ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年9号
特集
第2部 何が継続的改善を可能にするのか対談 ハマキョウレックス 大須賀正孝会長 VS 大須賀秀徳社長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

何が継続的改善を可能にするのか 景気低迷が3PL普及の追い風に 本誌 
械丕未了埔豕模が再び拡大を始めました。
大須賀正孝ハマキョウレックス会長(以下、会長)  景気が悪くなればなるほど、3PLには追い風になる からね。
荷主企業の経営者は業績が伸びている間は物 流のことなど考えない。
収益が落ちてきて、初めて物 流に目がいくようになる。
コストを下げるために3P Lの導入を考えるようになる。
大須賀秀徳ハマキョウレックス社長(以下、社長)  実際、荷主からの引き合いは震災以降、増えています。
それも単純な引き合いではなく、物流の現状を分析し て欲しいという依頼が増えている。
これまで業績が好 調だった荷主企業には、物流の基礎データさえ把握し ていないところが多い。
そのため現状の物流のどこに、 どんな問題があるのかが分からない。
本誌 それなりの規模の会社であれば、物流を管理し ていないということはないはずです。
会長 確かに物流部はある。
しかし、運賃を下げてく れと言うだけで、管理はできていない。
それでも会社 としては物流部がこれだけ必要だと言ってきた金額を 支払うしかない。
社長 つまり物流部の多くは費用の支払いを処理し ているだけで、なぜそのコストが発生しているのか が分かっていないんです。
支払いの単価には敏感で も、日々のトラックの積載が実際にどうなっているの か、現場の生産性はどうなのかということを把握して いない。
そうした会社から我々が依頼を受けて、物流 の現状を調べて問題がどこにあるかを指摘するという 仕事が増えているんです。
本誌 それは物流部門が依頼してくるのですか。
社長 物流部門ではなく経営層や経営企画部門が多 いですね。
会長 物流部から入ると話が進まない。
物流部にどん なに良い提案をしても、彼等は自分の仕事がなくなっ てしまうような話を上には報告しない。
自分たちの組 織を守ることに必死になる。
だからトップダウンでな いと3PLは進まない。
社長 その点で3PLという言葉が普及し、経営者の 理解が深まったことはずいぶんと我々の追い風になっ ています。
本誌 市場規模が大きくなる一方で、3PL事業者 の収益性は二極化する傾向にあります。
勝ち組とされ る3PLが八%以上の利益率を確保している一方で、 収益の低迷に苦しんでいるところも多い。
この違いは どこから来るのでしょうか。
会長 荷主が3PLに望んでいるのは合理化だ。
仮に 現状のコストを五%削減して欲しいという依頼だった とする。
この要請を受ける側の3PLは、五%のコス ト削減を達成してやっとトントンだ。
そこから、さら に合理化を進めないと自分たちの取り分はない。
それ ができなければ赤字だ。
 ところが、コストの見積もりをする力もないのに仕 事を受けてしまう。
仕事を受けてしまってから、さて どうやってコストを削減しようかと考えているようで は利益など出るはずがない。
3PLが伸びていると聞 いて、3PLをやれば儲かると簡単に考えている経営 者が多過ぎる。
社長 実際にコンペでも、ウチなら考えられないよう な条件で仕事を受けてしまう3PLがかなりいます。
いったん契約書にサインした以上は、契約書通りに仕 事をする義務が発生するわけですから、端で見ていて も心配になってくる。
本誌 
械丕未両,疏箸噺世錣譴覯饉劼楼谿りですか AUGUST 2011  22  物流の現場力とは、コスト競争力に尽きる。
絶え間なく 生産性向上に取り組むことで、収益はどこまでも伸びていく。
それができない現場は、いずれ赤字に転落する。
だとすれば、 継続的改善を可能にするものとは何なのか。
3PL市場に先 駆者として君臨するハマキョウレックスの創業者と二代目経 営者が改めて意見を交換した。
        (大矢昌浩) 対談 ハマキョウレックス 大須賀正孝会長 VS 大須賀秀徳社長 特 集3PL白書 2011 23  SEPTEMBER 2011 ら、ほとんどの3PLがそうした状態だということに なりませんか。
社長 当社にしたって、少しでも油断したらその現場 はすぐに赤字ですよ。
漫然と仕事を処理していれば当 然そうなります。
波動への対応が黒字と赤字を分ける 本誌 その現場が黒字になるのか、赤字になるのかを 一体、何が分けているのでしょうか。
会長 最も大きな要因は「波動」だ。
荷物の多い時 に合わせて人数を抱えれば、荷物の少ない時には遊 ばせてしまう。
いかに波動に対応するかが現場運営 のキモになる。
物流に波動がないのであれば、わざわ ざ他人に頼む必要もない。
荷主が自分でやるのが一 番安い。
本誌 そのためにハマキョウは、その日の物量に応じ てパートアルバイトの人数を調整する「アコーディオ ン方式」や、各現場の日別の収益を管理する「収支 日計表」など、独自の方法やツールを開発しました。
しかし、そのノウハウも今では物流業界に広く普及し ています。
