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APRIL 2012 16
足元の荷動きは良くない。 昨年の震災後の
六月頃までは救援物資もあり活発だった。 とこ
ろが、夏以降に大きく鈍化した。 今年に入っ
ても報道されているような復興需要は発生し
ていない。
我々の運営する「WebKIT」は全国の
トラック協会および協同組合の会員向けの求
車求貨システムで、システムに登録された求車
求荷情報をもとに利用者同士が電話で直接交
渉し、成約すれば、システム上で成約処理を
行うという方式を採っている。 以前は運賃情
報の登録は任意だったが、〇九年に登録を必
須にした。 昨年もシステムを刷新して、求車
情報の運賃による絞り込み機能を追加するな
ど、検索機能を向上させた。
図1はWebKITの過去四年間の求車情
報と求荷情報の登録件数の前年同月比の推移
を示している。 リーマンショック以降、荷物情
報の登録件数は急激に落ち込んだが、〇九年
十一月から回復に転じ、一〇年から一一年の
春先までは前年同月比で高い伸び率が続いて
いた。
しかし、昨年五月以降は再び伸び率が大き
く下がっている。 繁忙期のはずの十二月も、伸
び率は五%程度に過ぎない。 この間にもWe
bKITのID数(利用者数)は増加し続け
ている。 以前であればリーマンショック時を除
けば、ID数が伸びればそれに応じて荷物情
報も増えていた。 しかし、今はそうなってい
ない。 今年の一月、二月も横ばいで、荷動き
が鈍化していることが窺える。
一方、図2はWebKITに登録された荷
物情報、車両情報の成約率の推移を示してい
る。 成約率は荷物と車両の需給関係を表す。 荷
動きが悪化すれば少しでも早く車両の稼働を
確保しようとする動きが出るため、求車情報
の成約率が上昇する。 つまり成約率の上昇は
買い手市場になっていることを意味する。
季節波動もあるが通常、平時は二〇%台で
推移している。 ところがリーマンショックから
一年ほどは、最大でおよそ五〇%を記録する
など異常な数値が続いた。 しかし、〇九年後
半には正常化しており、震災の影響もそれほ
ど大きくは出ていない。 今年に入って若干上
がっているとはいえほぼ従来通りの水準だ。
(談)
「WebKIT」日本貨物運送協同組合連合会
──復興需要はまだ発生していない
200
190
180
170
160
150
140
130
120
110
100
90
80
70
60
50
(%)
2008 2009 2010 2011 2012
50.0
45.0
40.0
35.0
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
0
(%)
2008 2009 2010 2011 2012
図1 荷物(求車)・車両(求荷)情報登録の前年同月比推移
図2 荷物(求車)情報と車両(求荷)情報の成約率の推移
09 年10月
92.3%
12 年2月
100.8%
12 年2月
96.9%
09 年3月
182.9%
10 年3月
195.6%
09 年3月
57.3%
荷物(求車)登録
車両(求荷)登録
車両(求荷)情報の
成約率
荷物(求車)情報の
成約率
助川利信常務理事
3 求車求貨事業者に相場観を聞く
特集
17 APRIL 2012
この二年の間、当社の物流情報サービス事
業(求車求貨事業)は順調に推移している。
リーマンショックの影響で一〇年三月期には
約三三〇億円にまで落ち込んだ売上高は、翌
一一年三月期にはリーマン前の水準を上回る
三八〇億円を達成した。 今期(一二年三月期)
においては、初めて四〇〇億円を突破するこ
とがほぼ確定している。
空車と荷物のマッチング件数は、一〇年三
月期が約六九万件だったのに対し、一一年三
月期は七六万件に増加、今期は八五万件を見
込んでいる。 運賃も上昇基調にある。 ボトム
だった〇九年には一運行当たりの平均単価が
五万一〇〇〇円台にまで下落したが、その後
は順調に回復し、現在では五万二〇〇〇円を
超える水準にまで戻している。
ただし、これを見て世の中の運賃相場も上
がっていると判断することはできない。 実運
送会社から聞こえてくる声は、むしろ厳しさ
を増している。 当社の物流情報サービス事業
が上向いているのは、コールセンターの新規開
設や、採算性の高い荷主の比率を上げている
ことなど、内部的な取り組みに起因している
部分も大きい。 また昨年は震災という特殊要
因もあった。
最近のトレンドとしては、空車不足が挙げ
られる。 荷物情報はあるのに、車が無いので
成約に至らないというパターンが増えている。
リーマンショック直後とは逆の現象だ。 折から
の不況で廃業や事業縮小が相次いでいること
に加え、既存の運送会社も増車や設備投資に
消極的になっている印象がある。
これまでは荷物が増えればそれに連動して供
給も増えていたが、今はそれが起きない。 背景
には激しいダンピングやドライバー不足といっ
た構造不況が一向に改善されないことや、軽
油高やコンプライアンス対応など新たなコスト
アップ要因があると認識している。 特に長距
離輸送業者には深刻な問題で、今は走れば走
るだけ損をする状況だ。 担い手が少なくなる
のは当然だろう。
昨年は地域的な特徴も色濃く出た一年だっ
た。 東日本・中日本・西日本に分けて見ると、
震災直後の第1四半期(四〜六月)では特に
西日本の運賃がこれまでにない上昇率を示し
た。 これは明らかに震災による影響だ。 救援
物資の輸送はもちろんだが、被災した工場の
代替生産を九州で行ったり、リスク分散の観
点から生産拠点を関西にシフトするという動
きも見られた。 西日本の拠点から東北や消費
地である首都圏に物を運ぶニーズが急速に高ま
り、車両が足りなくなって運賃が高騰した。
一方、東日本から出る荷物は少なかった。 西
日本から向かった大量の車両は、軒並み帰り
荷を確保することが困難な状況に陥った。 西
日本とは対照的に、当社の求車求貨のシステ
ム上でも車両情報が溢れ返った。 こうしたこ
とを見越し、往復分に近い運賃を設定する西
日本の運送会社も現れ始め、運賃の高騰にさ
らに拍車が掛かった格好だ。
荷物の種類で見ると、復興に必要な建築資
材の輸送需要が急速に膨らんでいる。 建築資
材は現場でクレーンでの積み卸しが発生するた
め、基本的には平ボディのトラックで運ぶ。 し
かし、近年ではウィング車との車両価格の差
が狭まってきたこともあり、平ボディはどん
どん少なくなっている。 そこに大量の引き合
いが発生した。 各運送会社は全く需要に応え
切れていないというのが実情だ。
今後の運賃動向を読むことは難しいが、建
築資材関連など一部の特例を除けば上昇して
いく要素は残念ながら見当たらない。 国には
トラック業界の構造不況を抜本的に解決する
取り組みを期待したい。 当社としても、独自
のネットワークを活かす形で運送会社やドライ
バーがビジネスをしやすい環境づくりを進めて
いく。 (談)
「物流情報サービス事業」トランコム
──震災の影響から西日本で急騰
物流情報サービス事業の売上推移
45,000
40,000
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
40,250
(百万円)
12 年
3月期
(見込み)
08 年
3月期
09 年
3月期
10 年
3月期
11 年
3月期
34,687
36,326
33,088
38,083
上林亮
物流情報サービスグループ
東日本ブロック
統括マネージャー
3 求車求貨事業者に相場観を聞く
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