ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2011年9号
ケース
オリンパス 環境対策国際間輸送の排出原単位を独自に設定海上シフトと軽量化でCO2を6割削減

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2011  58 物流のCO2排出量は製造以上  オリンパスの事業は、内視鏡を主力製品と する「医療事業」、デジタルカメラやICレコ ーダーの「映像事業」、生物用顕微鏡を中心 とする「ライフサイエンス事業」、工業用顕微 鏡の「産業事業」、携帯電話の代理店事業の 「情報通信事業」の五つに分類される。
 このうち医療事業と映像事業は二〇〇四年 一〇月に分社化を行い、「オリンパスメディカ ルシステムズ」と「オリンパスイメージング」 がそれぞれ事業を継承している。
また情報通 信事業は〇四年に傘下入りした連結子会社の ITXが展開している。
 オリンパス本体は創業時からのライフサイ エンス事業と産業事業の運営にあたるととも に、事業持株会社としてグループ本社の役割 を果たし戦略立案や研究開発を担当している。
 二〇一一年三月期の連結売上高は八四七 一億円。
そのうち五四・四%を海外で売り上 げている。
なかでも欧米市場が全体の約四割 を占める。
 一方で、生産拠点は日本とアジアに集中し ている。
高付加価値製品の多い内視鏡や顕微 鏡は国内生産がメーンだ。
大半を東北と長野 にある主力工場で生産し、川崎の物流センタ ーから国内外の市場へ出荷している。
 デジタルカメラは〇二年に中国に生産を移 管した。
現在ではベトナムとインドネシアを加 えた三カ国で生産し、日本および海外の市場 へ出荷している。
海外の主要な市場のうち欧 州へはドイツのハンブルグ、北米へはニューヨ ークなど米国東海岸にある現地法人の倉庫を 経由して供給する。
 このように生産が主に日本とアジアで行わ れ、欧米の売り上げ比率が高いことから、同 社の製品輸送では日本・アジア発〜欧米向け の長距離国際間輸送のウエートが極めて大き い。
そこで発生するCO2排出量削減に、近 年同社は重点的に取り組んでいる。
 同社の環境活動は品質環境推進部が主導し ている。
「カーボンハーフ2020」をスロー ガンに、原料の調達から生産・販売・回収修 理・廃棄処理まで製品のライフサイクル全般 で排出されるCO2を二〇年度に〇七年度比 で五〇%削減する目標を掲げ、海外の拠点も 含めたグローバルな活動を進めている。
この なかで有力なターゲットの一つにしているの が物流分野だ。
 従来、物流分野の環境活動は他分野と比べ て活発ではなかった。
国際間輸送の環境デー タを容易に把握できなかったことが、その一 因となっていた。
 〇六年にそれまで手付かずだった国際間輸 送に着目し、仕向け地別の販売数量などをも とにCO2排出量の大まかな試算を行ったと ころ、製造工程の排出量を上回る数値がはじ き出された。
これを機に国際間輸送を中心と する物流由来のCO2排出量削減活動を本格 的にスタートした。
 国際間輸送で発生するCO2排出量の計算方法には、 今のところ公的な基準がない。
そこで物流事業者か らのヒアリングなどをもとに独自にCO2排出原単位を 設定し、国際物流における環境負荷低減に乗り出し た。
航空輸送から海上輸送へのシフトや製品・包装 の小型軽量化を進め、2007年からの4年間でCO2排 出量を60 %削減という成果を上げている。
環境対策 オリンパス 国際間輸送の排出原単位を独自に設定 海上シフトと軽量化でCO2を6割削減 59  SEPTEMBER 2011  活動を始めるにあたり削減活動の基礎とな るデータづくりが必要だった。
国内輸送につ いては、折しも〇六年度から省エネ法(エネ ルギー使用の合理化に関する法律)によって、 輸送量が年間三〇〇〇万トンキロを超える荷 主にCO2排出量の報告が義務付けられ、算 定方法についてもガイドラインで示されてい た。
