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佐高信
経済評論家
47 FEBRUARY 2004
武井保雄というワンマン会長が盗聴事件で逮
捕された武富士では、武井が会長を辞したいま
もなお、社員が毎朝、武井の写真に頭を下げて
から仕事を始めているという。 実質的には何も
変わっていないのである。 日本経済新聞社のワ
ンマン、鶴田卓彦が相談役に退いた同社でも、
まだ鶴田は影響力を持っているらしい。
『創』は二〇〇四年の一、二月合併号で、日
経OBを対象に実施したアンケート結果を載
せている。 そこには痛憤の直言が並ぶ。
同誌編集長の篠田博之は「ジャーナリズム
とは言わば他人に対して土足で踏み込むこと
をなりわいとした職業である。 それが自分の
ことになると、不都合なことを覆い隠そうと
するのでは、読者の信頼は得られるはずもな
い。 自らを厳しく検証し、自浄作用を発揮し
てこそ、ジャーナリズムは他者を追及する権
利を担保し得るのだと思う」と指摘している
が、その通りだろう。
現役の部長だった大塚将司が「鶴田解任」
の株主提案をしたことについては、七一%の
OBが「意義ある提起だ」とし、鶴田前会長
の辞任は「表面的な糊塗策で何の解決にもな
っていない」という答が五五%、「杉田現社長
を含め、鶴田体制を支えてきた役員は総退陣
すべき」という声も四八%で半数近い。 この
一連の事態は「鶴田体制が長く続いたゆえの
おごりが招いた」とする答が七三%だが、果
たして、現役社員はそう思っているのか。 チェックできなかった同社の労働組合の責任を
問う声もあった。 以下、直言の中から、いく
つか拾ってみよう。
「この問題が表面化した時点で、会社は内部
に調査委員会を設けるなどして、真相を明ら
かにすべきであった。 ところが告発した大塚
氏を一方的に解雇し、自ら浄化する能力のな
いことを世間に示した」
「十数年前だったか、ウォールストリート・
ジャーナルが株式市場担当記者の不正を一面
トップで報じ、『解説』まで自社幹部の談話を
入れてくわしく報じた」
「佐藤正明編集委員が中国テクノセンターの
未公開株を買っていたことなどは、鶴田をは
じめとする首脳陣の体質を反映したものでは
ないか。 佐藤は現在、日経BPの専務になっ
ているが、処分(クビが妥当)もされていな
い。 佐藤の親分の鈴木隆(日経BP前会長)
が、佐藤の処分に反対しているので、河村社
長が困っていると聞いている。 鈴木は昔から
ブラックな奴を手下に抱えて、本人も危うい
立場にあると疑われている」
もちろん、中には、逆恨みして次のように
メディアを批判する声もある。
「一部週刊誌がえげつない写真入りで連続報
道したことに同業者として憤りを感じた。 ま
さしく瀕死の動物に食らいつくハイエナの行
為で、一流出版社の発行するメディアのとる
べき態度ではないだろう」
このOBは、日経を「一流新聞」と思って
いるのだろうか。 それとも、三流もしくは四
流、五流新聞と思っているのだろうか。
私は五年ほど前、『噂の真相』の「タレント
文化人筆刀両断」で鶴田を取り上げ、鶴田が
小渕恵三と小沢一郎の料亭会談に同席したこ
とを批判して次のように書いた。
〈この新聞社の論説副主幹の田勢康弘は『ジ
ャーナリストの作法』という本で、「『良識あ
る第三者』という立場をかなぐり捨てたら、
ジャーナリズムは成り立たない。 単なる情報
の運び屋か、新聞ゴロになってしまう」とゴ
リッパなことを書いているが、おたくの社長
はどうなのか。 もっとも、最近は田勢自身も、
小渕内閣というか、自民党の?御用聞き〞に
なってしまったともいわれる〉
遂に日経に内部告発者が出たと聞いた時、
私はてっきり田勢だと思った。 『政治ジャーナ
リズムの罪と罰』等の著者として、田勢は大
塚より早く声をあげるべきではなかったのか。
御用聞きに堕した記者たちが哀しい。
表紙のみ変える企業と許容するメディア
?御用聞き〞に堕した記者たちが哀しい
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