ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年4号
特集
第2部 宅配大手2 社が市場全体を先導 ロジスティクス・サポート&パートナーズ 黒澤明 代表、石橋岳人 常務

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

宅配便の値上げに路線便が便乗 ──今回の調査結果および足下の運賃の動きを、ど う見るか。
まずは特積み貨物から感想を聞きたい。
ロジスティクス・サポート&パートナーズ(LOGI─ SP)黒澤明代表 特積みの運賃は調査では横ばい という結果だが、体感としては上がっているという 印象だ。
大手特積みが値上げに動いている。
ヤマト 運輸、佐川急便の宅配便の値上げに引っ張られるか たちで、他の大手特積みも、恐る恐るではあるもの の、荷主に値上げを要請し始めている。
宅配便の単 価は昨年の震災後に跳ね上がった。
それに路線便が 便乗した格好だ。
──宅配便と路線便では、環境は違うはずだが。
黒澤 しかし、ヤマトは『ボックスチャーター便』で 路線市場に実質的に手を伸ばしているし、佐川は元々 B to Bがドメイン。
この二社が路線便市場でもプライ スリーダーになってきた。
LOGI─
咤 石橋岳人 常務 大手宅配の値上げ に耐えきれずに、路線便に逃げた荷主が比較的高い 運賃を受け入れている。
ただし、大手メーカーの運 賃は、今のところそれほど上がっていない。
むしろ 下げているところもある。
これまで極端に運賃が安 かった荷主や業種で値上げが起きている。
──地場の中小運送会社の声を聞くと、とても値上 げを要請できるような環境にはないという意見が圧 倒的だが。
黒澤 大手宅配の営業マンには、顧客別の収支表が 配られている。
値上げを要請しなければいけない荷 主が、そこにはっきりと示されている。
『大幅値上げ を認めてもらえなければ取引を打ち切る荷主』、『五% 上がればセーフの荷主』といったかたちでランク付け までされている。
同じフォーマットの値上げ要請の文 書を複数のクライアント先で目にしているので、一律 にやっているのは明らか。
値上げが全社的な方針で あれば、営業マンとしてはそれに従わざるを得ない。
他の特積みはそこまで強行姿勢ではないものの、安 過ぎる運賃はさすがに看過しなくなっている。
──貸切運賃についてはどうか。
全体としては、や はり横ばいだが、地域別に見ると東京が上がってい て、大阪は横ばい、名古屋は下げている。
黒澤 名古屋が下がっているというのは実感と合う。
指数の推移にも現れているが、リーマンショック前 の一時期、名古屋の運賃相場は東京より高いぐらい だった。
実際、クルマが足らない状態だったので運送 会社も強気で、安い運賃には首を縦に振らなかった。
それが今は、いったん切った荷主に改めて頭を下げ て、仕事をもらいに回っている。
前回の二〇一〇年 調査でも?名古屋プレミアム運賃?の消失が既に話題 になっていたが、それがずっと続いている。
石橋 自動車関連の荷動きも持ち直してきたとは言 われるが、名古屋のクルマはまだ余っている。
名古 屋発の運賃はどうしたって安くなる。
しかも、これ からメーカーの海外シフトは一段と進む。
名古屋の物 量が長期的に減っていくのは明らかで、運送会社は 車両投資を避けるようになってきた。
 一方の大阪は横ばいという結果だが、?安値・底這 い?といったほうが実態に近い。
震災直後には拠点 や在庫の?関西シフト?も指摘されて、実際、倉庫 スペースが埋まるようにはなってきた。
一時期はガラ ガラだった南港の倉庫群も今は空きが少ない。
拠点を 関西にシフトするにも、海に面した南港は、災害リス クという点から敬遠されることが多いのだが、関西 は内陸部に倉庫施設が乏しいため、仕方なく南港に APRIL 2012  14 宅配大手2 社が市場全体を先導  ヤマト運輸と佐川急便の大手宅配2社が運送市場全体の プライスリーダーとなってきた。
2 社の動きが他の特積みや 貸切運賃のトレンドを規定する前提条件となっている。
地 域別では名古屋で相場の下落が目立つ。
リーマンショック 前までの割高な運賃から一転、値崩れに歯止めがかからな い状況だ。
            (聞き手・大矢昌浩) ロジスティクス・サポート&パートナーズ 黒澤明 代表、石橋岳人 常務 2 荷物が集まっている。
