ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年4号
現場改善
第111回 部品メーカーの物流コンペ&管理機能強化

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

APRIL 2012  70 物流子会社との関係を見直す  
村劼和膽螢瓠璽ーA社のグループに所属す る年商約五〇〇億円の部品メーカーだ。
国内の 工場内に物流センターを構え、そこ一カ所から 全ての製品を国内外に供給している。
物流オペ レーションは同じグループ内の兄弟会社、つま り親会社の物流子会社のC社にずっと委託して きた。
というより、C社に?丸投げ?してきた と言ったほうが実態に沿っているであろう。
 物流子会社のC社は、もとはA社グループが 一〇〇%出資する純血会社であった。
しかし、 その後の事業再編で現在は株式の半分近くをフ ァンドや他の大手物流専業者が所有している。
外販比率も拡大し、C社にとってB社は事実上、 一般荷主の一つでしかなくなっている。
 この状況にB社の物流部長は危機感を抱いて いた。
「もうC社は我々の内輪とは言えなくな りつつある。
資本的にも、いつ他のグループの 物流会社の傘下に入ってもおかしくない」とい うわけだ。
そこで年末に契約更新時期を迎える のを一つのメドとして、ゼロベースで物流パー トナーを見直すことにした。
その手助けが今回 の我々日本ロジファクトリー(NLF)の役ど ころである。
 外部の我々から見てもB社の物流部長の懸念 は杞憂とは思えなかった。
物流会社とりわけ物 流子会社のM&Aは、今や日常茶飯事となって いる。
親会社のA社がいつC社の株式を手放し ても不思議ではなかった。
 早速、物流コンペの開催に向けてプロジェク トチームを組織し、「RFP(提案依頼書)」の 作成に取りかかった。
ところが、この作業に思 いのほか難儀した。
RFPの基本となる物流の スペックや全体のフローを、B社側では誰も把 握していなかったのである。
 手元にあったのは在庫関連情報のみで、それ 以外の大半のデータや業務実態については、B 社の若手社員がコンペの開催を気付かれないよ うに、C社のスタッフにヒアリングして情報を 集めるという有り様であった。
毎年の料金交渉 こそ行ってきたものの、B社は必要な物流管理 機能を備えていなかったのである。
 物流パートナーの候補として全部で十一社を リストアップし、そのうちC社を含め四社にコ ンペへの参加を打診した。
しかし、うち一社か らは「おたくにはグループのC社があるじゃな いですか。
情報収集としか思えませんね」と辞 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表  長年、グループの物流会社に業務を事実上?丸投げ?して きた。
しかし、グループ再編が進み、今後はM&A等によっ て資本関係が切れてしまう可能性も否定できない。
物流パ ートナーをゼロベースで見直す必要があった。
しかし、荷主 としての物流管理機能は脆弱そのものだった。
部品メーカーの物流コンペ&管理機能強化 第111 回 あおき・しょういち  1964年生まれ。
京都産業 大学経済学部卒業。
大手運 送業者のセールスドライバー を経て、89年に船井総合研 究所入社。
物流開発チーム・ トラックチームチーフを務め る。
96年、独立。
日本ロジファ クトリーを設立し代表に就任。
現在に至る。
主な著書に『経 営のテコ入れは物流改善から』 明日香出版社、『物流のしく み』(同文館出版)などがある。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp PROFILE 71  APRIL 2012 退されてしまった。
?あて馬?にされるだけで 勝ち目はないと判断されてしまったのである。
 結局、残る三社が説明会に訪れ、その後の提 案まで進んだのであるが、そのうちの一社は今 回のコンペを営業担当者の勉強の機会という程 度に考えていたようで、本気で案件を獲りに来 たようには見えなかった。
実際、コンペには経 営層どころか部長クラスでさえ、最後まで顔を 見せなかった。
