ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年8号
SOLE
WBSで業務の実態を系統的に把握変化に強い仕事のしくみを作る

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SOLE 日本支部フォーラムの報告 The International Society of Logistics AUGUST 2011  84  ロジスティクス活動の対象は、仕 事のしくみ(ワークシステム)の企 画・開発・改造・改良と適確な運用 管理である。
現在、あらゆる分野で グローバル化(産直化=製品の直送 化・現地化)が進んでいるが、そう した変化に強い仕事のしくみを作る ためには、永年培われてきた事業・ 仕事を磨くための知恵・コンセプト・ 方法・ツールを含めて編集し、利用 できる様にする必要がある。
その役 割をSOLE日本支部で果たすべく、 六月のフォーラムでは、この分野で先 駆的役割を果たしてこられたJMA C(日本能率協会コンサルティング) の中森清美氏と当支部長傳田晴久か ら「業務機能とWBS」について解 説をいただいた。
(企画担当:SOL E日本支部幹事 曽我部旭弘)  二〇一一年三月十一日、日本は 大きな転換点を迎えた。
関東大震 災、戦後混乱期に匹敵する大災害が 発生した。
この災害は、日本の将来 を大きく変えるインパクトを持ってい る。
死者・行方不明者は二万人を超 え、地震、津波、原発の放射漏れな どによってさまざまな可能性を考えた 安全対策がことごとく破られてしま った。
災害発生から三カ月(本稿執 筆時点)あまりが経つが、政府や東 京電力、原子力保安院などの対応の まずさや遅れが目に付く。
 今回のような災害非常時対策には、 救助、救済、復旧、復興などの段 階がある。
現段階は、まだ救済、復 旧段階にあり、政府は全体を統括し、 優先順序を明確にするプランおよび行 動指針を示す必要がある。
そのため には、その時々の課題を洗い出し、明 確にし、優先順序をつけ、そして各 関係者の知恵と勇気と行動力を結集 するツールが必要である。
 その一つとしてW B S(Work Breakdown Structure)手法がある。
このWBS法は、今回のような災害 対策のみならず、さまざまなシステム の構築や大幅な改造、見直しなどを 行う際にも、課題や業務などを明確 にする上で役立つ。
今回はその手法 の概要と適用例を示す。
システムトラブルとWBS  システムトラブルが種々発生し、 我々の日常生活に深刻な影響を及ぼす 事は少なくない。
システムトラブルの 原因の多くは対象システム(業務、情 報、機器、装置‥‥)について、関 係者(システム立案者、構築者、運 用者、利用者など)が十分理解して いないことにある。
 例えば、福島原発の例:「耐震指 針」に対する理解不十分が挙げられ る。
中部大学の武田邦彦教授は、雑 誌「月刊WiLL」二〇一一年五、六 月号で原発の「耐震指針」について、 「地震の専門家」が想定した地震規模 を前提に原発を設計、建設するとい う「耐震指針」であるから、専門家 が想定した以上の地震が発生すれば 原発は必ず壊れる、と説明している。
 この「耐震指針」のカラクリをシス テムの関係者(住民もその一人)全て が正しく理解していたとすれば、原発 の存在は無かったかもしれない。
なお、 筆者は原発反対論者ではなく、安全 な原発の必要性を痛感している者で ある。
 業務内容であれ、設計指針であれ、 誰もが理解できる「言葉」(言語、文 字、表、図、音声、映像など)で対 象システムの全容を説明すること、ま たその説明の方法が求められている。
 もう一つ、最近気になるトラブル が続発したみずほ銀行のシステム障害 である。
みずほ銀行は、第一勧業銀 行、富士銀行、日本興業銀行が〇二 年に分割・合併して誕生した。
その 際、それぞれのシステムは新たなもの に完全に統合されたわけではない。
今 なおつぎはぎだらけのシステムである と推察される。
ここでも、例えば安 全に対する思想など細部にわたるす り合わせが重要であると考えられる。
 再び、原発システムに立ち戻ると、 TVニュースなどでは原子炉本体の 保全安全管理の話がよく出てくるが、 電源システム、冷却システム、監視 システムなどの周辺システムの保全、 改良保全がどうなっていたかの話が ない。
すると今回の事故は、まさに システム保全の欠落によって起こった のではないかとさえ思えるのだ。
シ ステムとしての保全業務機能がどの ように展開されていたかが、事故を 解き明かすためのポイントであろう。
システム記述とWBSの概要 (1) システム記述法の概要  システムの機能や機能関連などを記 述する方法には、シナリオ法や機能フ WBSで業務の実態を系統的に把握 変化に強い仕事のしくみを作る 85  AUGUST 2011  一般に業務システムを設計するに当 たっては、顧客の抱えている問題点 や課題を聞き出すことから始められ る。
また、現行業務を記述してその 全体像を明らかにする。
それからそ の企業の基本的使命、課題などから、 その業務の本質的要件を抽出し、業 務システムに要求されるシステム要件 を明確にしていく。
 業務改善における展開方法を以下 に示す。
