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業務委託先の改善活動を常に注視
業種や業態を問わず、トヨタ生産方式に倣
った改善活動を現場に導入しようと試みる企
業は跡を絶たない。 しかし、その多くが失敗
に終わっている。 現場改善を指導する人材が
去っていくと、徐々に活動そのものが衰退し
てしまう。
その点、イトーヨーカ堂のケースは異例だ。
同社は二〇〇四年に豊田自動織機とコンサル
ティング契約を交わし、物流センターの作業
改善に着手した。 最初の一年間はトヨタグル
ープの専門家から指導を受けたが、以降はヨ
ーカ堂の社内だけで活動を展開。 日常業務に
定着させることに成功している。
もはや?ヨーカドー式?といっても差し支
えのないレベルにあるが、同社の物流運営管
理部の責任者でセンター作業改善プロジェク
トチームのリーダーも務める服部功総括マネ
ジャー(GM)は、「基本はあくまでトヨタ式。
やり方・仕方・考え方は同じだ。 一番大事な
ことは、とにかく決められたことをきちんと
やること」と強調する。
同社は物流センターの運営をすべて卸や物
流会社にアウトソーシングしている。 その業
務委託先に対し、ヨーカ堂の改善専任チーム
のメンバーが常駐で指導する。 すでに加工食
品、衣料、住居、日用品、生鮮、青果、米
飯と、ほぼすべての商品カテゴリーを対象に
組み入れた。 コスト削減の効果は累計で九億
円余りに上る。 独自に体系化した管理ノウハ
ウがこれを可能にしている。
これまでに改善活動の対象としたセンター
は全八八カ所のうち二三カ所。 今後、その数
を大幅に増やすつもりはないという。 基本的
には収支が悪化したセンターを対象としてお
り、改善の結果、収支が好転すれば、そのセ
ンターを同じカテゴリーの物流拠点にとっての
?モデルセンター?と位置付ける。 切迫した問
題を抱えていないセンターについては、モデ
ルセンターを参考に自ら改善活動に取り組ん
でもらうというスタンスだ。
改善活動を実施しても効果が出なかったり、
活動が定着しないことも稀にある。 店舗の統
廃合でセンターを取り巻く事業環境が激変し
たとか、活動を牽引していた担当者が人事異
動で変わったなどの理由がある場合だ。 この
ためヨーカ堂の改善チームは「メンテナンス」
と呼ぶフォローアップを行っている。
改善活動を実施したセンターは、毎週一回
の「グループ・ディスカッション」(GD)と
いう現場レベルの改善会議を義務づけられる。
GDの議事録は指導期間終了後も、ヨーカ堂
トヨタ式の作業改善を現場に導入した企業の多
くが、活動の失速に悩まされる。 ところがイトー
ヨーカ堂では、社内はもちろん取引先や現場の作
業協力会社にまで活動が浸透している。 その秘訣
は何なのか。 「横浜青果センター」における取り組
みをもとに、そのノウハウを読み解く。
現場改善
イトーヨーカ堂
独自手法で定着したトヨタ式の改善活動
秘訣は現場を疲弊させないPDCAの実践
イトーヨーカ堂の服部功
物流運営管理部
総括マネジャー
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に必ず送信することになっている。 活動の継
続と定着レベルを確認するためだ。
同様に、常駐の指導期間が終わってからも
ヨーカ堂の担当者が定期的に現場を訪問する
ことをルール化している。 一年目は、首都圏
のセンターであれば一カ月に最低二回はGD
に出席し、地方圏のセンターでも少なくとも
月一回参加する。 二年目、三年目になると頻
度は減るが、必ず定期的に顔を出す。
現場を訪れたときに確認すべき事項も細か
く定めている。 GDの定着状況や、改善目標
に対する進捗、「2S(整理・整頓)」や「見
える化」の実践状況といった項目だ。 これら
に不十分な点が見
つかれば、次回の
訪問までに克服す
べき課題として宿
題を出す。
一連のメンテナ
ンスを実施しても
効果が上がらない
場合だけ、再び
指導者が常駐する
活動の対象とする。
こうして独自のP
DCA(計画・実
行・評価・改善)
サイクルを繰り返す
ことで改善活動の
定着を図っている。
現場指導の六つの原則
指導先企業との関係にも原則を設けている。
対象企業の経営層の理解を得ることや、指導
者は一人で常駐することなど六項目からなる。
トヨタグループに指導された経験を基に独自
の手法を体系化するなかで確立した。
指導者として現場に乗り込む改善チームの
