ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2011年11号
メディア批評
薄気味悪い相田みつをの時ならぬブーム流行りものにとびつく日本人とメディア

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 NOVEMBER 2011  66  私は、相田みつをにイカれている人間が生 理的なまでに嫌いである。
そのほとんどが「自 分はいい人です」といったノーテンキな顔を している。
具体的に挙げれば、テニスの松岡 修造、俳優の高橋英樹、歌手の森山良子等々。
多分、こうした人たちは原発安全神話などを 信じ、そのCMにも出てきたと思われる。
疑 問を持たないオメデタイ人たちである。
 政治家や経営者で相田を持ち上げる人は、 腹に一物がある。
 「しあわせはいつも自分のこころがきめる」 と相田が言って、国民や社員がそれをありが たがってくれたら、どんなデタラメな政治や 経営をやってもいいからである。
 この顔はかなしみに  堪えた顔である  苦しみに堪えた顔である  人の世の様々な批判に   じっと堪えた顔である  そして  ひとことも弁解しない顔である  なんにも言いわけを  しない顔である  相田にはこんな詩もどきもあるが、これを 読んでウサン臭いと思うかどうかがポイント なのだろう。
トイレの日めくりカレンダーに 出てくるような相田を指して?便所の神様? と揶揄したのはエッセイストの小田嶋隆だっ た。
まことにクサイのである。
 松下政経塾ならぬ松下未熟塾出身の野田佳 彦が持ち出して(それも輿石東という曲者を 籠絡するために)一気に有名になった相田を 嵐山光三郎が『週刊朝日』の九月二三日号で 一刀両断していて、胸のつかえがおりた。
 嵐山は旅館の廊下に相田の色紙が飾ってあ ると二度と行かないし、居酒屋のトイレにそ れがあれば、すぐに店を出るという。
 「安っぽい詠嘆、みせかせの純朴さと、貧 相な抒情、傲慢なへりくだり、嘘の弁解、名 声への執着、悟り自慢といった虚飾の匂いが する」という指弾は見事で、感嘆するほかない。
 次に嵐山は「どじょうがさ 金魚のまねを することねんだよなあ」について、「財務省 のポチ」「増税促進首相」という野田のイメ ージを庶民派に塗り替える効果はあっただろ うと皮肉った上で、庶民にとって食えない金 魚なんてさしたる価値はないとし、柳川鍋等、 広く庶民の食用となったどじょうのほうが金 魚より上なのだと続ける。
 そして、野田語録を相田みつを風に置き換 えてみせるのである。
 「マニフェストはないほうがいいんだよなあ。
どっちみちできねんだから」  「どんどん増税すりゃええんだよ。
おれが 払うわけじゃねえ」  「どの議員にもあるんだよ知られない献金が。
人間だもの」  「ノーサイドにして、試合終了後は一緒に大 風呂に入りゃいいじゃないか。
この場はわた しが裸になるところ。
あなたも裸になるところ。
きみの金玉でかいね」  「選挙区が見ている。
パナソニックが見てい る。
ドジョウのふりして生きよう」     「どじょう内閣といわせておけ。
閣僚はみ んなどじょうばかりだけど、蓮舫だけは金魚 だよなあ」  結びが「どじょう内閣が崩れたっていいじ ゃねえか。
どっちみちどじょうなんだから」  それにしても、野田が取り上げただけで、 相田みつをの本が増刷され、相田美術館に客 が押し寄せているというのが薄気味悪い。
 流行りのものにとびつく日本人の軽さをメ ディアはもっと批判しないのかと書いて、メ ディアも軽いから、それは望めないのだと気 がついた。
最後に、流行りもののベストセラ ーの著者(勝間和代、村上春樹、塩野七生、 稲盛和夫、竹中平蔵ら)を徹底批判した西部 邁と私との共著『ベストセラー炎上』(平凡社) を解毒剤として推薦しておきたい。
薄気味悪い相田みつをの時ならぬブーム 流行りものにとびつく日本人とメディア

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