2005年1月号
現場改善

プロジェクト終了後の改善活動

事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 取締役 中根治 JANUARY 2004 72 改善成功から二年を過ぎて 産業用資材メーカーのG社は関東・東海・近 畿地区に自社工場をもち、日本全国に製品を販 売している。
近年の状況下においても増収基調 を維持している元気な企業だ。
一昨年の夏に当 社でコンサルティングを行い、物流改善の大ナ タをふるった。
その結果、総額で年間七〇〇〇 万円強というコスト削減効果を得た。
当時実施 した改善内容は次の通りであった。
〈実施内容と実施後の成果〉 ?配車情報の早期伝達 →当日午後がなくなり、前日午後までに九〇% が確定、当日配送分は路線便にて対応 ?協力物流会社の絞り込み →コンペ開催。
二十一社→五社に絞り込む。
う ち一社は新規採用 ?運賃表・管理追跡表作成 →物流企業へのインセンティブ要素を高めた 運賃表作成、Excel ベースでの追跡管理表の 作成、予算立案 ?不採算取引の是正 →全取引先への体制変更告知、個別交渉の実 施、配送日指定実施 ?協力物流会社との契約締結 →二年更新での全社統一契約の締結、得意先 情報の集約 G社に対しては改善活動が完了してから三カ 月後のアフターサポートを行っていた。
そのため、 改善の進捗が順調であったことを弊社でも把握 していた。
そのG社で取締役関東工場長を務め る工藤氏から「また相談したいことがあるのだ が、一度来てくれないか」と電話をもらった。
改 革は大成功だったはず。
それだけに工藤取締役 の電話がどのような意味を持つのか、当初は測 りかねていた。
約束の日にG社関東工場に行くと、工藤取締 役がやってきた。
「よーう、久しぶりだな。
お前のところは順調 か? がんばってんだろう? 儲かってるか」 以前の調子だった。
少しほっとした。
工藤取 締役は仕事に厳しく責任感も強い方であるが、い つも明るい。
楽しく仕事のできる人だ。
前回の 取り組みの成功も、工藤取締役の牽引力による ところが大きかった。
「先日はお電話いただき、ありがとうございま す。
その後はいかがですか?」 「いやあ、前回やってもらったコンサルティン グは社内でも評判が良くてね、効果も予想以上 に上がっているんだよ」 聞くと、予想されたコスト削減額より、さら に五%程度の削減効果が上乗せされているとの 第13回 物流改善には賞味期限がある。
トップダウンによる短期集中型の改善活動は 大きな効果を期待できる反面、プロジェクト終了後に予想もしなかった副作用を 招く恐れがある。
今回はNLFにコンサルティングの再依頼をしてきた企業の事 例を通じて、プロジェクトを成功させた後の改善フォロー活動を紹介する。
プロジェクト終了後の改善活動 ――産業資材メーカーG社 73 JANUARY 2004 施できていない。
前回の物流改革実施メンバー も先行して成果がでたことで、社内体質改善ま でたどり着けず活動が尻すぼみになってしまっ た。
その意味では前回の改善は実態のない、バ ブルみたいなもんだ」確かに、改善活動は短期集中で明確な成果を 求められるため、特定の人間が強い牽引力で改 善を引っ張り、取引先にある種?泣いてもらい ながら〞達成することが多い。
しかし得られた 成果を維持するのは現場の仕事である。
現場が 改善の意味や進捗状況について正しく理解でき なければ成果も長続きはしない。
G社が工藤取締役の説明したような状況にな っているとすれば、前回の物流改善はG社にと って?勘違いの成功体験〞によって?与えられ た成果〞を得ただけということになる。
工藤取 締役はこの点を非常に憂慮していた。
「だいたい単なる交渉で値段が下がるなんて、 自分達の仕事に対する気配りや現状認識がいか に甘かったかということの裏返しだろう。
その 意味じゃあ、前回は成果が出たんじゃなくて、底 抜けのバケツの底が塞がっただけだ」 「もちろん御社の交渉は的を射ていたと思う。
だからこれだけの効果が出たともいえるが、この 取り組みが自分達のノウハウになっていないと すれば、他でも同じようなことが起こっているか もしれない。
それが一番怖いんだ。
ましてや効 果が半端じゃない額で出たために、上から下ま で物流業務自体を誤解している。
叩けば下がる と思っているんだ」 「そこで今回の相談だが」工藤取締役は続けた。
「今回も基本的には物流コストダウンのコンサル をお願いしたい。
目標額は現状比の五%ダウン。
