ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年1号
特集
物流企業番付平成16年版 荷主の商売を知らずに提案はできない

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

21 JANUARY 2004 特 集 「荷主の商売を知らずに提案はできない」 創業者の父親の後を継いで、12年前に27才で社長になった。
当 時の年商は約1億円。
京都に特有の「急便事業」が売り上げの8割 を占めていた。
その後、同事業からは完全に撤退。
業態を大きく 転換した。
現在では住宅建材を扱うスペシャリストとして各方面 からの注目を集めている。
(聞き手・岡山宏之) 総売上の八割を占める事業から撤退 ――かつて御社が主業としていた「急便事業」は、京 都で古くから発展したユニークな運送業ですね。
「急便事業者の事業免許は区域ですが、その業務内容 は普通の運送屋とはだいぶ違います。
昔は路線会社の ところまで荷物を持ち込む必要があったのですが、例 えばA商事さんの元請けの急便業者はどこと決まって いて、その急便業者がこれは西濃への持ち込み、これ はトナミへの持ち込みという具合に采配をふるってい た。
今でいうサードパーティみたいなものです」 「とりわけ京都の和装会社と急便業者の付き合い方 は独特です。
個人でやっている急便屋の中には、例え ば『京都の高島屋に行ったときに、あの商品を買って きてくれ』といった要望にまで応えているところがあ る。
いわば便利屋です。
うちも過去には急便が総売上 の八割を占める主力事業でした。
その頃は、荷主であ る呉服屋さんの展示会などに参加しては、反物の片付 けから下足番まで何でもやっていました。
この当時の 経験が、いま非常に役立っています」 ――しかし、十二年前に社長に就任すると間もなく、 その急便事業から撤退してしまった。
なぜですか? 「和装関係の流通というのは階層が七段階くらいあ る。
その流通に対して若いときの私は強い憤りを感じ ていました。
原価が一〇万円のものが、何で小売りで は一〇〇万円になるんだ、とね。
しかも中間にいる人 たちをみると皆、楽をしてる。
こんなバカげた業界は いつまでも続かないという思いが一つありました」 「もう一つは当社が所属していた急便グループに、新 たに入ってきた幹部の方たちとそりが合わず、若気の 至りで喧嘩してしまったんです。
我々にはある種の伝 統のようなものがあって、それなりの自負もあった。
そこにいきなり新しい様式を採り入れるといった話が 出てきたのが、とにかく面白くなかったんです」 ――急便事業から撤退するにあたって、その後のビジ ネスの目算は立っていたのですか? 「何にもありません。
ええ格好して、口ではメーカ ー物流をやるとか言ってましたけどね」 徹底して人の嫌がる仕事を狙い撃ち ――となると、新規荷主の開拓は大変だったのでは。
「これはもう笑い話ですが、我々にとって縁もゆか りもないA社という会社があるとします。
そのA社の 物流センターが、例えば埼玉にあって、そこに各地か ら荷物が持ち込まれているとする。
我々がそういう発 見をすると、着荷主の許可も得ずにA社の共配便がで きましたというパンフレットを勝手に作り、これを持 って取引先に営業に行くんです。
実際、そうやって布 団の西川さんなんかを開拓しました」 ――かなり強引ですが、既成事実ができると着荷主も 認めてくれるということですか。
「そういうことです。
しっかりした荷主さんのセンタ ーほど、着時間にうるさい。
ところが当時の路線業者 には、その対応ができなかった。
だから路線さんも、 荷物をうちに取られても文句を言ってこないんです。
最初の頃は、そんな案件ばかり狙い撃ちですよ。
そう やって集荷した荷物をセンターに持っていくと、今度 は他の車がどこから来たかを全部、調べて帰ってくる。
次はそこの会社に営業をかけるわけです」 ――当時から、対象業界を限定したプラットフォーム 事業というイメージを持っていた? 「そんな余裕はありません。
まずは仕事を確保する 必要があった。
だから何よりも人の嫌がる仕事をやろ うと決めました。
そこで、まず思いついたのがお酒の 第2部バブル崩壊後に伸びる専業者Interview HOTTA(旧:堀田運送) 堀田芳史社長  JANUARY 2004 22 配送です。
