ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年5号
特集
第7部 オレンジライフ再建への道のり 福ネット 福田誠志 代表

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MAY 2012  36 売り上げは年間一〇〇億円規模  ネットスーパーは儲かるのか? この質問に私が答 えるならば、オレンジライフ(OL)の再生を語るの が一番早いだろう。
OLは北九州エリアを地盤とする 食材宅配会社で、現在はエイチ・ツー・オーリテイリ ングの子会社「阪急オレンジライフ」としてサービス を展開している。
 同社は二〇〇二年に経営破綻を経験している。
当 時のOLは宅配事業だけでなく店舗事業も展開して いたが、大型店舗開発や物流センターへの積極投資が 裏目に出た結果だった。
 私は〇三年から約四年間にわたり同社の社長とし て再建に取り組み、なんとか黒字化を達成した。
売 上拡大策と物流改善が奏功した結果だが、ここでは 私が実施してきた物流改善の要点を紹介する。
 まず私がOLの再建に携わることになった経緯から 説明しよう。
OLの社長に就任する以前、私はエブリ デイ・ドット・コム(EDC)という会社で副社長を 務めていた。
EDCは一九九八年に著名コンサルタン トの大前研一氏が立ち上げた会社で、主にネットスー パー向けに受発注や物流に関するシステムを提供して いた。
その取引先の一つがOLだった。
 民事再生法手続きに入ったOLの宅配事業に対し、 EDCと阪急百貨店が共同再生スポンサーとして名乗 りを上げた(店舗事業は別の企業が買収・支援する ことになった)。
EDCがシステム面から支援し、阪 急百貨店は商品供給などで協力するという青写真だ。
 再生に向けてEDCからOLに社長を派遣するこ とになり、私に白羽の矢が立った。
私はシステムエン ジニア出身で、その時点では企業マネジメントの経験 が豊富だったわけではない。
それでも、生来のチャレ ンジ精神からOLの再建を引き受けることにした。
 当時、OLの宅配事業は一〇〇億円規模を誇って いた。
ただし、二〇〇〇年頃をピークにして売り上 げは減少傾向にあった。
その一方、人件費や物流セ ンター運営費などのコストは増加の一途を辿っていた。
毎月、相当額の赤字を計上していた。
 社長就任にあたり大前さんから言われたことは「コ ストを下げろ、会員を増やして売り上げを増やせ」と いったかなりザックリした内容だったと記憶している。
私自身も楽観的で、再生の目論見書に基づき粛々と 事業を進めれば結果は出ると考えていた。
 しかし、理論と現実は違った。
社内抵抗が思いの ほか激しく、配送会社の相見積もりを取ってコストダ ウンを図ろうとしても、社員からは「付き合いの長い 業者を切れない」といった反発の声がいちいち上がっ て来る。
おかげで華々しいスタートダッシュとはいか ず、大前さんや阪急百貨店の社外取締役との間で開 催していた最初の頃の経営月次報告会は、私にとっ て針のむしろ以外の何ものでもなかった。
 
