ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2012年7号
特集
CaseStudy コスト削減効果を明示して社内を説得──カシオ計算機

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2012  20 重さも以前より軽くなった。
 設計部門から依頼を受けた物流部は、この改善 の効果検証に乗り出した。
その結果、数億円規模 の輸送コストの削減が明らかになった。
とりわけ航 空運賃が大きく減っていた。
カシオのデジカメの多 くはアジア地域の工場から世界中の市場に向けて空 輸されている。
改善による軽量化が、重量建ての 航空運賃にダイレクトに効いていた。
 この検証を通じて、物流部は包装改善による物 流コスト削減の可能性に気がついた。
受け身だっ た従来の姿勢を大きく改めた。
物流部の佐藤一弥 氏は「デジカメ以外の品目でも、包装を見直せば 物流費が削減できる可能性があるはずだと考えた。
電子辞書、楽器、時計、電子レジスターといった 製品の設計部門に対し、物流部側から積極的に改 善提案していくことを決めた」と振り返る。
 活動をスタートした〇八年度は、緩衝材の削減 など比較的ハードルの低い事例を積み上げることを 優先した。
いきなり物流部が製品本体や付属品の デザインや、仕様変更にまで踏み込めば、関係部 門からの抵抗に遭うおそれがあったからだ。
それ でも大きな効果が得られた。
 電子ピアノの改善では、四〇フィートのハイキュ ーブコンテナへの積載数をそれまでの二〇〇台から 三〇〇台に増やすことができた。
高さ四四・五セ ンチ、横幅四一・六センチ、奥行き一四七・九セ ンチだった包装サイズを、それぞれ高さ三・五セン チ、横幅三・一センチ、奥行き七・九センチ分ず つ縮小し、コンテナへの積み込み方法も工夫するこ とで、大幅に積載効率が上がった。
 「他部門への改善提案の際には、具体的なコスト 効果を明確に説明するよう心掛けた。
包装をあと何 設計部門からの依頼をきっかけに  カシオ計算機の物流部が社内の包装改善を意識 するようになったのは四年前のことだった。
きっか けはデジタルカメラの設計部門から物流部門に寄せ られた一つの依頼だった。
「我々が実施した包装改 善の効果を、物流の視点から検証してほしい」と いう。
 それまで同社では、包装の軽量化や縮小化とい った活動は、各製品の設計部門の仕事として位置 付けられていた。
包装をコンパクト化することで 達成される資材コストの削減や環境負荷の低減に、 物流部門は基本的に関与していなかった。
 デジカメ設計部門は、〇七年度に二段階の包装 コンパクト化に成功していた。
一段階目は緩衝材 を減らすシンプルな改善。
続く二段階目は、付属 品である充電器と取扱説明書(取説)の仕様変更 にまで踏み込んだ改善だった。
 それまでデジカメの充電器には、本体を載せて充 電する“クレードル”というタイプが採用されてい た。
これが嵩張るため、包装の効率化の障害とな っていた。
そこでクレードルを廃止し、コンパクト なバッテリー充電器に切り替えた。
 さらに、同梱物のうち最も面積が大きく、分厚 く重い紙の取説も廃止した。
必要な情報はCDに 落とし込み、本体と一緒に同梱した。
これにより、 包装箱の床面 積をCDケース とほぼ同じサイ ズにまで縮小 化。
紙の取説が なくなった分、 コスト削減効果を明示して社内を説得 ──カシオ計算機  環境負荷や資材コストの低減を目的とした包装改善が、実 は物流コストの削減に大きく効いていることに気が付いた。
小さな改善から着手して実績を積み上げ、設計変更や付属品 の廃止へと段階的にスコープを広げていった。
社内の抵抗は コスト改善効果を明確に提示することで乗り切った。
(石鍋 圭) 物流部企画管理課の 佐藤一弥氏 21  JULY 2012 ズを縮小する狙いから、そうした付属品の廃止も しくは仕様変更を物流部門から提案していった。
 好例がデジカメだ。
〇七年度に設計部の主導で 紙の取説を廃止し、CD化することで包装サイズ を落としたことは既に述べた。
そこまでは良かっ たのだが、今度はCDケースの大きさが包装改善 の制約になってしまっていた。
そこで、CD自体 を廃止した。
 取説情報が入ったCDを廃止する替わりに、A 7サイズの簡易冊子を同梱することで対応した。
同 時に詳細な取説情報が欲しいという顧客に対して は、ウェブからダウンロードできる体制を整えた。
 