しかし、運賃が上がったとい う話は聞かない。
──相対的に東京は堅調だ。
昭和六〇年調査の実勢 運賃を一〇〇とした時の指数で言えば、前回が一一〇 で今回が一一六だから、約五%値上がりしたことに なる(下図)。
石橋 既存荷主の運賃を交渉によって値上げしたと いうより、湾岸地区から内陸部に拠点を移したこと に伴って新たに契約した運賃が、従来よりも多少上 がっているということではないか。
黒澤 距離帯別にいうと、近距離の地場配送がとく に上がっている。
復興需要でダンプや建設業界に人 手を取られていることが影響しているのかも知れな い。
東北のダンプ運転手は今かなりの高給が取れる ので、ドライバーからの転身が後を絶たない。
運送条件が交渉の焦点に ──今春以降の動きをどう見るか。
黒澤 大手特積み以外の、中堅以下の運送会社は運 賃交渉自体ができてない。
地方に行くほどその傾向 は顕著だ。
先日、九州で運送会社向けに行ったセミ ナーで、今春に運賃交渉する予定の会社を尋ねたと ころ、一〇〇人近い出席者のなかで二、三人しか手が 上がらなかった。
値上げを諦めてしまっている。
石橋 昨年度は震災対応があったため、物流コスト が予算を超過してしまった荷主が多い。
荷主には緊 急コストを呑み込んだという意識があり、いったん上 がってしまったコストを平時に戻したいと考えている。
その結果として、今後は運賃相場が二極化していく のではないか。
しっかりした納品スキルを持った運送 会社の運賃は、上がることはなくても下がりはしな い。
例えば、工場のライン側納品を行っている場合 などは、運送会社の代えが効かない。
荷主が値下げ を要請しても、『その値段ではウチではできないので 他に行って下さい』と言われてしまえば荷主には打 つ手がなくなる。
一方、単純納品にはいくらでも代 わりがある。
運送会社が仕事を維持したいなら料金 的にも荷主の言いなりになるしかない。
──足下では燃料費が上がっているが、この分が運 賃に転嫁されることはないか。
石橋 燃料費が上がっているということは、荷主の 原材料費も上がっているということ。
それを値上げ せずに荷主が吸収している以上、下払いも押さえざ るを得ない。
従ってサーチャージ制がそれほど普及す るとは思えない。
むしろ今は運送会社から運賃交渉 を持ちかけたら、契約を切られるか、逆に値下げさ れてしまうというのが多くの会社の実情ではないか。
──とはいえ、運送会社にコスト削減の余地はほとん ど残されてない。
石橋 確かに荷主もそれは分かっている。
そのため 荷主主導で運送原価の削減に乗り出すケースが増え ている。
納品時間の条件を緩和して一回に運べる量 を増やす。
あるいは運送会社の要望を聞き入れる代 わりに運賃は据え置くといったかたちで、運送効率 を上げることで、使用する台数を減らしてコストを削 減するというアプローチだ。
このやり方なら運送会社 にしても、売り上げは減るけれども運賃水準は維持 されるので利益は残る。
黒澤 とはいえ、運送会社の経営指標は年々悪化し ている。
運送会社の数も減少に転じている。
近い将 来、需給が逆転して実勢運賃がバブル的に高騰する 可能性は否定できない。
それが一年先か二年先にな るのかは分からないが、大底が近付いているという 感触はある。
15  APRIL 2012 LOGI-SP 黒澤明 代表  1964年生まれ。
大阪電気通信大中退。
学生時代に数々のベンチャービジネスを手 掛けた後、運送会社、物流子会社を経て、 97年に物流コンサルティング会社に入社。
2005年1月、ロジスティクス・サポート& パートナーズを設立、同社代表に就任。
現 在に至る。
LOGI-SP 石橋岳人 常務  1970年生まれ。
神奈川大学経済学部 卒。
船井総合研究所および物流コンサル ティング会社を経て2005年1月、ロジス ティクス・サポート&パートナーズの設立 に参画、同社常務取締役に就任。
現在に 至る。
S60 S63 H6 H10 H13 H16 H20 H22 H24 距離制運賃の推移(昭和60 年実勢運賃を100とする) 130 125 120 115 110 105 100 95 90 3地区平均 名古屋地区 東京地区 大阪地区 109 104 122 115 108 107 109 108 特集

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