それにも拘わらず上手くいかない3PLが 多い。
社長 アコーディオン方式や収支日計表を本当に使 いこなすのは、相当に難しいですよ。
理屈やツールを 知っているだけでは役に立ちません。
本誌 その日の物量に合わせてパートの出勤を調整す ることが、それほど難しいとは思えません。
社長 パートであっても生活がかかっているわけです から、「今日は仕事がないから帰っていいよ」と言っ ても簡単には帰ってくれません。
それをどうやって納 得してもらうか。
その地域のその現場の人間関係や、 そのパートさんによっても事情は変わってきますから、 それに合わせてやり方を変えていく必要がある。
マ ニュアル通りというわけにはいかない。
会長 「日々決算」の仕組みもそうだ。
各センター長 には(収支日計表の)雛形をコピーするのは止めろ と言っている。
自分たちでゼロから作れと。
そうしな いと本物にはならないから。
雛形に数字を入れてくる だけでは何の役にも立たない。
実際、収支日計表の フォーマットは現場ごとに全て違う。
本誌 しかしセンターごとに管理項目がばらばらでは 集計ができないでしょう。
社長 つまり、こういうことなんです。
収支日計表は 会社としての収益を管理するのに必要な項目から構成 されているわけですが、各現場にはその現場を管理す るのに必要な管理項目が別にあるはずなんです。
それ は各現場で各現場のセンター長が考えなければならな い。
会長 何をすれば良いのか、答を出すための道具が 日々管理だ。
一カ月経ってからでないと収支が分か らない、しかも月次の収支では、赤字だとわかっても 手の打ちようがない。
その日、その現場は何で赤字 だったのか。
人数が多過ぎたのか。
他に理由がある のか。
次の日に考えれば原因も見えてくる。
具体的 な手が打てる。
それを繰り返すことで、何をすれば良 いのか、何をしたらいけないのか、現場が理解するよ うになる。
社長 収支日計表は最初から完全なものでなくても いいんです。
不完全なものであっても自分で考えて 作って、それを実態に則して修正していくことで、現 場がどんどん成長していく。
現場が進化するんです。
実際、各センターの収支日計表の項目は日々変わって います。
 アコーディオン方式にしても同じです。
単に物量に 大須賀秀徳(おおすか・ひでのり)  1967年、大須賀正孝会長の長男として 静岡に生まれる。
東京経済大学経営学部 卒業。
92 年、ハマキョウレックス入社。
ドライバーとして出発し、3PL 事業の第1 号案件となったイトーヨーカ堂のセンター 運営に立ち上げから参加。
2003 年、取締 役。
07 年、近物レックス(旧・近鉄物流) 出向、リストラの陣頭指揮を執る。
08年 6 月、ハマキョウレックス副社長。
10 年1 月、同社長就任。
現在に至る。
大須賀正孝(おおすか・まさたか)  1941 年、静岡生まれ。
56 年、浜北中 学卒業。
プロボクサーを目指して職を転々 とした後、無認可のトラックドライバーに。
71年に浜松協同運送設立。
92年にハマ キョウレックスに社名変更。
93 年に3P L事業を開始。
97年9月、同社店頭公開。
2003 年3 月、東証一部上場。
07 年5 月、 会長に就任。
現在に至る。
合わせて人数を投入すればいいというわけではありま せん。
今日は物量が多いからと言って単純にパートの 頭数を増やしても、その人が戦力にならなければ生産 性を落とすだけです。
人数的には一七時に終了するは ずの仕事が二〇時になっても終わらないということに なる。
 そこでセンター長は事前にパートに対して、それぞ れ何人まで新人の面倒がみられるのか聞いておく。
「三 人みられます」という人もいれば、「私は二人です」と か、なかには「私はダメです。
一人もみられません」 という人も当然いる。
それを足し合わせた人数しか、 その現場には投入しない。
それ以上、投入しても烏合 の衆になってしまい、生産性は上がらないからです。
会長 実際、儲からない3PLは、センター長など 上司が勝手に必要な人数を決めて現場に投入している。
それが全部ムダになっている。
本誌 多くの新人の面倒をみることができるパートは、 それに合わせて時給も上げるのですか。
そうしないと 本当はもっと多くの面倒をみられる人でも、ズルをし て少なく申告しそうです。
社長 時給の金額だけで人を動かそうとしても長続き はしません。
一人のパートでカバーできる人数は、最 大でも五人程度です。
時給を上げようとして、それ以 上増やせば無理が出てくる。
また担当する作業によっ ても指導できる人数は違ってくるので、人数だけでは 単純に評価できない。
 それよりも、より大きな責任を担うことが、その人 のやり甲斐につながるような職場の雰囲気作りが大 事なんです。
自分の言うことを聞いてくれる人が同じ 職場に増えてくれば、職場の居心地はよくなるし、本 人の仕事自体も肉体的に楽になる。
逆に多すぎる新 人を抱えてしまえば、今度は教えることに追われてし まう。
 どうすれば楽ができるのか。
定時に帰れるのか。
生 産性が上がるのか。
パートが自分で考えるように現場 を持っていく。