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実際に使用している 顧客は少ないという判断からだった。
この改善は、 今年度発売の世界共通モデルから採用されている。
包装容積は、従来よりも一一・八%、重量は三一・ 一%減少している。
 同じく今年度発売の国内向け特定モデルでは、さ らに踏み込んだ改善が実現している。
海外向けモデ ルと同じく取説CDとAVケーブルの廃止に加え、 充電器とそのコードを廃止した。
充電はUSBコ ードを通じてPCから行う。
 これにより、包装容積はCDが同梱されていた モデルと比べ、四六・二%、重量は四八・〇%削 減された。
包装箱の床面積はデジカメ本体とほぼ 同等サイズにまで小さくなっている。
物流コスト、 特に航空運賃に与える影響が大きいことは想像に 難くない。
さらに一〇年度からは、製品の大きさ にまで改善提案の領域を広げた。
既にキーボードな ど、一部の製品で本体のスリム化を実施している。
 一連の包装改善により、〇九年度から一一年度 までの三年間で、カシオは物流コストを合計三億 円以上削減した。
今年度も上期だけで約三〇〇〇 万円の削減額を見込んでいる。
これは主に輸送費 と保管費の数字で、物流部が管轄していない包装 資材や部材の削減分などを合わせれば、コスト効 果はさらに大きい。
営業部門を粘り強く説得  ここに至るまでの取り組みは決して順風満帆だ ったわけではない。
少なからず社内からの抵抗に もあっている。
意外にも設計部門は協力的だった。
もともとカシオは製品の小型化・軽量化を強みの 一つとしてきたメーカーであるだけに、物流部の 提案にはよく理解を示し、時には提案以上の改善 が可能だと逆に指摘されるほどだった。
 “待った”をかけるのは主に営業部だった。
付属 品を減らし、包装を小さくすることで、肝心の売 れ行きが落ちてしまうことを営業部は恐れていた。
無闇に箱を小さくしてしまうと高級感が損なわれ て、貧相に見えてしまうという。
とりわけ日本の 消費者は“包装箱まで含めて製品”という意識が 根強い。
物流部の提案に営業部が諸手を挙げて賛 成とはいかないのも頷けた。
 それでも、コスト効果を粘り強く訴えることで 説得にあたった。
時代の趨勢が物流部の取り組み に味方した。
〇八年の金融危機以降、カシオでも コスト削減・利益確保が声高に叫ばれるようにな っていた。
環境問題に対する社会的ニーズが加速 していたことも追い風になった。
「右肩上がりの時 代なら難しかったかも知れない。
こういう環境だ からこそ結束して改善にあたることができた。
今 後はこの流れを絶やさないことが大切だ」と佐藤 氏は気を引き締めている。
ミリ削れば年間のコンテナ本数はこれだけ減少し、 物流コストはいくら減ると具体的にシミュレーショ ンして削減額を示すことで、取り組みの推進力が 大きく加速した」と佐藤氏は説明する。
 改善実績を背景に、物流部は活動のスコープを 拡大した。
〇九年度からは、付属品の在り方にま で提案範囲を広げた。
付属品のなかには必要性が 感じられないものも少なくはなかった。
包装サイ デジカメの改善事例 従来モデル 世界共通モデル 国内向け特定モデル 取扱い説明書 (A7サイズ冊子) 取扱い説明書 (CD) 取扱い説明書 (A7サイズ折込) 本体 本体 本体 付属品付属品 包装容積11.8 %減、重量31.1%減 包装容積46.2 %減、重量48.0%減 特集

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