ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年7号
特集
第2部 KPIは「デンシティ(包装密度)」

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2012  24 過剰包装をあぶり出す  包装改善には方法論がない──その事実を筆者 は精密機械メーカーの物流部門に所属していた時 代に知った。
包装の設計技術や緩衝材の開発につ いては社内にも専門家がいて、ノウハウが蓄積さ れていた。
ところが、サプライチェーンを通した物 流コスト削減を目的とする包装改善のやり方につ いては、誰に聞いても、どれだけ資料を当たって みても満足のいく答えが見つからなかった。
 過剰包装や物流の実態に合わない包装が現実に 横行していることは、従来から指摘されていた。
しかし、その改善を担当する設計部門や物流部門 は、たまたま発生した問題に場当たり的に対処し ているに過ぎなかった。
確信をもって包装の改善 活動を展開するための方法論、大げさに言えば思 想的バックボーンが必要だった。
 そのカギとなる管理尺度として筆者は、「デンシ ティ= Density=密度」の活用を提案している。
 包装の最も重要な役割が内容物(商品)の保護 であることは自明である。
そのための基本的要件 は、商品の周りに「空間」を設けること、すなわ ち「緩衝が可能な空間の確保」であろう。
そして、 包装(個装・内装・外装)内部の空間に緩衝材を 効果的に充填することで包装外部からの衝撃を吸 収し、製品本体を守るわけである。
 ここにきわめて陥りやすい問題がある。
製品を 守らんがために、個装・内装・外装それぞれの段 階においてやや厚めの緩衝を施すことで、全体と して緩衝空間が必要以上に膨らんでしまう点であ る。
このことは、いわゆるブルウイップ効果(最終 消費のわずかな変動の影響がサプライチェーンの段 階を遡るのに応じて、ムチのしなりのように増幅 されていく現象)による在庫増大とも酷似してい る。
 このように過剰に膨らむ傾向が強い包装の「膨 らみの程度」を測る指標が「デンシティ」である。
現実の包装の効率をデンシティによって評価するこ とで、包装改善が必要なターゲットをあぶり出すこ とができる。
 国際航空運送協会(IATA=International Air Transport Association)が規定する航空貨物 運賃の計算方法がそのベースとなっている。
航空 貨物は、対象となる貨物の重量と容積のバランス を見て、輸送コストに与える負荷が大きいほうを 基に運賃を計算する。
 具体的には、「実重量」と「体積重量」を求め、 その大きい方を「課金重量」とする。
このうち「体 KPIは「デンシティ(包装密度)」  ロジスティクスの視点に立った包装改善の手法は、いまだ 確立されているとは言えない。
管理の尺度となるKPIも存在 しない。
丸腰のまま前線に立たされた一人の物流実務家が、 試行錯誤の末に独自の方法論を開発した。
そのノウハウが今、 静かに産業界に広がっている。
(本特集第2部〜第5部執筆:LDC研究所 酒井路朗 所長) 航空運賃の計算方法 6,000㎤を1 ?として換算した重さ =縦 ×横 ×高さ( ?) ÷ 6,000 ㎤  20×20×15÷6000=1 ? 資料1 実重量と体積重量を比較 し、大きい方の重量を課金 重量(=計算重量)として、 運賃が計算される 20? 15 ? 20? 体積重量 実重量 実際に秤で計測した重さ 実重量体積重量 特集 25  JULY 2012 それぞれ六七・〇?と二三・五?である(〇・五 ?単位で切り上げ)。
 包装Aは体積重量が実重量より大きいので、体 積重量の六七・〇?が課金対象重量となり、包装 Bは逆に実重量が大きいので、実重量三七・〇? がそのまま課金対象重量となる。
 この時点では、以下のことが感覚的に理解でき るだろう。
 「Aは実際の重さが体積重量より軽いのに、体積 で運賃を払うのは損した気分になる」  「Aは体積重量の方が大きいので、Bよりも包装 に比較的贅肉がありそうだ」  しかし、これだけでは感覚の域を出ていない。
つ まり、どちらの包装がどの程度「効率的」である かは分からない。
そこで、実重量と体積重量から デンシティを算出してみる。
「体積重量」を実重量 で割ってみるわけである。
A:66.7 ÷50.0=1.334 B:23.3 ÷37.0=0.630  
舛離妊鵐轡謄は一・三三四。
Bは〇・六三〇 ということになる。
この結果から以下のような仮 説を導くことができる。
 「Aはデンシティが悪い」  「Aはデンシティが一・〇〇〇を超えている分だ け、空気で膨らんでいる」  「Aは容積の三三・四%を占めている空間にも航 空運賃を払っている」  「Aは三三・四%の過剰包装となっている疑いが ある」  「Aは改善の余地がありそうだ」  「Bは包装効率が良さそうである」(注意:良い とは断言していないことに注目) 積重量」は、貨物の容積を六〇〇〇㎤で割った数 値が現在は適用されている。
つまり、航空貨物業 界においては六〇〇〇㎤が一?として換算されて いるわけである。
 厳密には以下の通りである。
