行う。
迅速に作業をするためには、テナント 名を見て、そのテナントがどの建物の何階の 票を業者に返却したあとでも、画像データが あれば、万が一、荷物のトラブルが発生した 場合にも対応しやすくなる。
 三身課長は「荷物を確実にテナントへ届け るため、システム開発にはかなりの投資をし た。
ここまで徹底して管理することで納得し て業務を委託してもらえる」と強調する。
入退館管理も独自のシステムで  直納業者の搬入出管理についても同社が自 らシステム開発を行い、二カ所のセンターで運 用している。
 直納業者の納品先や納品日などはほぼ固定 どの位置にあるかを瞬時に判断できなければ ならない。
このため業務開始前に二カ月かけ てトレーニングを実施し、すべてのテナントの 施設内の位置や搬送路の動線をスタッフに覚 え込ませた。
 また館内で荷物の運送責任を全うし、テナ ントからの問い合わせにも対応するため、荷 物追跡管理システムを独自に開発し運用して いる。
宅配業者の送り状のバーコードを「? 荷受け」、「?物流センターからの持ち出し」、 「?配達完了」の各ステータスでスキャンして 「誰がいつどのテナントに何を配達した」とい うデータを取得する。
 集荷の場合も同様の方法で「どのテナント から何を集荷してどの業者で発送した」かを 管理する。
問い合わせの際には取得したデー タをもとに、送り状番号やテナント名、業者 名などから履歴を検索できる。
 特定のテナントに一度にたくさんの荷物を 配達する場合には、「持ち出し」を入力した 時点ですべての荷物を一覧にした配送表を出 力する。
送り状ではなく配送表を見て配達し、 配達完了時は配送表のバーコードの入力だけ で済むようにしている。
テナント側も一覧表 の方が荷受け時に荷物のチェックをしやすい。
 送り状の原票の画像データも、このシステ ムで管理する。
配達完了後にテナントの受領 印が押された送り状をスキャナーで読んで画 像データを取得し、バーコードによって取得 した履歴データと紐付けている。
送り状の原 北側センター口奥が荷捌きスペース荷降ろしがすめばその場で仕分け 登録業者証と交換に入館カードを もらう 直納業者は駐車許可証を車内に掲 示 51  AUGUST 2011 ん、路上に違法駐車して勝手に搬入する行為 も防止できる。
 未登録業者が来館した場合にも、受け付け で申告書に記入すれば登録者と同様に入館証 を貸し出し、認証システムで管理する。
ただ し館内の物流経路は複雑で初めて来館する業 者にはわかりにくい。
館内で迷って配達に時 間がかかると荷捌き場がスムーズに回らなく なる。
このためティーエルロジコムのスタッフ が来館者を目的地まで案内する。
物流動線の セキュリティ管理を館内物流の範疇に含める 理由はこうしたところにもある。
二カ月かけてスタッフを訓練  二子玉川ライズSCでの館内物流業務は施 設のオープン前から始まっていた。
まずSC の事業主が主催するテナントや納品業者向け の説明会で、車両の出入りや入退館のルール、 システムの運用の仕方、搬入経路などの周知 を徹底した。
 二月一日に店舗の商材搬入やオフィスの引 っ越しが始まり、この段階から同社が荷物の 集配と車両の管理にあたった。
これに先立っ て同社は、実際の物流動線を使い、いくつか の状況を想定して新規採用したスタッフによ るエアートレーニングを繰り返すなど綿密な準 備を行っている。
 開店までの約二カ月間に入出した車両は納 品車両のほか引っ越し車両や内装工事の関連 車両まで含めると延べ一万五〇〇〇台に上っ た。
作業工程表をもとに同社が全車両の入出 をコントロールした。
 またオープン前に限って商材搬入をすべて 宅配扱いにした。
それもあって集配貨物は一 日に五〇〇〇個を超えた。
「荷物も車も大変 な数だったが関係者との事前調整やトレーニ ングの甲斐あって何とか乗り切った。
オープ ン後もシミュレーション通りの数で混乱はなく、 半月ほどでセンターを安定稼働できた」と志 村興一二子玉川ライズ営業所長は振り返る。
 同社は現在、営業担当と現場オペレーショ ン要員をあわせて五〇人余りの専任チームで 館内物流に取り組んでいる。
延べ床面積が一 〇万平方メートルを超える都心や繁華街の複 合ビルがターゲットだ。
来年以降に開業する ビルですでに三、四の案件が進行中だという。
 「館内物流には今までビルの運営費のなか に埋もれていた物流費を明確にする効果もあ る。
認知度はまだ高くないが、導入のメリッ トをより具体的に示して環境への貢献もアピ ールしていきたい」と三身課長は話す。
 同社ではこれまでも案件ごとに、館内物流 を導入しなかった場合にオーバーフローする車 両の台数などをシミュレーションして、施設 側に提示してきた。
今後はさらにCO2の排 出量や、エレベーターの使用頻度が減ること による電力使用量の削減効果についてもシミ ュレーションを行い、サービスの効果と必要 性を訴えていく考えだ。
  (フリージャーナリスト・内田三知代) しているため、事前にその内容を登録して搬 入出を管理する方法をとっている。
登録の済 んだ業者には同社が登録業者証と車両の駐車 許可証を発行する。
 駐車許可証には業者名のほか搬入出する曜 日と時間帯、および接車バースが印字してあ る。
ドライバーはフロントガラス越しに許可 証が見えるように車内に掲示しておく。
セン ターのスタッフがこれを見てバースへ車両を誘 導する。
 登録業者証はICタグ付きで、業者名や納 品先のテナント名などの登録内容が書き込ま れている。
業者はセンターの受け付け窓口に 登録業者証を提示し、認証が済むと登録業者 証と交換に館内通行用のICタグ付き入館カ ードを渡される。
 物流センターから搬送通路を経由して店内 へ入る際に、入館カードで機械認証を行わな いとドアが開かない仕組みになっている。
退 館時に受け付けで入館カードと引き換えに登 録証を業者へ返却する。
 この仕組みで入館時間や館内の移動履歴を 管理できるため、セキュリティ管理はもちろ 志村興一二子玉川ライズ 営業所長

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