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物流不動産市場レポート
DECEMBER 2011 74
する需要は底堅く、多くのエリアでまとまった
面積が確保できる大型で高スペックな物流施設
に注目が集まって品薄感が出ており、賃料水準
にも底打ち傾向が見られる。
全般
需要、底堅く推移
二〇一一年九月期(一一年七月〜九月)は、
首都圏、関西圏とも空室率は改善した。 首都圏
については、震災から半年が経過し、当初想定
された震災特需の終了による空室率の上昇が懸
念されたが、代替テナントが早期に決まった事
などにより、マーケットへの影響は見られなか
った。
荷主の拠点統合や、ネット通販などの新規
開設などの動きが続いており、高スペックかつ、
使い勝手の良い物流施設への需要は依然底堅く
推移している。
大型物流施設マーケットの賃料水準について
は底打ち感が見られ、今後は上昇局面が期待さ
れる。 また、三菱地所や三井不動産等の大手不
動産デベロッパーが物流施設投資への参入を発
表するなど、投資マーケットにも新たな展開が
見られる。
第33回
首都圏・近畿圏(二〇一一年九月期)
震災特需終了も改善傾向持続
大手不動産デベが市場に参入
シービー・リチャードエリス コンサルティング部 鈴木公二 シニアコンサルタント
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2004 2005 2006 2007 2008 2009
0306 09 12
2010
0306 09
2011
20%
15%
10%
5%
0%
図1 首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率
《空室率算出基準(調査棟数:54 棟)》
既存物件 2010 年9 月以前に竣工した物流施設
地域 千葉県・東京都・埼玉県・神奈川県、 延床面積 10,000 坪以上、
竣工 既竣工物件、 空室確認方法 ヒアリングによる、
建物形態原則として、開発当時において複数テナント利用を前提として企画・設計さ
れた建物であること
13.7
11.5
9.9
5.6
4.2
4.5
5.6
7.0
12.4
※今期首都圏で調査対象となった54棟については、上記算出基準により抽出したものであ
り、必ずしも物流施設ストック全体の需給バランスを示したものではありません。
出所:シービー・リチャードエリス
空室率
既存物件空室率
6.2
首都圏
空室率一・四ポイント改善
首都圏の空室率は、前期(一一年四月〜六
月)から一・四ポイント改善し五・六%(図1)
となった。 今期は新規供給が無く、前期に竣工
した物件の空室消化が順調に進んだことで空室
率低下に繋がった。
今期は震災直後に緊急避難的に創出された特
需の短期契約終了による影響が懸念されたが、
長期契約の代替テナントが決まったケースが複
数あり、全体のマーケットに大きな影響は及ば
なかった。 需給の改善の効果が大きく、大型優
良物件に対する引き合いが顕著に見られる状況
になってきている、新築物件を除く既存物件空
室率は四・五%と前期に引き続き低水準で推移
し、高稼働が続いていることを示している。
今期の需要としては、ネット通販会社による
新規開設、3PL会社の荷主獲得による新規入
居、館内増床等が目立っている。 物流施設に対
75 DECEMBER 2011
マーケット規模を示す稼働床面積も引き続き
増加しており、マルチテナント型物流施設の市場
が順調に拡大している状況にあるといえる(図
2)。 需給の改善を受けたデベロッパー各社の開
発意欲も向上しており、大型開発用地の供給が
限定的なことから、今後は用地獲得競争が増え
ることが想定される。 今後は一二年末までに約
一三万坪の新規供給が予定されているが、過去
の平均的な水準よりも低く、今後需給バランス
が崩れることは考えにくい。 当面、マーケット
は安定的な動きを示すと予想される。
近畿圏
来春に三年ぶりの新規供給
今期の近畿圏の大型マルチテナント型物流施
設の空室率は、対前期比一・三ポイント改善し、
五・八%となっている(図3)。 テナント
の動きは限定的であったが、一部の施設で
空室消化が進んだことで、僅かではあるが
空室率は改善を示している。 既存物件の空
室率についても同様の水準となっている。
近畿圏では〇九年三月から新規供給が無
かったため、大型施設に対する引き合いは
あるものの、空きスペースは少ない状況に
なっており、全体として品薄感が見られる。
今後しばらく需給は改善方向へ推移するこ
とが想定される。 一方で、一二年春には約
三年ぶりに大阪市西淀川区で大型マルチテ
ナント型施設の開発が予定されており、近
畿圏での開発の動きも徐々に見られ始めて
いる。
稼働床面積(指数)の推移をみると、前
期は賃貸施設から自社施設への転用によ
るサンプルの除外があったため減少に転じたが、
今期は空室消化が進んだことで僅かながら増加
がみられている(図4)。
図4 近畿圏の稼働床面積(指数)
図2 首都圏の大型物流施設の稼働床面積(指数) 図3 近畿圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率
400
350
300
250
200
150
100
400
350
300
250
200
150
100
35%
30%
25%
20%
15%
10%
5%
0%
(2004/03=100)
03 06 09 12 03 06 09 12 03 06 09 12 03 06 09 12 03 06 09 12 03 06 09 12 03 06 09
2004 2005 2006 2007 2008 2009
03 06 09 12
2010 2011
09 12 03 06 09 12
2006 2007
03 06 09 12
2008
03 06 09 12
2009
03 06 09 12
2010
03 06 09
2011
09 12 03 06 09 12
2006 2007
03 06 09 12
2008
03 06 09 12
2009
03 06 09 12
2010
03 06 09
2011
《空室率算出基準(調査棟数:11 棟)》
既存物件 2010 年9 月以前に竣工した物流施設
地域 大阪府・兵庫県、 延床面積 10,000 坪以上、
竣工 既竣工物件、 空室確認方法 ヒアリングによる、
建物形態原則として、開発当時において複数テナント利用を前提として企
画・設計された建物であること
※各期における稼働床面積の合計を2004 年3月期を100とし指数化
※各期における稼働床面積の合計を2006 年9月期を100とし指数化
※今期近畿圏で調査対象となった11 棟については、上記算出基準により抽
出したものであり、必ずしも物流施設ストック全体の需給バランスを示したも
のではありません。
空室率
既存物件空室率
出所:すべてシービー・リチャードエリス
( 2006/09=100)
7.4
6.2
7.1
5.8
日本における高スペック物流施設の割合
は、全体の倉庫市場のうち二%程度しか
ないと弊社では推計している。 高スペック
物流施設とは、高度な配送効率をビジネス
の前提とするネット通販事業者や、物流コ
スト削減を考える3PL事業者などが利用
できるような、高い効率性を有した物流施
設であると定義できる。 つまり最新鋭の物
流施設である。 日本にはこういった施設は
まだまだ少なく、最新鋭施設を専門に提供
する不動産開発会社などにとってはビジネ
スチャンスになっている。
物流業界の変革に伴い、物流施設に求
められる仕様も時代によって変化してきた。
裏を返せば、これは消費構造の変革がた
らした結果であるともいえる。 最近では、
書籍や日用品等に加えて、食品等をインタ
ーネットを通じて購入する人が増えている。
高齢化の進行や働く女性が増える中で、今
後もこうしたサービスの利用者は増加する
と思われる。
近い将来には、これらの機能に加えて、
高い冷凍・冷蔵設備といった機能も求めら
れるようになるだろう。 加えて、消費者
のニーズに応えるためには、物流企業のス
キルの向上も今以上に重要な観点になって
くることは間違いない。
消費構造の変化が
物流施設を変えた
|