ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年7号
特集
CaseStudy 物流子会社が製品設計プロセスに参画──東 芝

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2012  16 に持たせるためだった。
子会社の立場で親会社に 対等に意見が言えるのかという懸念がなかったわ けではない。
それでも「グループでの全体最適を 図る」という方針のもと、一〇年以上にわたりこ の体制による取り組みを継続してきた。
 そこから数多くの包装改善事例が生まれている。
その一つ、ドラム式洗濯機の改善ではデザイン自 体を大きく変更する提案も行った。
「物流に与える 効果をしっかりと説明することで、製品設計側に 受け入れてもらうことができた」と鈴木グループ 長は振り返る。
 改善前までのドラム式洗濯機は、写真1の通り、 本体下部に取り付けられた直径四センチの排水ホ ースを、本体側面に収納するようにデザインされ ていた。
そのため包装時にホース径の分だけ余分 な横幅が必要だった。
 これを改善するため、包装設計者は、排水ホー スを取り外し、本体の中に収納することを製品設 計者に提案した。
しかし、包装設計者は水漏れが 発生する可能性を恐れて、ホースを取り外すこと には反対した。
 そこで別のアプローチを採ることにした。
本体 の下部に排水ホースを巻き付けて収納するという アイディアだ。
これを実現するためには、本体下 部の外周の仕様を変更する必要があったが、次の 製品リニューアルで採用されることになった。
 包装設計者はこれと並行して、緩衝材として使 用されている発泡スチロールの削減にも着手した。
本体の上下に使用されている緩衝材を減らすこと で、包装サイズをさらに小さくし、コンテナへの 積載台数を向上させようという狙いだ。
 もっとも、単に緩衝材を減らすだけでは肝心の 包装設計部門を物流子会社に移管  東芝ロジスティクスには現在、二二人の包装設 計担当者が在籍している。
それぞれが専門とする 製品分野を持ち、親会社である東芝本体の各製品 設計部隊に派遣されている。
 彼らは製品の設計段階からプロジェクトに参画 し、ロジスティクスの視点から包装設計を行って いる。
「製品の安全性だけでなく、コンテナへの積 載効率や倉庫での保管効率などまでを見据え、物 流コストがミニマム化する包装を提案することが 最大のミッションだ」と東芝ロジの鈴木豊人物流 改革推進部物流開発・設計担当グループ長は説明 する。
 東芝は一九九〇年代中盤から二〇〇〇年代前半 にかけて、包装設計業務を段階的に物流子会社の 東芝ロジに移管してきた。
九六年に生産設備など の重量品、九九年に液晶テレビ、洗濯機、冷蔵庫、 電子レンジなどの家電製品、〇二年に半導体を除 く電子部品の包装設計者が、東芝から東芝ロジに 籍を移している。
 東芝ロジに包装設計業務を移管する前までは、 製品の仕様が最終決定した後で包装を設計してい た。
しかし、それでは効率化に限界があった。
製 品設計段階から物流の視点を組み込むことで、ド ラスティックに包装の在り方を改革しようと考え た。
 その役割を物 流子会社に移し たのは、“物流 コスト削減”と いう意識を明確 物流子会社が製品設計プロセスに参画 ──東 芝  コンテナへの積載効率や倉庫での保管効率を、製品の仕様 に反映させることで物流コストの最小化を図っている。
その ために製品開発プロセスに物流子会社を参画させている。
物 流子会社が製品分野別に包装設計のスペシャリストを抱え、 ロジスティクスの視点から親会社の製品開発を支援している。
(石鍋 圭) 東芝ロジの鈴木豊人 物流改革推進部 物流開発・設計担当 グループ長 17  JULY 2012 特集 て収まりきらず、内箱と製品本体との間に、一・ 五センチの隙間が生じてしまっていた(図1)。
こ れを是正するため、排水ホースが当たる内箱部分 をカット。
本体と内箱との隙間を無くすことに成 功した。
 これを製品の両サイドで実施することにより、 包装サイズを合計三センチ縮小。
コンテナへの積載 台数は、一〇二台から一〇八台へと上がった。
九 四台の時期と比較すれば、積載効率は約一五%上 昇したことになる。
洗濯機のコンテナ積載率が一〇%アップ  全自動洗濯機(六?クラス)でも包装改善を実 現している。
従来、全自動洗濯機の四〇フィートコ ンテナへの積載台数は一五二台(四並×一九列× 二段)だった。
ほぼ理想的な積載台数と考えられ ていたが、コンテナ上部に二〇センチほどの空間 があった(写真2)。
この空間を有効活用するた めに、製品の高さを従来よりもアップし、奥行き を短くする提案を行い、設計サイドからの理解を 得ることができた。
 梱包方法も見直した。
以前は製品をダンボールに 入れ、全方位を保護する形態を採っていたが、よ り梱包サイズを抑えるため、製品の上下をダンボ ールで挟むだけの「キャップ包装」に切り替えた。
側面は一面にだけ板紙を挟み、残りの三面は製品 がむき出しの状態になっている。
ここでも、落下 試験や倉庫でのオペレーションで問題が生じないか を、十分に検証したという。
 取り組みの結果、包装サイズの高さは九三・六 センチから九七・五センチに増えた一方、奥行き は六〇・二センチから五五・三センチに縮小され た。
この改善によって、 コンテナへの積載台数 は従来の一五二台から 一六八台(四並×二一 列×二段)へと上がっ ている。
 鈴木グループ長は「こ れまで様々な包装改善 を行ってきたが、『これ で終わり』というゴー ルはない。
製品設計と 包装設計が一体になれ ば、改善の余地は無限 だと確信している」と 今も意欲を燃やしてい る。
製品保護に問題が生じてしまう。
そこで、製品自 体の強度をアップすることを製品設計者に提案し た。
この意見も採用され、本体に使用されている 部材や加工方法が見直された。
薄くした緩衝材で も安全性に問題がないことが落下試験で証明され た上で、正式に製品開発することが決まった。
 一連の取り組みの結果、ドラム式洗濯機の包装 サイズの横幅は従来の七四センチから六八・五セ ンチに、奥行きは七九センチから七七センチへと 縮小された。
四〇フィートコンテナへの積載台数 は九四台から一〇二台へと上がった。
緩衝材の使 用量も減少したため、包装資材の調達コストも削 減された。
 改善はこれだけで終わらなかった。
本体の下部 に排水ホースを巻き付けることで横幅を減らした ことは先記した通りだが、それでもホース径は全 写真1 輸送効率を考慮した製品形状に変更(ドラム式洗濯機) 改善前改善後 改善前改善後 ホース収容スペース 写真2 全自動洗濯機の包装改善事例 コンテナ上部には空間ありコンテナ上部の空間が縮小 従来包装 キャップ包装 図1 ドラム式洗濯機下部の断面図 包装箱 内箱 クッションクッション 段ボールトレイ 排水ホース (直径4cm) 隙間 1.5センチ 包装箱 排水ホース (直径4cm) 段ボールトレイ 内箱 本体下部にホースが 巻き付けられている 洗濯機本体 洗濯機本体 隙間ナシ

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