 結局、最終的な比較検討対象は、既存のC社 とX社の二社だけとなった。
その選考過程を通 して見えてきたのは、C社との契約を打ち切る ことのリスクであった。
 現状のオペレーションをそのままC社以外の 物流会社に移管することで、これまでB社側で は意識していなかったコストが発生することが 分かった。
X社の見積もりを精査していくうえ で、「その場合には管理費が別途課金されます」 「回収コストはB社側で負担する見積もりにな っています」など、今までは同じグループ内の C社がパートナーであったために融通の利いて いた部分がサービス項目として明確化された。
 なかでも最大のリスク要因が情報システムだ った。
一般に物流パートナーの変更もしくは新 センターの立ち上げで現場が混乱する原因の九 割近くは情報システムに起因している。
C社を 切るには、そのリスクに十分に備えなければな らない。
 
村劼離廛蹈献Дトメンバーたちは、現状の 居心地の良さを再認識せざるを得なかった。
同 時に現状の物流管理能力では、C社との契約を 更新するほかにB社には有効な選択肢がないこ とを思い知らされた。
 それでも、コンペの開催は決してムダではな かった。
このコンペを通じて、C社から一定の コストダウンを引き出すことができた。
そして B社は物流管理機能を強化する必要性を、はっ きりと自覚することができたのであった。
 
端劼箸侶戚鷙洪靴決定したことで、B社 の物流改善のプロジェクトは大きく舵を切るこ とになった。
物流のあるべき姿を明確化し、そ れに必要な物流管理機能を構築することが新た なテーマである。
具体的には中長期物流計画の 策定、管理項目の抽出とそれに必要なデータ・ 資料の収集、そしてC社との「SLA(サービ ス・レベル・アグリーメント)」の締結が到達点 として設定された。
「現状認識」が改革の成否を分ける  いずれの課題も現状の把握、「現状認識」が 大前提であった。
ところが、そのためにどんな 情報をどこから収集すれば良いのか、B社のプ ロジェクトメンバーたちは全く検討がつかず、手 も足も出ない状態であった。
 これはB社に限った話ではない。
「現状認識」 は物流改革・改善において最も重要なステージ といえる。
取り組みの成否は「現状認識」の段 APRIL 2012  72 階でほぼ決まってしまうと言っても過言ではない。
 筆者の個人的な経験を振り返っても、「現状 認識」の水準が高いほど、当然ながら成功の可 能性とその効果は大きくなる。
逆に現状認識に 不備があった場合には、「思うような成果が出 なかった」とか「プロジェクトが頓挫してしま った」などの失敗を招くことが多い。
 現状把握の方法としては、中小・中堅企業で あれば、トップ自らが情報収集に工数をかける ことで把握レベルを上げることができる。
しか しB社ほどの規模ともなると、プロジェクトチ ームの構成メンバーがカギになる。
営業、購買、 システムなどの各関係部署からそれぞれメンバ ーを集めることである。
 そうしないと、各部署にどのようなデータが あるのか、それがどう使われているのか、把握 が難しくなってしまう。
データの持つ意味や重 要性は、頭では理解したつもりでも、実際に それを運用したものでないと、本当のところは なかなか掴めないものである。
何とかデータを 整理できても、その後の部門間の調整に大変な 手間がかかってしまう。
通常の物流改革よりも スコープの広いサプライチェーン改革ともなれば、 さらにその傾向が顕著である。
 各部署から必要な理解と承認を得るには、プ ロジェクトメンバーと各部署の責任者との日頃 の人間関係がモノを言う。
そして各部署の抵抗 は、その会社の規模とほぼ比例する。
大手にな るほど、業務プロセスやルールの変更を嫌がる。
ところが、それを乗り越えるために必要なキャ スティングを行っていない大手が実際には多い。
そのために改革が進まない。
 その意味で大手においても、やはりトップダ ウンは不可欠である。
特定の部署のみで行う部 分最適は限界に来ていることは周知の事実であ る。
全体最適を目指すのであれば、トップを説 得し、調整の手間を惜しまないことである。
