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MAY 2012 22
一五期連続増収増益から一転
総合通販大手のベルーナでは、新規会員を含め
過去二年以内に購入実績のある会員を「アクティ
ブ会員」、二年以上購入のない会員を「卒業顧客」
と呼んでいる。 その動向に異変が現れたのは〇六
年のことだった。 新規加入が頭打ちになる一方で、
卒業顧客が増えていた。
一般にカタログ総合通販の大手は、若年層〜ミド
ル層を中心顧客に定めている。 それに対してベルー
ナは四〇代以上のミドル〜シニア層の女性をメーン
のターゲットに据えた。 競合のほとんどいない市場
で、主に新聞の折り込みチラシによって新規顧客の
獲得を続け、他のカタログ通販が伸び悩むのをよそ
に破竹の勢いで成長を続けてきた。
しかし、ライバルが次々に同じ市場に参入し、ネ
ット通販との競争も激しくなったことで、状況は大
きく変化した。 業績は〇七年三月期にピークアウト
し、一五期連続の増収増益記録が途絶えた。 〇九
年三月期には最終赤字に転落。 アクティブ会員数も
同期を境に減少に転じた。
起死回生を図ろうと、〇六年から五年間に及ぶ
全社を挙げての業務改革プロジェクトを実施した。
まず顧客のクレーム情報を調査し、サービスレベル
を同業他社と徹底的に比較した。 コールセンターの
受付時間、応答までの待ち時間やオペレーターの対
応、配送リードタイムなど洗いざらい調べ上げた。
その結果、ベルーナのサービスレベルは同業他社
に比べ、明らかに劣っていることが判明した。 そ
こからコンタクトセンターの運営強化、ウェブサー
ビスレベルの向上、ハガキ・ファクス受注取りこみ
業務の効率化、業務・システムの統合など十一の
改善テーマを設定した。
物流面では「受注〜商品配送リードタイムの短縮」
と「正確な配送予定案内の実現」が課題だった。 配
送リードタイムは受注後すぐに在庫を引き当てられ
なかったものも含め、平均で一〜二週間前後にも及
んでいた。 注文受付時に正確な配送予定日を顧客
に提示することもできていなかった。 「出荷予定は
一週間後頃」などと案内するに留まっていた。
ネット通販に対抗して競合他社はサービスレベル
を向上させていた。 しかしベルーナは、カタログ時
代のサービスをそのまま踏襲している状態だった。
欠品も多く、次の入荷予定が一カ月後ということ
もザラだった。
配送リードタイムを短縮するために、まず在庫に
対する考え方を改めた。 それまでは在庫水準を可
能な限り引き下げることをよしとしていた。 受注
後すぐに商品を出荷する体制を整えるために、積
極的に在庫を持つように改めた。 受注時の在庫引
当率を六割から七〜八割に引き上げた。
ベルーナ
──業務改革の成果を通販支援事業に活用
競合と比べてカタログ通販が好調だったことから、
ネット通販への対応に出遅れた。 成長に急ブレーキが
かかった。 五年間をかけてビジネスモデルを抜本的に
作り替えた。 そこで得たノウハウが通販支援事業の武
器となっている。 (梶原幸絵)
ケーススタディ:オペレーション改革
アクティブ会員数の推移
03
年3月期
04
年3月期
05
年3月期
06
年3月期
07
年3月期
08
年3月期
09
年3月期
10
年3月期
11
年3月期
11
年9月期
500
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0
(万人)
特 集
23 MAY 2012
庫内の業務フローも改善した。 基幹システムをは
じめ全社的な情報システムの刷新を行ったのに合わ
せて、物流システムを改修し、庫内作業を変更し
た。 これによって受注の翌日には商品を出荷でき
るようになった。 配送リードタイムは平均三〜四日
にまで短縮した。 受注時に在庫を引き当てられた
注文については、最短二日での配送が実現した。
正確な配送予定日を案内するため、宅配会社と
情報システムの連結を図った。 配送予定日をベルー
