ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年7号
特集
第4部 事例で学ぶデンシティの活用

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

33  JULY 2012 特集 事例1 「無外装化」で運賃を四四%削減  ある電機メーカーでデンシティの全社的な調査を 行ったところ、特定の製品群で非常に悪い数値が 出た。
資料1はその一例だ。
製品は電源トランス で、外装状態の重量は二〇?から三五?である。
作業者が手で持つとかなり重く感じるため、過剰 包装であるとの認識は全くされていなかったが、 実は体積重量が大きかったのである。
 ちなみに日本工業規格 (JIS)では、包装を 「個装=個々の物品の包装」、「内装=包装貨物の 内部の包装」、「外装=包装貨物の外部の包装」の 三種類に分類している。
一般的には、工場で「内 装」した製品が物流センターに持ち込まれ、そこ で「外装」を施して出荷するという流れになる。
 この事例では、物流センターで電源トランスを外 装する際に、内装に対して側面と上下面の計六面 に、それぞれ五?の緩衝材を充填することが、物 流センターの内規として長年実施されてきた。
そ のため本体の内装の状態ではデンシティはほぼ一 であったが、外装によって体積が約七九%も増大 し、デンシティは一・六二四に膨れ上がっていた。
 外装の体積をどこまで圧縮できるのか調べるた めに、このメーカーの製造工場に出向いて包装の強 度試験のレベルを確認した。
そこで驚くべき事実 が明らかになった。
「内装」だけの状態でも、国内 輸送はおろか、輸出物流にも耐えられるJIS規 格以上の試験レベルをクリアーしていたのである。
つまり、外装はそもそも不要だったのである。
 ただちに外装をやめることになった。
この例で は支払い運賃が単純に四四%減少したことになる。
この製品群は約三〇種類あり、すべて航空便で年 間約一万台が輸出されていた。
また、従来は外寸 の異なる新製品が出るたびに外装箱の種類が増え 続け、その在庫スペースと管理が必要であった。
そ れが不要になり、さらに緩衝材使用量も大幅に減 少したのである。
 その後、このメーカーでは「無外装化」が他の 商品にも広がっていった。
 外装時に一律で六面に五?の緩衝を施すという 内部規定が、いつ、誰によって、どのような理由 で定められたのかは不明だが、この非効率な包装 工程が定着してしまった理由を総括的にまとめる と、包装設計を担当している部署が輸送実態を知 らず、また物流センター側が内装の実力(対衝撃 緩衝能力)を知らなかったからだと言える。
その ために長年にわたってムダなコストを支払い続けて いたわけである。
事例で学ぶデンシティの活用  デンシティを活用して貨物容積の圧縮を実現した改善事例 を紹介する。
いずれも追加投資はほとんど発生していない。
高度なテクニックを必要とするわけでもない。
それでいて運 賃の半減や環境負荷低減などの大きな成果を上げている。
(LDC研究所 酒井路朗 所長) 資料1 事例1 縦 横 高さ 実重量 体積重量 Density 内装 外装(廃止) 55 65 32 18.0 19.1 1.061 65 75 42 21.0 34.1 1.624 運賃削減率:(34.1-19.1)÷34.1=-44.0% JULY 2012  34 年間一万本程度が航空輸送されている。
多少の柔 軟性はあるが、強く折り曲げることはできない、荷 扱いのやっかいな長尺品である。
 改善前までは部品をリング状に丸めて通常の段 ボール箱(A式)に外装包装を施していた。
一つ の段ボール箱に一〇本程度入るが、四隅と中央に 大きな空間ができてしまう。
少数の出荷の場合は、 外装箱内部の上下にもムダな空間が生じ、デンシテ ィが五・〇〇〇を超えることもあった。
に取っ手として付いているハンドル部分の厚みで ある(写真の矢印部分)。
 たった二?ほどの厚みだが、これを削減すると 体積重量が〇・六五?だけ減少することが分かっ た。
わずかな重量でも年間二万箱が航空輸送され るので、課金重量は合計で約一万三〇〇〇?にな る。
この製品は実重量が約十二?あるので、体積 重量が課金重量となる。
平均運賃単価を仮に四〇 〇円とすると、年間五二〇万円というバカになら ないコストメリットが得られる。
 これを技術面から検討して、ハンドルをメッシ ュ状の金属製に変更し、収納ケースの上面の窪み にはめ込む構造にした。