メンバーには、何よりもコミュニケーション能
力が求められる。 技術的なノウハウや数値管
理の手法は事後に学ぶこともできる。 しかし、
一人で現場に入って活動全体をコントロール
するためには、何より現場長や作業者などと
一対一で対話する能力が欠かせない。 活動の
要となる現場リーダーを選ぶときにも、人を
見る目が必要だ。
現場に常駐しているヨーカ堂の作業改善チ
ームのメンバーは毎月、「活動報告書」を服部
GMに提出する。 日常の活動内容をありのま
まに記入することで、管理者が活動状況を把
握できるようになっている。 この書類は指導
先企業の管理者にも送られ、ヨーカ堂の改善
担当者が現場で何をしているのか、活動の進
捗状況がどうなっているのかを理解してもら
う一助にしている。
報告書には、指導先の現場の改善スキルを
評価する「採点表」も組み込まれている。 約
五〇項目について○△×で評価するようにな
っており、○は二点、△は一点、×はゼロ点
として採点する。 活動にメリハリをつけなが
らスキルの向上を図るための工夫だ。
採点表の内容や目標数値の達成度は、そ
の現場に派遣されたヨーカ堂の担当者の評価
にも直結する。 指導者自身をセンターで改善
に取り組む人たちと同様の立場に置くことで、
活動の難しさや楽しさを共有している。
これと並行して、改善チームのメンバーの
能力もチェックしている。 四半期や半期ごと
に作業改善の専任指導者としてのスキルを採
点し、不足している点などを自覚させる。 服
部GMは「指導先の現場であれ、われわれの
メンバーであれ、いかにモチベーションを高め
るかが重要。 そのために私は採点とか評価を
大事にしている」と説明する。
客観的な評価によって各人のやる気を促す
一方で、メンバー間の情報共有も徹底してい
る。 各メンバーの活動内容を記録した文書は
社内ネットワーク上の「掲示板」で公開され、
必要に応じていつでも取り出せる。 指導時の
教育メニューや現場で使うチェックリストなど
もそこに蓄積されている。
現場リーダーを育てる
それにしても、実際に改善に取り組む現場
の人たちは、ヨーカ堂による指導をどう受け
止めているのだろうか。 青果部門のモデルセ
ンターとなっている神奈川県の「横浜青果セ
ンター」を訪ねてみた。
〇六年に稼働した同センターは、横浜南部
市場の敷地内にある。 ヨーカ堂の取引卸であ
「センター作業改善プロジェクトチーム」の活動方針
目標数値の達成と共に品質と環境改善を目指す作業改善を実行する。
現地現物主義と合理に基づく改善、活動を通じた人財育成が基盤。
? 取引先上層部を通じたIYとの共同作業改善に対する統一見解による活動
? IY専任者1 人でセンターに常駐し目標数値を達成するための基礎教育の実施
? 自主研修──目標設定──2S 活動──正味作業への進化を通じた人材育成
? 定量効果と共に後工程(店舗)を考えた改善
? ムダ取りからコスト削減の効果測定
? 常駐によるモデルセンターの改善活動を取引先主導に切り替える教育の継続
※IY=イトーヨーカ堂
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る横浜丸中青果の販売子会社で、物流施設
の運営会社でもある横浜市場センターの施設
の一角にあり、近隣の五〇弱のヨーカ堂の店
舗に商品を供給している。
ヨーカ堂は一〇年二月から約一〇カ月間に
わたって、このセンターで作業改善プロジェ
クトを展開した。 横浜丸中青果との契約の下、
実際の改善活動は現場の運営を担っている湘
南物流と一緒に実施。 総額二六〇〇万円余
りのコスト削減に成功した。
青果は相場によって価格が大きく変動する。
物流センターの収支も、その影響を避けられ
の従業員が大半を占めることもあり、いざヨ
ーカ堂の指導者と活動をスタートすると、従
来のやり方に固執する人たちはほとんどいな
かった。 自分たちなりの方法があっても、改
善案を施した場合の作業時間などをストップ
ウォッチで測り優れていれば納得した。
このセンターでは、全員参加を前提とする
改善活動にぴったりの現場リーダーにも恵ま
れた。 湘南物流の島原所長とヨーカ堂の中島
氏とが相談した結果、リーダーとして白羽の
矢を立てたのは、まだ二〇代半ばで、中途採
用で湘南物流に入ってわずか三年目だった事
務職の納富佐代子副主任だった。
体力的にも精神的にもきつい改善活動のリ
ーダーの役割を、業務経験の浅い女性社員に
背負わせることには迷いもあったという。 に