範囲は全国。
条件は全社員が参加意識を持てる ような改善を行うこと。
そして、ウチの商売に 合った物流体制を構築して欲しい。
情報システ ムの刷新も含める。
これをお願いできるか」 弊社にとっては評価を頂いたと同時に新しい 課題も与えられた格好である。
自社のためにも 避けては通れない課題であると理解し、できる かどうかの不安半分、喜び半分で引き受けるこ とにした。
実感できる改善とは G社から帰った私はデスクで頭を抱えた。
前 回の改善は、成果は出た。
しかし成功したとは いえない。
今回の改善は成果を上げた上で、成 功もさせなければいけない。
ではどのようになれ ば成功と呼べるのか。
コストが下がっただけで は満足できない、という工藤取締役の言葉を思 い返すうち、以前にお会いした物流会社の社長 の嘆きが頭に浮かんできた。
「物流業務が一番儲かるのは契約して実務を開 始した初日です。
あとはいくら業務をうまくや ろうが、逆にクレームを出そうが、値下げを要 請され続ける。
現場では仕事をつつがなく進め るためにそりゃあいろいろな苦労をしているんで すが、結論として『それはわかった。
それはそれ として値下げしてくれ』です。
報われない。
どう すればウチとお付き合いしたメリットを感じてい ただけるのでしょうか?」 この物流会社の場合は荷主企業の言われた通 りに仕事をこなし、要求コストもしっかり達成 している。
しかし、荷主企業にとってはそれで ことであった。
物流コストは売上高対比と絶対 額の二つを追跡していたが、いずれも予想以上 の効果を出していた。
「それは良かったです。
上手くいっているので あれば何よりです」 「ところがね、また新しい問題が発生している んだよ」 工藤取締役がすぐに返した。
成果が上がって いるのに、何の問題点があるのだろうか。
勘違いの成功体験 真剣な表情で工藤取締役は話し始めた。
「問題 はうちの社内なんだ。
前回の物流改善は社内で 継続的に行われてきた業務改善(TPM:Total Productive Maintenance )の一環として行われ たんだが、結論から言えば?あまりにも効果が 出過ぎた〞」。
意外な言葉だった。
「それまでは改善を行う際にも社内で方法を考 える過程があったため、自分達が苦労した、わ ずかながらでも前に進んだ、という実感があっ た。
しかし前回の物流改革は、御社の力を得て 実施したうえに、実施内容のうち?契約の変更〞 が目立ちすぎてしまい、特定の人間しか関与し ないまま成果が出てしまった。
そのため当社の 経営陣も『他の事業所でも同じように実施すれ ば効果がでるんじゃないか』と安易に考えるよ うになってしまった」 「営業担当も『物流改善は自分達には関係がな い。
製造側が勝手にやってくれている』と思っ ているようだ。
実際、前回提案してもらった改 善実施内容のうち、?配車情報の早期伝達と? 不採算取引の是正の二点についてはほとんど実 JANUARY 2004 74 「当たり前」だ。
感謝の気持ちは非常に希薄であ る。
なぜこのように要求は尽きないのか。
私は こう考えた。
「正しく情報が伝わっていないからではないか」 人は知らないことを知ろうとするとき、自分 なりの感触で状態を掴もうとする。
形のある商 品を買うときは、そこにいる店員に交渉をして、 自分の値ごろ感を掴んだ上で購入を決める。
比 較的安価なものは相対的・打算的に判断するが、 高価なものはさまざまな情報を得た上で、気持 ちの上で納得しなければ買うには至らない。
高価なものであれば買ってからも「他の人よ りも得をしたか損をしたか」という尺度で見直 したり、実用的か、無駄はないかなど、折に触 れて何度も評価を繰り返す。
実際には後から考 えても仕方のないことであっても、こうした試 行錯誤を経て、初めて「買ってよかった」とい う感触を得る。
物流やコンサルティングなど形のないサービ スを購入する場合も基本的には変わらない。
買 う前に、まず他者の評判を確認する。
それによ って直感的な印象を得る。
その後で初めて実績 や業務内容を見て、自分に有用かを検討する。
購 入後の行動は形あるものと全く一緒である。
そうであるのに物流サービスの善し悪しを外 部の人間が判断する情報はあまりにも乏しい。
「ロジスティクスとは?兵站〞の意味で…」や 「物流がなければ世の中の流通は成立しません」 など、物流はおよそ非日常的・非現実的な言葉 で語られることが多い。
その対極にあるのがテレビの通販番組だ。