ナのシステムに取り込む。 ところが、それまで宅配
便は地域別に一〇数社を利用していたが、情報シス
テム面での対応ができる会社は限られていた。 利用
宅配会社を見直して最終的に大手三社に集約した。
一連の業務改革は、ようやく実を結びつつある。
顧客のリピート注文率が向上し、アクティブ会員数
は一〇年三月期から二期連続で増加している。 業
績も〇九年三月期〜一〇年三月期をボトムに成長
基調に転じている。 深刻な危機を乗り切った。
通販支援事業が前年比六割増の急拡大
この業務改革で蓄積したノウハウを、現在は他社
の通販支援を行う「ソリューション事業」に活用し
ている。 同事業の一一年三月期の売上高は三五億
六二〇〇万円で、前期比六〇・一%増の大幅な増
加を記録した。 今後はこれをさらに拡大する方針
で、売上高一〇〇億円を目標に掲げている。
もともとベルーナは、自社のカタログや商品に他
社の販促物を同封する「封入・同梱」や自社のカ
タログ発送センターからのDM発送などを行ってい
た。 自社のインフラも活かした通販支援をワンスト
ップで提供するため、それらにフルフィルメント機
能を組み合わせ、〇六年に正式に一事業として立
ち上げた。
ダイレクトマーケティング、新規顧客を開拓する
ための販売促進、受注、物流、決済、コンタクト
センター業務など、受注後に発生する業務全般をカ
バーするフルフィルメントサービスを提供している。
物流代行は当初、自社物流センターの一部で行
っているに過ぎなかった。 しかし、一〇年夏にソ
リューション事業で独立した外部倉庫を賃借し、物
流代行の現場業務を移転した。 順調に実績を積み
上げている。 物流サ
ービス単独で外販す
るのではなく、コン
タクトセンターの代行
業務など他のサービス
の顧客に対して提案
営業を行うという手法をとっている。
ベルーナの大野篤受託事業本部BBS事業部部
長代理は「顧客は物流をコストセンターとして見る
ことが多い。 物流だけで提案しても、どれだけ安
くなるかというところで話が終わってしまい、抜
本的な課題の解決にはつながらない。 物流だけを
受託したとしても、顧客の業務改善には限界があ
る」と説明する。
物流代行の現場業務は一〇〇〇坪のスペースで
行っているが、最近では手狭になってきた。 同社
は本社を置く埼玉県上尾市や栃木県鹿沼市などに
計四カ所のセンターを所有している。 現在、この四
センターを一四年に統合する計画を進めている。 空
いた自社センターを物流代行に活用する考えだ。
今後はソリューション事業と自社通販事業とのシ
ナジー効果も狙っていく。 通販事業でアパレルなど
の委託販売を本格的に始めようとしている。 他社
をベルーナのサイトにテナントとして誘致し、販売
手数料を得る仕組みだ。 これに合わせてソリューシ
ョン事業では、出店企業に物流サービスを提供する
構想を持っている。
メーカーや小売りが自社サイトのほかに複数の通
販モールに出店し、いくつもの販売チャネルを持つ
ことは、今や当たり前になっている。 販売チャネル
の一つとしてベルーナのインフラを利用してもらう
のと同時に、物流代行も受託する。 ベルーナのサイ
ト経由の受注以外の出荷にも対応し、顧客の要件
に合わせて物流を組む。
大野部長代理は「通販のフロントとバックヤード
の両面を全面的に支援する。 実現すればかなり魅
力的なサービスになるはずだ」と意欲を燃やしてい
る。
大野篤受託事業本部
BBS事業部部長代理
連結業績の推移
07
年3月期
08
年3月期
09
年3月期
10
年3月期
11
年3月期
12
年3月期
(予想)
140,000
120,000
100,000
800,000
600,000
400,000
200,000
0
(百万円)
8,000
6,000
4,000
2,000
0
-2,000
-4,000
-6,000
-8,000
-10,000
売上高
当期利益
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