航空貨物運賃の計算方法 ?実重量=Actual Weight(AW)  航空会社に渡す貨物を実際に秤にかけて測 った重さ。
重量は〇・五?単位で切り上げ。
Gross Weightと表記されることもある。
?体積重量=Measure Weight(MW)  貨物の最大外寸(縦・横・高さ)を測って体 積を算出し、それを六〇〇〇㎤で割った数値。
つまり、六〇〇〇㎤を一?として換算した数 値。
(寸法は〇・五?単位で切り上げ)二〇× 二〇×一五?の箱は丁度六〇〇〇㎤であるの で、体積重量は一?となる。
Volume Weight、 計算重量と呼ぶこともある。
?課金重量=Chargeable Weight(CW)  上記の実重量と体積重量の大きい方の数値。
 ちなみに、このような規則をIATAが設けて いるのには理由がある。
航空機には当然ながら積 載体積の限界がある。
そのため、体積がやたらと 大きくて重さが軽い荷物、極端な例で言えば、荷 物が全て発泡スチロールであったような場合、重量 のみで運賃を計算すれば航空会社は大赤字になっ てしまうからである。
 航空貨物のデンシティは古くは七〇〇〇㎤を一 ?に換算していた時代もあった。
また、二〇〇二 年には五〇〇〇㎤=一?とする案がIATAから 提出されている。
この時は事実上の運賃値上げに 対する荷主等の反発に合い実施には至らなかった が、一部のクーリエ事業者は現在五〇〇〇㎤=一 ?とする基準を独自に適用しはじめている。
 このように六〇〇〇㎤を一?とする根拠は必ず しも確固としたものではない。
しかし、統計的に は妥当なレベルであり、また物流管理の実務におい ては支払いコストに直結する換算基準であるため、 これを梱包の膨らみを測る物差しに活用するわけ である。
デンシティの使い方  デンシティの利用価値は航空運賃の算出方法を 理解することで自ずと見えてくる。
具体的な例で 説明する。
資料2のA、Bの二つの包装は、実重 量がそれぞれ五〇?と三七?であり、体積重量が 包装A 体積重量:100×80×50cm÷6000 ㎤ =66.7Kg 資料2 Aでは体積重量が 実重量より大なの で、課金は67 ? である 50? 80? 100? 実重量 50? 包装B 体積重量:70×40×50cm÷6000 ㎤ =23.3Kg Bでは実重量が体 積重量より大なの で、課金は37 ? である 50? 40? 70? 実重量 37 ? JULY 2012  26  この効果から言えるのは、デンシティの悪いもの を良くすることが重要であるのはもちろんとして、 良いものをさらに良くすることもまた、混載効果 によって航空運賃を下げることに大きな影響を及 ぼすということである。
混載効果で支払い運賃を削減する  実際の航空輸送では、様々な大きさ・重さの貨 物を混載することがほとんどであろう。
しかし、 一個の貨物も数百個の貨物も、運賃を計算する方 法は変わらない。
すべての包装の合計の実重量と、 合計の体積重量を算出し、大きい方を課金重量と するのである。
これを資料4で説明する。
 体積重量は、すべての箱の㎤を合計した後で、 六〇〇〇㎤で割って算出する。
この例では合計の 比較で実重量が大きいので、実重量の一二七四? に対して課金されることになる。
 資料4には各箱のデンシティを示してあるが、貨 物Cのデンシティが二・四六三と、非常に悪いの で、何らかの改善が必要のようである。
また、貨 物Aのデンシティは〇・一四六と際立って良い。
デ ンシティの良いものと悪いものを混載すると運賃が 下がる効果について先に説明したが、Aの貨物の 分割出荷が可能であるなら、航空運賃を大幅に削 減できる。
 そのことを資料5の「演習」で検証して欲しい。
 ポイントは、デンシティの良いAの箱一個あた りで消せる体積重量を算出し(20kg −2.9kg = 17.1kg)、他のB・C・Dの貨物の合計体積重量の 超過分(798.0kg −574.0kg= 224.0kg)を消してい くということになる。
 この場合は、Aが一四個で実重量が上回る  このように、「デンシティ=一・〇〇〇」は航空 運賃を実重量で払うか体積重量で払うかの損益分 岐点であると同時に、包装の膨らみ具合、あるい は過剰包装の程度を示す指標として用いることが できるのである。
 ここでもう一つ、実務家が理解しておくべき大 変重要な「効果」がある。
先ほどの資料2のAと Bの二つの荷物をそれぞれ別々に出荷する場合と、 まとめて(混載=コンバイン)出荷する場合とで は、運賃が異なることに注目して欲しい。
 混載の場合、実重量も体積重量も、全包装まと めて計算されることになる。
その結果、資料3の ように、単独の場合の課金重量が六七?+三七?= 一〇四?であるのに対して、混載の課金重量は九 〇?となる。
つまりAと Bを混載することで、差 の一四?分の運賃が下が るのである。
 この効果は、デンシテ ィの良いもの( 一・〇 〇〇未満)と悪いもの (一・〇〇〇以上)を混 載した場合に必ず発生す る。
(デンシティの良いも の同士、あるいは悪いも の同士では起こらない) こうした現象を筆者はよ く「デンシティの良いも のが悪いもののデンシテ ィを消した(あるいは食 った)」などと表現して いた。
