ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年7号
特集
CaseStudy 改善チームで外箱サイズを規格化──カルビー

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2012  22 の管轄外だ。
同社では納品用の段ボール箱を、内 袋の商品パッケージと共にマーケティング本部でデ ザインしている。
それを生産部門の技術管理部が、 エンジニアリング面から支援する体制だ。
 「何グラム入りのポテトチップスを、内袋のフィル ムの横幅を何?にして作りたい。
その場合、袋の 長さはどれくらいにすれば良いだろうか」といっ たマーケティング部門からの相談に対して、技術管 理部が内袋の仕様や素材、段ボールの大きさなど をアドバイスする。
それを受けてマーケティング部 では包装資材を準備し、包装試験を行って問題が ないか確認する。
そこに物流部門が口を挟む余地 は本来であればない。
 しかしタイミングが良かった。
ちょうどその一〇 年四月に同社は個別最適の弊害を払拭するため、 「イノベーションとコストリダクション」をキーワー 現場の声から改善チームが発足  「中身のサイズは同じなのに、外箱の高さがバラ バラなのはおかしい」──二〇一〇年初頭に物流 現場から声が上がった。
袋物のスナック類を詰める 段ボール箱の高さが商品によって違っている。
容積 の余っている箱があるとの指摘だった(図1)。
 カルビーの商品は「ポテトチップス」や「かっぱ えびせん」などの軽いスナック菓子が中心であるた め、荷物の容積がそのまま運賃や保管コストに直 結する。
商品単価は低く、運賃負担力に乏しいた め、チャーター制をとって一車当たりの積載量を限 界まで高めるなどの工夫をしている。
例え小さな 隙間でも会社全体では大きな損失となる。
物流部 門として見過ごすわけにはいかなかった。
 同社の外箱は底面については、「T 11 型(一一 〇〇?×一一〇〇?)」のパレットに合わせて四パ ターンに規格化されている。
一九九〇年代に工場 間・物流拠点間のパレチゼーションと梱包作業の自 動化に取り組んだ際に、段ボールプロジェクトを組 織してサイズを標準化した。
しかし、箱の高さに までは目が向いていなかった。
 加えて、その後の組織改革で、地域別・商品別 に事業を分割したマトリクス型のカンパニー制を導 入したことから、個別最適が進んだ。
梱包サイズの 全社的な標準化は風化しかかっていた。
「すぐに包 装の現状を洗い出 せ」と同社の松元 久志物流部部長 は指示を出した。
 もっとも、包装 の規格は物流部門 改善チームで外箱サイズを規格化 ──カルビー  物流部門、生産部門、マーケティング部門の3部門で構成 する全社的な包装改善チームを組織。
段ボールサイズの標準 化を進めた。
2010年4月から約2年間かけて、すべての商品 について外箱を見直し、必要な修正を行った。
保管効率の向 上をはじめ大きな効果が上がっている。
    (渡邉一樹) カルビー物流部の 松元久志部長 図1 段ボールにムダなスペースがあった例(イメージ) ムダなスペース(空間) ポテトチップス ポテトチップス ポテトチップス ポテトチップス ポテトチップス ポテトチップス 堅あげポテト 堅あげポテト 堅あげポテト 堅あげポテト 堅あげポテト 堅あげポテト 横 縦 高さ 横から見た図上から見た図 23  JULY 2012 間やコストに悩まされ、技術管理部もその対応に 追われていた。
 段ボールの規格を決めてしまうことができれば、 包装設計の手間は大幅に軽減される。
内袋の大き さと段ボールサイズの整合を一覧表にまとめておけ ば、新商品が出るごとにマーケティング本部が技術 管理部に相談する必要はなくなる。
それだけ商品 を市場に投入するスピードも早まる。
物流部門か らの提案は渡りに船だった。