もかかわらず島原所長が納富さんをリーダー
に推したのは、彼女の日頃の仕事ぶりや対話
能力を高く評価していたからだ。 この人選は
奏功し、納富さんはリーダーとしてプロジェ
クト全体を見事にまとめあげた。
島原所長は現在三七才。 納富さんは二八才。
ヨーカ堂の指導者である中島氏が、この若い
ない。 横浜青果センターで改善活動を実施し
た最大の目的は、相場変動に負けない経営体
力を獲得することにあった。 実際、同センタ
ーの収益体質は大きく変わった。
指導者としてセンターに常駐したヨーカ堂
物流運営管理部の中島正明氏はこう説明する。
「センターの経費の一つである荷役人件費を見
ると、管理レベルが確実に高まっていること
を数字で確認できる。 改善活動に入る以前の
計画値と実績値には大きな乖離があった。 そ
れが今では、乖離はだいぶ小さくなっている。
これは緻密な活動が継続していることを示す
客観的な証拠だ」
同センターでは本格的なスタートから三年
目に入った現在でも自律的な活動が続いてい
る。 商品の仕分けに主に「キャリー」(天板に
車輪が四つ付いただけの台車)というミスの
発生しやすいマテハンを使っているにもかか
わらず、作業品質のレベルも高い。
実は横浜青果センターは、ヨーカ堂の指導
を受ける約一年前から自主的な改善活動に取
り組んでいた。 しかし、満足のいく結果は出
ていなかった。 「いま思えば、実際に行動を
起こして数字を変えていくという点で甘さが
あった。 ルールもあいまいだったし、GDの
ような定期的な会議もなかった」と同センタ
ーの運営責任者を務める湘南物流の島原友也
京浜青果センター所長は振り返る。
それでもこのセンターには、新しい改善手
法を受け入れる柔軟性があった。 若手や女性
横浜南部市場の中にあるヨーカ堂の「横浜青果センター」
※横浜丸中青果(卸)の子会社である横浜市場センター(仲卸)の一角に「横浜青
果センター」があり、両センターはシートシャッター1枚で仕切られた同一建物内に
ある。 「横浜青果センター」の構内作業と配送管理を湘南物流が手掛けている。
各ベンダー
横浜丸中青果
イトーヨーカ堂
横浜市場
センター
青果センター(湘南物流)
横浜南部市場内
横浜市
イトーヨーカ堂の物流運営管理
部で取引先に改善を指導する
中島正明氏
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「下駄箱に消臭剤がほしい」といった単純
な意見から、「荷物は指定された黄色のライン
内にきちんと入れてほしい。 本来なら入るも
のが入らないし、隣の荷物とぶつかるたびに
直す時間がムダ」といった指摘や、「新人教育
とルール統一のために作業マニュアルを作成
してほしい」という要望など多くの声が寄せ
られた。 いずれも改善の貴重なネタだ。
これを具体的な取り組みに落とし込んでい
くにあたって、まずは納富リーダーが中島氏
からトヨタ式の改善手法を学び、これを他の
メンバーと一緒に確認しながら覚えていくとい
う手順をとった。 その後、構内作業や事務所
などそれぞれの担当領域で活動を展開し、課
題を一つずつクリアしていった。
活動をスタートしてから約三カ月が経った
一〇年六月、「キックオフ」のための会合を開
催した。 社内外の関係者に、具体的な改善点
や目標金額を宣言する最初の節目だ。 横浜青
果センターはこのとき約二七〇〇万円のコス
ト削減目標を宣言した。
その後、作業内容などを実際に見直す活動
を本格化した。 意見が割れ、実行を迷うこと
もあった。 そんなときは「中島さんに言われ
た『まずはやってみよう』という一言に背中
を押された」と島原所長はいう。
納富さんもリーダーとして活動の先頭に立
った。 「やれば自分たちが後で楽になるんだ
よ。 作業工程が減れば早く帰れるかもしれな
いし、トラブルも減るかもしれない。 そうい
うことを伝えてあげるのが自分の役割だと思
った。 現場の細かい作業については私より詳
しい人がいるのだから変に口を出さず、頑張
ろうねと声を掛けつづけた」と納富さん。 担
当者たちは競うように実績を上げていった。
目標を達成するために粘り続ける
キックオフで宣言した約二七〇〇万円のコ
スト削減は容易な目標ではなかった。 あらか
じめ掲げた改善項目を消化するだけでは、と
ても手が届かない。 活動期間中にどれだけ新
たな改善を積み上げられるかが問われた。
ヨーカ堂の改善活動では、削減額が目標
比で一〇〇パーセントを上回ることは少ない。
それだけ高い目標を掲げている。 各現場の指