国内宅配便のデンシティ  本文では航空運賃とデンシティの関係につ いて述べたが、身近な問題として理解してい ただくために、国内宅配便の例を紹介する。
 筆者が受け取った図1の荷物のデンシティ を計算してみたところ、3.188と非常に悪かっ た。
この外装箱を開けたのが図2である。
 外装状態の重さがわずか800gで、緩衝 材は最新のエアーパッキングである。
しかし、 商品と比較してあまりにも外装箱が大きい。
宅配便の個数は年間30億個を超えており、 デンシティの視点から体積を減らし、廃棄物 の削減について考えるべきであろう。
化粧箱(黒)を取り出し て外装箱と比較。
外 装箱の体積は化粧箱 40×10×4.4 ? の8.7 倍になっていた。
商品は細長い化粧箱に 入れられ、エアーパッキ ングで緩衝されている。
図1 図2 縦×横×高さ=36×25×17 ?=15,300 ㎤ 体積重量 : 15,300㎤÷6,000㎤=2.55? 実重量 :0.8 ? デンシティ:2.55 ?÷0.8?=3.188 資料3 単独出荷の場合コンバイン出荷の場合 体積重量 A B 67.0 50.0 67.0 23.5 37.0 37.0 90.0 87.0 90.0 実重量課金重量※体積重量 ※[(100×80×50 ?)+(70×40×50 ?)]÷6000 ㎤=90 ? 実重量課金重量 特集 (224.0kg ÷17.1kg= 13.09)ことになり、二二四? 分に相当する運賃が削減できるという結論になる。
また、余ったA箱二一個分は別の出荷に混載する ために残しておけばよい、ということになる。
 もしAのデンシティの良さをすべて活用し、混載 によって他の貨物の体積重量を全て消すことが出 来た場合は、五九七・五?(体積重量 ‒ 実重量= 700kg −102.5kg=597.5kg)に相当する運賃の削減 が可能になる。
27   JULY 2012 前例で最初の箱Aの分割出荷が可能な場合、35個のうち、何個をコンバインすれば体積重量を完全に消去し、 実重量(AW)≧体積重量(MW)と出来るか計算せよ。
1)箱A1個のMWとAWの差を計算⇒1個あたり17.1?AWが大きい W:35 ? D:25 H:20 20 ? MW:35×25×20÷6000=2.9 ? AW:20 ? 1個あたり17.1? のMWの消去可能 2)箱B・C・DのMWとAWの差を計算⇒MWが224.0Kgオーバー MW−AW     =224.0 ? MW:資料4 B・C・Dの合計㎤÷6000=798.0 ? AW:574.0 ?  A: 35 × 25 × 20 × 14個 = 245,000 B: 45 × 30 × 40 × 10個 = 540,000 C: 70 × 50 × 38 × 6個 = 798,000 D: 110 × 110 × 95 × 3個 = 3,448,500 答え: 
舛髻。
隠憾帖,世吋灰鵐丱ぅ鵑垢譴弌体積重量を完全に消せる 3)B・C・DのMW超過分224?をA1個あたりで消去できる重さ17.1?で割る:224.0kg÷17.1kg=13.1 合計体積重量 合計体積=5,031,500 ㎤ MW= 5,031,500÷6,000=839.0 ? 20 × 14個 = 280 10 × 10個 = 100 9 × 6個 = 54 140 × 3個 = 420  合計 
腺    =854.0 ? 合計実重量 この工夫により、 B・C・Dのみで出 荷するよりも 224 ?分の運賃 が削減できる。
(−26%) 演 習 資料5 体積重量 複数の貨物の航空運賃計算方法 W:35cm D:25 H:20 35 個 20Kg A 35×25×20×35 個 =612,500 45×30×40×10 個 =540,000 70×50×38×6 個 =798,000 110×110×95×3 個 =3,448,500 W:45cm D:30 H:40 10 個 10Kg B W:70cm D:50 H:38 6 個 9Kg C W:110cm D:110 H:95 3 個 140Kg D 合計54 個 実重量1,274 ?が体積重量900 ?より大きいので課金重量は1,274.0 ?となる 資料4 4種類54 個合計 5,399,000 ÷6,000 =900.0Kg 実重量 20 ?x35 個 =700 ? 10 ?x10 個 =100 ? 9 ?x6 個 =54 ? 140 ?x3 個 =420 ? 4種類54 個合計  =1,274.0 ? デンシティ:D 612,500÷6,000 =102.5 ?(体積重量) D=102÷700=0.146 540,000÷6,000 =90.0Kg(体積重量) D=90÷100=0.900 798,000÷6,000 =133.0 ?(体積重量) D=133÷54=2.463 3,448,500÷6,000 =575 ?(体積重量) D=575÷420=1.369 5,399.000÷6000 =900 ?(体積重量) D=900÷1,274 =0.706

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