膨 大なデータを駆使して、なおかつ分かりやすく シンプルな言葉で、商品の仕組みや使い方を説 明している。
商品を紹介する営業マンは自分の 口から出る情報がビジネス上どのような意味を 持つのかよく理解している。
そんなことを考えて、G社の物流関係者以外 のスタッフに行動を起こさせるための調査分析、 および報告書の作成を行った。
調査分析には通 常の二倍程度の時間と工数をかけた。
具体的に は次のような項目を調査・分析した。
?事業所別売上高対物流コスト比率 ?事業部・製品別売上高対物流コスト比率 ?事業部・製品別粗利高対物流コスト比率 ?方面別着地点分析 ?事業所別曜日別出荷傾向 ?物流企業・ドライバー別出荷傾向 ?事業所別定性分析(ヒアリング調査・現地所 定項目調査) 「物流改善説明会」を実施する 全社の調査・分析を行ったところ、G社の全 社員に理解してもらいたい課題が次のように抽 出できた。
?製品のもつ利益獲得条件に合致した経費管理 A事業部とB事業部は利益獲得条件(顧客の 要求内容、生産の計画性、荷姿数量)が明らか に違う。
同じ物流体制では経費管理や改善対策 が徹底できない。
?業務役割分担 既存顧客の受注〜納品までの対応について、実 態として営業部門と製造部門の役割分担が不明 瞭な部分がある。
「物流」のコスト責任は営業部 門にありながら、実際の指示、交渉・管理など の実務は製造部門が行っている。
?物流コストの把握方法 現在、物流コストは営業部門の地域事業所別 に配賦されているが、配賦基準が現場に理解さ れていない。
そのため事前にコストを抑えるよう な行動がとれない。
また物流費は「単価と総支 払額」の管理しかしていない。
製品別に見れば 物流コストによって採算割れしているものもあ り得る。
?物流効率の向上策 土曜日の配送や「赤帽」を使っての緊急配送 など、コストアップになる物流がなくならない。
積載効率が上がっていない。
?輸送単価低減 関東工場では現在、配送先一件当たり平均で 一万二〇〇〇円強の物流費が発生している(全 平均)。
改善課題は他にもいくつ か出てきたが、経営陣が考 慮すべきものや物流部門で 対応すべきものは除いた。
全社員に理解しておいても らわなくてはいけない課題 としては主に右の五つであ った。
これらの課題を解決 するためには、注文を受け る前の顧客との取引条件 の整備が必要なものや、受 注時点での交渉などでクリ アしたいものなどが多く含 まれていた。
それは今まで 図1 現在取り組んでいること 1.コストダウンの達成 現状より売上高対比10%のコストダウン 年間5,000万円(400万円強/月) 関東地区で5%、東海・近畿地区で5%程度を目論む 2.G社に合った物流システムの構築 受注から出荷まで、構内作業も含めた「G物流」を構築する 75 JANUARY 2004 は物流担当が「改善は無理」と諦めていた課題 だった。
また我々は社内に物流改善協力をお願いする にあたり、なるべく全社員が日常的に使ってい る数値・言葉・単位を用いて改善課題を伝えよ うと試みた。
そんな準備を経て「物流改善説明 会」が、ある雨の降る土曜日の夕方、営業会議 の後に開催された。
「本日はお忙しいところ、お時間をいただきあ りがとうございます。
また先ほどまで数字の詰 めでお疲れのところ、重ねて御礼申し上げます。
実は今日お時間を頂いたのは、皆さんが先ほど まで打合せされていた業績向上に関係するお話 をするためです」。
そう切り出した。
「私達は物流のコンサルティングを行う会社で、 昨年から御社の物流改善のお手伝いをさせても らっております。
具体的にどのようなことをして いるかというと、物流コストの削減にかかわる さまざまな取り組みを行っています。
今回は全 社を対象に、御社の物流コストを現状比で五% ダウンした上で、商売のスタイルに合った物流 体制を構築することを目標にご依頼を受けてい ます(図1)」 会場の反応は良くない。
集まった社員たちは、 「それがどうした」という表情だ。
無理もないだ ろう。
皆さっきまで売り上げ・利益の話でお互 いに丁々発止のやり取りをしていたところであ る。
構わず私は続けた。
「実はこの取り組みの件で皆さんにお願いしたい ことがあり、今日ここに伺いました。
この取り 組みに協力していただければ、みなさんは売り 上げを伸ばさなくても、利益を相当伸ばすこと ができます。
そのために物流コストを削減する、 という取り組みにご協力いただきたいのです」 「皆さんご存知の通り、物流費は商品を売るた めには絶対必要です。
