ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年4号
ケース
佐川急便 環境対策

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

APRIL1 2012  52 天然ガス車の所有台数は世界一  佐川急便は二〇一二年度までに、CO2の 総排出量を〇二年度比で六%削減する目標を 掲げている。
この目標値は、世界最大規模の 自然環境保護団体「WWF(世界自然保護基 金)」と取り決めたものだ。
WWFは野生生 物の保護を目的に一九六一年に設立され、現 在はその対象領域を地球環境保全にまで広げ 世界約一〇〇カ国で活動している。
 
廝廝討一九九九年にスタートした「クラ イメート・セイバー・プログラム」は、企業 とのパートナーシップによって地球温暖化防 止に取り組むというユニークな活動だ。
プロ グラムに参加する企業がWWFとの話し合い で従来よりも高い目標を設定して温室効果ガ スの削減を進め、その実施状況について第三 者機関が検証を行う。
 環境活動において各業界のトップランナー を目指す企業をリーダー役にすることで排出 削減活動に弾みをつけるとともに、第三者の 検証によって企業の自主的な活動に透明性と 信頼性を与えようという狙いがある。
これま でに世界各国の二三の企業がプログラムに参 加している。
 佐川急便は〇三年に日本企業初、運輸会 社としては世界最初にクライメート・セイバ ー・プログラムへの調印を行った。
その際に 設定したのが冒頭の「一〇年間で排出量を 六%削減する」という長期目標だ。
 排出削減目標について国内の省エネ法など は、エネルギー使用量を売上高などで割った 「原単位」によって設定し、削減努力を相対的 に評価する方法をとっている。
このため、売 り上げの伸びとともにエネルギーの使用量が 増えても、その増加分が売り上げの伸びを下 回れば原単位が減り目標を達成できる。
 これに対しクライメート・セイバー・プロ グラムでは「総排出量」という絶対量で目標 値を設定する。
従って業績の伸びが大きいほ ど目標達成へのハードルは高くなる。
 (注・プログラムのスタート後に佐川急便は M&Aによって幹線輸送や国内航空貨物事 業のグループ企業を吸収している。
この結果、 それまで算定の対象外だったCO2排出量が 自社分に加わることになったが、これについ  環境省のトライアル事業に参画し、物流業界初 の「カーボン・ニュートラル」の認証取得を目指 す。
台車で集配を行う都市部の「サービスセンタ ー」を対象に、そのCO2排出量を算出し、グルー プで保有する森林の保全・育成活動で取得したク レジットで完全に相殺する。
環境対策 佐川急便 業界初の「カーボン・ニュートラル」目指す 森林保全活動で取得したクレジットを利用 「その他」は、佐川急便が保有しているディーゼル車の中で平成27 年度燃費基準達成車と平成17 年度排ガス規制適合車の合計台数 低公害車導入の推移 (台) 10,000 9,000 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 ‘02 ‘03 ‘04 ‘05 ‘06 ‘07 ‘08 ‘09 ‘10 1,110 1,647 2,197 2,693 49 3,290 52 304 3,695 86 4,254 100 4,355 100 4,349 99 26 39 61 1,716 4,417 4,835 5,598 その他 ハイブリッド車 天然ガストラック 53  APRIL 2012 てはWWFとの取り決めで、目標達成の評価 は基準年(〇二年度)当時の算定範囲での総 排出量をもとに行ってよいとされた)  佐川急便の取扱貨物量は年々伸び続けてい る。
宅配便の年間取扱個数はスタート時に比 べて二億個近く増えた。
CO2排出の絶対量 を六%削減するという目標は、極めて高い数 値と言える。
 これをクリアするための重点施策として同 社はこれまで、ディーゼル車に比べCO2排出 量が二割少ない天然ガス車の導入を進めてき た。
プログラムの調印時に、一二年度までの 累計で七〇〇〇台を導入する目標を掲げ、プ ログラム達成へのバロメーターにしている。
 自家用の天然ガス充填スタンドを営業所に 設置するなど環境整備も同時に行い、一〇年 度実績では保有台数が四三四九台まで増えた。
これによって昨年、同社は国際天然ガス自動 車協会から世界で最も天然ガストラックを保 有する企業として認定されている。
 このほか東京〜大阪間で同社専用のコンテ ナ貨物列車「スーパーレールカーゴ」を走らせ るなどモーダルシフトにも積極的に取り組んで きた。
また全ドライバーに対し運転中の急発 進・急加速・急ブレーキの抑制やアイドリン グストップの実施を促す「エコ安全ドライブ」 活動も、燃料使用の抑制につなげる地道な取 り組みの一つだ。
 さらに近年は、トラックの代わりに台車や 三輪自転車を使って集配を行う「サービスセ ンター」を大都市圏の都市部に集中展開して おり、これもCO2の排出削減に一役買って いる。