代理店へのヒアリングを実施  さて、B社のプロジェクトメンバーたちには、 我々NLFから現状認識に必要な情報とその収 集先を明示したフォーマットを提供した。
当初 は戸惑いを隠せなかったメンバーたちも、一つ ずつそのフォーマットを埋めていく作業を通じ て理解力を深めていった。
 しかし、その後、一つの壁にぶつかった。
競 合他社がどのような物流体制を敷いているのか、 どこに向かおうとしているのかが分からなかっ た。
B社の物流の現状が、業界内でどのような ポジションにあるのか客観的に理解するには必 要な情報である。
 さらには物流のコスト、品質、サービスレベ ルを競合相手と比較したうえで、真っ正面から ガチンコ勝負を挑むのか、それとも競争の軸を ずらした差別化戦略に立って物流体制を構築す るのか、その方向性を中長期物流計画に盛り込 む必要があった。
 そこで、これに関しては、自社取扱比率の高 い代理店に情報提供を依頼することにした。
そ れに加えて、?ダメで元々?精神で、ライバル企 業の取扱比率の高い代理店にも、プロジェクト メンバーがヒアリングをかけた。
 次に我々は物流管理項目の抽出と、そのうち のどの項目から着手すべきか、優先順位を決め るプロセスに歩を進めた。
管理項目としてはラ ンダムに以下が挙げられた。
●受発注業務 ●配車管理および車輌運行状況管理 ●在庫管理 ●外部賃借倉庫の管理 ●外部賃借倉庫の管理を含む外注先管理 ●物流指標の決定とその執行管理 ●物流コストの管理と改善策の決定 ●オペレーションマニュアル・運営ルールの策定 ●情報システム設計およびメンテナンス ●営業支援 ●製・販・物連絡会議  (製造・販売情報の共有化) ●ロケーションの設計指示 ●今後の物流システム設計  (受注センター、在庫センター設置など)  このうちB社の実状を踏まえてまず、「外部 賃借倉庫の管理を含む外注先管理」に着手する ことになった。
それ以外の管理項目については 人員・データ収集などの体制がまだできておら ず、手が付けられるようになるまでには数カ月 は必要であったからだ。
 外注先管理の基本方針は、「SLA」の締結 であった。
SLAとは物流会社から提供される サービスを、数値によって可視化し、それに目 標値を設定することでサービスレベルの向上を 目指すものである。
 通常、SLAで設定された目標値は必ずし 73  APRIL 2012 も強制力を持つものではないが、荷主と物流会 社間で定期的な連絡会議や評議会を開催し、目 標の達成に向けた運営を行っていくことになる。
最近では荷主と物流会社との間で業務委託契約 書、機密保持契約書に付加してSLAを交わす ケースが増えてきている。
 
村劼任蓮◆?在庫差異率(アイテムと金額)」、 「?誤出荷率」、「?製品破損率」、「?緊急報告、 定期報告のタイミングと頻度」の四項目をSL Aの指標に設定した。
「SLA」の導入で管理を強化  その目標数値は、本来であれば現状に対して 何%の改善を目指すというかたちをとる。
しか し、既述の通り、B社は過去の実績値を持って いなかったため、C社との協議の末、あるべき 目標値を設定することにした。
 当初、C社にはSLAの導入に戸惑いも見ら れた。
しかし、その詳細を十分に説明すること で最終的には承諾してもらうことができた。
S LAは一見すると、物流会社に不利な制度のよ うだが、実際はそうではない。
SLAの目標達 成は、荷主側にも多種多様な改善を強いること になる。
通常であれば物流会社側から指摘して も、なかなか改善の難しい課題の解決が期待で きる。
 例えば、製品の改廃時には、荷主側でマスタ ーの整備をすみやかに行わないと正しいピッキ ングリストに基づいた作業ができない。
荷主が マスターの整備を徹底することで、実棚卸し時 の品違いミスが抑制されると同時に、物流会社 側ではミスに伴うムダな作業を解消できるとい う具合だ。
 こうしてB社は長年続けてきた物流の丸投げ を反省し、管理機能の強化を進めている。
今日 では物流子会社やグループ物流会社といえども、 物流パートナーとの関係は永遠ではない。
運営は 外部に委託しても管理の手綱は放さないという 外注化の鉄則を改めて確認する必要がある。
