ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年5号
特集
第3部 ケーススタディ:オペレーション改革 ジュピターショップチャンネル──柔軟性を高めネット販売に対応

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MAY 2012  20 変化に耐えるマテハン設備を工夫  ジュピターショップチャンネル(JSC)は、テ レビ通販の専門チャンネル「ショップチャンネル」 を運営する同業界最大手だ。
二〇一〇年度の売上 高は一一一五億円。
創業以来一四期連続の増収を 達成している。
 二四時間生放送を開始した〇四年度から〇六年 度にかけて、飛躍的な成長を遂げた。
これに合わせ て情報システムを刷新し、コールセンターの移転・ 拡充などのインフラ整備を行った。
 物流センターも移転した。
売上高二〇〇〇億円 まで対応できる物流体制を目標に掲げ、〇七年に 千葉県習志野市に「茜浜物流センター」を新設。
それまで浦安市に分散していた物流拠点を集約し、 設備や業務フローの設計を大幅に変更した。
 新センターを立ち上げるに当たって重視したのは “柔軟性”だ。
それ以前は基本的に人手を中心に作 業を組んでいた。
大量の出荷に対応するには一定 の自動化が不可欠だった。
しかし、重装備のマテ ハンは足枷にもなりかねない。
環境変化に対応で きなくなるリスクがある。
 「侃々諤々の議論を重ねた結果、人の力と機械の 力を組み合わせた、身軽なセンターにしようという 結論に至った。
環境変化に合わせてその都度、物 流を最適化できるような構造を工夫した」とオペ レーション本部の 鈴木桂ロジスティ クスオペレーショ ン部物流センター 所長は語る。
 マテハンは必要 最小限に抑え、段階的に出荷能力を高めていける よう庫内の仕組みを設計した。
中小型商品のピッキ ングには、情報端末とバーコードスキャナーを備え たハイテクピッキングカートを導入。
固定設備では ないので取扱量の拡大に対して台数を調整できる。
 保管は自動倉庫とラックの併用だ。
梱包工程で も手作業の梱包ラインと自動化ラインを使い分けて いる。
残りの機械類は、コンベヤや出荷ソーター、 伝票の折り機、同梱物のセットラインなど。
建物は 現場業務を委託している住商グローバル・ロジステ ィクス(SGL)からの賃借。
取扱量の拡大に応 じて利用スペースを変更できる。
 柔軟性への配慮は、ムダではなかった。
実際、茜 浜物流センター稼働後のわずか五年の間にも、商 品構成は大幅に変化している。
テレビ通販は米国 で生まれたビジネスモデルで、JSCも当初は米国 の商品構成をそのまま日本に持ち込んだ。
 しかしその後、日本の消費者の嗜好に合わせて 売れ筋のカテゴリーを強化した。
結果、それまで主 力としていたジュエリーの構成比が一〇%を切り、 代わってファッション関連や化粧品が増加した。
ジュピターショップチャンネル ──柔軟性を高めネット販売に対応  大量の出荷を高速で処理するには自動化を避けて は通れない。
しかし、重装備のマテハンは足枷にな る恐れもある。
処理スピードと柔軟性の両立に知恵 を絞った。
そのことがネット販売の拡大への対応を 可能にした。
            (梶原幸絵) ケーススタディ:オペレーション改革 売上高の推移 03 年度 04 年度 05 年度 06 年度 07 年度 08 年度 09 年度 10 年度 1400 1200 1000 8000 6000 4000 2000 0 (億円) 注)08 年度に決算期を変更したため、同年度は 15カ月実績 鈴木桂ロジスティクス オペレーション部物流 センター所長 特 集 21  MAY 2012  アパレル品のキャスター付きハンガーラックはス ペースをとる。
そこでパレットラックで段積みして 保管することにした。