それじゃあ、実際にいく らぐらいコストがかかっているかはご存知でしょ うか? 私の手元に数字があります。
一昨年ま では関東工場からの出荷品だけで月約二六〇〇 万円の物流費を支払っていました(図2)」 「これらのコストを私どもで分析したところ、 ずいぶん昔の契約で、契約条件が現在の業務内 容と合致しないために余分に支払っていた費用 や、他に世間相場の実態から見て高額なものが ありました。
そこでこれらを全面的に見直し、 ?物流コンペ〞を行いました。
このことによっ て毎月七八〇万円の物流コストを圧縮すること ができました」 ここまで説明して やっと皆の表情が少 し変わってきた。
た だし、これは昨年ま での取り組み結果 の説明であり、あま り驚きはない。
「この結果を踏ま えて、今年は全社 での物流体制の見 直しを行うことにな り、再度全社の業 務内容を調査させ ていただきました。
ここで皆さんに質問 です。
皆さんのお客 ?物流コンペ実施による契約条件の見直し、 取引企業の絞込み ?配車基準の変更(積載率から配送件数へ) 図2 いままでの取り組み 関東工場 実施前 売上高:4.2億/月 取引物流企業:26社 月間物流費:約2,600万円/月 売上高対物流コスト比率:6.3% 実施前 売上高:5.3億/月 取引物流企業:7社(73%減) 月間物流費:約1,820万円/月(30%減) 売上高対物流コスト比率:3.47% 東京営業所 売上高対運賃%推移 800,000 700,000 600,000 500,000 400,000 300,000 200,000 100,000 0 5.00 4.50 4.00 3.50 3.00 2.50 2.00 1.50 1.00 0.50 0.00 (%) 03 年3月 03 年2月 03 年1月 02 年 12 月 02 年 11 月 02 年 10 月 02 年9月 02 年8月 02 年7月 02 年6月 02 年5月 02 年4月 東京 売上高 運賃 % 全社平均% 2002年4月 465,259 21,176 4.55% 2.38 2002年5月 459,270 20,710 4,51% 2.68 2002年6月 457,929 17,685 3,86% 2,70 2002年7月 470,450 17,140 3.64% 2.87 2002年8月 416,878 14,081 3.38% 2.76 2002年9月 524,801 17,203 3.28% 2.78 2002年10月 581,074 19,063 3.28% 2.81 2002年11月 551,588 17,515 3.18% 3.04 2002年12月 555,455 18,357 3.30% 3.01 2003年1月 579,507 18,754 3.24% 2.97 2003年2月 643,282 18,577 2.89% 3.25 2003年3月 735,033 18,342 2.50% 3.40 合計 6,440,526 218,603 平均 536,711 18,217 3.47% 2.88 売上高(千円) 運賃(千円) ポイント:支払コスト総額の削減 ?業務単価+手当等の内容見直し ?配車台数の削減 売上高 運賃 % 全体平均 図3 得意先1件当りの物流コスト 配送1回あたり売上高 配送1回あたり粗利高 配送1回あたり物流コスト トラック1台当り配送件数 損益分岐点売上 粗利高対物流コスト比率 1,311,179円/件 71,197円/件 11,497円/件 2.6件/台 211,371円/件 約16% 323,816円/件 47,989円/件 11,497円/件 2.6件/台 77,577円/件 約24% A事業部 B事業部 JANUARY 2004 76 様へ一回商品を運ぶためにいくらの物流コスト がかかっているかご存知ですか? ざっくりと 平均で構いません」。
全員が首を横に振る。
会場 から「そんなことは考えたこともないです」とい う声が上がる。
私は続けた。
「御社の商品のほとんどは現在、 貸切のトラックでお客様に商品を運んでいます。
このトラック一台には一走行あたり二・六件分 の商品が積まれます。
これはA事業部、B事業 部の商品にかかわらず、おおよそエリアが合致 すれば混載されます。
私達がこれらの毎日の走 行実績を調査・分析したところ、一得意先一回 当り約一万二〇〇〇円の物流コストがかかって いることが判明しました(図3)」 「かたや売り上げと粗利はどうでしょうか。
こ れも分析したところ、一得意先一回当り売上高 は、A事業部は約一三一万円、B事業部は約三 二万円でした。