また、それまでこのケー スは一個約一万二〇〇〇円の原価がかかっていた が、材質を見直して一個約八〇〇〇円に抑えた。
 この収納ケースの原価低減については後日談が ある。
その後も収納ケースの改良は進み、最終的 には一個約三三〇〇円まで原価が下がった。
かつ、 ケースを金属部分と射出成型の単一プラスチック 部分に簡単に分解できるようにしたことで、リサ イクルも非常にやりやすくなった。
 結果として、わずか二?のハンドルの改良とい う小さな改善から出発したこの取り組みは、総計 二億円を超えるコスト削減をもたらした。
その後 の収納ケースの改良は、デンシティの直接的な効 果とは言えないが、このように包装改善を契機と し、運賃削減をはるかに超える多方面にわたるコ スト削減や環境対応が進展することは良く見受け られるのである。
事例3 長尺品の外装用段ボール箱を変更  資料4は補修用部品である。
単価は数十万円で、  同じような問題を抱えている企業は決して少な くないはずだ。
自社の状況を是非とも確認してい ただきたい。
そして「無外装化」を検討して欲し い。
無外装化とは、製造工場における内装に外装 の強度を持たせるということである。
それを実現 すれば、物流センターでの外装箱購入コストがゼ ロになり、外装作業も不要になるという大きなメ リットを享受できる。
事例2 わずか二?の圧縮が大きな効果  次の例は、第三部の資料 10 、 11 に登場した「B ox No. 12 AS─
邸廚硫善である。
この製品は単価 が非常に高く、グローバル在庫の抑制のため、全 量を航空輸送している。
製品本体はかなり頑丈な 収納ケースに収まっていて、年間出荷外装箱数が 約二万個に上るため、「デンシティ×出荷数」と 「超過体積重量」が群を抜いて大きかった。
 資料2、3がその実物写真だ。
外装と収納ケー スの内部を確認したところ、製品の保全のために はケース自体の内容積を圧縮するのは難しいよう であった。
そこで、目を付けたのは、収納ケース 資料2 資料3 資料4 部品形状包装平面図 A 式 資料5 特集 35  JULY 2012  そこで、強い強度を持つ細長いコの字型の紙管 材を二個組み合わせたものを、新たに内装に採用 することにした(資料5の中央)。
同時に外装箱も 数種類用意した(資料5の手前が一本用、奥が多 本数用)。
この結果、資料6(六本用の外装箱の場 合)のように、デンシティは劇的に改善し、一・〇 〇〇を割り込んだ。
課金重量は体積重量の一一・ 七?から実重量の七・〇?に四〇%も減少したの であった。
事例4 緩衝材の大量使用は黄信号  海外に多種類製品を大量出荷するような場合に は、一㎤程度のパレット付き大型強化段ボール箱が よく使用される。
様々な大きさの製品を大型段ボ ール箱へ詰め込んで高さいっぱいまで製品を満た すことができるのであれば効率は良いのだが、通 常は上部に空間ができてしまうはずである。
 ある物流センターで、そのような上部の空間に 発泡スチロール製の緩衝材を大量に流し込む作業 に出くわしたことがあり、唖然としたことを記憶 している。
 その大型外装箱の体積重量は、約二二二? (110×110×110cm ÷6,000cm3)であった。
従って 実重量が二二二?未満の場合は二二二?が課金重 量となる。
実際にデンシティを調べてみたところ、 この箱を使っている荷物のそれは約一・四五とか なり悪く、ほぼすべての荷物が体積重量勝ちであ った。
 ただちに、上部に空間があった場合はカッター で水平に切り取るよう指示した(資料7の右側の 箱)。
そのツールとして物流センターの作業者が箱 に水平にカットラインの筋がつくようなL字型の治 具を作成した。
L字型の一方を箱の上端に引っ掛 け、上端に沿って水平に移動すると、冶具に設置 された刃が段ボール側面に水平に筋を入れる。
そ の筋に通常のカッターを入れると、意外と簡単に 切断できる。
 高さ一?のカットで運賃は平均八〇〇円下がっ た。
荷物によっては四〇?近くカットすることも あった。
航空運賃の計算方法を知ってさえいれば 容易に課題に気が付き、また対応もできたはずの 改善であった。
 その後、この物流センターでは「実重量と体積 重量によるデンシティの考え方」が浸透し、緩衝 材の量が多いと、デンシティ上の問題があるので はないかという視点から、日常作業での改善に自 主的に取り組む風土が定着した。
事例5 製品の設計自体を変更する  包装内の空間は大きく「外箱」、「内箱」、「製品」 の三つから構成される。
