ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年4号
物流行政を斬る
第13回 CFP商品の可能性は限定的環境問題が切り口では消費者には響かない

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

APRIL 2012  76 〇九年にイオンが先陣  ここ一〜二年、先進的な大手小売業はカーボンフ ットプリント商品(以下、CFP商品)の販売に積 極的に乗り出している。
CFP(Carbon Footprint :炭素の足跡)とは、「どこ」で「どれだけ」二酸 化炭素が排出されたか「見える化」しようというも の。
商品やサービスのライフサイクル過程で排出され た温室効果ガスを二酸化炭素に換算し、それを表示 するものである。
二〇〇七年に英国で始まり、その 後〇八年にフランス、〇九年に日本へと広がった。
 日本での具体事例としては、〇九年一〇月にイオ ンが「うるち米(ジャポニカ米)」「菜種油」「衣料用 粉末洗剤」の三商品を販売したのに端を発する。
イ オンは一三年度中にCFP商品を一〇〇品目にまで 拡大する予定である。
 一〇年八〜九月には、国分、カルビー、亀田製菓、 カンロの四社がCFPキャンペーンを実施した。
同 期間のCFP商品の売上高は、前年同期比で二倍以 上になったとされる。
今後も先進的な企業の中から、 CFP商品の品揃えの拡充を図っていく動きが出て くる可能性がある。
商品やサービスのライフサイク CFP商品の可能性は限定的 環境問題が切り口では 消費者には響かない  
達藤仂ι覆にわかに脚光を浴びている。
商品ライフ サイクルの各プロセスにおける二酸化炭素排出量を示すこ とで地球環境に優しいことをアピールし、消費者の購買意 欲を喚起するという。
しかし、日本の消費者が求めてい るのは低価格商品であり健康志向商品だ。
二酸化炭素削 減という目的に異論はないが、早晩行き詰まることは明 白だ。
第13 回 ル過程には、当然、輸送などの物流過程が含まれる。
今月はこのCFPに焦点をあてて考察することにし よう。
 
