ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年9号
ケース
郵船ロジスティクス 国際化経営統合で欧州フォワーダーに対抗2013年度に売上高5000億円目指す

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2011  54 一兆円プレーヤーを目指す  二〇一〇年一〇月、航空フォワーディング 大手の郵船航空サービスとNYKロジスティ ックスジャパンが経営を統合、郵船ロジステ ィクスが誕生した。
これにより日本郵船グル ープにとって長年の課題だった、物流事業の 一元化が動きはじめた。
 この四月から郵船ロジスティクスの経営ト ップに就いた倉本博光社長は、「統合で陸海 空のワンストップ・ショッピングが可能にな り、お客様に当社を全面的に頼ってもらえる 体制が整った。
シナジー効果で一+一が三に も四にもなる」と強調する。
 
裡截縫蹈犬箸いμ松里蓮日本郵船が海上 フォワーディング事業やロジスティクス事業を 展開するために世界各地に設置してきた子会 社のブランドだ。
昨年一〇月の段階では、ま ず郵船航空サービスとNYKロジの日本法人 だけを統合して新会社をつくった。
 今年四月以降は、世界三六カ国で展開して きた海外事業を順次統合しながら、郵船ロジ という新たなブランドへの衣替えを進めてい る。
二〇一〇年度の関連会社のグローバル売 り上げの合算は三三四〇億円。
これを一三年 度には五〇〇〇億円まで拡大する計画だ。
 そのためにフォワーディング事業では海上 貨物の取扱規模を一〇〇万TEU(一〇年 度は約四四万TEU)に、航空貨物(輸出) を五〇万トン(同三六万トン)に拡大する。
グローバル市場で上位五社に位置するフレー ト・フォワーダーと同等の取扱物量を確保す ることで、フォワーディング事業におけるス ペース調達力と価格競争力を強化しようとし ている。
 これと並行して、ロジスティクス事業も大 幅に拡大する。
親会社の日本郵船は現在の中 期経営計画で一六年度に二・七兆円という 売り上げ目標を掲げている。
このうち七三〇 〇億円を「物流事業」で確保することを見込 んでいる。
総売上高の伸びは約一・四倍だが、 物流事業は一・八五倍とひときわ大きく伸ば す内容だ。
 この中計で日本郵船は、「従来の海運業の  郵船航空サービスとNYKロジスティックスジャ パンが経営を統合してから約1年が経過した。
2010 年度の関連会社の売り上げは合計で約3340億円。
うちロジスティクス事業は約850億円。
これを13年 度には連結売上高5000億円・ロジ事業1130億円 に拡大する計画だ。
国際化 郵船ロジスティクス 経営統合で欧州フォワーダーに対抗 2013年度に売上高5000億円目指す ●従業員数 約16,600 人 ●物流事業拠点数 412カ所 ●倉庫面積 213 万? ●進出国 36カ国 (2010 年9月末合算ベース。
従業員数は2010 年3月末時点の人数) 米州 23% 欧州 24% 日本 23% 南アジア・ オセアニア 14% 東アジア 16% 米州 日本 44万? 7 万? 東アジア 22 万? 南アジア・オセアニア 57 万? 欧州 83 万? 61 拠点 73 拠点 72 拠点 110 拠点 96 拠点 総売上の8 割近くを日本ではなく海外で確保 55  SEPTEMBER 2011 枠組みにこだわらない」ばかりか、「コントラ クト・ロジスティクスを活かした提案型営業」 の強化で物流事業を拡大していくことを明言 している。
郵船ロジの倉本社長は、「郵船グ ループ全体の売上規模はいずれ三兆円になる。
このうち一兆円を当社が担うことを期待され ている」と説明する。
 郵船ロジは一三年度の売り上げ目標五〇〇 〇億円のうち二三%に当たる一一三〇億円を ロジスティクス事業で確保しようとしている。
これに対して一〇年度は約八五〇億円。
ただ し、この数値は郵船航空とNYKロジが世界 中で展開してきたロジ事業の売上高の単純合 計に過ぎない。
 これまでNYKロジは、海外の現地法人の 独立採算を重視してきた。
事業方針も現地に 任せ、収支に最終責任を持つのも各現法とい う分権主義をとってきた。
その影響から現状 では事業セグメント別にグループ全体の正確な 集計値を出すための共通ルールがない。
 こうした管理手法のままでは、郵船ロジが 世界市場で存在感を発揮していくのは難しい。
そこで今年四月、東京本社にグローバル・ヘ ッドクオーター(GHQ)を設置。
ここを中 核として全世界を五極(日本・米州・欧州・ 東アジア・南アジア/オセアニア)で管理する 体制を整備した。
 
