ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年5号
物流指標を読む
第41回 チャイナ・リスク再考 「第41回海外事業活動基本調査(平成22年度実施)」(速報)経済産業省

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

  物流指標を読む MAY 2012  72 チャイナ・リスク再考 第41 回 ●中国を撤退する日系企業が続出 ●賃金・物価・人民元の上昇が背景に さとう のぶひろ 1964年 ●現地パートナーとの対立も散見 生まれ。
早稲田大学大学院修 了。
89年に日通総合研究所 入社。
現在、経済研究部担当 部長。
「経済と貨物輸送量の見 通し」、「日通総研短観」など を担当。
貨物輸送の将来展望 に関する著書、講演多数。
中国の経済統計は信用できない  中国の統計が正しいと信じている日本人は、恐 らくごく少数であろう。
中国人だって、良識のあ る人たちは信じていまい。
もちろん確たる証拠が あるわけではないが、統計に関わるあやしげな話 は枚挙に暇がない。
たとえば、中国国家統計局は、 昨年は一月二〇日に、そして今年は一月一七日に 前年のGDPを発表した。
わが国のように統計が しっかり整備されている国でも、前年のGDP(一 次速報値)が固まるのは二月の中旬である。
どう すれば、日本より一カ月近くも前に数値を固めら れるのか。
その数値があらかじめ決められていた ものなのではないかと考えるのが自然であろう。
 また、経済コラムニストの小笠原誠治氏は、氏 のブログにおいて、中国の消費者物価指数の嘘を 指摘している。
概要は以下のとおり。
「リーマンシ ョックの影響を受けて、二〇〇九年前半頃の中国 の消費者物価指数はマイナス二%にまで低下した ことになっているが、二ケタ近い経済成長を続け ながら、デフレ下の日本よりも物価が低下するこ とはありえない。
おそらく物価はマイナスではなく、 二%程度のプラスであったのではないか。
ではな ぜ四%もさばを読んだのか。
それは、物価の変動 率、すなわちGDPデフレーターをいじることで、 実質経済成長率を高くみせるためである。
〇九年 の名目成長率はおそらく七%程度だったのだろう。
しかし、インフレ率を二%とすれば、実質経済成 長率は五%となってしまい、全人代での目標成長 率である八%を下回ってしまう。
そこで、インフ レ率をマイナス二%とすることにより、実質経済 成長率を九%にしたのではないか」  もっとも、我々日本人がとやかく言っても、かの 国にとっては「蛙の面に何とか」であろうが、著 名な中国人の経済学者が爆弾発言をすると、そう もいくまい。
 昨年一〇月二二日に、経済学者で香港中文大学 の郎咸平(ろうかんへい)教授が、中国瀋陽市で の講演において、自らの統計によれば、中国の国 内総生産は政府公表の九%ではなく、マイナス一 〇%であると明言したほか、中国は日本のバブル 経済崩壊の過ちを繰り返すと予測したそうだ。
 郎教授は、講演前に、あらかじめ今回の講演内 容をインターネットに公開しないよう要求したとい う。
「そうしないと皆が困る。
なぜならば、私が今 日これから言おうとしているのは全部本当のこと だから。
今日の体制下では、本当のことを言って はならない」と語り、講演参加者に対して、現場 を撮影しないこと、録音をしないこと、メディア を入れないこと、講演の内容をミニブログに公表 しないこと、を約束させた。
 講演の主なポイントは以下のとおり。
●中国体制の内部は上から下まで全部虚言を繰り 返しており、すべてのデータは捏造されたもの である。
●中国の借金は三六兆元(約四三二兆円)に達して おり、必ず破綻する。
●中国統計局がこのほど公表した九・一%の経済 成長率は虚偽データである。
インフレ率の六・ 二%も偽りであり、少なくとも一六%である。
●政府のすべての政策は、病を患っている経済に 強心剤を注射し、解熱剤を飲ませているだけだ。
「第41回海外事業活動基本調査(平成22年度実施)」(速報)経済産業省 73  MAY 2012 めには、どんなことでもする」、これが中国政府 の体質であるとすれば、郎教授の話も納得できる。