 改善チームのメンバーとして包装規格表の作成に あたった技術管理部の松永篤史氏は「このプロジ ェクトに取り組むまでは物流の効率のことなど考え たことがなかった。
外箱の設計では、商品が入り きらないとか、中身が潰れてしまったなどのクレー ムが来るのが最も怖い。
そのため大きさや強度に 余裕を持たせようとする傾向があった」という。
 しかも、いったんラインに乗って問題がないこと を確認された段ボール箱は、実績として、それ以 降の包装設計の参照にされる。
「すでに余裕のある 箱を参照した別の担当者が『もうちょっとだけ余 裕を・・・・』と繰り返していけば、だんだん箱が大 きくなってしまう。
そうしたこともあったのかも 知れない」と松永氏は推測する。
実際、外箱のサ イズは年を追うごとに大きくなる傾向にあった。
パレットへの積み付け方も標準化  改善チームで包装の規格表作成を進めるのと並行 して、物流部ではパレットに段ボール箱を積みつけ る積載パターンの統一にも取り組んだ。
全国に一五 ある物流拠点によって、パレットへの積載パターン がバラバラになっていた。
同じ商品を同じ数だけ積 載したパレットなのに積み荷の高さが違うことが、 保管やハンドリングの妨げになっていた。
段ボール 箱のサイズごとに正しい積載パターンを定めて、こ れを各拠点に徹底させた。
 肝心の段ボール箱の標準化は、それよりも長い 時間を要した。
リニューアルなどのタイミングに合 わせて、アイテムごとに箱の大きさを修正する必要 があったからだ。
一〇年四月から活動を開始して 二年余り、今年六月にようやくすべての商品の見 直しが終わった。
改善の対象となった同社の「袋 スナック」アイテム数はおよそ三〇〇。
そのうち計 七七アイテムの箱のサイズを修正することになった (図2)。
 松元物流部長は「この二つの改善によって物流 センターにおける保管効率は八%以上向上してい る。
輸送費の改善にも繋がっているのは明らかだ。
トータルの改善金額は現在集計している最中だが、 これがまとまったら報告書を作成して情報を全社 的に共有する。
物流への理解を深めてもらう一助 となるはずだ」と期待している。
ドに大幅な組織変更を実施し、「事業本部制」へと 移行した。
 これに伴い本社スタッフ部門として物流部が新設 された。
それまでは全国七つのカンパニー(北部、 東日本、東京、中部、近畿、中四国、九州)にそ れぞれ物流グループを置いてブロック別に独自管理 を行っていた。
これを各事業本部(北海道、東日 本、中日本、西日本)の物流担当を本社物流部が 統括するかたちに改めた。
段ボールの標準化は、全 体最適化を目指す経営方針と合致していた。
 物流部は全国の工場や物流センターなどの包装現 場に出向いてヒアリングを行い、実態を調査した。
すると予想していた以上に問題は根深いことが判 明した。
段ボールに不要な隙間のある商品がいく つも見つかっただけでなく、逆にサイズがギリギリ で自動梱包機が使えず、人手でないと規定の数が 収まらないという商品もあった。
 それを商品別の一覧表にまとめて、マーケティン グ本部、技術管理部に提示し、「段ボールの高さが ばらついているせいで、保管・輸送の効率が落ち ている。
梱包作業の手間も生じている」と訴えた。
 すぐに梱包改善チームが組織された。
物流部、技 術管理部、マーケティング本部がそのメンバーだ。
実は物流部以外の二部門も、包装についてはそれ ぞれ課題を抱えていた。
商品サイクルの短縮と多品 種化が進み、分量違いによるバリエーションなども 増えていることか ら、包装設計にか かる負荷は年々増 す傾向にあった。
マーケティング本 部は包装試験の手 カルビー技術管理部 の松永篤史氏 トラック内寸(幅) トラック内寸(高さ) 64ケース/1パレット (8 本はい×8 段) 72ケース/1パレット (8 本はい×9 段) 図2 パレット積載量の改善イメージ 特集

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