導者は一つの改善テーマを徹底的に深掘りす
るなり、適用範囲を拡大するなどして、達成
率を高めようとする。
横浜青果センターの取り組みでも、中島氏
は改善金額を積み上げるために徹底的に粘っ
た。 そのなかで金額的に最も大きな成果につ
ながったのは、「キャリーへの積み付けの標準
化」と「キャリー搬送マニュアルの作成」と
二人を父親のように見守りながら、本音の熱
い議論を重ねて改善活動を展開した。 彼らの
熱気にセンター全体が巻き込まれていき、ゲ
ームでも楽しむかのように活動に取り組む雰
囲気が盛り上がっていったという。
脱落者をつくらない
実際の活動を振り返ってみよう。 一〇年二
月にヨーカ堂が改善活動を提案し、翌三月か
ら本格的に動き出した。 まずは毎週月曜日に
開くGDで改善手法の教育などを実施。 ほど
なく現状把握のための「現場改善アンケート」
を行った。 アルバイトやパート社員を含むセン
ターの従業員全員を対象に、構内作業・配送
業務・事務所それぞれに困っていることや気
づいた点を書き出してもらった。
同センターの改善活動に対する姿勢は、こ
の段階から他にはない積極性を伴っていた。
アンケート結果が一〇〇項目にも達せず追加
実施するケースもあるなかで、いきなり約四
〇〇もの意見が集まった。 似たような項目を
整理しても約二五〇項目が残った。
湘南物流・生鮮事業部の
島原友也
京浜青果センター所長
湘南物流・横浜青果センタ
ーの納富佐代子副主任
いう改善だった。 キックオフの時点ではこれ
らによる改善効果を計七三八万円としていた。
それが結果として一〇五三万円、目標対比で
一四二%の成果を残した。
このテーマに着手した当初は、庫内での作
業者の動線にだけ注目して作業改善を展開し
ていた。 入荷してから商品を店別に仕分ける
までに、どのように移動するのが最適か。 そ
の搬送動線や運び方のムダをなくすことに注
力していた。 しかし、活動を進めるうちに新
たな視点が生まれてきた。
「キャリーへの積み方を見直すことで運ぶ回
数そのものを減らしていくという方向性が途
中から出てきた。 そのために、一定の高さま
で商品を積んでいなければキャリーの搬送を
禁止する?低さ基準?の設定という考え方が
生まれた」と中島氏は振り返る。
安全性や作業効率を考えてキャリーに積む
商品の?高さ基準?、つまり上限を設けること
は、多くの物流センターで行われている。 だ
が下限を設定するという発想はあまり聞かな
い。 少なくとも、それまでの横浜青果センタ
ーでは考えられなかった。
商品を素早く店別に仕分けることを求めら
れる同センターでは、従来、ベンダーが納品
してくる商品を、そのままの順番でどんどん
処理していた。 軽い商品や、破損しやすい商
品がキャリーの下段に積まれれば、その上に
多くの商品は積めない。 スピードと作業品質
を確保するためには、積載効率が多少犠牲に
けるようにした。 そして使える部品だけを集
めて新しいキャリーに修復する。
それだけなら単純な施策だが、一連のセン
ターの真骨頂はその先にある。 この作業をマ
ニュアル化し、事務部門の女性社員を含む全
員がキャリーの分解や修復を手掛けられるよ
うにした。 その結果、目標金額としてまった
く計上していなかった三〇万円以上のコスト
削減を積み上げることができた。
この改善は現場作業を担うアルバイトの声
に端を発している。 納富さんは、「アンケート
で『汚いキャリーが多い』、『搬送中に車輪が
回らなくなるキャリーがある』という声が出
なるのは仕方がないと考えていた。
キャリーに積む商品の高さに下限を設ける
ことは、従来の現場の?常識?に踏み込むこ
とを意味していた。 以前の作業手順のままこ
れを強行すれば、キャリーの下段にある軽い
商品を積み替える手間などが発生してしまう。
作業効率は高まるどころか悪化する。
これを打開したのが、前工程の変更だった。
従来は商品が入荷する順番に集積していたの
を、軽い商品、重い商品、長い商品など形態
別に事前に分ければいいのではないか。 この
アイデアに沿ってレイアウトや作業手順を見
直したことで、無理なく?低さ基準?をクリ
アできる体制が整った。
こうしてキャリー一台に積む商品の量が増
えた。 積載効率が高まったことで、搬送する
キャリーの総数は約二割減った。 同センター
の出荷先約五〇店舗のうち一〇店舗分の作業
がなくなった計算だ。 劇的な改善だった。
過去の常識を捨て去る
「キャリーの洗浄・修復」というテーマでは、