ただし粗利で見ると、A事業部 よりB事業部の方が粗利率がよいため、それぞ れA事業部が約七万一〇〇〇円、B事業部が約 四万八〇〇〇円の儲け(粗利)を稼いでいるこ とがわかりました」 「皆さんご存知のとおり、物流コストは粗利の中 から支払われます。
これらの数値から逆算して、 今までと同様にトラックで商品を配送する場合、 物流コストをまかなうための損益分岐点はA事 業部商品で約二十一・一万円、B事業部商品で 約七・七万円となります」 皆が困惑し始めている。
何が言いたいのかを 掴みかねているようだ。
皆を動かす「シクミ」作り 「実は皆さんは気づいていないかも知れません が、最近の注文内容は多頻度小口化していて、物 流費をまかなえないほどの売り上げしか取れな いにも関わらず、配送せざるを得ない状況が出 てきているのです。
平均値は大口の得意先が大 きく押し上げていますが、かなりの数の得意先 で赤字すれすれの状況が予想されています」 「現在は得意先一件ごとの『物流採算』は掴み きれていませんが、製品別には捉えることがで きています。
その結果、A事業部では四品目、B 事業部では六品目が物流採算上、赤字であるこ とが判明しています」 「実は私達が皆さんにご協力をお願いしたいこと とは、営業担当の皆さんには?得意先一件あた りの物流採算の向上〞を、工場担当の皆さんに は?製品一種あたりの物流採算の向上〞をお願 いしたいのです」 「噛み砕いて言うと、?受注内容が多頻度・小 口化していて、受注内容によっては赤字のもの も発生している。
?受注全体の五%程度が土曜 日配送になっており、毎週十二万円程度の余分 な物流費がかかっている。
?受注内容が直前ま で確定しないため、多めに配車をしてしまい総 手配台数が減らない。
?製品によっては物流す ると大赤字のものもある、ということなのです (図4)」 ここまで話して皆の顔を見ると、明らかに目 の色が変わっていた。
今まで、?いかにして売り 上げを伸ばすか〞に注力していた営業担当の面々 は、値引きやキャンペーン、代わり映えしない 宣伝広告、新規顧客開拓、売れる商品の開発要 望、採算を確認しないサービスの提供などのア クションを重点的に手がけてきた。
その一方、営業の手がかからない、取引の長 い既存得意先の動向などは、月々の売上額が変 わらなければ特に気にも留めなかった。
そのため、 採算が悪化していることにも気を配っていなか った。
「儲かっているはず」の得意先が実は「儲 かっていない可能性が高い」ことを今、目の当 たりにしたのである。
図4 いままでにわかったこと 現在、チャーター便で配送をした場合、 得意先1件当り12,000円(4tチャ ーター)の負担が発生している 積み合わせ件数の少ない土曜日の配送は物流費負担が さらに1.2倍に跳ね上がる 製品によっては物流すると大赤字のものもある 受注内容が直前まで確定しないため、 多めに配車をしてしまい総手配台数が 減らない 受注内容が多頻度・小口化していて、 受注内容によっては赤字のものも発生 している。
受注全体の5%程度が土曜日配送になっており、毎週12万円 程度余分に物流費がかかっている 車両待機や低積載の原因になっている (1日1台手配便が減ると40万円弱/ 月の物流費削減) 余分 2次輸送 総納入件数 総コスト 物流コスト/件 月 260 2,888,425 11,12 火 305 3,482,200 11,40 水 284 3,285,350 11,58 木 271 3,032,967 11,17 金 285 3,350,717 11,77 土 53 714,750 13,52 日 0 0 合計 1,457 16,754,408 11,49 30.00 25.00 20.00 15.00 10.00 5.00 0.00 (%) 赤字 製品別売上高対物流費比率(化成)2002.04―2003 全製品平均6.88% 51.32 60.00 「では現実として、どのような状態にあれば? 物流上採算が合わないか〞といいますと、先ほ ど申し上げた通り、営業面では、一伝票あたり の売り上げがA事業部で約二十一・一万円、B 事業部商品で約七・七万円以下ですと赤字です。
そのため今、物流部門ではこれよりも低い金額 で注文を受けた場合は、貸し切りのチャーター 便ではなく路線便での発送を、もしくは納期を 調整してトラック一台当りの配送件数を上げる ことを考えています(図5)」 「これらは物流部門で配車の工夫で対応します が、営業担当の皆さんには、ぜひ?これ以下の 金額で受けたら赤字になるんだ〞というライン を頭に留め、販売活動をしてほしいのです。