?基本機能の抽出、定義 ?基本業務を確実に実行するための 関連業務機能の洗い出し ?現状の業務機能別の時間値を算出 し、業務の効率、貢献度を図る ?業務機能上の問題点、改善点や改 善策を抽出する  図2は製造業の業務のひとつであ る工程計画を例に、その機能の展開 例を示したものである。
業務機能は、 L1、L2、L3などとレベル表示 をしておくと他の業務展開との比較 が容易である。
生産システムでの適用と分析  生産システムは、単に加工、組み 立てなどの基本機能や部材の供給シ ステムのみならず、それを支援する準 備、管理、計画システムなどの機能 ストダウンを図るものである。
例えば、 二つの部品を締結するために、ボルト、 ビス、カシメ、溶接、圧着、接着な どさまざまな方法を考え出し、最も 安価な方法を選択するのである。
 機能や方策などをツリー状に展開 する方法は、保全設計ではFTA (Fault Tree Analysis)やFMEA (Failure Mode & Effect Analysis) がよく知られている。
このツリー法で 表現される業務や課題の展開をWB Sとか、業務機能展開という。
以下、 本稿ではWBS法すなわち業務機能 展開について述べる。
(3) 業務システムの設計と業務分析 ロー図などがある。
図1にその手法の 概念図を示した。
その原点的かつ基 本となる手法がストラクチャー法また はWBS法である。
システムの機能 や構造を細部にわたり階層的に展開 し記述する方法である。
(2) ストラクチャー法の例  ストラクチャー表示は、V E (Value Engineering)において、製 品機能展開に用いられている。
製品 の機能や部品の機能は、「○○を△△ する」と名詞と動詞で表現する。
VE では、現状の製品や部品の機能を改 めて洗い出し、記述する。
その機能 をベースに、現状を離れて代替案を自 由に創出し、その中から最小のコスト で同じ機能を果たすものを採択し、コ 図1 システムの設計技法 1. テトラ発想法(MAP 法) 3. フロー線図4. ツリー表示(structure) エネ ルギー 高速化EDP 省力化 工程 プラス チック 材料 熱加工自動 設計 情報 2. 三次元マトリックス法 材料 金属 木紙 電気 空気 油圧 重力 経営管理生産 エネルギー 特報 χ1 χ2 χ3 χ4 G1 G5 G6 G2 G4 G3 サブ システム 図2 製造業の業務機能体系の例 業務機能レベル L-1 L-2 L-3 業務リスト業務明細 L-4 生産管理 工程計画 手順計画 工程展開 工程表作成 作業計画作成 工程品質定義 工程別チェックポイント 作業標準書作成 期計画 大日程計画 四半期計画 中日程計画 月次計画 小日程計画 予定実績管理 遅れ把握 工程品質計画 日程計画 進度管理 日程管理 工程管理 AUGUST 2011  86  ある工事業者では、現地工事の内 容をパッケージ化し、仕事の指示簡 便化と明確化に役立てている。
 
E R T(Program Evaluation and Review Technique)やネットワ ークで工程または日程を表示している 場合は、アクティビティごとに業務パ ッケージを作っておくとよい。
(4) 契約と業務範囲の指示  作業依頼書の業務内容や範囲が明 確になることから、契約書に添付さ れることがある。
委託先業者と自社 の役割分担を明確にすることが重要 である。
例えば、機器メーカーと据 付工事業者、基礎工事業者などの間 で業務の取り合いが起こることもある。
官公庁への申請手続きひとつとって も、役割分担があいまいだとどちら もやってなかったなどの問題が起こる。
(5) 研 究 開 発 部 門 で の 応 用 例  課題出し、テーマ出しにはWBS 法や課題マップを作ることが有効であ る。
課題出しがあいまいだと研究開 発者は何をすべきかわからなくなり、 開発の障害になることがある。
例えば シェーバーの開発の例であるが、他社 よりよい刃とか、優れた刃というので はあいまいすぎる。
剃り味のよいシェ ーバーなのか、切れ味のよいシェーバ ーなのか、開発担当者は迷っていた。
なわれているかを見てみよう。
(1) 組織の業務分掌への適用  組織がどのような業務を行なうべ きかを示す。
業務ストラクチャーを作 っておくと便利であるし、業務範囲 が明確になる。
例えば、以下の業務 部門(資材部門、外注部門、購買部 門、調達部門)はよく似た機能をも っているが、本社と工場、営業、設 計、品質管理部門などの各部門がど のように職務権限に絡むかが明確に なろう。
 単に「資材の購入に関する業務」と 大くくりに表現するだけでなく、購 入業者選定は設計が行なうのか、購 買が行なうのか、材料支給はどこが 決定するのかなど、より細部に業務 を展開しておけば、各部門の役割や 責任が明確になる。
(2) 業務マニュアル、標準作業指示書  業務機能展開表は、業務マニュア ルや標準作業指示書を作るうえで欠 かせない。
ツリー表示することによっ て各業務の位置づけがわかる、業務 作業の抜け落ちが発見しやすいなどの 効果がある。
また、業務ごとの標準 時間を測定・算定する場合にも、業 務明細が必要となる。
(3) 業務パッケージ  生産システムを展開したら、次に 生産システムの要求事項を抽出する。