 従来は市区町村単位で郊外の幹線道路沿い などに「営業店」を設置し、トラックでエリ ア内の集配を行うのが基本だった。
これに対 しサービスセンターは「丁目」単位で街中に 設置し、半径一キロ以内の小さな集配エリア をカバーする。
センターの規模はコンビニエン スストア並みで、営業店が管轄するエリアの 一部を担当する形をとり営業店からセンター へ荷物を横持ちして台車などで配送する。
 もともと、渋滞による集配効率の悪化を避 け環境への負荷を低減するために、都心のオ フィス街や繁華街を中心に設置してきたもの。
〇六年の道路交通法改正で路上の荷捌き駐車 に対する取り締りが厳しくなり、その対策の 一環として設けた側面もある。
都市部の集配では“脱トラック”  ここ数年は通販商品をはじめとする「 to C 宅配」の事業基盤を強化する目的でサービス センターの整備を加速化させている。
個人宅 への配送業務は代金引換などの付加サービス を伴い、時間帯指定をはじめ顧客のさまざま な要望に応える必要がある。
営業店からトラ ックで広域の集配を行うよりも、道路事情に よる制約が少ないサービスセンターのほうが、 地域に密着した柔軟できめ細かな対応ができ るからだ。
 一〇年度からの同社の中期経営計画でも、 「 to C宅配に強い輸配送インフラの構築」を重 点課題の一つに挙げ、その具体策として「サ ービスセンター」などの小規模店舗を大幅に 増やす方針を打ち出した。
これまでに大都市 圏や地方の主要都市を中心に四〇〇店舗以上 のサービスセンターを展開。
都心などの商業 地区では五〇〇メートルおきに数カ所設置し ている例もある。
 同社はこのサービスセンターをモデルに、 今年の三月から「カーボン・ニュートラル」と いう最先端の環境活動に取り組んでいる。
 カーボン・ニュートラルとは、企業などが 温室効果ガスの排出削減努力を行ったうえで、 削減できなかった排出量の全量をほかの排出 削減・吸収活動によって削減した排出量でオ フセット(相殺)することをいう。
排出量の 一部を相殺する「カーボン・オフセット」を さらに踏み込んだ取り組みだ。
 欧米では一九九七年にカーボン・オフセッ トの仕組みが開発されて以降、先進企業や環 境NGOを中心にその普及が着実に進み、カ ーボン・ニュートラルについても、国家レベ ルで推進に取り組む動きが出てきている。
 日本では〇八年に環境省がカーボン・オフ セットの普及活動を開始し、同年八月にオフ セットに用いる排出削減・吸収量を認証する ための「オフセット・クレジット(J─
孱釘辧 制度」を創設した。
今年二月末現在で一三五 件のクレジットが認証されている。
APRIL 2012  54  さらに同省は昨年四月、国内の取り組みを 欧米並みに活性化させることを狙い、カーボ ン・ニュートラルの検討をスタートした。
九 月に「カーボン・ニュートラル認証制度」を 創設、その実績作りのために、認証取得を目 指す事業者の支援を目的とする試行事業の募 集を行った。
 佐川急便はこの事業に、「サービスセンター の運用に伴うCO2排出量の全量を森林の保 全・育成によって吸収した排出量でオフセッ トする」という取り組みで応募し、ほかの三 件とともに採択された。
物流業界からの参加 は同社だけだ。
 折しも同社は、グループで所有する森林の 保全活動によって取得した「オフセット・ク レジット」の使い道を検討しているところだ った。
その矢先にカーボン・ニュートラル認 証試行事業の公募を知り、クレジットをカー ボン・ニュートラルという一歩進んだ環境活 動に活用することを決意した。
 佐川急便グループの佐川林業は四国の高知 県と徳島県に合わせて六八五ヘクタールの森 林を保有し、地元の森林組合との協働で育 成・保全活動を行っている。
昨年の七月二九 日にこの森林がJ─
孱釘劼砲茲蟆梗叱果ガ スの吸収源として認定され、一〇月五日に二 年間の吸収量にあたる約五六〇〇トン分のオ フセット・クレジットを取得した。
 佐川急便は事業活動などにより年間に四 一・八万トン(一〇年度実績)のCO2を排 とにあり、カーボン・ニュートラルの取り組 みを社会にアピールしやすいと考えた。
 サービスセンターを一カ所設けると、営業 店の集配エリアの一部、おおむねトラック五 台分の配送コースが台車による配送へ変わり、 その分のCO2排出量を削減できる。
ただし 営業店からセンターへはトラックで横持ち輸 送をするため、それによってCO2が排出され る。
センターでの電気の使用に伴うCO2の発 生も避けられない。
カーボン・ニュートラル は、これらをすべてクレジットで相殺し、セ ンターの排出量をゼロにする取り組みだ。
 発案者の櫻田正剛環境推進課係長は「日本 ではまだカーボン・オフセットでさえ認知度 が低い。
(一歩進んだ)カーボン・ニュートラ ルを、(郊外の拠点ではなく)一般のお客様 に近いサービスセンターで実施して、取り組み の内容を知ってもらう意義は大きい」と強調 する。