韮硲册發某契澆気譴拭屮蹈献好謄クス事 業部」の部長に就任した二見昭夫執行役員は、 自分たちの役割をこう説明する。
 「われわれは最終的な収支責任を負う部門 ではない。
だが地域にかかわらず高品質のサ ービスを提供し、グローバルでビジネスを管 理していくには、各地の組織に横串をさす機 能が必要だ。
当面は個社ごとに採算を管理す る一方で、事業別の採算もバーチャルで見て いく。
ロジ事業を将来どういう方向にもって いくのかも、われわれが判断する」 日本人比率は一割以下  郵船ロジはロジスティクス事業においても海 外を主戦場としてきた。
日本国内の3PL市 場では後発に当たる。
これから国内で既存の パイの奪い合いにエネルギーを割くつもりは ない。
日本市場では、日本に新規参入してく る外資系企業などをメーンのターゲットに据 える。
海外市場における実績をベースに日本 市場に斬り込むという、他の日系3PLとは 逆のアプローチだ。
 それだけ郵船ロジはグローバル化が進んで いる。
NYKロジが世界中で運営する倉庫の 面積は二二〇万平方メートルに上り、海外市 場だけなら日本通運をもしのぐ。
自らトラッ クを保有して陸上輸送業を展開している海外 現法もあり、グループ合計では一〇〇〇台近 い自社車両を持っている。
 人員構成もしかり。
統合後の社員数一万六 〇〇〇人余りのうち、日本人は一割にも満た ない。
なかでもロジ事業に携わる約一万人の 従業員となると、ほとんどが社内で「ナショ ナル・スタッフ」と呼んでいる外国人スタッフ だ。
それだけに郵船ロジにとっては、日本人 スタッフとナショナル・スタッフとの「融合」 が大きなテーマになる。
 現在は郵船航空とNYKロジで重複してい た拠点を、地域ごとに一つにまとめる作業を ロジスティクス事業部長と国 際部長を兼務する二見昭夫 執行役員 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 (億円) 日本郵船の物流事業セグメント売上高の推移(06/3〜11/3)と 郵船ロジスティクスの経営計画 05 06 07 08 09 10 13 4,264 4,827 5,269 4,481 3,417 3,909 3,340 郵船ロジスティクス 5,000 として新会社に集約 (中計策定時) (計画) (年度) 850 460 790 1,110 130 1,130 590 1,680 1,510 90 ロジスティクス その他 陸上 海上 航空 SEPTEMBER 2011  56 進めている。
NYKロジではナショナル・ス タッフが現法の経営トップを務めるケースも 多かった。
現法のトップだった日本人がナン バー2になり、外国人が社長に就くケースも 出てくる。
このような組織の「統合」で生じ るさまざまな変化に直面する従業員の人心を 「融合」していく必要がある。
 社内で使う用語についても、グローバルを 強く意識したものになっている。
郵船ロジに とってロジ事業とは「コントラクト・ロジス ティクス」を指す。
この言葉の同社の定義は、 「顧客との契約による物流業務請負サービス (在庫管理・輸配送管理、受発注管理など)」 というもの。
3PLとほぼ同義だが、あえて コントラクト・ロジという言葉にこだわって いる。
 これは郵船ロジがライバル視している企業が、 スイスに本社を置くキューネ・アンド・ナーゲ ルや独DBシェンカーなど欧州の大手フレー ト・フォワーダーであることと関係している。
彼らは自らの業態を説明するとき3PLとい う言葉をほとんど使わない。
荷主企業にとっ ても、欧州では3PLよりコントラクト・ロ ジという表現のほうが一般的なのだという。
 「広大な国内市場を抱える米国の物流会社 は、基本的にドメスティック。
UPSやフェ デックスのロジスティクス部門のように海外展 開を図っている例もあるが、彼らのビジネス モデルは当社とは違う。
ごく一部、米エクス ペダイターズが当社に近いビジネスを展開して て、欧米の自動車メーカーや部品メーカーか ら、うちの業務もやってほしいと言われるよ うになった。
品質が差別化につながっている」 と説明する。
 「ナンバーワン KAIZEN カンパニー」 になることを標榜しており、品質を確保する ためなら自らアセットを所有することもいと わない。
 郵船ロジのアセット戦略は「三分の一ポリ シー」を原則としている。
倉庫であれば、お よそ三分の一の中核拠点を自ら保有し、比較 的安定した需要のある三分の一の拠点につい ては中長期のリース物件をあてる。
残り三分 の一は、一年程度の短期契約の物件を使うこ とで需要の変動に備える。
車両についても基 本的な考え方は同じだ。
いるぐらいだ。
フレート・フォワーディング の本場はあくまでも欧州。
われわれが目指す モデルも欧州にある」(二見執行役員)  もちろん米国における営業活動などでは、 顧客との対話を円滑に進めるために3PLと いう言葉を使うこともある。
しかし、社内的 には用語の使い方をグローバルに統一する必 要があった。
このためGHQが自社の業態に ついて説明する際にも、たとえ日本市場向け であってもコントラクト・ロジという言葉を 使うようにしている。
アセット戦略に「三分の一ポリシー」  コントラクト・ロジ事業を展開していくう えで最も重視しているのが、郵船ロジが「サ ービス・メイド・イン・ジャパン」と呼ぶ品 質だ。
同社は日系自動車メーカーとの取引で 培ったノウハウを武器に、欧米で外資系自動 車メーカーや部品メーカーの生産物流などを 幅広く手掛けている。
 ロジ事業部で品質管理を担当している矢 間靖人課長は、「最初に日系メーカーの信頼 を得られたことが大きかった。
その実績を見 ロジスティクス事業部の矢間 靖人品質管理課長 産業別にソリューション事業を展開していく 物流最適化 ソリューション テクノロジー リテール ヘルスケアー /医療機器 ケミカル 自動車関連 航空機関連 環境 エネルギー プロジェクト 関連 57  SEPTEMBER 2011  ただし、地域によってアセット保有の比率 は異なる。
中国やインドなどの新興市場では、 ハイスペックの倉庫や車両を自ら持つことが、 品質面での武器になる。
一方で、そうしたア セットを外部から調達しやすい先進国では必 ずしも自ら保有する必要はない。
そうした地 域事情を考慮して濃淡をつけながらも、それ ぞれの極単位では「三分の一ポリシー」に則 っていることを理想としている。
 今後は自動車や電機のようにすでに実績の ある分野だけでなく、流通やヘルスケアなど の領域で荷主企業の業種・業態に応じた産業 別ソリューションを深耕していく。
 
