ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年9号
ケース
英レクサム 欧米SCM会議?北米での大型買収を機に3PLを導入輸送費削減とサービス品質向上を両立

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2011  62 買収で事業規模が約四倍に  レクサム(REXAM)はイギリスのロンドン 証券市場に上場する製罐・容器材メーカーで す。
飲料缶の製造業者としては世界最大手で、 ヨーロッパにおける飲料缶の市場占有率は四 五%に達しています。
南米では六八%のシェ アを握っています。
 当社には飲料缶の製造部門の他にもう一つ、 プラスチック製造部門があります。
このプラ スチック製造部門は大きく二種類の製品を取 り扱っています。
一つはペットボトルなどの 飲料用容器の蓋で、もう一つは医薬品の容器 です。
 ペットボトルの蓋の主な販売先は、コカ・ コーラやペプシコ、P&G、ネスレなどです。
医療品容器の取引先としては、ファイザー製 薬やバクスター、バイエルや参天製薬などが 挙げられます。
 もともと製罐メーカーとして出発した当社 において、プラスチック製造部門はながらく 傍流的な存在に過ぎませんでした。
それが大 きく変わる契機となったのは、二〇〇七年に 実施した大型買収でした。
アメリカの大手容 器メーカー、オーエンス・イリノイ(Owens- Illinois)社のプラスチック製造部門を一八億ド ル超(一四四〇億円)で買収しました。
 それまで当社の北米のプラスチック製造部 門の売上高は三億ドル程度でした。
買収によ ってそれが十二〜十三億ドルに増加しました。
北米の工場数は三〇カ所にまで膨らみ、配送 先も増えました。
これに伴い、北米における 輸送業務をどうやって管理するのかという問 題が浮上してきました。
 当社のプラスチック製品はかさが張ることも あって、取引先は通常、数日単位でしか在庫 を持ちません。
それだけに取引先が当社に要 求するリードタイムは短く、工場が集中する 東海岸の取引先への配送では注文の翌日、西 海岸でも二日後には納品しなければなりませ ん。
 そのため輸送の九五%以上は貸切(TL: Truck Load) 輸送で、個建てのL T L( Less- Than-Truckload:日本の特別積み合わ せに相当)輸送は五%程度にすぎません。
 買収したオーエンス・イリノイのプラスチ ック製造部門では、完成品の輸送業務を工場 ごとに行っていました。
年間二〜三億ドルの  大手製罐メーカーの英レクサムは2007年に大規模 な買収を実施し、北米市場におけるプラスチック事 業の売上高を従来の4倍に拡大させた。
これを契機 として3PLを導入し、ネットワークの再構築を行っ た。
その結果、輸送コストを3年間で約13 %削減す ると同時に輸送サービス品質を大幅に改善すること ができた。
同社で北米・南米のサプライチェーンを担 当するスコット・ブラブリック副社長が解説する。
欧米SCM会議? 英レクサム 北米での大型買収を機に3PLを導入 輸送費削減とサービス品質向上を両立 レクサム(Rexam) 組織概要 会社名 レクサム 創業 1923 年 本社 イギリス ロンドン 最高経営責任者 グラハム・チップチェイス 売上高 46億1900万ポンド(5912億3200万円) 最終利益 2 億3600 万ポンド(302 億800 万円) 従業員数 2 万3000 人 ユニソン・ロジスティクス組織概要 会社名 ユニソン・ロジスティクス 親会社 ハブ・グループ 創業 1971 年 本社 アメリカ イリノイ州 最高経営責任者 デーブ・イエイガー 売上高 18 億3373 万ドル(1466 億9840 万円) 最終利益 4345 万ドル(34 億7600 万円) 従業員数 1392 人 (注1)いずれも2010年度の数字 (注2)1ポン ド= 128 円で換算 (注3)1ドル= 80円で換算 63  SEPTEMBER 2011 売上高がある工場では、毎年一〇〇万ドル前 後の輸送費を支払っていたことになりますが、 各工場では輸送担当者が何社もある輸送業者 に電話したり、ファクスで取り寄せたりした インボイスを、会議室のテーブルに広げて作 業しているという、あたかも一九七〇年代か のような遅れたやり方をしていました。
 当社は先の買収をする際、証券市場などに 対して、買収における経営の相乗効果を上げ ることを約束していました。
その約束を果た すためにも輸送業務における効率化は不可欠 でした。
 しかし、当社のSCM部門には輸送担当者 が一人しかいませんでした。
しかも、その担 当者は元々は製造部門出身で、輸送業務の経 験はほとんどありませんでした。
また当社に は輸送管理システム(TMS)を自社で開発 するようなノウハウもありませんでした。
 さらにはこの先、輸送管理部門を作るつも りもなければ、新たに人材を増やす予定もあ りませんでした。
製造業者である当社は、輸 送業務に力を入れるよりも、本業に注力すべ きだという暗黙の了解がありました。
 当社は、自社で輸送管理をするという選択 肢をすぐにあきらめ、物流の専門家である3 PL企業に輸送業務を全面的に委託すること を決めました。