ハンガーラック二台を固定 し、フォークリフトで荷役するための器具を開発し た。
これによって天井高を最大限活用することが 可能になった。
 さらに現在、新たな変化の波が押し寄せている。
ネット販売の増大だ。
サイトの開設は〇三年で、当 初はテレビで放送する商品の受注窓口という位置 付けだった。
それが現在は、ウェブ限定商品の投 入や、番組で紹介した商品とのコーディネートの提 案など、新たな販売チャネルとして育ってきた。
 テレビ通販とネット通販では、出荷特性がまった く異なる。
テレビ通販は生放送のライブ感を売り物 に、番組で紹介した商品をその日のうちに売り切 る販売手法を採る。
アイテム数は限られている。
J SCが一週間に販売する商品は約五〇〇〜七〇〇 種類。
オペレーションは少品種大量が基本となる。
 これに対してネット通販は、多品種少量のロング テール型ビジネスだ。
茜浜センターで一日に出荷す る商品のSKU数は、〇七年の稼働当初に比べて およそ三倍に増えた。
そこで単品注文の業務フロ ーを変更することにした。
 現在、単品の注文は当日出荷する商品を保管倉 庫からピッキング棚に補充し、ピッキング後に梱包 するという一般的なオペレーションを行っている。
それを改め、保管倉庫でピッキング後に直接、梱包 工程に移動し、そこで伝票を出力する仕組みに変 える計画だ。
過度な自動化を避けたことで、こう した対応が可能になった。
泥臭い改善活動を重ねて品質向上  配送リードタイムは翌日出荷で最短二日。
今の ところ、これ以上リードタイムを短縮することは考 えていない。
注文当日はキャンセルを受け付けてい るためだ。
ただし、受注翌日の出荷を厳守してい る。
 鈴木所長は「ピーク時でも必ず受注の翌日に出 荷する。
そこを起点に梱包から保管、入荷へと上 流工程に遡って仕組みを作り上げ、改善を重ねて きた。
それがこのセンターの最大の強みになってい る」と胸を張る。
 現場で扱う商品の構成比は日によっても変わる。
JSCは「ショップ・スター・バリュー(SSV)」 と呼ぶお買い得商品を、日替わりで打ち出してい る。
商品はジュエリーから家電までさまざまで、多 いときには一日二〜三万ピースを出荷する。
 物量の波動も大きい。
ヒット商品や大規模なイベ ント時には、物量が跳ね上がる。
過去最高の出荷 記録は一日で十一万七〇〇〇ピースに上った。
平 均出荷量のおよそ三〜四倍に相当する。
 そうした波動に対応するために、SGLと需要 予測を共有し、人員の配置を毎日細かく調整して いる。
たとえ一〇万ピースを出荷する日でも、作 業は当日中には終わるという。
 出荷量の平準化にも取り組んでいる。
JSCで は配送の日付指定を三週先まで受け付けている。
日 付指定分の商品の出荷作業を出荷量の少ない日に 行い、調整している。
 センターでの作業ミスは、今やゼロといっていい レベルになっている。
各工程ではバーコードと目視 によるダブルチェックをかけている。
商品の置き方 や表示の仕方に工夫を凝らし、ミスを防止する仕 組みを築き上げた。
 在庫の差異もほとんどない。
番組の放送中に商 品が売り切れれば、リアルタイムで画面に表示する 仕組みになっている。
そのために、特に入荷検収 を重視している。
庫内でのミスがなくても、入荷 数量に誤りがあれば元も子もない。
検数場を設置 し、カートンを開封して人手で検数作業を行って いる。
生産性を上げるため、現在は一部商品に重 量検数も導入している。
?ピッキングエリア。
ハイテ クカートでは最大30 件の ピッキングが可能、?自動倉 庫の下三段はピッキング用、 ?梱包の作業台。
ミスを防ぐ ためにものの置き方を工夫、 ?商品を押さえる構造の段 ボール。
これで緩衡材を削減 した、?アパレルのハンガー ラックの保管 ? ? ? ? ?

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