 しかし、国際間輸送は、省エネ法の対象外 で、国際的にも算定範囲や算定方法について のルールが確立されていなかった。
このため オリンパスは国内法に準拠しながら国際間輸 送の実態を反映できる算定方法を独自に考案 することにした。
グローバルで九割のデータを取得  
達錬嫁喀侘未了残衒法としては、国内法 のガイドラインに示されている燃料法・燃費 法・トンキロ法の三通りのなかから、「(従来) トンキロ法」を採用した。
「輸送トンキロ(重 量×距離)」と輸送モード別の「CO2排出原 単位」をもとに、排出量を算定する方法だ。
 算定に必要なデータは、輸出入取引の際に 作成する航空貨物運送状や船積み書類などに 記載されている重量や発地・着地の情報から 収集した。
「重量」は書類の情報をそのまま 利用した。
「距離」については事前に輸送ル ートごとにマスターを作成し、発地と着地の 情報をもとにマスターから距離を割り出す方 法をとった。
マスターの作成には航空会社が マイレージサービスの基準にしている区間距 離などを利用した。
主要都市以外の仕向け地 は地域内の代表的な都市までの距離を代用し た。
 輸送機関のトンキロあたりエネルギー消費 量を示す「CO2排出原単位」については、国 際間輸送の輸送距離は国内輸送よりずっと長 いため、エネルギーの消費実態も国内輸送と は異なると判断し、省エネ法のガイドライン に示されている国内輸送のモード別原単位を 使わず、国際間輸送の原単位を独自に設定す ることにした。
複数の航空会社や船会社から 国際輸送の燃料使用原単位についてヒアリン グし、その平均値などをもとに航空輸送と海 上輸送の原単位をそれぞれ設定する方法をと った。
 品質環境推進部の深津麗課長代理は「距 離マスターや原単位をもっと厳密に設定する こともできたが、活動の目的は排出量の把握 ではなく、あくまで排出量の削減にあるので、 早く活動をスタートできるよう必要なデータ を簡単に算出する仕組みを短期間につくるこ とを最も重視した」という。
 実際に同社は検討を始めてからわずか三カ 月で、重量・距離・原単位を用いて輸送区間 ごとにCO2排出量を算出するシステムを構築 し、運用を開始している。
 算出の対象とする物流由来のCO2排出量 には国際間輸送のほか、日本国内はもちろん 主要市場である欧米や中国の物流拠点からユ ーザーまでの域内輸送も含まれる。
欧米の域 内輸送は航空輸送かトラック輸送で行ってい る。
排出量の算出にあたり航空輸送は国際間 輸送の原単位を用い、トラック輸送は日本国 内の原単位をそのまま採用した。
 国内外の出荷拠点や仕向け地からの情報収 集は、グループのグローバル物流を統括する コーポレートセンターの物流推進部が担当し た。
出荷拠点で船積み書類などに入力した情 報をシステムに取得する方法をとるため、当 初は入力の仕方の違いからシステム上のエラ ーがしばしば発生した。
 発着地の表記が大文字だったり小文字だっ たりまちまちなうえ、本来は決済用に作成す る書類であるため、発地を「成田」ではなく 「東京」とするなど、表記が輸送区間と一致 しないケースもあり、エラーの原因となった。
物流推進部グローバルオペレーション改革チ ームの松本真一主任は「コードを統一して各 地の担当者に運用ルールを徹底するまでが予 想外に大変だった」と振り返る。
 それでも地道な活動によって、イギリスや ドイツで生産している特殊な製品やアフリカ、 品質環境推進部の 深津麗課長代理 SEPTEMBER 2011  60 オセアニア向け製品の国際間輸送などの一部 を除き、グローバルで九割近い製品輸送の排 出量を把握できるようになった。
開発・生産を一カ月繰り上げ  こうして取得したデータから事業部門別や 「国際間輸送」、「米国域内輸送」などの費目 別の排出量を割り出した。