達藤个量榲は、商品のライフサイクル過程で排 出される温室効果ガスを削減することにある。
その 過程は「商品の原材料を調達する段階」「商品を生産 する段階」「商品を運ぶ段階」「商品を使用する段階」 「商品を廃棄する段階」の五段階に分けられる。
 消費者はCFP商品を購入し使用することで、ど れだけ二酸化炭素を排出することになるか自覚する ようになるとされている。
それがひいては、社会全 体でみた二酸化炭素削減につながるのだそうだ。
ま た事業者側は、消費者のそうした購買行動を念頭に、 より一層の二酸化炭素削減に注力するというわけだ。
 実際の算出量の算定には、ライフサイクルアセス メントの手法が用いられ、環境に与える影響度が計 算される(図表参照)。
〇八年六月に有識者や専門 家からなる「カーボンフットプリント制度の実用化・ 普及推進研究会」と「CO2排出量の算定・表示・ 評価に関するルール検討会」が発足し、そこで定め られたガイドラインに則り、第三者機関が検証する 形がとられている。
ここで認められた商品が、晴れ てCFPのラベルを取得できる。
 イオンは前述した通りCFP商品の取り扱いを拡 充しているが、それに合わせて独自の体制も確立し ている。
原材料調達から廃棄までの五段階において、 それぞれ一〇〜一五のチェック項目を設定し、環境 負荷を排出量に換算している。
輸送に関しては、輸 送手段や輸送距離などを考慮。
その上で全体に占 める割合が大きい項目を取り組むべき課題に設定し、 具体的な方法を検討する流れである。
排出量換算に あたっては、経産省が認証するCFP制度の基準と、 同社が独自に第三者機関から提供を受ける基準の二 つを採用している。
 これまでのイオンのC F P 商品は全てP B (Private Brand)だ。
イオンはこれまでも、様々 な物流に関する取り組みを、PB商品を対象に行 ってきた。
その代表例がCPFR(Collaborative Planning Forecasting and Replenishment)である。
商品の買い手であるイオンと売り手のメーカーが協 働して需要予測を作り、それをベースに様々な活動 を考えていくという取り組みである。
 イオンが様々な改革をまずPB商品で試すのはに は理由がある。
PB商品を作る中小メーカーのイオ 物流行政を斬る 産業能率大学 経営学部 准教授 (財)流通経済研究所 客員研究員 寺嶋正尚 77  APRIL 2012  ンに対する依存度が極めて高いためである。
中小メ ーカーはイオンの販売力や購買力に魅力を感じてい るため、多少の無理難題を飲んでくれるというわけ だ。
CFP商品に関しても、PB商品から開始され たのは同様の理由による。
 しかし、こうした動きが発言力のある大手NB (National Brand)メーカーにまで広がっていくとは 考えにくい。
二酸化炭素の排出量を算定するには調 査費用、パッケージの変更費用など、とにかく費用 と手間がかかる。
さらにCFP自体を浸透させる ためのキャンペーン費用なども必要になる。
 実際、先に示した国分・カルビー・亀田製菓・ カンロの実証実験では、購入者へのアンケート調査 で、全体の六割が「CFPという言葉や専用の表示 マークの存在を知らなかった」と回答している。
キ ャンペーンでの売れ行きが好調だったのは、CFP という理由より、むしろ価格が安かったために購入 したという消費者が多かったと考えるのが妥当だ。
消費者は環境よりも価格や健康を重視  
達藤仂ι覆消費者に受け入れられるかも甚だ 疑問である。
二酸化炭素の排出量が記され、環境 に優しいかどうかを判断できる商品というが、そ れが消費者の購買意欲をそそるだろうか。
もちろ ん地球環境問題に高い意識を有する消費者も中に はいることだろう。
しかし、長期的に経済が低迷 し、自分の所得もなかなか上がらないばかりか、原 子力発電所の問題で商品の安全性にすら疑問を感 じなければならない世の中にあって、「地球環境問 題」という遠い問題に多くの消費者が関心を寄せ るとは思えない。
 それよりも低価格であるとか、放射線等の心配 がない安全な商品であるとか、そういう自分に身 近な評価軸で購買行動をすると考える方が妥当で はないだろうか。
CFPの仕組みに似た商品とし て特定保健用食品(通称「特保」)があるが、こ れが消費者に受け入れられているのは「自分の健 康にとって良いものを買いたい」という自身に直 結した購買意欲が沸き起こるためだ。
 さらに言えば、例えば日本ハムの「上級森の薫 りロースハム(内容量五二g)」の二酸化炭素排出 量が四二二グラムだとしよう。
この情報に何の意味 があるのだろうか。
ただ表示され、その内訳として、 原材料製造段階、流通販売段階、保管廃棄段階の 比率が円グラフで書かれたところで、だからどうし たという話になる。
 「四二二グラム」というのは、多いのか、それと も少ないのか、多いとしてそれは許される量なのか、 そうではないのか。
専門家でもない限り判断できな い。
競合商品と比べれば相対的なポジションが把握 できるが、わざわざ調べる消費者が多く存在すると も到底思えない。
そもそも競合商品の多くは、二酸 化炭素排出量を表示していない。
 消費者の地球環境問題への意識を前提にしたCF P商品の仕組みは、早晩破綻するだろう。
ましてや 多くの消費者は、CFPそのものを知らないのであ るからお話にならない。
商品及びサービスのライフ サイクル過程における温室効果ガス排出量を減らそ うという目的そのものは、全く異論のない正しいも のである。
しかし、それを実現するためにCFP商 品を登場させるというのは、海外ならばいざ知らず、 少なくともわが国においては意味がない。
それより も、実際に各段階でどのようにすれば温室ガス効果 ガスを減らすことができるのか、異なる方法で検討 していくべきだろう。
てらしま・まさなお 富士総合研究所、 流通経済研究所を経て現職。
日本物 流学会理事。
客員を務める流通経済研 究所では、最寄品メーカー及び物流業 者向けの研究会「ロジスティクス&チャ ネル戦略研究会」を主宰。
著書に『事 例で学ぶ物流戦略(白桃書房)』など。
CFPの算定 自社データが なければ 共通データを使う 原材料の発掘・輸送 のCO2排出原単位 生産に必要なエネルギー 資源のCO2排出源単位 飲料(中味) 容器 ラベル 印刷など 商品の製作・加工で出るCO2 使用廃棄 使用方法を想定して CO2排出量を推定共通データを使う 商品に関する企業でデータを集める 出所:CFP制度試行事業事務局HPより (http://www.cfp-japan.jp/about/index.html) Bottle

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