錬椋瞳の本丸は物流にあった。
OLの宅配事業 はいわゆる?センター型?で、生協に近い運営形態を 採っていた。
商品カタログを発行し、電話音声自動応 答装置で注文を受け、冷凍・冷蔵・常温の三温度帯 の商品を届けていた。
 生協との最大の違いは、商品の配達サイクルだ。
生 協が一週間前に注文して翌週の決まった曜日に週一 回のペースで配達するのに対し、OLは深夜〇時ま でに注文すれば翌日配達、配達も週六回可能だった。
さらに、野菜のカット、刺身や肉のパックまですべて 社内加工をするなど、?店舗型?の宅配事業と同等の サービスレベルを有していた。
 そこに、EDC支援の下、従来の宅配事業にイン オレンジライフ再建への道のり  経営破綻したネットスーパーの再建を託された。
社 内の抵抗を押し切り、物流改革を次々に断行。
月間数 千万円にも上る赤字を3年で解消し、黒字化を達成した。
なぜネットスーパーは儲からないのか。
どうすれば利益 を出せるのか。
自らの経験を基に解説する。
福ネット 福田誠志 代表 37  MAY 2012 ターネットに対応した受注システムを加えた。
カタロ グとネットの受注画面を連動させる機能も追加し、名 実共に?ネットスーパー?事業に本格参入となった。
 当時のOLは物流センターを二つ抱えていた。
本社 センターとは別に、拡大路線期に投資したセンターが あったが、これが経営の大きな足かせとなっていた。
この物流センターを廃止し、本社センターに統合する ことを目指した。
ここでも旧経営陣からは「出来な い」の大合唱がわき起こったが、私と同じくEDCか ら出向した柴田巌氏(私の次のOL社長)が財務の 諸問題解決に奔走してくれたこともあり、約二年を かけて統合を実現することができた。
ピッキングコストを半分に  ピッキング作業の効率化も推し進めた。
当時のOL はドライ商品の運営は外部に委託していたが、クール 商品には自社でデジタルピッキングを行っていた。
物 量のピークは月曜日で、土曜日になるとその半分まで 減る。
曜日ごとのバラつきが多く、作業人員や効率に 多くのムダが生じていた。
このピッキングを物量に応 じて変動費化することにコスト削減の眼目を置いた。
 人員の再配置や手順の見直し行い、ピッキングコス トを下げるためにパート契約を時間固定から可変契約 に変更した。
これにより、一件当たり(七ピース程 度)のピッキングコストが従来の一二〇円から一一〇 円と一〇円ほど下がった。
 小さな効果と思われるかもしれないが、月間二〇 万件、一四〇万ピースの物量なので、それなりのコス ト削減効果はある。
さらに改善を継続した結果、最 終的な一件当たりのピッキングコストは、センター統 合の効果も手伝って六〇円以下にまで下がった。
 続いて、センター内の作業を入荷・検品、在庫、 品出し・棚入れ、(デジタル)ピッキング、補充、な どの工程に分解し、それぞれの生産性を高めた。
デ ジタルピッキングでは売れ筋が集中するラインが特に 忙しいが、売れ筋でない商品は、人がほとんど動か ない。
そこで、売上予測に応じて棚の再配置を行っ た。
結果、生産性が一五%ほど向上した。
 こうした庫内作業の改善は、現在の多くのネット スーパーは店舗を物流拠点としているので、「当社に は関係ない」と思われるかもしれない。
しかし、ピッ キングの効率化がネットスーパー事業にとって最重要 課題の一つだということに変わりは無いはずだ。
方法 や導入するシステムを誤れば、最大で五〇%〜八〇% のムダが発生することになる。
 
錬未任惑杼のコスト改善にも取り組んだ。
といっ ても、チャーター便による自社設計から宅配会社への 委託に切り替えただけだ。
軽車両一台で最大二五軒に 配れるのだが、ネットスーパーの場合、当日にならな いと注文件数が分からない。
その日の注文件数に応じ てドライバーにお引き取り願う、あるいは無理して来 てもらうという手法も適用できない。
そこで配送は全 て宅配業者に一個当たりの単価で委託し、完全に変動 費化してしまった方が良いという判断に至った。
 こうした一連のコスト削減策の結果、月間数千万円 にものぼっていた赤字を改革開始から三年後にはほぼ ゼロにすることができた。
 現在、ネットスーパー事業の収益性が確保できずに 苦しんでいる関係者は多い。
ネットスーパーには独自 のノウハウが必要である。
店舗事業の延長線上で考え れば必ず失敗する。
それでも、ネットスーパーが宝の 山であることに疑いはない。
適切な知見に基づいて 推進すれば必ず活路は開ける。
その先には、大きな 果実が待っている。
読者諸兄の健闘を祈る。
クールピッキングでは変動費化を実現生産性が15%向上 福田誠志(ふくだ・さとし)  食材宅配会社を経て、システム開発 会社にシステムエンジニアとして入社。
通信カラオケやEコマースのシステム開 発に従事する。
2000年に大前研一氏 が創業したエブリデイ・ドット・コム (EDC)に入社。
03年、同社副社長 就任。
同年、EDCが買収したオレン ジライフの社長に就任。
赤字経営だっ た宅配事業を再建させる。
08年にオレ ンジライフ退社。
同年、ネットスーパ ーのコンサルティング会社、福ネット を設立。
現在に至る。
PROFILE 特 集

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