それまでは単に廃棄するか、修理のために業
者に出すのが当たり前と考えていた破損キャ
リーの扱いを抜本的に見直した。
天板と四つの車輪からなるキャリーは、た
とえ車輪が二つ壊れても、残り二つは使える
ことが多い。 ところが従来は車輪二つが壊れ
た時点で処分していた。 これを改め、破損キ
ャリーを分解し、使える部品と廃棄部品に分
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吊下げ方式でムダ歩行を削減
随所に“低さ制限”の表示がある 大半の商品をキャリーで処理
全バースに運転者向け注意事項
ることを重視している。 そうすることで参加
者のモチベーションが高まり、意識が変われ
ば結果として大きな成果につながる。
「われわれの活動が長続きしている秘訣の
一つは、日常の活動が重たくないことにもあ
る」とヨーカ堂の服部GMは考えている。
?徹底力?が生み出す全員参加
活動を続けるうちに、横浜青果センターで
はトヨタ式の作業改善が当たり前のようにな
っていった。 「できない理由を並べない」と
いった考え方も浸透した。 そのうちに何でも
GDで話し合いながら、改善の成果を前向き
に競い合う雰囲気が醸成されていった。
また、従来はお互いの仕事内容をよくわか
っていなかった事務所や現場作業の担当者た
ちが、活動を通じてセンター全体の業務を理
解できるようになった。 「これは金額にあらわ
せないほど大きい。 この経験のおかげで、仕
事相手や後工程の人たちの気持ちまで考えら
れるようになった」(島原所長)
こうして横浜青果センターにはトヨタ式の
改善活動が見事に定着した。 指導者の常駐期
間が完了した一〇年十二月以降も、失速する
ことなく積極的な活動を継続している。
「ここでは多くのことが上手く噛み合ってい
る。 とりわけ島原さんの?徹底力?が大きな
推進力になった。 やると決めたら最後まで絶
対にやり通す。 しかも落ちこぼれが出ないよ
うに下から支えながらやっている」とヨーカ
堂の中島氏は指摘する。
人材の重要性はヨーカ堂にも言える。 同社
の社内に改善活動が定着したのは、平賀信年
前物流部長や服部GMという適任者を得たこ
とが大きい。 この両名が、属人的な?暗黙知?
になりがちなノウハウを体系化し、共有でき
るようにした。 さらに実践と評価を繰り返す
ことで活動を活性化していった。
湘南物流の納富さんは今年二月末で改善活
動のリーダーを卒業した。 今は新しいリーダ
ーをバックアップする側に回っている。 この
ように、改善活動を推進する人材育成のサイ
クルを協力会社にも根づかせることに成功し
たことが、ヨーカ堂の改善活動が継続してい
る最大のポイントといえるだろう。
(フリージャーナリスト・岡山宏之)
たのが最初だった。 何とか応えたいと思って
いたところに、キャリーそのものをもっと大
事にしようという意見が加わり、自分たちで
修復や洗浄まで手掛けはじめた」と振り返る。
配送分野でも過去の?常識?を疑ったこと
が大きな成果につながった。 「混載ルートの拡
大」では、目標の五四七万円を大きく上回る
七四六万円のコスト削減を達成した。
店舗への納品が遅れることは絶対に許され
ない。 このため従来は必要以上に慎重に配送
ルートを組んでいた。 これをあえて挑戦する
姿勢に切り替え、ギリギリになるかもしれな
いルートのシミュレーションを店舗の協力を得
ながら繰り返した。 その結果、より多くの混
載ルートを組むことが可能になった。
事務部門では「コピー用紙の使用枚数の削
減」で想定以上の効果を上げた。 「従来は何も
考えずに印刷していた。 何でもカラーでプリ
ントし、裏紙など使おうともしなかった。 で
も、そうではなくて『カラーってこれだけお
金がかかるんだよ』とか『裏紙でもいい資料
もあるよね』と言いつづけることで個々人の
意識が変わった」と納富さん。
過去にはなかったコスト意識が芽生え、指
導者が尻を叩かなくても改善が進むようにな
っていた。 中島氏は現場の変化に目を細めつ
つ、自身は搬送や配送といったコストインパ
クトの大きい活動に注力していった。
ヨーカ堂の改善活動では、一つひとつの活
動の効果は小さくても、成功体験を積み上げ
51 MAY 2012
破損キャリー
を部品ごとに
分解し、使え
るものを組み
合わせて修復
事務所の改善
では、複写機
を室内の中央
に据えてムダ
な移動を削減
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