 ちなみに当社の輸送業者への支払いは年間 約二五〇〇万ドルですが、それとは別に軒下 渡しで取引先が当社の工場まで製品を引き取 りにくる分が、取引先の支払い運賃にして約 二五〇〇万ドル分あります。
このうち、われ われが取り組んだのは、あくまでも当社が配 送する部分です。
ハブ・グループをパートナーに  
械丕夢覿箸鯀択するにあたって我々は、 いくつかの選定基準を設けました。
一つは、 その3PLがオンタイム配送率や貨物の可視 性(Visibility)などの指標を作る能力を持っ ていることです。
もう一つは、当然ながら輸 送費を削減できること。
そして三つ目は、C O2(二酸化炭素)を削減できること──で した。
当社は本社がイギリスにあることもあ り、CO2削減については、一般的なアメリ カの企業以上に厳格な立場をとっています。
 当社が3PL企業を探しているというニュ ースが業界に流れると、多くの3PL企業が 自ら売り込みに来ました。
いずれの3PL企 業も高いIT能力を持っていたことが、強く 印象に残っています。
 私は一〇年以上前、レクサムとは別の会社 で働いていた時に、3PL企業に業務を委 託した経験がありました。
その時と比べると、 ITの能力という点において、3PLが格段 の進歩を遂げていることが分かりました。
 物流コンペを行い、国内物流大手のハブ・ グループ(Hub Group)の3PL部門、ユニ ソン・ロジスティクス(Unyson Logitics)と 三年契約を結びました。
 ユニソンを選んだのは、次の三つの理由か らでした。
一つは、ユニソンの経営陣の積極 的なコミットメント(責任を伴う約束)です。
売上高が七億五〇〇〇万ドル(〇九年実績) のユニソンにとって、二五〇〇万ドルの輸送 費を委託する当社は、大手荷主の一つになり ます。
 その大手荷主である当社を大切にしようと する姿勢は、ユニソンが四半期ごとに当社の 担当役員に輸送業務について報告する際に、 親会社のハブ・グループの社長が出席するこ とに端的に表れています。
営業担当者レベル ではなく、経営陣が取引の状況を把握してい ることで、現場作業における細かいところま でスムーズに進むようになります。
 二つ目の理由は、ビジネスがやりやすいか どうか、というマインドの問題です。
当社は、 輸送業務についてほとんど何の知識も経験 もないまま3PL企業に業務を外注しました。
契約書の内容が妥当なものかどうかも分かっ ていませんでした。
 そのため、最初の一年半の間に契約書の内 容や成果配分(ゲインシェア)のあり方につ いて少なくとも五回は書き換えています。
ユ ニソンはその一つひとつに、誠実に対応して くれました。
 三つ目は、CO2削減への対応です。
これ については後で述べます。
 またユニソンの親会社であるハブ・グルー プは、インターモーダル輸送(複合一貫輸送) SEPTEMBER 2011  64 で米国二位(一位はJBハント)で、当社の 取引先が多い東海岸に密度の高いネットワー クを持っていることも大きな理由でした。
 ユニソンは当社に、四つのメリットをもた らしました。
一つはコスト削減です。
もう一 つはTMSの技術、三つ目は当社との有効な 関係性。
そして最後はKPI(重要業績評価 指標)を使っての業務報告です(図1)。
 先に挙げた買収当初、当社には北米だけで も三〇の工場がありました。
その統廃合を進 め、現在は約二〇工場に集約されました。
工 場の統廃合のたびに、輸送ルートは大幅に変 わることになります。
 ユニソンはITとTMSを使って、工場の 統廃合の計画が決定されてから、一、二日の うちに新しい配送ルートを組むことができま した。
このことは工場の統廃合をスムーズに のか、といった原因までわかるようになって います。
それによって、どうすればオンタイ ム配送率を上げられるのか、具体的な対策が 打てるようになりました。
 遅配の原因を分析する過程で分かったこと は、問題の多くが特定の輸送業者の能力にあ るということでした。
成績の悪い輸送業者と の取引を打ち切ることで、遅配の七〇%以上 が解消されました。
 現在では、貸切輸送、LTL輸送ともに、 進めるうえで大きな武器となりました。
CO2も大幅に削減  またユニソンは、荷主である当社との良好 な関係性を維持することに多大な努力を払っ てきました。
 コンペに参加した他の3PLの中には、輸 送コストを一〇%から三〇%も削減できると 提案してくるところもありました。
しかし、 その詳細を聞いてみると、日頃から取引のあ る下請け業者に輸送を丸投げして、下払い費 用を叩いているだけであったりしました。
 ユニソンの場合は違っていました。
ユニソ ンが現在使っている輸送業者のうち九〇%以 上は、以前から当社と取引のあった輸送業者 です。
ユニソンは、当社と長年取引を続けて きたそうした輸送業者を使って、ネットワー クを組み立てているのです。
 最後は、KPIを使って業務を細かく分析 する仕組みです。
当社にはこれまで、オンタ イム配送率の基礎データさえありませんでし た。
当社が把握していたのは、予定通りに 製品が工場を出発したかどうかという数字と、 支払い輸送費だけという非常にお粗末な状態 でした。