裡截縫蹈犬一九八〇年代から世界各地で ロジ事業を展開していったとき、まず稼ぎ頭 になったのはテクノロジー分野(電機・電子 部品)だった。
この分野では現在も、生産物 流から販売物流まで、さらに日系企業から外 資系にまで多岐にわたるサービスを提供して いる。
それが近年は自動車関連が最大になり、 二番目が電機という順番に変わった。
 現状で三番目に大きいのはリテーラー(流通 系)だ。
欧米の大手流通業者は、中国やアジ アから大量に商材を調達する。
買い手である 流通業者のパートナーとして地域単位で物量 を束ねる「バイヤーズ・コンソリデーション」 というサービスへのニーズが高い。
欧米の有 力リテーラーとの取引実績も増えており、今 後の成長余地が大きい分野として期待してい る。
  (フリージャーナリスト・岡山宏之) ──今年四月の人事で、複数の海外現法のトップ に日本人ではなく現地の人材をあてました。
 現地に根付いた力を活用しなければ、当社の飛 躍はありえない。
労務管理という面でも、習慣 や風習を熟知した?ナショナル・スタッフ?でな ければ難しい。
だから日本人がトップに就いたと ころでも、ナンバー2にはしっかりとした現地の 人材を必ず配置した。
成果を上げていくためには、 組織の「統合」だけでなく「統合・融合・飛躍」 というステップを踏む必要がある。
──「融合」を進めていくうえで一番重要なこと は何ですか?  グローバルな会社になる、という個人の意識改 革が欠かせない。
当社は二つの会社が統合して発 足したが、私はまったく新しい会社ができたんだ と言っている。
会社が変わったのだから、個人も 変わってもらわなければならない。
──しかし、経験してきた業務内容や出身地域が 異なる人材を一つにまとめるのは簡単ではありま せん。
 日本郵船グループには「誠意・創意・熱意」と いうグループバリューがある。
これは業務に対す る姿勢を表す言葉だが、私は会社に対しても、仲 間に対しても同じだと言っている。
社内でも「誠 意」をもって仕事をすれば、国籍が違っても何も 問題はない。
──日本郵船は船会社のイメージが強いのですが、 物流事業についてはどのように考えているのでし ょう?  一つの柱だと思っている。
日本郵船がこの四月 から取り組んでいる中期経営計画の名称は「More Than Shipping」、つまり海運業の枠組みにこだ わらずにやる、というものだ。
船だけでなく物流 事業や付帯事業まで手掛けることで、お客様との 関係を一層深めていこうとしている。
──コントラクト・ロジスティクス事業を伸ばし ていくための具体的な戦略は?  すでに成熟している欧米市場では、ターゲット の産業を絞り込んで勝負する。
とくに積極的に展 開していきたいのは中国、インド、東南アジアな どの新興国。
幸い当社は東南アジアではかなりの 実績があるが、これをさらに伸ばしていく。
中国 では「中国戦略委員会」という組織をつくって営 業を強化している。
少し心配なのはインドだ。
進 めてはいるが、まだまだテンポが遅い。
──そうした新興市場を攻めるうえでのポイント は?  やはり?現地化?がカギになる。
中国でもイン ドでも、どれだけ有能なナショナル・スタッフを 集められるか。
こうした地域でわれわれが「サー ビス・メイド・イン・ジャパン」と呼ぶ高品質の サービスを提供していくためには、現状ではまだ 日本人が現地スタッフにノウハウを移植する必要 がある。
このような活動を通じて、将来の経営幹 部を育てていかなければならない。
「世界中の?ナショナル・スタッフ?の力を結集する」 郵船ロジスティクス 倉本博光 社長 代表取締役社長 倉本博光 くらもと・ひろみつ 1948年東京 生まれ。
慶応義塾大学経済学部卒 業、72年日本郵船入社。
99年NYK Bulkship(U.S.A.)社長、2001年日 本郵船取締役、06年代表取締役専 務、08年副社長、10年郵船航空サ ービス副社長。
11年4月より現職

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