実施項目の落とし込み 項目業務範囲考えられる具体的業務 車両運行 状況管理在庫管理外部賃借倉庫 の管理 物流指標の決定 とその執行管理 物流コスト の管理と 改善策の 決定 営業支援 商品開発・ 販売部門との 情報共有化 ? ? ? ? ? ? ? ? ●車両運行業務パターン化による最適ルート 指示により、ローコストオペレーションを行う ●受注締め時間の設定、納期約束に合わせ た納品体制の整備 ●全社の在庫管理を一括して行う(特に滞留在庫) ●商品ABC分析を行い、BC商品の在庫管理 ●適正在庫の基準値の設定及びチェック ●実地棚卸の実施(棚卸による差異の原因 の究明を行う) ●ピッキングマニュアルの作成や、 ●棚卸方法のマニュアル作成などを行う ●事務所との取引ルールの提案、 ●物流会社との取引ルールの作成 ●情報システムの改良、更新に際して、物 流面から見た情報提供、および提案を行う ●商品別出荷データ(全社)の管理情報提 供・商品別出荷データ(事務所別)の管理 と情報提供 ●年次計画、月次計画に基づいた発注管理 +物流部の予測調査を行う ●情報を緊密に提供しあい、情報の共有化と 計画精度を向上させる ?定番商品物流計画・配送条件の策定・導入・追跡 ?非定番・新商品物流計画・配送条件の策定・導入・追跡 ?新商品物流コスト分析による、サービス内容検討サポート ?入り数、最低発注ロット、在庫判断、包装形態の良否などの基準 調査と策定、導入・追跡・改良 ?商品コンセプトにマッチした物流方法・包装形態のアイデア、情報提供 ?営業からの要望吸い上げ ?内容の真偽の確認、追加情報要請と集約 ?具体的改善策の立案と切り分け、情報フィードバック ?数値管理と指標(平均値)情報の作成とフィードバック ?物流側からの要望取りまとめ、協力要請策の立案と依頼 ?情報システムへの具体的要望の発信(全社検討後) ?システム要件設定参加 ?導入前の現場準備、受け入れ態勢整備 ?導入時の現場混乱の次善策準備と実施、混乱回避 ?実施後の現場問題点の追跡・集約と改善提案報告 ?必要性可否判断 ?内容の検証と作成 ?上申、許可、各現場配布 ?実施状況追跡、定期的見直し ?改訂、改良、追加、削除、廃止 ?物流コスト算出表の作成 ?数字の追跡、疑問点のチェック、改善案の立案と検証 ?改善策の周知徹底と落とし込み、維持管理・数値追跡 ?不可視コストの定量化アクション  (アンケート、チェックリスト作成による人の動き把握) ?クレーム対応、処理ノウハウの分析・蓄積・発信 ?事故防止対策の立案と設定・管理・追跡 ?独自指標の導入検討と立案・設定・導入・維持管理 ?費用対効果、提供価値対効果の検証と経営陣への報告 ?物流会社契約基準・選定方法・契約書の整備 ?各拠点契約物流企業把握と使用実績追跡(請求書チェック) ?現場問題点情報の吸い上げと対応、及びフィードバック ?得意先要望、養成の吸い上げと全社指針としての取りまと め、対応、フィードバック、運用状況追跡 ?新規サービス、情報の収集と発信、採用の可否判断検討 ?物流会社契約基準・選定方法・契約書の整備 ?各拠点契約物流企業把握と使用実績追跡(請求書チェック) ?現場問題点情報の吸い上げと対応、及びフィードバック ?得意先要望、要請の吸い上げと全社指針としての取りまと め、対応、フィードバック、運用状況追跡 ?新規サービス、情報の収集と発信、採用の可否判断検討 ?季節波動分析、在庫量(額)基準の設定 ?滞留在庫管理、処理方法立案と指示、追跡 ?在庫商品ABC分析(定番・非定番)と在庫の可否決定 ?仕入担当との情報連携、計画取得による実働部分対応 ?商品(価格)マスターの改廃サポート ●物流会社に対する指標決定と執行管理(ド ライバーチェックリスト・遅配率・事故率・ クレーム他) ●自社物流業務に対する指標決定を執行管 理(納品率・廃棄率他) ●物流コストの管理指標を策定し、他の経営 指標と併せて、全社的に共通の数字を持つ ●物流コストの管理により、改善策の定着、 維持運営を行い、社内ノウハウを定着させる ●契約内容、作業品質、費用などの管理 ●経営戦略に基づいた拠点の選定、運営、 維持管理 オペレーション マニュアル・ 運営ルールの 策定 情報システム 設計および メンテナンス ?

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