ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年7号
グローバル物流市場の実像
第1回 Part 1 世界の物流メジャー

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2012  60 Part 1 世界の物流メジャー 3PL市場の拡大とキャリアの苦境  グローバル3PL市場は、順調にその規模を 拡大させている。
 米コンサルティング会社のアームストロン グ&アソシエーツ社によると、3PL企業の二 〇一一年の総収入は前年比七・五%増の五八 二〇億ドル(約四六兆五六〇〇億円、一ドル= 八〇円換算)に達した模様だ。
その内訳は、ア ジア・パシフィックが一七四〇億ドル、北米が 一六七〇億ドル、ヨーロッパが一三四八億ドル、 中南米が三五〇億ドルで、各地域とも対前年で プラス成長を遂げたという(注1)。
 一般に3PLビジネスとは、輸送や倉庫運営 の効率化を図り、それを運営するサービスを指 す。
国際輸送を効率運営するフォワーディング もそこに含まれるが、航空貨物や海運貨物の輸 送、あるいは国内輸送キャリアは含まれない。
 世界的な景気低迷の影響を受け、船社を始 めとするキャリアは今日、厳しい経営状況に立 たされている。
それとは対照的に、輸送機材 を所有しないフォワーダーの評価は高まってい る。
コンテナ単位に貨物をまとめて出荷するこ とで運賃をセーブするよりも、LCL( Less than Container Load :小口貨物)のまま発送 し、リードタイムを短縮した方が効果的という 考え方に多くの荷主が傾いている。
 また近年はLCLのみならず、コンテナ単 位のFCL(Full Container Load)貨物にお いても、フォワーダーの取り扱いが増えている。
市場がグローバルに拡大したことにより、単に ポート・ツウ・ポートの輸送ではなく輸出入通 関や内陸輸送などを含めた着地ドアまでの一貫 輸送が求められるようになってきたことがその 背景にある。
 新興国では、輸出入貨物の取り扱いに専門 的なノウハウを求められることが多い。
そのボ リュームが拡大してきたことに加え、発地の生 産地点から着地の販売拠点までのリードタイム をさらに短縮したいというニーズがフォワーダ ーの利用を促している。
 これまで日本の大手荷主は、海上貨物につ いてはフォワーダーを介さずに、船会社と直接 取引するケースが多かった。
しかし今後は航空 貨物と同様に、海上貨物においても大手荷主 とフォワーダーとの連携が増えてくるであろう。
 グローバル物流市場のこれまでを振り返ると、 アメリカでは一九七〇年代の後半から輸送規制 の緩和と廃止が順次実施され、新たな業態とし て3PLが台頭した。
また貿易の自由化が進む なかでエクスプレスのグローバルネットワークを 持つインテグレーターが誕生した。
 一方、ヨーロッパでは、一九九〇年代の初頭 にEU市場の統合が実現したことで、輸送を取 り巻く環境が大きく変化した。
そして後に見る ように、旧来のフレイトフォワーディングにロ ジスティクスとエクスプレスのサービスが加わっ た新たなビジネスモデルが創造された。
 その後も、国際貿易はセキュリティの強化と 貿易手続の簡素化という相反する要件の両立 が試行されるなか、自由化へと向かい、物流 会社にはロジスティクスの効率化とサプライチ ェーンの最適化が求められるようになっている。
その主な担い手となっている世界の物流メジャ  グローバル化が物流市場の枠組みを変えようとして いる。
サービス領域とエリアの拡大によって、従来の 機能別・地域別の垣根は崩れ、業態や国境を超えた 競争が本格化している。
その主要プレーヤーの顔触れ を概観し、今後の市場の行方を探る。
グローバル物流市場の実像 〜新たな可能性の探求に向けて〜 平田義章 国際ロジスティクスアドバイザー 第1 回 新連載 61  JULY 2012 ーの顔触れを、まずは概観してみよう。
グローバルフォワーダー ──規模拡大が急速に進む  ヨーロッパ大陸におけるフォワーダーの歴史 は古い。