その結果、排出量 の多かった事業分野(製品)から改善活動を スタートした。
物流推進部が主導して排出量 削減の施策を講じ、月次で事業分野別・仕向 け地別に排出量の推移を追いながら、その効 果を検証するやり方で進めた。
 トンキロ法に則り排出量を削減するには、 重量を減らすか、もしくは原単位の小さい輸 送機関へのモーダルシフトが有効だ。
そこで 物流由来の排出量が最も多いデジタルカメラ の映像事業分野で、〇七年から二つの施策を 実行に移した。
 一つは、「船舶率」の向上だ。
欧米向け輸 送をそれまでの航空便から海上輸送にシフト させた。
デジタルカメラは製品のライフサイク ルが三カ月と短いため、従来は製品をいち早 く海外の市場へ送ることを重視して大半を航 空輸送していた。
しかし〇七年頃から価格競 争の激化によってデジタルカメラの平均単価 が大幅に下落。
航空運賃のコスト負担が重く のしかかるようになっていた。
海上輸送への シフトはコスト改善のための施策でもあった。
 経営トップの陣頭指揮の下、映像事業部門 には四二%まで上昇した(図1)。
 二つめの施策は製品・包装の小型軽量化だ。
まず製品自体を小型化して強度を高めること に成功した。
これによって輸送中の振動など から製品を守るための緩衝材の使用を最小限 に抑え、化粧箱の重さとサイズも小さくする ことができた。
こうした開発・製造部門の努 力の積み重ねにより、四年間で製品一台あた りの平均重量を二五%削減した(図1)。
 この二つの施策によって、〇七年度に一〇 万五〇〇〇トンだった映像事業部門の国際間 輸送のCO2排出量が一〇年度には二万七〇 〇〇トンとなった。
七五%も削減できた(図 1)。
経済情勢の悪化から製品の出荷台数そ のものも四年前に比べ十二%減少しているが、 数量減少の影響を除いても施策の効果は充分 にあったといえる。
 医療事業のように海外での売り上げ増に伴 って排出量が増えた部門もあるが、その増加 分を相殺しても四年間にトータルで排出量六 〇%削減という大きな成果を上げた。
五事業 部門を合わせた売上高と物流由来CO2排出 量(ただし排出量は情報通信事業分野の実績 を除く)の推移を比較すると、売上高の減少 をはるかに上回るペースでCO2の排出量が減 少していることが一目でわかる(図2)。
 一〇年度からは医療事業部門でも排出量削 減のために船舶率を上げる取り組みを本格的 にスタートしている。
航空輸送から海上輸送 へのシフトは輸送日数が延びるため在庫金利 をあげて船舶率の向上に取り組んだ。
アジア から欧米へ船で運ぶと航空便よりも一カ月以 上余分に輸送日数がかかる。
このため製品の 発売時期にあわせて開発・生産の日程をそれ までよりも一カ月繰り上げる必要があった。
 
丕咤鼻弊源此θ稜筺在庫)計画そのもの を見直した。
需要予測から生産計画確定まで のタイミングを従来よりも一カ月早め、これ をもとに部品の調達や月次・週次での計画の 細分化を行った。
 さらには、船の出港スケジュールに合わせ て仕向け地別にコンテナ単位に荷量がまとま るように、出荷計画とも連動させてサプライ チェーンの最適化を図った。
こうした取り組 みの結果、〇七年度にはわずか八%だった映 像事業部門の国際間輸送の船舶率が一〇年度 120,000 100,000 80,000 60,000 40,000 20,000 0 50 40 30 20 10 0 図1 映像事業における国際間輸送CO2排出量実績 8% 07 年度08 年度09 年度10 年度 105,878 76,025 56,040 27,092 42% 26% 16% SEA 比率(%) CO2 排出量(ton) 100 93 84 75 1台当たり重量比率(2007 年度:100) 61  SEPTEMBER 2011 事業の物流拠点を、医療機関が多く分布する 東海岸のペンシルベニア州に移し、航空輸送 からトラック輸送へのシフトを進めた。