 たとえマイナス成長であろうと、ギャロッピン グ・インフレ(注:年率一〇%超の駆け足のイン フレのこと)になっていようと、財政赤字が莫大 な規模に達していようと、中国政府は、これから も平然と国債を刷り続け、金をばら撒き、米国や 日本の国債を買いまくって、虚勢を張り続けるの だろうか。
リスク負う覚悟も必要  さて、東日本大震災やタイの大洪水で、日本の メーカーは多大な損害を被った。
コストを抑制す るため、生産拠点や部品・部材等の調達先の集約 化を図った結果、その生産拠点や部品・部材等の 調達先が被災したことに伴い、被災地における生 産活動が停止しただけではなく、部品・部材等の サプライチェーンが寸断されたことにより、被災し ていない地域においても、生産活動が停滞したた めだ。
 そうした教訓から、今後、リスク分散のため、と くに部品・部材等の調達先を複数化する動きが強 まる可能性が高い。
 ここでいうリスクには、もちろんカントリーリ スクも含まれる。
カントリーリスクとは、一般に、 政治に関するリスク(戦争、内乱、革命、政情不 安、政治面の政策変更など)や経済に関するリスク (デフォルト、ハイパーインフレ、労働争議、経済 面の政策変更など)などが代表的なものであるが、 そのほか、司法制度の不備・不公平、著作権・特 許・商標の侵害・濫用、宗教・民族対立などの社 会問題など様々なものがある。
 話をまた中国に戻そう。
一時期、生産地として、 あるいは市場として、日本企業が猫も杓子も中国 に進出した時期がある。
しかし、その結果、失敗 して中国から撤退した企業も多い。
たとえば、経 済産業省の「第四一回海外事業活動基本調査(平 成二二年実績)」(速報)の結果をみると、二〇一 〇年度における解散・撤退現地法人企業数は全地 域で六〇八社であるが、うち中国(香港を含む) が一八一社と約三割を占め、断トツの一位だ。
 ちなみに、解散・撤退の主たる要因としては、一 八一社のうち回答のあった一五九社についてみる と、「組織再編、経営資源の見直し等に伴う拠点 統廃合」が七八社(四九・一%)と最も多い。
こ の結果をみただけでははっきりとした解散・撤退 の理由は分からないが、推測するに、現地従業員 の賃金や物価、さらには人民元の上昇が続くなか で、生産などのコストが急増し、その結果、拠点 を統廃合せざるをえなくなった企業が少なくない ということではないか。
 また特徴的な点として、「現地パートナーとの対 立」をあげた企業が六件(三・八%)あることが あげられる。
件数としては少ないが、全地域にお いて当該要因により解散・撤退した企業は八社し かない。
そのうち六社が中国であったことは特筆 すべき点ではないか。
 解散・撤退した企業は中国のカントリーリスクを やや軽視していたのかもしれない。
今さら言うま でもないが、中国は進出するメリットも大きい半 面、それなりのリスクも負わなければならない国 なのである。
病の根源を突き止めていないため、これからは 重体に陥る。
中国経済はすでに非常に危険な境 地に陥っている。
 怪しげなジャーナリストや自称評論家などとは違 い、中国経済の裏事情まで熟知している大御所が ?オフレコで?という条件付きで話したというこ となのだから、信憑性は高いのかもしれない。
と すれば、非常に恐ろしい話だ。
 ところで、昨年七月、浙江省温州市付近で高速 鉄道が脱線し、一部車両が高架橋から転落する事 故があった。
鉄道当局は、生存者の確認や事故原 因等の究明をしないうちに、事故車両を現場の地 中に埋め、また掘り返すという暴挙を行ったが、こ の事例からも分かるように、「国家の威信を保つた 中国〈現地法人〉を解散・撤退した主な要因(回答159社) 製品需要の見誤りによる 販売不振・収益悪化 現地企業との競争激化による 販売不振・収益悪化 日系企業との競争激化による 販売不振・収益悪化 第三国系企業との競争激化による 販売不振・収益悪化 為替変動による 販売不振・収益悪化 現地パートナーとの対立 組織再編、経営資源の見直し 等に伴う拠点統廃合 地域内関税自由化等の動きに 対応した拠点統廃合 税制上の優遇措置の見直し 等に伴う拠点統廃合 短期的な事業目的(ホテル、 マンション、ゴルフ場建設等)の完了 その他 (社)0 10 20 30 40 50 60 70 80 8 6 10 78 50 1 1 1 1 2 1

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