アウグスト・キューネとフレデリッヒ・ ナーゲルが、ドイツのブレーメンでキューネ+ナ ーゲルを創立したのは一八九〇年のことである。
 ヨーロッパのフォワーダーの主たる役割はア メリカや日本などの域外諸国との輸出入手続や 貨物の手配を行うことに加え、域内各国間の輸 出入通関と貨物の配送にあった。
しかし、EU 統合のもとで域内諸国間の輸出入手続が不要 となりEU各国のフォワーダーは大きな打撃を 受けた。
 現在もキューネ+ナーゲル、パナルピナは自 力拡大を継続し、健在であるが、両者と同様 に古い歴史を誇るダンザスはドイツポストに買 収され、またシェンカーはドイツ鉄道の傘下に 入り、DBシェンカーとなった。
 一方、EU統合によって域内各国間の貨物輸 送の自由化が実現したことは、新たなビジネス を拡大する機会ともなった。
その象徴的な存在 が東西ドイツの郵便局を合併し、民営化したド イツポストである。
 同社は、「規模の経済性」の実践者と言われ る。
積極果敢なM&Aを実施して、エクスプレ ス、フォワーディング、そしてロジスティクス の分野に進出。
新たなビジネスモデルを創造し、 グローバル市場で確固たる基盤を構築するに至 った。
 図1に二〇一一年のグローバルトップフォワ ーダーの取扱数量を示した。
海上貨物は、キュ ーネの三二七万TEU(二〇フィートコンテナ 換算)を筆頭に、DHLの二七二万、DBシ ェンカーの一七六万、パナルピナの一三一万と 続く。
 一方、航空の取扱いは、DHLがトップで四 三八万トン、DBシェンカー一一五万トン、キ ューネが一〇七万トン、そしてパナルピナが八 五万トンである。
 これらが世界を牛耳るヨーロッパのメガフォ ワーダーの現状である。
今後アジアや新興国の 市場が拡大するなかで、わが国のフォワーダー を含め新たな市場参入者の活躍が期待される。
コントラクト・ロジスティクス ──欧州勢が上位を独占  アメリカでは輸送規制の全面的な廃止にと もない荷主のロジスティクスの運営を改善する 新たなビジネスモデルとして3PLが誕生した。
輸送の効率化や付加価値倉庫サービスの開発が 3PLサービスの核であり、メンロー・ロジス ティクスや、フェデックスに吸収されたキャリ バー・ロジスティクスなどが、一九九〇年代に 出現したアメリカの典型的な3PLである。
 一方、ヨーロッパでは荷主のロジスティクス の効率化を支援するサービスを「コントラクト・ ロジスティクス」と呼んでいる。
EU市場の統 合は、従来の国別のロジスティクスを再設計す るニーズを生んだ。
これに伴い域内諸国間の在 庫・配送にかかわる荷主企業のロジスティクス を改善するビジネスが急速に進展した。
 このコントラクト・ロジスティクスの主な担 図1 グローバルトップフォワーダーの取扱数量(2011) 1,073 3,274 4,378 2,724 1,149 1.763 848 1,310 14,495 4,013 3.635 1,734 1,630 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 16,000 14,000 12,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 出所:各社財務資料より作成 出所:各社財務資料より作成 図2 コントラクト・ロジスティクスの収入(2011) (単位:億円) キューネ+ナーゲル DHLグローバル フォワーディング DBシェンカー パナルピナ キューネ+ナーゲル DHL サプライチェーン CEVA ロジスティクス DBシェンカー・ ロジスティクス ノルベール・ ダントゥルサングル 航空千トン 海運千TEU JULY 2012  62 い手となったのは、それまでEU域内の輸送に 関与してきた大陸のフォワーダーであり、また 在庫ビジネスの自由化で先行したイギリスを地 盤とするエクセル(当時)などのロジスティク ス企業であった。
 図2に世界のコントラクト・ロジスティクス 市場の二〇一一年のトップ5を列記した。
イギ リスのエクセルを買収したDHLが他を大きく 引き離しトップ。
二位のCEVAはTNTグル ープのロジスティクス部門を前身とする。