 試行事業は東京八重洲・京都四条・福岡 博多の三地区のサービスセンターで三月二一 日にスタートした。
算定の対象は三地区での 営業所〜センター間の輸送とセンターの電気 出している。
J─
孱釘劼杷定された森林によ る吸収量の一年分二八〇〇トンは、その〇・ 六七%に相当する。
省エネ法で義務付けられ ている「年間に一%削減する」目標の七割近 くをこれだけで達成できる計算だ。
 同社は取得したオフセット・クレジットを 有効活用するために、新しいサービス商品の 開発を検討していた。
これに先立ち同社は環 境活動の一環で、国連が認定する「インド・ タミル地方の風力発電プロジェクト」で創出 されたCO2排出権を購入し、〇八年から通 販業者と共同で「CO2排出権付き飛脚宅配 便」を商品化している。
 通販商品の購入者がこの宅配サービスを利 用すると、一個あたりの輸送で排出される分 の排出権が佐川急便から日本政府へ無償譲渡 され、京都議定書の排出削減分としてカウン トされるという内容だ。
同社のサービスを通 じて消費者に環境への貢献を訴える狙いがあ った。
サービスセンターを認証の対象に  カーボン・ニュートラル制度の認証を受け るには、対象期間と対象範囲を設定して排出 量の算定を行い、基準年に対する削減努力を 定量化したうえで、排出量の全量をオフセッ トするという手順を踏む。
 この取り組みに最もふさわしい拠点として 同社はサービスセンターを選んだ。
センターの 設置理由の一つはCO2の排出量を減らすこ 佐川急便の櫻田正剛 環境推進課係長 55  APRIL 2012 ットの数量を想定しなければならない。
 基準年の排出量は、センターを設置する前 に対象地区を配送していたトラックが一年間 に使用した燃料をもとに算出した。
営業店 では安全推進課という部署が運行管理を行い、 ドライバーの運転日報をもとに車両一台ずつ の走行距離やルート、給油量などを把握して いる。
このデータから基準年の排出量の算出 が可能になった。
センター間の連携を期待  対象期間の排出量の試算には燃費法を用い た。
横持ち輸送する車両の台数を推定し、営 業店からセンターまでの距離と往復の便数で 総輸送距離を出し、燃費で割って燃料使用量 を計算した。
 基準年の排出量が三地区の合計で七〇トン だったのに対し、対象期間の横持ち輸送と電 気使用を合わせた排出量は四〇トンに減ると 試算している。
この四〇トンをクレジットで オフセットする。
 三地区のうち福岡博多地区では、一センタ ーではなくJR博多駅周辺にある五カ所のセ ンターを対象範囲にした。
サービスセンター はスペースが狭く、一日に配送する荷物を営 業店から一度に搬入することはできない。
時 間指定などのタイミングをはかって日に何度 かセンターへ横持ちする。
横持ちの回数は少 ないほど環境にとって望ましいが、客のニー ズにきめ細かく対応すると営業店との往復回 数が増えるというジレンマがある。
 その解決策として近接するセンター間で業 務を補完し合う方法が考えられる。
石野順三 環境担当部長は「そういう展開へのきっかけ になればと期待を込めて地区全体を算定の対 象範囲にし、(センター間の連携が)排出削減 にどんな効果を生むのかを検証できるように した」と説明する。
 今回の取り組みでは排出量を算出するため に、営業店が管理する車両のうち、どの車両 がセンターへの横持ちを担当したかを特定す る作業が必要になる。
集配用ならばコースご とに車両が固定しているが、横持ち輸送は日 によって台数に変動があり、いつも同じ車両 が担当するとは限らない。
全車両の燃料使用 量の総量から算出するこれまでのやり方とは 勝手が異なる。
 「現場の管理は大変だが、自分たちの日々の 排出量をきちんと把握することがカーボン・ ニュートラルに取り組む前提となる。
それを 改めて認識するうえで有意義な作業だと思う」 と櫻田係長は話している。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 使用による排出量。
基準年は三地区にサービ スセンターを開設する前の〇八年度に設定し、 対象期間は一年間とした。
 同社では従来、省エネ法などに対応した輸 送の排出量算出に燃料法を用いている。
外部 からの燃料の購入量や、自社スタンドで給油 する場合はメーターの計測値によって燃料使 用量を把握し、これをもとに算出するやり方 だ。
今回の試行事業でも横持ち輸送のCO2 排出量の算出はこの方法で行う。
 同社が申請したのは認証制度の「計画登録」 という区分で、カーボン・ニュートラルを達 成するための計画が確実に実施されるものか どうかが審査される。
申請にあたっては基準 年の排出量を確定し、対象期間の排出量を試 算してカーボン・ニュートラルに必要なクレジ 佐川急便の石野順三 環境担当部長 福岡博多のサービスセンター。
台車による配送では女性スタッフも活躍。

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