も ちろん物流のことばかり考えていたのでは仕事 になりません。
それでも交渉の最後に『ついて は納期ですが、一日後にずらして欲しい(前倒 しして欲しい)』や『もう少しロットは上がりま せんか、上げられるならば、よりお届け時間を 自由に設定できます』などの話をして欲しいの です。
営業担当の皆さんにお願いしたいのはこ の二点だけです」 「また既存のお客様からの注文を受ける事務の 女性スタッフの皆さんも同様に、一伝票当りの 売り上げが物流損益分岐点を下回るようであれ ばその旨印をつけて配車担当に連絡をしてくだ さい。
また伝票は溜めないで即時処理をしてく ださい。
現状は伝票を見ながら配車をしている のですが、伝票の到着スピードが一日早まると、 余分な配車をする確率が減り、配車当初から適 切な物流方法を選択できるようになります。
ま た積載効率も上げることが可能になり、結果と ?物流採算管理 ?車両積載率・稼働率の向上 ?製品別配送単価の低減 現状 売上高:16.2億 月間物流費:約4,240万円/月(10%減) 売上高対物流コスト比率:2.62% 図5 これからやりたいこと 全 社 現状 売上高:16.2億/月 月間物流費:約4,640万円/月 売上高対物流コスト比率:2.88% ポイント:製品ごと配送単価の削減 ?配送効率の向上(製品別に物流を見直す) ?徹底したムダ・ムラ取りの実施 粗利高対物流費比率 合計 平均 フレームラミネート品 29.02% 29.02 仕入商品(車輌) 17.50% 17.50 ホット・モールド 54.02% 54.02 HR・モールド 46.25% 46.25 その他・モールド 16.81% 16.81 ラミネート加工品 7.44% 7.44 原料(原料) 2.97% 2.97 アスビッチ 27.48% 27.48 型償却費 0.00% 0.00 チップ モールド(車輌) 0.00% 0.00 システムブラント 0.00% 0.00 開発品(車輌) 15.10% 15.10 粗利高対物流費比率 合計 平均 ボンデングラミネート 35.34% 35.34 加工品(車輌) 0.00% 0.00 運賃(車輌) 0.00% 0.00 アスビッチ加工品 0.00% 0.00 TIC仕入品 ― ― 型償却費 ― ― 自社原価差異 ― ― 車輌想定値引き 0.00% 0.00 車輌計 36.04% 36.04 差し引き合計 40.99% 40.99 60.00 50.00 40.00 30.00 20.00 10.00 0.00 (%) 製品別粗利高対物流費比率(車両)2002.04―2003 全製品平均36.04% 1,000,000 900,000 800,000 700,000 600,000 500,000 400,000 300,000 200,000 100,000 0 14,000 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 曜日別配車傾向 関東工場(総合計 2003.03―06:4ヶ月平均) 金曜/6週 木曜/6週 水曜/6週 火曜/6週 月曜/6週 日曜/5週 土曜/5週 金曜/5週 木曜/5週 水曜/5週 火曜/5週 月曜/5週 日曜/4週 土曜/4週 金曜/4週 木曜/4週 水曜/4週 火曜/4週 月曜/4週 日曜/3週 土曜/3週 金曜/3週 木曜/3週 水曜/3週 火曜/3週 月曜/3週 日曜/2週 土曜/2週 金曜/2週 木曜/2週 水曜/2週 火曜/2週 月曜/2週 日曜/1週 土曜/1週 金曜/1週 木曜/1週 水曜/1週 火曜/1週 月曜/1週 77 JANUARY 2004 して一件当りの物流コスト負担は減ります。
営 業事務さんにお願いしたいことはこの二点、計 四点のお願いです(図6)」 「これらをすべて実施したときの効果として、 一日のトラック配車台数を約二台、七・六%削 減したいと考えています。
これは金額換算で年 間一三〇〇万円程度になります」 いつの間にか営業担当が全員数字をメモして いた。
皆が数字と説明用に渡したレジュメを見 てうなっている。
どうやら自分達の頭の中の計 算機でいろいろな得意先の採算を計算している ようであった。
「ひとつ、質問したいのですがいいですか?」 九州の営業担当が声を上げた。
「この計算は関東 や近畿の得意先には当てはまりますが、九州で はこれほどのトラック台数は走っていません。