現場のレベルが上がってくれば、パー トが自分で判断して「今日は五時には終わらせるよ」 とか、現場の上司に対して「やっちゃうから大丈夫」 と作業を引っ張っていくようになる。
パートに順番で 班長をやらせる「日替わり班長制度」も、そのための 仕組みの一つです。
物流の現場力とは何か 本誌 現場の運営ノウハウは、対象とする業種によっ ても違ってきますか。
会長 どんな商品でも入ってきたモノを出すという物 流の基本は変わらないよ。
よくウチは定温に強いとか、 どこどこに強いと自慢する3PLもあるけど、私に言 わせればそんなものはない。
設備があるだけだ。
むし ろ特定の業種しか知らない3PLは他の業種のノウハ ウを組み合わせて工夫するということができない。
社長 当社は対象業種を問いません。
むしろ業種は分 散したほうが、波動を吸収しやすくなるし、景気にも 左右されにくくなるという考えです。
当社の3PL事 業は一九九三年にイトーヨーカ堂さんのアパレル品の センター運営を受託したところから始まりました。
ア パレル品は最も波動の大きな商品の一つです。
そのた め日用雑貨品や食品や医薬品など、他の業種に展開 していくのは難しくなかった。
本誌 物流の現場力とは結局のところ何なのでしょう。
会長 コスト競争力だよ。
製造業や小売業は目に見 える自分の商品を持っている。
ところが物流業には目 に見えるものが何もない。
そのため現場は単に作業を しているだけになってしまう。
生産性を上げるという SEPTEMBER 2011  24 「収支日計表」をはじめとする現場管理のツールは、セ ンターによって全て違う。
センター長が自分の頭で考え て、日々修正していく。
進化は常に現場で起きる 特 集3PL白書 2011 目的意識を持っていなければ、どれだけムダがあって も気がつかない。
本誌 繰り返すようですが、その目的意識を持てる現 場と、持てない現場、現場力のある会社とない会社は、 どこで分かれるのでしょうか。
会長 私の答えはハッキリしている。
経営者次第だよ。
経営者が物流の仕事を分かっているかどうか。
「自分 は分からないけどお前らやれ」では機能するはずがな い。
別に現場の叩き上げでなくても構わないけれども、 3PLをやるのであれば社長が必死になって勉強して、 3PLのことなら社長が一番分かっているということ でないとダメ。
本誌 そうだとすると経営者の交代はリスクです。
と りわけオーナー経営者が一代で大きくしたハマキョウ のような会社は事業承継が難しい。
カリスマ的な経営 者の去就は、その会社の株価にも影響してくる。
会長 からのバトンを継いだ社長のプレッシャーは大きいは ずです。
社長 会長のカリスマ的な側面はみんなでカバーす るしかありません。
また株価についても会長が引退す れば影響が出るのかもしれない。
しかし、事業に関し ては自信を持っています。
そう簡単には揺るがない体 制ができあがっている。
仮に私が社長失格の烙印を押 されて立場を追われたとしても、当社の成長は止まり ません。
本誌 業績は確かに盤石です。
しかし、日立物流をは じめとする3PL市場のライバルたちはM&Aによっ て巨大化している。
企業規模の点で対抗する必要はあ りませんか。
社長 我々は売上高よりも収益性を重視しています。
経常利益一〇〇億円が当面の目標です。
売上拡大を 急ぐよりも、目標に向かって着実に歩を進めるほうが 大事だと考えています。
それによって現状で年間四〇、 五〇億円の設備投資を増やしていくこともできる。
規 模は後から付いてくる。
 ただし、規模と平行して我々はセンター長の数を増 やし続けていかなくてはならない。
仕事の引き合いは 今後も減ることはないでしょう。
しかし、当社は現場 を下請けに再委託しない。
となると当社の成長スピー ドを決めるのは、どれだけセンター長を育成できるか にかかってくる。
他社と比較しても仕方ない。
社長業に休日はない 本誌 会長は二代目をどう評価されているのですか。
会長 社長を二代目とは思っていない。
社内で一番 優秀な人間を、社員みんなで平等に選んだ結果が息子 だったというだけだ。
ただし、役員会が息子を次期社 長に選んだ時、私は息子の女房に問い質した。
社長に なれば会社が第一だ。
家庭は第二になってしまう。
こ れが副社長のままなら家庭第一でも構わない。
アンタ はどっちを選ぶ?と。
 それだけ社長業というのは苦労が絶えない。
仕事を 部下に任せることは大事だけれども、任せた仕事がど うなっているのか常に分かっていないと。
現場のこと は隅から隅まで知らないと経営者は務まらない。
だか ら社長には休む暇がない。
社長 経営者とはどういうものか。
それは私が父親の 背中から学んだことかも知れません。
これまで会長に はダメと言われ続けてきたんです。
私が社長に就任す る時もそうでしたし、役員に昇進した時も会長には反 対されました。
それだけに自分が社内で一番優秀にな るしかないと考えてきた。
これからも常にトップラン ナーであり続けることが経営者としての自分の責任だ と覚悟しています。
25  SEPTEMBER 2011

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