ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2012年5号
メディア批評
「新聞・テレビは報じない!」原発情報隠蔽し続ける東電と取材しない記者達

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 MAY 2012  66  『週刊朝日』四月十三日号のトップ記事は 「 73 シーベルトの地獄」で、そこに「新聞・テ レビは報じない!」という枕詞がついている。
「フクイチ幹部が語る福島原発の真実」で、「『原 発収束宣言』は撤回すべきだ!」というのだ が、「新聞・テレビは報じない!」と書かれて、 それらの、いわゆる大手メディアは恥ずかし くないのか。
 同誌によれば、東京電力は今年の三月二七 日、原発震災から一年も経って福島第一原発 二号機の格納容器内で毎時七二・九ミリシーベ ルトの放射線を観測したと発表したという。
 人間は七シーベルトを浴びると一〇〇%死 亡するとされており、七二・九シーベルトは五 分四六秒でそれに至る数値である。
 これについて、同誌にたびたび登場する福 島第一原発の幹部はこう話している。
 「ある程度、高い放射線量は予想していた が、実際に七三と言われると、改めて恐ろし さを感じる。
メルトダウンした燃料が圧力容 器を突き破り、格納容器まで達していることは、 これではっきりした。
燃料が溶け落ち、その 粒子が容器の中をグルグルと回っているのだ ろう。
助かっているのは、温度が五〇度前後 で収まっていることです」  福島第一原発の所長だった吉田昌は、メ ディアに現場を公開すべきだと言っていたが、 こうした現場の意見を無視して、東電本店 の幹部たちは情報を隠しつづけてきた。
また、 その壁を破って情報をもぎとろうとする記者 もいなかったのである。
 『アエラ』の記者の大鹿靖明はその著『メル トダウン』(講談社)で菅(直人)内閣の審 議官だった下村健一の、東電と経産省保安院、 そして原子力安全委員会への怒りを通りこし た諦めめいたつぶやきを紹介する。
 「批判されても、うつむいて固まって黙り 込むだけ。
解決策や再発防止策をまったく示 さない技術者、科学者、経営者」  こんな無責任で無能力な奴らに私たちは危 険極まりない原発を委ねていたのである。
 特にひどい東電に銀行がくっついて、自ら の債権の保全を図る。
 「彼らにとって東電は、長年、資金を融通 したいのに借りてくれない相手だった。
それは、 東電がその高い信用力に裏打ちされた社債を 発行することによって、銀行に頭を下げるこ となく低い金利で資金を調達することができ た『特別な会社』だったからだ」  銀行は床の間を背負っていばっていると言 われてきたが、「特別な会社」の東電はその 上を行くのである。
 ある銀行の常務によれば、東電の緊急融資 の要請は、お願いなどではなかった。
 「越後屋、お金を用意せよ」  まるで時代劇のように、代官が商人から借 りてやるという感じだったのである。
 勘違い電力と勘違い銀行、そして勘違い政 府が一緒になって、東電は潰さないことにな ってしまった。
資本主義の原則はどこへ、で ある。
 『メルトダウン』は、東電救済をめぐる菅内 閣の激論を伝える。
官房長官の枝野幸男が、  「まだまだ東電はミンクのコートを着ている。
パンツ一丁にさせるべきだ」  と話すと、経済財政担当大臣の与謝野馨が、  「パンツ一丁になるまで東電に吐き出させる のはいい。
それと責任論は別だ」  と反論する。
 「じゃあパンツも脱がすべきだ」  と枝野が怒鳴ると、金融担当大臣の自見庄 三郎が、  「いやいや、パンツまで脱いじゃあいけない」  と割って入って、二人の熱を冷ました。
 こうした論議の中で、原発震災に遭った人 たちをどうするのかという視点はない。
メデ ィアにもそれが完全に欠けているのである。
?現場?にいた吉田昌郎には覚悟があったが、 東電会長の勝俣恒久等にはそれはない。
「新聞・テレビは報じない!」原発情報 隠蔽し続ける東電と取材しない記者達

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