小売店への酒の配送は、手積み手降ろしの うえ、届け先では酒屋さんの倉庫の整理までしなけれ ばならない。
十八段くらい積んである商品を、先入れ 先出しといってすべて手作業で入れ替えるんです」 「住宅現場への建材の担ぎ込みの仕事も、人のやり たがらない仕事です。
現場で荷受けをするのは大工さ んですが、彼らは荷受けを専門にやっているわけでは ない。
だから、しっかりしたドライバーほど現場でも めごとを起こす。
どっちも職人ですからね」 「そんなこんなで何とかやってきたのですが、酒類 業界ではその後、流通効率化のためにPOSがどう のという話が出てきた。
そのとき酒の問屋さんは、従 来のようにあぐらをかいていてはダメだと物流効率化 に乗り出しました。
一方、建材業界ではそういう取 り組みが全然、進まなかった。
その頃から我々にと って?流通の効率化〞がキーワードの一つになりま した」 既存業者にできない配送網を全国展開 ――そうした経験が、今の主力事業である建材関連の 事業につながったわけですね。
「もともと建材業界の流通は、建材・資材メーカー がいったん問屋に入れて、問屋が現場に納品していま した。
ところが世の中の流れで、ハウスメーカーが直 接、問屋を通さずに買うようになってきた。
問屋の手 掛けていた物流をどうするかとなったとき、路線業者 しか担い手がいなかったんです。
でも路線業者にして みれば、建材は扱いたい荷物ではありませんでした」 「建材はだいたい箱モノ、長尺モノ、板モノという 三パターンに分かれるのですが、これをトラックに積 むと荷姿がもの凄く悪くなる。
積載効率も上がらない。
そのうえ現場では、大工さんが片手間で荷受けをする ため、事故のクレームや、納品に行ったはいいが大工 さんが不在といった行き違いが頻繁に起こる」 「当初はうちも路線業者を使っていたのですが、結 局、我々の考えるレベルでの対応は彼らにはできなか った。
そこで自社配送しようという話になった。
これ の全国ネットができれば面白いと考えたわけです」 ――事業規模が小さいのに、よく自前の配送網を持て ましたね。
「そこはもう体育会系のノリでカバーするしかあり ません。
最初の頃は、京都から九州まで二トン車で直 配をやってました。
そんな経緯で増やしてきた当社の 仕事には、車扱いの距離制運賃がほとんどありません。
つまり、資材メーカーにとっては、全国どこで売って も同じ値段になるという分かりやすさがある」 ――しかし、その仕組みはかなり上手く荷物を積み合 わせなければ実現できませんね。
「他の荷物を集めるしかありませんでした。
幸運だ ったのは、我々の考え方が時代にマッチしていた点です。
ちょうど世の中では輸送費を変動費化する動きが 盛んになっていた。
ですから積み合わせの荷物を獲得 するための営業には、さほど苦労しませんでした」 「当社は木質系の内装建材を手広く扱っていますが、 その隣の領域の資材メーカーがいろいろあります。
当 時、多くのメーカーは路線業者のデポを自社の配送セ ンターとして借り、実際には一日六時間しか車が稼働 していないのに、料金は一日分払っていました。
それ を変動費化すれば支払い運賃が三、四割どーんと下が る。
しかも当社の場合は、荷さばき場もスペース単位 だし、トラックも二四時間という枠のなかでシェアリ ングしてもらう。
当然、コストを安くできます」 「最初は資材メーカーの方も、『本当にそんなことがで きるの?』と懐疑的なのですが、実際にやらせてもら うと、うちの方が建設現場のこともよく知っている。
こっちの方がいいじゃないかとなる。
もちろん上手く 《企業概要》 HOTTA(2003年10月に堀田運送から社名変更) 代表者 堀田芳史 設 立 1974年 資本金 4000万円 社員数 210人(グループ全体) 車両数 140両 事業内容 京都での「急便事業」で培ったノウハウをベースに“人の嫌 がる物流”を積極的に手掛けることで成長してきた。
事業の柱は、住宅 建材のトータル支援サービスと、包装容器や建築廃材を対象とするリサ イクル事業の2つ。
非効率な分野に合理的なプラットフォームを持ち込み、 流通革新とローコスト化を実現しつつある。
過去10年以上にわたって増 収を続け、5年後にはグループ全体で年商100億円を目指している。