TN Tは収益性が低いことを理由に二〇〇六年に同 部門を売却した。
 三位はキューネ+ナーゲル。
アメリカのUS COやヨーロッパのACRなどの買収によりロ ジスティクス部門を急拡大させた。
四位はフラ ンスの大手輸送企業ノルベール・ダントゥルサ ングル、そして五位はDBシェンカーと、ここ でも欧州勢が市場を押さえている。
エクスプレス ──
圍裡圓凌版笋蠅韮骸劼暴弧  今年三月、国際インテグレーターの一角を占 めていたオランダのTNTがアメリカのUPS に買収された。
買収金額五一億六〇〇〇万ユ ーロ(約五五四五億円、一ユーロ=一〇七・四 六円換算)という久しぶりの大型買収である。
 これによって世界のエクスプレス市場は現在 のUPS、フェデックス、DHL、TNTの四 社体制(図3)から三社に集約されることにな る。
UPSの予測によるとUPS/TNTの合 併はUPSのヨーロッパならびに新興国を含め たアメリカ市場以外の事業拡大に貢献し、同社 の収入は現在の五三〇億ドル(約四兆二四〇〇 億円)から六〇〇億ドル(四兆八〇〇〇億円) に増加する見込みだという(注2)。
 
圍裡圓蓮始伺のロジスティクス部門の売却 に続き、〇七年にはフォワーディング部門をフ ランスのジオディスに売却、エクスプレス事業 に特化する選択と集中を行ったが、最終的には エクスプレス事業も売却し、市場から消えるこ とになった。
 しかし、UPSのメンローフォワーディング (旧エメリー)買収や、ドイツポストのエアボー ン買収の例にも見られるように、ネットワーク ビジネスの統合には困難がつきまとう。
UPS は企業文化を重視して買収企業の統合には時間 をかける方針だというが、ヨーロッパの組織に アメリカのシステムを導入するという改革は必 ずしも容易なことではないだろう。
今後の推移 を見守りたい。
 このように、ビジネスが国境と文化を超えて 進展していくのに伴い、グローバル物流市場は 変化してきた。
情報技術のさらなる活用をは じめ、ロジスティクスの効率化とサプライチェ ーンの最適化、リードタイムの短縮、コストの 削減、そしてセキュリティの強化と、物流会社 に期待される役割は現在も高まる一方だ。
 そうした背景のもとで、従来の輸送や保管な どの基本機能の整備に加え、それらを有効活用 するフォワーダーやロジスティクスサービスの提 供者に焦点があてられるようになってきた。
そ れでは、次世代のグローバル物流の担い手は具 体的に誰なのか。
それを探るために次稿では欧 米市場の発展と日本市場の推移についてその背 景を概観する。
注 ⑴ David Biederman, Mergers, Logistics Complexity, The Journal of Commerce, April 30, 2012, p.46. 2010 年のGlobal 3PL Revenues のTotalは541.6 billions, Armstrong & Associates, 2012 Third-Party Logistic Study, p. 7. ⑵UPS Presentation,"Delivering More Together …Positioned for Growth" p. 11. ひらた・よしあき 1956年大阪外国語大 学卒業、日本通運国際輸送事業部長、米国 日通副社長などを経て独立。
在米十六年、 現在、JIFFA(国際フレイトフォワーダーズ 協会)「国際複合輸送士資格認定講座」講師、 日本機械輸出組合国際電子商取引円滑化委 員会アドバイザーなど。
著書に「21世紀 の国際物流」(文真堂・共著)、その他国際 輸送とロジスティクス関連論文、研究報告書 多数。
日本貿易学会、日本港湾経済学会会 員。
PROFILE 14,495 4,013 3.635 1,734 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 出所:各社財務資料より作成 図3 インテグレーターの小口貨物の収入(2011) (単位:億円) DHL UPS FedEx TNT

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