このうち「製品」が占め ている空間に目を付けた取り組みが資料8の事例 である。
図は断面図を示している。
 この製品の形状は、土台となる部分aと、その 上部に取り付けられたL字型のアーム状のパーツ b、および円筒状のパーツcに分けられる。
bは 三個の「ABビス(六角穴のビス)d」によりa に固定されている。
またcはbから手で簡単に取 り外しできるが、出荷時点ではbに組み付けられ ていた。
 改善前の包装は図の通り、上部の空間がスカス カで、外装のデンシティは一・五三二に上ってい 資料7 資料8 c b d a a b c 改善前 改善後 資料6 事例3(部品6本) 縦 横 高さ 実重量 体積重量 Density 改善前外装(A式) 改善後外装 50 50 28 7.3 11.7 1.603 25 190 5 7.0 4.0 0.571 運賃削減率:(11.7-7.0)÷11.7=-40.2% JULY 2012  36 た。
そこで、上部のb・cを取り外し、横倒しし て包装する方法が提案された。
六角穴ビスを、コ イン等で締め付けることのできるマイナスビスに変 更し、製品を納品した際に営業担当者が組み立て ることにした。
 しかし、製品設計の変更にまで踏み込んだ改革 を物流部門だけで実施できるわけではない。
設計・ 営業・海外現地法人営業部門等と検討を重ねた。
物流部門では改善による運賃削減効果をデンシテ ィに基づいて計算し、その効果を訴えた。
 しかし、設計部門の技術者は、「マイナスビス では精度が出ない」と強硬に反対した。
そこで実 際にパート従業員一〇人と、技術者一〇人が組み 立て作業を行い、精度に違いが出るかを検証した が、全く差は見いだせなかった。
これによって設 計の変更が了承され、デンシティは見込み通り約 三三%減少し、一・〇二九に改善され、年間六〇 〇万円の運賃削減となった(資料9)。
事例6 調達品の過剰包装の改善  航空運賃の半減を簡単に実現し、将来的には三 分の一程度まで低減できる可能性のある事例を紹 介する。
そのセンターでは部品メーカーから買い入 れた消耗品に、輸出用の外装を施していた。
六面 にそれぞれ一〇?のエアー緩衝材を詰めることが 内規になっていた。
 外装のデンシティ二・七六三は「きわめて悪い」 水準である。
緩衝スペースが大きすぎることは一 見して分かった。
とりわけ一個単 位の出荷では適切 なサイズの外装箱 がないため、資料 10 のようにかなり ムダな包装をして いた。
 緩衝スペースを 最小限に抑えるだ けで、デンシティ は一・四二二とな り、運賃を五〇% 以上削減できた(資料 11 )。
さらに今後は「無外 装化」を検討すべきであろう。
この製品の調達先 部品メーカーは、品質上個装を開封しないように 指示している。
しかし、製品本体を確認したとこ ろ、単純な構造で強度はかなりありそうだ。
部品 メーカーとのコラボレーションを期待したい。
 無外装化を実現すれば、デンシティは一・〇〇 〇を割込むのが確実だ。
改善前の六六?の体積重 量が二〇?程度となり、運賃は当初の三分の一以 下になることが見込まれる。
内装の段ボール強化 に多少のコスト増が発生しても、トータルコストは 大幅に減少する。
 また、この物流センターでは資料 12 のようなエ アーパッキングの緩衝材を内製している。
この費 用削減額を試算したところ、年間約八〇〇万円で あった。
包装改善の効果は、輸送費削減だけでな く、段ボール箱や緩衝材の使用低減、さらには包 装作業費の抑制など、多方面にわたることが理解 できよう。
資料9 事例5 縦 横 高さ 実重量 体積重量 Density 運賃削減率:(38.3-24.7)÷38.3=-35.5% 内装 改善前外装 改善後外装 45 45 60 22.0 20.3 0.923 55 55 76 25.0 38.3 1.532 55 55 49 24.0 24.7 1.029 資料10 《正面図》 《平面図》 中央の製品と外装箱との間 の緩衝空間「a」の部分が、 全てエアークッションで満た してある。
a a a 資料11 事例6 縦 横 高さ 実重量 体積重量 Density 運賃削減率:(66.3-32.0)÷66.3=-51.7% 内装 改善前外装 改善後外装 86 20 38 17.0 10.9 0.641 102 60 65 24.0 66.3 2.763 96 40 50 22.5 32.0 1.422 資料12

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