この施 策によって昨年度は米国域内の輸送量が前年 度より三六%増えたにもかかわらず、CO2 排出量を一%増に抑制できた。
 同社は従来、海外の物流をほとんど現地任 せにしていた。
だがここ数年は物流推進部の メンバーが現地に駐在して物流の実態把握や 業務改革の支援を行ってきた。
中国の拠点で も同部のメンバーがデジタルカメラの船舶率 向上をサポートした。
 このほか日本および欧・米・アジアの四地 域の物流責任者による定期会合を行ってコミ ュニケーションを密にとるなど、物流グローバ ル化への対応を強化しつつある。
物流由来の CO2排出量削減への取り組みはこうした背 景のなかで実を結んだものだった。
算出方法の改良も  今後は梱包簡素化などの成果をもっときめ 細かく反映できるように算出方法を改良して いく方針だ。
医療事業の製品にはかさばるも のが多いため、開発部門ではコスト削減のた めに梱包方法を工夫して容積を減らすことに 力を注いでいる。
しかし、トンキロ法は、排 出量を実重量によって算出するため、そうし た工夫の成果が数値に反映されない。
 そこで国際輸送の運賃請求の際に適用され る「チャージャブルウエイト(実重量と容積重 量を比較して大きな方を、その荷物の重量と する方法)」の考え方を採り入れ、カサものに ついては「実重量」ではなく「容積重量」を 排出量算出の根拠にすることを検討している。
 またゆくゆくは原単位の設定自体も見直 す考えだ。
国際間輸送のCO2排出原単位は、 航空会社が燃費効率の良い機材を投入するこ となどによって改善されることもある。
現在 の算出式にはそれが反映させていない。
活動 を開始した当初にヒアリングした数値を今も 使用している。
原単位を変えると自社の努力 によってどれだけ排出量を削減できたのか成 果がわかりにくくなるためだ。
 だが「本来は航空機の軽量化など技術進歩 を数値に反映できる形が望ましい。
それが最 終的にやりたいことだ」と物流推進部の江崎 仁次長。
そのために「早くそうした(技術進 歩などを反映できる)国際的な基準値を示し て欲しい」と訴える。
「それが実現すれば今後、 原単位のより少ない輸送業者を選択すること も排出量削減の要素の一つになってくる」と 見ている。
(フリージャーナリスト・内田三知代) が増加する。
医療事業の製品には内視鏡スコ ープのように一台で数百万円もする高額品が あり、影響はより大きい。
「それでも事業部 門にはCO2の削減に何とか貢献したいとい う意識が強く、できるところから手を付ける ことにした」と物流推進部グローバル企画チ ームの有賀怜子主任は話す。
 製品のなかで手術用の処置具など比較的安 価なうえ軽量でカサがあり、需要の安定して いるものを選んで海上輸送へシフトした。
そ の結果、一〇年度は〇七年度に比べて国際間 輸送の荷量が二割増えたが、CO2排出量を 一割程度の増加に抑えることができた。
 米国の域内輸送でも成果を上げている。
従 来、西海岸のカリフォルニア州にあった医療 物流推進部の江崎仁次長 図2 オリンパスにおける物流由来CO2排出量実績 全物流CO2排出量/全社売上高 推移(t) 〈2007 年度-2010年度〉 売上には、情報通信事業は含まれるが、CO2排出量はその事業分 を含んでいない。
 ※社会環境報告においては、そのグループ会 社を報告対象としていないため。
160,000 140,000 120,000 100,000 80,000 60,000 40,000 20,000 0 112,890 07 年度08 年度09 年度10 年度 142,078 98,080 109,001 88.310 87,012 84,710 59,212 全社売上高(千万円) CO2排出量(ton)

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