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2012年8月号
特集

第5部 レイバーマネジメントで差別化する 「チーム集配」で主婦パートを前線に──ヤマト運輸

AUGUST 2012  32 集配業務に「フィールドキャスト」  ヤマト運輸は現在、全国に約六〇〇〇店の集配営 業所を展開している。
そのうち約五五〇店で「チ ーム集配」と呼ぶ新たなオペレーションを行ってい る。
昨年四月から実験的に運用を開始し、その効 果を確認しながら段階的にエリアを広げてきた。
今 年度中にも全国で本格導入に移す計画だ。
 一般家庭向けの配達が多い郊外の住宅地が主な 対象となる。
一般宅向けの配達は、受取人不在 による持ち戻りが多発する。
持ち戻りを減らすに は、在宅率の高い朝一〇時までに、どれだけ配達 できるかがカギになる。
しかし、セールスドライバ ー(SD)一人で時間内に回れる件数は限られて いる。
そこで朝一番や夕方の集荷など、一日の集 配のピーク時だけパート勤務する「フィールドキャ スト(FC)」という職制を新たに設けた。
 SD一人につき数名のFCがチームを組んで集 配に当たる。
FCの多くは集配エリア周辺に住む主 婦層だ。
ヤマト運輸の制服を着て自宅を出て、所 属の営業所ではなく、同じチームのSDが集配時 に車両を停車する場所に直接出勤する。
SDの指 示の下、車両の荷台から自分が担当する荷物を取 りだし、台車で配達に回る。
 これまで同社はサービス品質を重視して、前線を フルタイムのSDで固めてきた。
正社員SDの他に 「キャリア社員」と呼ぶ契約社員のSD職も設けて いるが、これもフルタイム勤務で正社員に昇格する ための登竜門という位置付けだ。
集配の補助作業 にパートを使うことはあっても、対面サービスは原 則としてSDの仕事だった。
 FCの本格導入によって、SDを差別化の武器 にしてきた長年の方針を修正することになる。
し かし、ヤマト運輸の渡邊一樹人事総務部人事企画 課長は「チーム集配によって顧客満足はむしろ向 上する」という。
一般宅向けの配達では、男性の SDより女性FCのほうが警戒心を持たれずに済 む。
しかも朝一〇時前の配達率が格段に上がる。
 同時に再配達の手間が省けて、SDはセールス 活動により多くの時間を割けるようになる。
そし て何より、コストが下がる。
SDとFCでは人件 費水準に大きな違いがある。
時給一〇〇〇円前後 のパート社員に正社員の仕事を肩代わりさせれば、 売上高人件費比率を大幅に抑制することができる。
 宅急便の平均単価は年々低下し続けている。
二 〇〇一年度の七二一円が一一年度には六〇〇円ま で下がった。
これに対して、収入に占める人件費の 比率は、これまで横バイを維持してきた(図1)。
「チーム集配」で主婦パートを前線に ──ヤマト運輸  昨年4 月からフルタイムのセールスドライバーとパート社 員がチームを組んで宅急便の集配作業を行う「チーム集配」 の導入を進めている。
朝夕にピークがある日々の業務量の 波動や季節変動に応じて、チームに投入するパートの人数 を調整することでコスト効率を維持している。
 (大矢昌浩) 図1 宅急便の平均単価と人件費比率 750 700 650 600 550 70 65 60 55 50 45 40 35 30 (円) (%) 01年 度 02 年度 03 年度 04 年度 05 年度 06 年度 07 年度 08 年度 09 年度 10 年度 11年 度 純収入人件費比率 総収入人件費比率 宅急便平均単価 5 レイバーマネジメントで差別化する 物流現場のコンプライアンス 特 集 日雇い派遣禁止 33  AUGUST 2012 地道な改善に加え、取扱個数が伸びていたことが 大きい。
宅配便事業は集配密度が効率に直結する。
 しかし、市場は既に成熟している。
通販を中心 としたB2C貨物の増加によって、モノの流れ自 体も以前とは大きく変わっている。
SDに依存す る従来通りのオペレーションのままでは、収益性は 維持できない。
近い将来、ドライバー不足が深刻 化する恐れもある。
 そのため同社では、創業一〇〇周年を迎える二 〇一九年に向けた「集配改革」を中期経営計画の テーマとして進めてきた。
その実行部隊となる業務 改革部の赤塚慎一センター業務改革課課長は「パ ート戦略が改革の柱だ」という。
 まずは「早朝アシスト」を導入した。
それまでS Dが自分で行っていた配送車への荷物の積み込み 作業をパートに移管した。
早朝アシストが朝六時に 集配所に出勤し、荷物を仕分けて各配送車に積み 込む。
SDは集配場に来てすぐに出発できる。
そ の分、SDの勤務時間が短縮される。
 ただし、早朝アシストを導入するには配送車へ の積み込み作業を標準化する必要があった。
SD は配達順を念頭に置いて、後から自分で取り出し やすいように積み込みを工夫している。
経験のな いパートでもそれができるように、新たに棚付き の荷台を開発した。
その荷物を荷台のどの場所に 収めればいいのかSDでなくても判断できる。
 同時に配送車の走行ルートにメスを入れた。
エ リアを隈無く回る伝統的な「軒先集配(図2)」を 改め、停車場所を固定する「バス停方式(図3)」 に移行した。
元は交通安全対策として生まれたア イデアだが、配送順が明確になるため、積み込み 作業の標準化とも相性がいい。
さらには「バス停」 を臨時的な集配拠点として機能させることで、台 車や自転車による軽装備の集配が可能になった。
 それを一歩進めたのが、チーム集配だ。
チーム 集配における停車場所は「ドッキングポイント」と 呼ばれる。
ドッキングポイントはSDとFCの集合 場所であり、そこを中心にして「バス停」よりも 広いエリアをカバーする(図4)。
少子高齢化の物流網  一連の改革にSDが諸手を挙げて歓迎している わけではない。
長年親しんだやり方を変更するこ とには抵抗がある。
決まったやり方を強制される ことで、SD個人レベルで見れば効率が落ちるケー スもあるだろう。
試行錯誤も味わっている。
バス 停方式を前提に設計した棚付き荷台は、ドッキング ポイントに変わることで、その利用価値が薄れた。
停車回数が大幅に減るため、棚で荷台を細かく区 分する意味がなくなった。
 それでも、チーム集配が軌道に乗れば、コスト 効率のレベルが一段階上がる。
一日の時間帯によ る業務量の変動はもちろん、中元・歳暮期の季節 波動にもFCの人数を調整することで、SDの数 を増やさず対応できるようになる。
さらに現在は 「クロネコメイト」と呼ぶ個人事業主への業務委託 で運営しているメール便の配送も、FCの仕事の 一部に取り込める。
 チーム集配は一一年三月期の段階で既に五〇億 円以上のコスト削減効果を挙げている。
これを全 国規模で展開すれば、同社の収益性は大幅に向上 する。
それと同時に、少子高齢化社会においても 持続可能な、パート労働力を核とした新たな物流 ネットワークが完成することになる。
図2 軒先集配図3 バス停集配図4 チーム集配 バス停? バス停? バス停? ドッキング ポイント? ドッキング ポイント? バス停? バス停? バス停? バス停? バス停? ドッキング ポイント? ドッキング ポイント?

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