  23 JANUARY 2004 いかないケースもありますが、これまでは概ねそんな 筋書きで荷主の開拓を進めてきました」 住宅建材の流通で3PLを本格化 ――最近では「SDC(スーパーデリバリーセンター) 構想」と称して、建材関係のサービスを取付施工から 営業代行までメニュー化していますね。
「例えば、施主に物件を引き渡した後で、下駄箱の 扉のマグネットのキャッチに不具合が出たとか、棚の 木ダボを紛失したという話が出てきます。
最近、ハウ スメーカーさんはCS(顧客満足)を進めていて、こ のような要望に初動から七二時間で対応するといった ことをやっています。
具体的には、こうした情報を各 資材メーカーに割り振るわけですが、この領域で当社 は『受注発注』と呼ぶ営業代行サービスを手掛けてい ます」 「まず我々が施主のところに行って話を聞き、実際 にどんな部品が必要なのかを確認します。
状況を把握 して、これを資材メーカーに取り次ぐわけです。
従来、 これは資材メーカーの営業マンの仕事でした。
でも全 国に営業所を持っている大手メーカーであれば、それ なりに対応できますが、中小規模のところにとっては 容易ではなかった。
そこを当社が代行するわけです。
ですから我々は、何社ものメーカーの制服をお預かり しているし、何社ものパターンでアフターメンテナン ス部という部署名の名刺を刷っています」 ――他にも多くのサービスを用意しています。
「アフターメンテナンスのコストは、メーカーにとっ てはできれば避けたい出費です。
クレームなど無いに 越したことはありませんからね。
だから、ここで我々 が事業を拡大していくのには無理がある。
そこでメー カーにとって前向きなサービスも手掛けようと始めた のが『取付・施工』サービスです。
ハウスメーカーは 月に何棟くらいを扱うという計画を必ず持っています。
この領域でなら我々のビジネスも成り立つ」 ――しかし、物流業者がシステムキッチンなどの施工 まで手掛けられるものなのですか? 「アフターメンテナンスだけであれば、極端なことを 言えば電動ドリルだけ使いこなせれば対応できます。
微調整さえ勉強すればね。
だから我々も当初はドライ バーを職人化しようとしたのですが、これは見事に失 敗しました。
やはり無理があった。
そこで、より本格 的な『取付・施工』を始めるときには、専門の職人さ んにドライバーをやってもらうようにした。
そうする ことで上手く機能するようになりました」 ――サービスを多角化すると料金設定も大変ですね。
「我々はABCを使って、きちっと自分たちの作業 原価を把握しています。
ですから、メニューとしては 多くのサービスを用意していますが、荷主さんには必 要な部分だけを使ってもらえばいいようになっている。
例えば、現場に資材を納品する機能を使ってもらうの であれば、センターフィーは何%ですよということに なるし、他に取付施工をするのであれば、その分の料 金をいただく。
提供するサービスによって料金も変わ るという体制を目指しています」 ――どんどん新しい領域での事業を具体化しています が、そうした発想はどこから出てくるのでしょう。
「うーん、商売からじゃないでしょうか。
一般的な 運送会社とか物流会社というのは、自分たちの原価ベ ースの積み上げでしか物事を考えていません。
しかし、 流通のショートカットなんて話が出てくると、どこで 何を省略するのかまで分かっていなければ、物流から の提案などできない。
ましてや問屋の機能を肩代わり する3PL事業などできるわけがありません」 特 集 商 品 開 発 コンビニ化 オールインワン化 新築現場 廃材処理 リサイクル化機能 購買代理 マッチングサービス 機能 ハウスビルダー ?オリジナル商品の開発・提案 ?資材拾い出し ?与信リスク管理 ?商品の受発注機能 ?物流機能 ?施工機能 ?現場の工程管理 発注 7つの機能 発注 発注 中堅建材メーカー 大手住設メーカー 木質材、アルミ建材、窯業材、 床・造作材、天井・建具 ほか 相対取引における仲介 →機能別にフィーが変動 ファイナンス機能 現場納材機能 受発注機能 流通加工 アッセンブル機能 製   造 新 提 案 販   売 7つの機能 SDC 堀田が提案する 7つの機能を集約 流    通 取付施工機能 《HOTTAが住宅建材の分野で手掛ける「SDC」(スーパーデリバリーセンター)の概要》

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