 それが現在では、取引先別のオンタイム配 送率がわかるだけでなく、遅配があったら、 それが当社の工場側の責任(欠品や在庫不足) によるものなのか、輸送業者に問題があった のか、取引先の受け入れ態勢に問題があった 図1 ユニソンがもたらした4つのメリット 1. コスト削減 ─ネットワークの分析 ─輸送ネットワーク構築 ─運賃の入札による業者の選択 2. TMS の技術 ─運賃と配送ルートの最適化 ─配送業者の統合 ─可視性(ビジビリティ)の能力 3. レクサムとの有効な関係性 ─レクサムの要求をくみ取る姿勢 ─財務やビジネス上の必要性を読み取る ─レクサムのすべての工場に訪問する 4. 業務報告 ─KPI を確立する ─KPI に基づく業務結果を毎月報告する 100 80 60 40 20 0 09 年 10月 10 年 1月 11月12月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 09 年 10月 10 年 1月 11月12月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 100 80 60 40 20 0 図2 オンタイム配送率(2010 年10 月分) 個建て(LTL) の輸送件数 貸切(TL)の 輸送件数 4,252 の 輸送件数 2,790 オンタイム配送率 99.44% オンタイム配送率 99.86% 65  SEPTEMBER 2011 ったため、その数が六〇〇台分となりそうで すが、それでも三年間合計で二五〇万ポンド のCO2が削減できたことになります(図3)。
 図4に明らかなように、輸送費はユニソン と契約を開始した初年度から継続して下がっ ています。
業務を委託して二カ月目には輸送 費削減の効果が現れはじめました。
年間四〜 五%という削減を足し合わせると、三年間で 十三%近く輸送費を削減したことになります。
 当社からユニソンへの支払いには、ゲイン シェア方式を採用しています。
すなわち、こ れまで当社が払っていた輸送費を削減した分 のうち、一定の割合をユニソンに支払うとい う形式をとっています。
そのため当社にとっ ては新たに発生するコストはありません。
ま た初期投資という出費もありませんでした。
 つまり、これまで自社でやっていた輸送業 務をユニソンに切り替えるだけで、KPIに よる業績評価の仕組みが固まり、オンタイム 配送などの輸送品質も高まり、加えて、輸送 費を大幅に引き下げることができたわけです。
 契約の期間を三年間としたこともよかった と思っています。
 ユニソンへの輸送業務の外注に最も抵抗を 示したのは、それまで工場で輸送管理を担当 していた当社の従業員たちでした。
輸送業務 の改革に取り組むことで、これまでの仕事を 失うのではないかと不安に思う人たちが少な からずいました。
 そうしたことは起こらないと当初から説明 してはいましたが、不安を完全に取り除くこ とはできませんでした。
そうした従業員が いる工場には、少しずつ話を進めて、一年か ら一年半をかけて、ユニソンに業務を移管し、 それまで輸送業務に携わってきた人たちを工 場の別の部署に配置転換しました。
 今のところ当社はユニソンとの取引にはお おむね満足しており、この講演の二カ月ほど 前に、さらに三年間の契約を更新したところ です。
今後は取引先ごとの情報や取引条件を ユニソン側に開示して、それぞれの取引先に 合った輸送サービスを提供することに力を注 いでいきたいと考えています。
(ジャーナリスト 横田増生) 九九%以上のオンタイム配送率を維持できる ようになりました(図2)。
工場から出発し た時間しか把握してなかった状態と比べる と、まさに雲泥の差です。
また貨物のステー タスをネット上で追跡できるシステムも導入し、 可視性を手にすることもできました。
 もう一つ重要なKPIとして、どれだけC O2を減らすことができたかがあります。
トラ ックやトレーラーによる貸切輸送を鉄道輸送 に切り替えるこ とで、CO2は 六〇%以上削 減することがで きます。
 ユニソンと 取引を始めた 〇八年度には、 三五〇台分 の貸切輸送を 鉄道輸送に切 り替えました。
翌〇九年度に は七二〇台分 を鉄道輸送に 切り替えること ができました。
一〇年度は前 年まで使ってい た主要路線の 貨物がなくな (注)この原稿は、二〇一〇年十二月にアメリカテキサス州で行われた 「北米SCM&ロジスティクス・サミット」のセミナーの講義内容 をセミナーの主催者であるWTGイベントから掲載についての承 諾を得た上で、該当企業のホームページの情報などを加えて再編 集したものである。
図3 CO2の削減(2010 年10 月まで) インターモーダル 輸送CO2 削減の累計値年間の目標値インターモーダルに よるCO2 の削減率 491 本905,708ポンド1,200,000ポンド65.66% トラック輸送によるCO2の排出量 《TL》 前月数値 1,157,509ポンド 10月まで累計値 16,370,996ポンド 《LTL》 前月数値 40,261ポンド 10月まで累計値 569,426ポンド 図4 輸送費を13%削減 2008 年 2009 年 2010 年 97.4% 98.1% 98.7% 98.3% 99.2% 99.6% LTL TL 《オンタイム配送率》 2008 年 2009 年 2010 年 4% 5% 4% 《輸送費の削減率》

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