同 じように考えられるものでしょうか?」 私は答えた。
「考え方は全く同じです。
物流の 条件が変わっても、結局は皆さんが上げた売り 上げの中からそのコストは支払われます。
もっ と言えば粗利の中から支払われます。
物流改善 の目的は『物流を改善することではなく、儲け ること』です。
トラック一台がいくらで契約で きたかではなく、この売り上げを取るためにどれ だけの物流コストをかけたのか、という視点で 見て欲しいのです」 「そう考えると、もしかしたら九州はもっとコ ストをかけても売り上げを伸ばすべき時期に来 ているということが分かるかも知れません。
遠 隔地はあらゆる意味で商売上不利な物流を強い られています。
この時代にあえて在庫を持って サービスレベルを上げることも、置かれた状況 次第ではあり得る選択です」 今度は東海地区の若手営業担当が質問した。
「今まで物流がやってきたことはわかりました。
でも、これはすべて当たり前のことですよね。
な ぜ、今までできなかったのですか?」 「皆が現状を知らなかったのです。
いや、正確に は知ろうとしなかった、というのが正しい。
これ だけの詳細な分析は自社では困難です。
しかし、 やらなければ物流部門の人間が今日皆さんに話 したことはきっとこうだったでしょう。
?物流は 毎日大変な苦労をしている。
商売が大変な時代 は分かるが、うちも儲けなければいけない。
つい ては全員しっかりと物流のルールを守って、伝 票は早く出して、支店に在庫はおかず、お客さ んにも状況を説明してルート便に乗せてくれ。
聞 けない営業はペナルティも検討している〞と」 「営業も物流も、?平均〞とか、?みんなが〞と かを言い訳にしてはいけないはずです。
それは物 流も一緒です。
すべてを上手く回そうと思えば、 同じ目線で、同じ意識を持って、問題のあると ころをピンポイントに突かなければならない。
こ れらの数字を見て自分の担当先は黒字だろうか、 と思ってもらえるだけで今は十分です」 「粗利に占める変動経費の割合で、一番大きい のは人件費、次が物流費です。
おおよそ粗利の 三割が物流費で消えていく。
それだけの大きな コストなのに、その実態を知らないということで はいけないですよね。
まずは知ること。
今回はこ のことを理解してもらえればありがたいです」 その後、多くの営業担当が自分の得意先は赤 字か黒字か、物流費をもっと下げるにはどうし たらいいか、どうやって営業事務に伝えようか など、活発にやり取りが行われた。
こうして彼 らの?頭の計算機〞の中に?得意先別物流採算〞 という考え方が深く浸透していった。
それから一ヶ月たった現在、不採算案件の数 は目に見えて減少している。
土曜日配送も、金 曜日の前倒し納品などを交渉し始めている。
し かも今回は全社、全員が動き始めているとの報 告を受けている。
徐々にではあるが「ローコス トのシクミ」が浸透し始めているのである。
「物流改善」後の「物流改善」 ここ数年の荷主企業における物流改善の主た る取り組み手法は「トップダウン、短期集中プ ロジェクト型」であったと筆者は認識している。
?物流を経営課題として捉え、社長自らが率先 JANUARY 2004 78 図6 営業担当および営業事務様へのご協力のお願い ぜひご協力ください! 1.営業ご担当様へ ?土曜日納品の企業様の配送件数をなるべく減らす →平日の積載件数を上げ、物流費の高騰を抑えます。
?納期回答の標準化を行う →製品によって標準納期を設定すれば、生産・配車の自由度が上がり配送 もルート化が可能になります。
2.営業事務ご担当様へ ?確定した伝票は早めに発行する →配車が早期に確定し、余分な車両手配が減ります。
(おおよそ2日前に確定していれば無駄な配車はほぼ起こりません) ?売り上げ3万円以下の受注伝票の仕分け →物流費で儲けが飛ぶ受注はあらかじめ小口配送など、運び方を変えるこ とで対応します。
また、営業担当にお願いして採算割れになるほどの小口受注が続く場合 は、ロットアップをお願いするなどの対応をお願いするなどして対応し ます。
79 JANUARY 2004 して改善の指揮を取り、短期間で成果を成し遂 げなければならない〞という掛け声のもとに進 められた改善である。
そうした取り組みが多く の企業で実施され、大きな効果を上げた。
しかし、その副作用として、多くの物流現場 が今日「改善思考停止」を起こしているように 見える。
その症状とは次のようなものである。