これもツリー状に表現するとわかりや すい。
例えば、安全性で言えば、ま ず工場安全とユー ザー安全を区別す る。
さらに安全性の 内容も落下、墜落・ 脱落などの機械的安 全、感電・漏電など の電気安全、火災・ 爆発、その他化学安 全などに展開する。
 これらの要求条件 を先に展開した生産 システムの機能に割 り当てる。
その表を 図4に示す。
このこ とにより、どの機能 がどのような要件を 満たすべきかが明ら かになる。
経営における業務 機能展開  システム機能展開 や要求事項展開のみ ならず、経営におい て、WBS法や業務 機能展開はさまざま な側面で活用されて いる。
どのように行 も包含している。
生産システムにWB Sを適用する際は、それらのシステム や業務機能も展開することが重要で ある。
その展開事例を図3に示す。
図3 生産システムの展開事例 設備計画、加工機種決定、付帯設備決定 工程設計 加工法、加工条件設定 治具、取付具、工具設計 工場配置、作業編成配置 品質管理システム 保全システム 工作機 工具交換 ワーク・ローデング コンベア 取付具セットの搬送 ツール・プリセットの搬送 異常処理 制御 システム 取付具の保全、修理、ノリセット搬送 取付具管理 工具の保全、修理、ノリセット搬送 工具管理 ワークヒースの加工、セット、搬送、回収保管 素材管理、検査、入出庫 準備 システム 状況監視、報告 異常処理 工作機による加工 生産 システム 加工指令用テープ保管、改訂管理 パートフロクラミング マネジメント・レポート 稼働状況管理と生産性管理 ワーク、オーダ管理 ツール、素材在庫管理 同一段取集合 スケジューリングとマシンローデング ツール、取付具、パレット ワークヒース 素材準備指令と状況把握 管理 システム 工程計画 システム NC システム 生産システム 87  AUGUST 2011 るのである。
 システムの構築、統合、連結のた めには業務の定義が必要であるが、業 務機能がきっちりと体系化されてい れば、システムの中身もきちっと定義 される。
さらに、社外と協業するに は言葉の標準化が必要である(契約)。
その場合でも、この業務機能展開や WBSは役に立つ。
皆様方にこのW BSをぜひ習得・活用することを提 案したい。
まとめ  経営コンサルティ ングの場では、顧客 企業の実態を理解す るために、まず「業 務」に着目する。
業 務とは、その会社で 繰り返し行なわれて いる仕事である。
ど のような業務がどの ように行われている か、そこにどのよ うな問題があるのか、 コンサルタントはイ ンタビューをしたり、 実地観測したりして 業務の実態を把握し、 記述し、明らかにす る。
そしてその結果 を関係者(経営者、 管理者、一般従業 員、協力企業、等 など)と共有する。
 そのためにどの ような方法を取るか。
業務を行動的ではな く、機能的に表現 し、さらにその機能 を果たすための下位 の機能に展開してい き、系統的に記述す 次回フォーラムのお知らせ  8月のフォーラムは拡大幹事会のた め休会とし、次回フォーラムは9月5 日(月)を予定している。
このフォー ラムは年間計画に基づいて運用してい るが、単月のみの参加も可能。
1回の 参加費は6,000円。
ご希望の方は事務 局(s-sogabe@mbb.nifty.ne.jp)ま でお問い合わせ下さい。
※ S O L E(The International Society of Logistics:国際ロジスティクス学会)は一 九六〇年代に設立されたロジスティクス団体。
米国に本部を置き、会員は五一カ国・三〇 〇〇〜三五〇〇人に及ぶ。
日本支部では毎 月「フォーラム」を開催し、講演、研究発 表、現場見学などを通じてロジスティクス・ マネジメントに関する活発な意見交換、議論 を行っている。
図4 生産システムの機能に要求事項を割り当てる NC 有効活用を図る L1 L2 L3 高精度保証 適切な投入管理 バックアップの 効率アップ 加工時間短縮 適切なクランプ個所 適切なメンテナンス 一面からの加工 十分なワーク速度 進度状況の迅速な把握 見積の精度アップ プログラミング時間の短縮 ワークプリセット時間の短縮 ツールプリセット時間の短縮 切削条件適正化 同一寸法による多工程加工 ワーク材質の適正化 加工パターン化による 複合加工々具 設計形状 機械経歴の明確化 予防保全 設計形状 適正ワーク速度設定技能 機種選定 正確なインプットデータ スケジューリング 見積基準設定 実績統計処理 自動プログラミングの採用 加工に適した図面化 多個取加工 用品類整備 切粉処理改善 備品の改良 工具類の整備 切削データ収集 切削条件マニュアル 加工の規格化 複合工具の採用 We 治具ブラケット穴 ギャングヘッド ギャングヘッド取付可能な機能 SS 機→Fe 機へ システム 品質管理 システム 生産 システム 準備支援 システム PM システム 制御 システム 管理 システム 周辺管理 工程設計 ミング プログラ 刃具設計 治具設計 設計計画 製品設計 システムの 生産 生産準備    構成 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

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