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APRIL 2012 56
事業構造を転換し3PLで躍進
センコーは住宅、石化樹脂、流通ロジスティク
ス(以下、流通ロジ)分野での貨物取り扱いを得
意とし、自動車運送を中心に鉄道利用運送、海
上運送、国際物流等、幅広い物流サービスを提供
している。 従来の総合物流の枠組みを超える高品
質なサービスを提供する「流通情報企業」への転
換を標榜しており、流通ロジ分野を中心とした物
流センター運営/3PLニーズへの対応を進めて
きた。
一九九〇年代前半までは旭化成グループ、積水
化学グループ、積水ハウス、チッソグループといっ
た大型荷主の工場から施工現場への合成樹脂、住
宅建材等の輸送を中心に業務を展開していた。 こ
れら大型荷主四社向けの売上高が全売上高のおよ
そ五割を占める程、深い関係にあった。
ところが九〇年代後半に入り、長引く国内経済
低迷に伴う新設住宅着工戸数の減少を背景に、取
扱貨物量が低迷。 これを受け、既存の主力事業依
存からの脱却を目指して経営改革に取り組んでき
た。 とはいえ現在も住宅建材、合成樹脂輸送の
売上構成比は三割程度あり、センコーの運送事業
の根幹として存在感を示している。
新たな収益基盤として注力してきたのが流通ロ
ジ事業である。 九〇年代後半、日系小売業は外
資系小売業の日本進出に対抗するべく物流費用の
削減を急務としていた。 ホームセンター向けの物
流オペレーションを担っていたセンコーは、そこ
から日系小売店のニーズを取り込む形で流通ロジ
分野を対象とした「PDセンター」と呼ぶ物流セ
ンター運営業務の拡大を進めた。
サービスの差別化を図るべく、「ベストパートナ
ーシステム」という独自の物流システムの提供も
開始した。 これはサプライチェーン上で発生するロ
ジスティクス業務を一貫して請け負うために、本
来は荷主の業務である調達・受発注等のオペレー
ションにまで踏み込んだものであった。
所謂3PLビジネスの拡大を牽引役に、流通ロ
ジの売上構成は急拡大。 イオングループに代表さ
れるGMS、ドン・キホーテ等の量販店、ドラッ
グストアにまで業務領域を拡大し、流通分野の3
PLで着実に実績を積み上げている。
ここ数年の変化としては、M&A等を通じた新
たな事業領域の拡大が挙げられる。 二〇〇七年度
以降で見ると、建設用資材輸送、ファッション物
流、引っ越し、生協向け家庭用品卸売、百貨店
向け物流、商事・貿易、特殊貨物輸送といった機
能を取り込んできた。 得意とする流通市場の成熟
化に対し、事業領域の拡大を通じたサービスの拡
充、貨物波動の吸収によって、成長を図っている
点は評価出来るだろう。
物流子会社の再編や物流部門の完全外部委託
といったアウトソーシングに対するニーズが顕在化
センコー
M&Aで事業領域を拡大し一段の成長へ
利益面ではコスト効率に課題が残る
積極的なM&Aや大型物流拠点の整備等、攻
めの経営で一段の成長を目指している。 今後の
業容拡大が期待できる反面、コスト負担が増加
しており、収益性には課題が残る。 管理コスト
の合理化やセンター運営の効率化を進め、コスト
効率を改善する必要があるだろう。
一柳 創
大和証券キャピタル・マーケッツ
金融証券研究所 企業調査第一部
第75回
57 APRIL 2012
する中で、柔軟かつ品質の担保されたサービスの
領域を広げる事は、他社との差別化になると考え
ている。 震災からの復興需要も高まっていること
から、今後の売上拡大に期待している。
その一方で、物流事業の収益性には課題が残る。
荷主企業からの料金改定要請や既存取扱貨物量の
縮小といった要素のほかに、大型拠点整備の積極
化等によるコスト負担の増加があると考えている。
センコーは一〇年から昨年にかけて福井県二日
市、石川県白山市、埼玉県戸田市に大型物流セ
ンターを設置する等、近年、拠点集約を適宜行っ
ていると理解しているが、センターの共同化(複
合センター化)や既存センターの空きスペースへ
の案件組み入れ
等、保有資産の
有効活用といっ
た点でもう一段
の効率性改善施
策が必要なので
はなかろうか。
加えて、M&
A等に伴い、管
理コスト面での
負担も大きくな
っているとみら
れる。 管理機能
の一元化、重複
業務の見直しと
いったコストの
絞り込みも早急
に求められる対
応の一つであろう。
カザフスタンに物流センター
二〇一二年度を最終年度とする現中期経営計
画では、「物流を超える、世界を動かす、ビジネス
を変える」をキャッチフレーズに、国内外での新
たな市場創出を標榜。 売上高三〇〇〇億円(一〇
年度実績二四一〇億円)、営業利益九〇億円(同
六一億円)、営業利益率三・〇%(同二・五%)、
といった数値目標を掲げている。 中計期間の残り
一年、厳しい環境下でも持続的成長を果たすため、
引き続きM&Aを通じた新規領域の拡大、流通ロ
ジや商事・貿易事業での売上拡大を牽引役に、攻
めの姿勢を示すものと捉えている。
目標数値の達成に向けては物流アウトソーシン
グニーズの更なる拡大が一つの契機となろうが、
コスト面での積極的な対応による収益性・効率性
の向上といった点での課題解消が必要となろう。
「グローバル」での事業展開も、今後の重要な
ポイントと考えている。 荷主企業の海外進出に伴
い、生産・調達・販売といった局面ごとに、海外
での物流機能の提供やコスト低減が求められる状
況も多くなろう。
近年取引を拡大させてきたアパレル関連では、
荷主企業の生産拠点整備に合わせ、中国での物
流センター事業を強化・拡大している。 検品、出
荷業務を一貫して手掛けて物流効率化を図ると共
に、新たな取引先の開拓を通じ、更なる生産性向
上を目指している状況にある。
米国でも国際物流事業を拡大すべく拠点の増強
を図っている。 昨年七月にケンタッキー州の工業
団地内に設置した物流センターでは、米小売大手
のクローガーに対して工場内物流サービスを、日
系ケミカル系企業に低温物流サービスを提供。 現
在請け負っている業務範囲は狭いものの、これを
足がかりに日本で得意としているチェーンストア
向け物流を米国においても展開していくこととな
ろう。
その他、カザフスタン(以下、カザフ)での事
業展開は、センコー特有の案件として引続き注目
している。 資源大国でもあるカザフの成長性、ユ
ーラシア大陸における地理的重要性(いわゆるシ
ルクロード上の中継拠点)等から、物流事業展開
のための基盤づくりを進めてきた。
鉄道輸送を主体とするカザフにおいて、〇八年
三月に国有鉄道一〇〇%子会社のカズトランスサ
ービス社と鉄道コンテナ一貫輸送における「優先
積み替え業務」の提携を結んでおり、一〇年四月
にはカザフと中国の国境沿いのホルゴスでのカザ
フ・中国の共同国家プロジェクトへの参画も決定
している。
センコーは今後、カザフ経済の中心地であるア
ルマトイ、西部のアクタウで物流センターの開発
を進める方針としている。 同国の経済成長次第で
はあるが、日系物流業者として先行者メリットを
享受しうる立場にあると考えている。
ひとつやなぎ・はじめ
一九九七年三月早稲田大学理
工学部土木工学科卒。 同年四月
大和総研入社、企業調査部イン
フラチームに配属。 九九年から
物流担当に。
《出来高》
過去10年間の株価推移
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