?コストは下がったが、品質も下がった (トレードオフの発生) ?単価は下がったが、トータルコストは上がった (部分最適化) ?業務内容がわからなくなった (業務のブラックボックス化) ?何をするにも追加料金を求められる (対応力低下) ?アウトソーシングしたら、改善が止まった (進化の停滞) トップダウンの絶大な効力を実感した物流担 当社員は「自分達がコツコツと改善をするより も、いざとなれば社長が現れてあっという間に コストを下げてくれる(ヒーローの待望)」と考 え、営業・製造現場社員は「自分達が下手に動 けば?物流コストを上げる元凶だ〞と言われる。
余計なことは言わずに自分の仕事をしていれば いい(物流改善の被害者)」と考えている。
結果として現場は次の改善ができないでいる。
物流の重要性は各企業に十分認識されていなが ら、肝心の現場社員がそっぽを向いているので ある。
企業に物流戦略がありながら、戦術を練 り、戦闘する人がいない状況となっている。
成 果は出たが成功していない。
このような状況をどう打破すればいいのか。
私 は「物流の一般化」に特に注力している。
一般 化とは物流担当以外の人間に「物流は特別なも のではない」と感じてもらうことである。
そのた めに例えば物流改善の進め方を図7のように説 明している。
また私は自分のクライアントに対して、「物流 改善が安定したら、損益表上で進捗管理ができ るようにしてください」と伝えている。
損益表 の中で物流が語られなければ、社内に定着しな いからである。
物流を全く知らない人間から見 て、損益表における物流コストの存在感を実感 することから物流改善は始まる。
「なんでこんな にコストがかかってるの?」と思わせる見せ方、 伝え方が必要なのである。
皆に注目されてはじ めて、いろいろな智恵が集まる。
物流改善は利益を出すために行う。
利益を出 すためには経費を下げるか、売り上げを伸ばす か、どちらかしかない。
しかし今までは絶対額 と前年比という考え方しかなかった。
これでは いくらがんばっても物流は縮小均衡せざるを得 ない。
これからは売り上げ・粗利対比、効率、生 産性などの指標で物流が語られる時代になる。
そして、物流は特定の人間だけが関与する、特 別なものではなくなる。
ましてや物流コストは「交渉」で下げるのではなく、「習慣」で下げる ものである。
習慣を変えるには、新しい視点が 必要である。
新しい視点を得るには、多くの新 しい眼が必要である。
判断に足る情報が必要で ある。
これからの物流は、物流を全く知らなかった 人間の手によって進化していくだろう。
物流に 携わる人間は今後、いかに普通の人たちに「わ かりやすく物流をつたえていくか」が問われる。
自分達が特別だと思うから被害者意識も出る。
そ うではなく、ともに同じ目的(=利益の獲得) に向けて活動している仲間である。
機能で区別 をするのではなく、役割で繋がっていく時代に なっているのである。
図7 改善実施のステップ 0 ? ? ? ? ? 正しい現状把握 省経費 省時間 省工程 省管理 省人化 実施内容 改善の着眼点・分析手法 改善手法 いつ・どこで・何に・どれだけ・ なぜ・どのようにコストがかか っているのかを把握する 同じ品質でより安価な代替手 段がないかを探索・選択・接続 する 同様の成果をより短時間で出 すために業務の進行状況を見 直す 同様の成果、もしくは今以上の 成果を現状なみの時間・コスト で出すために工程自体を見直 す 現状の工程をより標準化し、管 理せずとも見込んだ成果が出 せるようにする 現状の工程をより機械化・自働 化し・より少ない人手で見込ん だ成果が出せるようにする トータルコスト・波動把握 ((原単位での)現地実地比較) コスト比較分析 ベンチマーク手法 ボトルネック分析 顧客分布分析 着地点分析 製品別採算分析 得意先別採算分析 業務プロセス分析 コストプロセス分析 拠点別採算分析 事業別採算分析 作業別原価計算(ABC) 業務フローの抜本改革 重複・反復工程の削減(集約化) 異条件業務の分離(拡散) 既存パートナーとの契約内容 見直し 物流コンペティション 業務ルールの見直しと単純化 情報システムの導入 効率化機器の導入 拠点配置変更 業務プロセスの標準化 製品採算別管理の実施 ロケーション変更 配送モード組み換え 顧客との取引条件整備 従業員教育体系整備 実施専任化・分離 (包括アウトソーシング) 情報システムの統合化 大規模効率化 自動化システムの導入 実施項目 レベル

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